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zoom RSS 「あおい目のこねこ」は生きる。

<<   作成日時 : 2017/12/06 01:50   >>

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この絵本、実は私にとっては特別な位置を占めるものです。小学生の頃に初めて図書館で手にとって以来、虜になってしまったからですね。

初めて読んだものは、残念ながら図書館に所蔵されている本でしたから、期限が来れば返さねばなりません。泣く泣く本を手放した後、いろいろな書店でこの「あおい目のこねこ」を探し回りましたが、なぜか発見する事が出来ませんでしたね。悲嘆に暮れる私をもてあました両親は、代わりに別の猫の絵本を買ってくれたのですが、そんなものでは到底慰められない程、私のこの本への執着は強かったのです。

長じてから規模の大きな書店に出入りするようになり、さらに子供達が絵本を欲する時期になった頃、ふと思い立ってこの本を探してみました。すると、絵本コーナーの片隅で、やや埃をかぶった状態で静かに眠っていた「あおい目のこねこ」を発見。なんともいえない感慨が押し寄せてまいりました。

あおい目のこねこ (世界傑作童話シリーズ)
福音館書店
エゴン・マチーセン

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「あおい目のこねこ Le chat aux yeux bleus」
エゴン・マチーセン Egon Mathiesen:文と絵
せたえいじ:訳 (福音館)

昔ある国に青い目をした元気な子猫がいました。彼はもうおなかをすかせなくてもすむように、ネズミでいっぱいの国を探しに旅に出ます。放浪する先々で様々な困難に遭遇する子猫。飢えを凌ぐためにハエや蚊を捕まえて食べながら、途中で出会った大きな魚や得体の知れない化け物、ハリネズミにネズミでいっぱいの国の場所を尋ねますが、相手にしてもらえません。それは、子猫が変わった青い目をしているせいでした。
でも悲嘆にくれることなく、彼はいつものように元気いっぱい歩き続けます。そして黄色の目をした5匹の子猫たちに出会った彼は、その青い目をバカにされながらも一緒に暮らし始めました。ある日、犬に襲われかけた5匹の子猫たちを助けるため、彼は偶然その犬の背に飛び乗ってしまいます。犬は驚いて一目散に駆け出しました。山を上って、さらに山を下って、また別の山に上って…。数日後、犬がついに倒れてしまった場所こそが、目指すネズミでいっぱいの国だったのです。
で、青い目の子猫はどうなったか?たらふくネズミを食べて丸々太った彼は、黄色の目の子猫たちのところに帰っていきました。子猫たちはやせ細り、まだ木の上で震えています。犬を追い払った上にネズミの国を見つけたという青い目の子猫の話に、耳を貸そうともしません。しかし飢えには勝てず、黄色の目の子猫たちは青い目の子猫の後について、山を越えていきました。ネズミでいっぱいの国は本当にありました。子猫たちは夢中でネズミを食べ、丸々と太り、共に幸せに暮らしたということです。

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目の色が違うことで、いわれなき差別を受けていた青い目の子猫は、今やそれを乗り越えたばかりか、飢えることのない桃源郷をも手に入れました。生きること=食うことだとリアルに理解できる作品ですね。その厳しさは理屈ではないんだと。それと同時に、青い目の子猫と黄色い目の子猫達のかかわりを通して、単純に本能だけで生きること(作品では黄色い目の子猫達の行動)の愚かさを戒めてもおります。見た目の違いでたやすく差別を受けてしまうこの社会の構造を、実にシンプルにわからせてくれる作品でもありましょう。しかしながら、その差別によってもたらされる苦労をしなやかにすり抜けていく青い目の子猫の姿から、雑草のようにたくましい生命力も実感できます。未来を担う子供だけではなく、その親こそがきちんと読まなくてはいけない本でしょう。

まるで一筆書きのように描かれた猫たちの絵が印象的です。シンプルそのもののイラストですが、猫の表情や闊達に動く様子が、擬人化されているとはいえ、非常に生き生きしているのですね。歩く姿、走る姿、寝そべる姿、虫を捕まえようと前足を伸ばす様子、しっぽを綺麗に足の周りに巻いて済ましてお座りする姿、のどをゴロゴロ鳴らす様子…。普段猫が見せる仕草を、思わず重ね合わせてしまいます。作者のエゴン・マチーセンは、かなりの猫好き、動物好きとお見受けしましたが、実際はどうだったのでしょう。
また、主人公の青い目の子猫がシャム猫だというのもなかなか粋ですね。この絵本では、黄色い目がマジョリティを、また青い目がマイノリティを象徴しています。マチーセンがデンマーク人であることを考えると、普通は逆の発想をしがちですが、そうしなかったところに彼のアーティストとしての反骨精神を感じますね。


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エゴン・マチーセン Egon Mathiesen

1907年生まれ、1976年没
デンマーク、エスビエーア出身

デンマークを代表する絵本作家にして抽象画家。「あおい目のこねこ」や「さるのオズワルド」「おうむ」「フレデリックとバス」等、シンプルな画風で普遍的な面白さを追求した作品で知られる。彼の絵本はデンマーク内のみならず、世界中で翻訳・出版されており、アメリカでもニューヨーク・ヘラルド・トリビューン賞を授与された。優れた壁画制作によって、デンマーク・ロイヤル・アカデミーのエカスベル賞を受賞した。夫人も画家。


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