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zoom RSS お守り代わりに持つ本―「完全失踪マニュアル」

<<   作成日時 : 2014/01/22 23:44   >>

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“逃げる”ことは、決してネガティヴな選択ではない。

完全失踪マニュアル
太田出版
樫村 政則

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大学生時代、再発した鬱症状が酷く、朝起き上がることすら出来なくなったときのこと。一時期流行ったマニュアル本の中でも、社会現象まで引き起こした「完全自殺マニュアル」なる本を読んでみたことがありました。巷では、この本に対し、“逆に癒された”だの、“却って自殺しようという気持ちが失せた”といった好意的な評判が大半を占めていたように記憶しています。

しかし、私自身が一読した感想は、“可もなく不可もなく”といったところ。文字通り、ありとあらゆる自殺の方法がレクチャーされている本を読んだところで、それを自分の身にあてはめることができなかった、というのが正直な感想でしたね。
というのも、実際に自殺を試みようとしている人間の心理は、一般の人には理解しがたいものがあるからです。社会の中で普通の生活を送っている人間には、おそらく突拍子もないと感じられる理由で、“彼ら”は容易に自殺の道を選びます。“彼ら”以外の方々の中には、“甘ったれんな”と怒りさえ覚えるむきもあるでしょう。
誰しも一度は、“もう死んでしまいたい”と憧れ混じりに考えることはあるでしょうが、そういう心理は、“どこかに必ず逃げ道がある状態でのみ”作用するもの。本当に死を選ぶしかないと思いつめている人間のそれとは、明らかに異質なのですね。つまり、私が思うに「完全自殺マニュアル」という本は、潜在的自殺予備軍とでも呼ぶべき人たちに対して発信された、自殺指南書に見せかけた巧妙な自殺抑止書であるわけです。変な言い回しですが、本当の自殺志願者にはほとんど効力がないと思われます。

その後、“完全〜マニュアル”と題された、柳の下のドジョウを狙う本がいくつか発行されました。中でも感銘を受けたのは、冒頭にリンクを貼った「完全失踪マニュアル」ですね。

これは、書物としてもかなり面白い部類に入るものでした。元探偵であった著者が、その探偵時代に経験したたくさんの事例を元に、“失踪の方法”を各段階に分けて解説していくという内容です。
このブログでも、過去に、失踪者を追跡捜索する「FBI 失踪者を追え!」という海外ドラマをご紹介したことがありますが、私自身、自分自身が置かれた環境から脱出したいと願っていた時期がありました。そんなわけで、“失踪”には少なからぬ興味を抱いていたことになりますね。

そのうえ、この「完全失踪マニュアル」を著した樫村 政則氏は、失踪をネガティヴな手段とは捉えていません。今の人生が自分に害を及ぼすものであるならば、そこから“逃げる”ことも必要だと説いておられます。いってみれば、戦略的撤退ですよね。日本人は、多少の不満なら我慢することを美徳と考えますが、その我慢が限界値を超えたときのことは、誰も教えてはくれません。持っていき場のない苦痛に苛まれた者は、従って、ビルの屋上から飛び降りたりするわけです。それならば、自殺するぐらいならば、“人生をリセットする”ことを考えたほうが、よっぽど前向きでしょう。そう、この本の真の存在意義は、本気で自殺しようとしている人たちに対し、それを抑止し、別の逃げ道を提示することにあるのです。

第1章「失踪期間1ヶ月編」、第2章「失踪期間数ヶ月編」、第3章「失踪期間数年編」、第4章「永久失踪編」と、各段階を追って、“失踪”という現象を追体験することができるのも、私はとても有意義だと思っています。さすがは元探偵さんだけあって、各章における失踪の方法論のみならず、もし実際に失踪という手段をとった場合、自分の周囲がどのような状態になるのか、その状況解説には非常なリアリズムが漂いますね(笑)。第1、2章辺りは、いわゆる“なんちゃって”失踪という印象で、まだまだ“気分転換”の要素が大きいですが、第3、4章の辺りになると、“出家する”だの“整形する”だの、あるいは“戸籍を買って他人になりすます”といった、一部には非合法な手段も紹介されていたりします。
失踪先での職探しに至っては、それが社会の最底辺で生きていくことを意味し、つまりは、それぐらいの腹を括らねば永久失踪はできないんだ、と暗示しているわけですね。尤も、この本が出版されたのはもうずいぶん前のことなので、今現在、ここで紹介されている方法がそのまま通用するとは思えません。現行法では不可能になっている手段も多いですね。
しかしながら、藁にもすがる気持ちでページをめくっているであろう読者は、失踪のシュミレーションを頭の中で行いながら、その結果、どんな未来が待ち受けているのかは、おぼろげながら想像することが出来ると思います。重要なのは、冷静になった頭で“自分の未来予想図を描くこと”であるのです。そうすれば、今自分が置かれた状況の中で自分に何が出来るのか、考えようという気持ちになるかもしれない。“自殺”とは、言い換えれば、“死以外、何も考えられない状態”を指すのであり、“現在も未来も全て放棄する”ことを意味します。この失踪指南書は、そうなってしまった人間の精神をとりあえずは宥めすかし、違う可能性に目を向けさせるという、大切な意味合いを帯びたものなのですね。

著者は最後に、“人生は何度でもやり直せる”と明記しています。失踪が全てを解決するわけではありませんが(失踪宣告が出された場合の悲劇的な状況を考えるとね…)、一方通行でしかないと思われた自分の人生に、別の道筋をつけることは、自分の生き方を自らの手で変えようとする力強い行為に他なりません。死を選択する前に別の選択肢を用意する…というのも、人生論のひとつであってもいいのではないでしょうかね。

この本を買って以来、これは私にとっての“お守り代わりの本”として、いつも傍らにあります。


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