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zoom RSS 旅の車窓から−「ペンギンきょうだい れっしゃのたび」

<<   作成日時 : 2015/03/27 14:35   >>

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Spoiler Alert! 今記事は、基本的にネタバレを含みますので、閲覧は自己責任でお願いします。

ペンギンきょうだい れっしゃのたび
ブロンズ新社
工藤 ノリコ

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「ペンギンきょうだい れっしゃのたび」
絵と文:工藤ノリコ  (ブロンズ新社刊行)

ペンギンの3きょうだい、おねえちゃん、ペンちゃん、ギンちゃんは、明日3人だけで列車に乗っておばあちゃんの家に行きます。今夜は準備に余念がありません。しっかり者のおねえちゃんの持ち物は、3人分の切符に、おばあちゃんとおじいちゃん、まだ赤ん坊のいとこたちへのお土産と、ハンカチ、ティッシュ、歯ブラシ、おやつのガム。そして、忘れちゃいけない、お財布です。ちょっぴりおっちょこちょいのペンちゃんの持ち物は、水筒、ハンカチ、ティッシュ、歯ブラシ、おやつのキャラメル。そして、忘れちゃいけない、3人の…うん?これはなんでしょう。末っ子のギンちゃんの持ち物は、歯ブラシ、おやつのキャンディー。そして、忘れちゃいけない、まだ小さいギンちゃんのためのパンダのぬいぐるみと、車のおもちゃです。
翌日。いよいよ出発です。きょうだいはパパとママに連れられて駅にやって来ました。駅には、サンドウィッチやホットドッグ、ジュースを売る店や、雑誌や新聞を売るスタンド、名物のチョコレートを売るお土産屋などが立ち並び、食事を取る人や立ち読みする人、お土産を両手に抱えて走る人など、大勢の人でごった返しています。きょうだいはお弁当屋さんでお弁当を買うことにしました。どのお弁当もおいしそう。お菓子やゆでたまご、お茶や牛乳、ジュース…どれも列車のたびには欠かせません。どれにしようか迷ってしまいます。車掌さんが列車の出発を告げました。きょうだいたちも、パパとママに手を振って列車に乗り込みます。出発間際に大慌てて列車に駆け込んでくる人もいる中、きょうだいは切符に書かれている席を見つけました。いよいよ列車が走り出します。車上の人になったきょうだいを見送るパパとママの姿も、あっという間に見えなくなってしまいました。3人だけの列車の旅の始まりです。
一面にマーガレットが咲く丘を抜け、列車は様々なお客を乗せて走ります。窓の外の景色を見るのにも飽きたペンちゃんとギンちゃんが、お弁当をねだりました。おねえちゃんは、みんなのお弁当を広げます。巻き寿司が入っただるまさん弁当はおねえちゃんの分、フルーツたっぷりのフルーツサンドイッチ弁当はギンちゃんの分、タコさんウィンナーが入ったタコさんオムライス弁当はペンちゃんの分ですね。きょうだいがおいしくお弁当をいただく間、お弁当や飲み物、アイスクリーム、冷凍みかんなどの車内販売も始まりました。持参したおにぎりをほおばる人、コーヒー片手に新聞に目を落とす人、駆け込みセーフのあの人も、車内販売のサンドイッチでようやく人心地ついたようですね。ペットの子犬を連れた人はケージを抱え、白くまの子供たちは大喜びでみかんを口にしていますよ。きょうだいがお弁当を食べ終わり、それぞれのおやつを口に入れた頃、列車はトンネルに入りました。いきなり車内は真っ暗。3人ともびっくりです。そしてトンネルを抜けると、目の前に真っ青な海が広がりました。ペンギンきょうだいも白くまの子供たちも大騒ぎです。静かに本のページを繰っていた人も、思わず目を上げて水平線に見入りました。まもなく海の駅に到着です。
列車が海の駅に到着しました。お土産や大荷物を抱えた乗客は、三々五々構内に散ってゆきます。ペンギンきょうだいも飛び出していきましたが、ペンちゃんが切符をどこかに落とした模様。おねえちゃんとペンちゃんは、大慌てでペンちゃんのリュックサックをひっくり返しました。どうやらペンちゃんは、切符を自分で持つと言い張ったようですね。切符がどこにもないため半泣き状態のきょうだいに、帽子を被ったあざらしのおじさんが声をかけてくれました。ペンちゃんが落とした切符を拾ってくれていたのですね。これで一安心。改札口を無事抜けたきょうだいたちは、迎えに来てくれたおばあちゃんに飛びつきました。列車から降りた人たちと、彼らを迎えに来た人たちで、どこもかしこも人だかり。ペンちゃんの切符を拾ってくれたあのおじさんは、迎えの人にかばんを預けていますね。会社のお偉いさんでしょうか。大きなリムジンに乗り込んでいます。きょうだいたちはおばあちゃんと一緒に、自家用犬ぞりで待っていたおじいちゃんの所まで走りました。駅の外では、犬ぞりタクシーを待つ人もいれば、出迎えの人の自家用犬ぞりに乗ったり、バスを待つ人もいて、同じ列車に乗ってきた人たちともここでお別れです。きょうだいたちは、おじいちゃんの運転する犬ぞりに乗って、頭上を飛ぶカモメたちや遠くに見える灯台など、珍しい風景に夢中のようです。

…きょうだいは、これから夏休みのひと時をおばあちゃんの家で過ごします。

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以前にご紹介した、ひよこの兄弟ピヨピヨたちの小さな冒険を描いたシリーズでもそうでしたが、工藤ノリコさんの絵本の面白さというのは、ディテールのマニアックな追求に尽きると思いますねえ。
ストーリーなんて、あってなきがごとし。「ピヨピヨスーパーマーケット」は、ひよこたちがお母さんと一緒にスーパーに買い物に行ったというだけの話ですし、同シリーズの「ピヨピヨメリークリスマス」も、クリスマスを明日に控えてひよこたちがはしゃぐという、ぶっちゃけそれだけのお話です(笑)。今作「ペンギンきょうだいれっしゃのたび」も然り。ペンギンの幼い兄弟たちが、自分たちだけで列車に乗っておばあちゃんの家に行くという、どこにでもあるような日常の1シーンを切り取った内容なんですね。

にもかかわらず、惹きこまれずにおれない魅力があるのは、ひとえに、ひとつのシーンにおけるディテールの細やかさとリアリティのおかげだと思います。たとえば今作においては、兄弟たちが旅に持参する荷物の中身とか(笑)。いやほんと、各自が持っている荷物を見れば、一番上のお姉ちゃんがパーティーのリーダーであることが一目瞭然であるわけですね。真ん中の子と末の子の荷物も、その年齢によって微妙に異なっているところなど、小さいお子さんをお持ちの方なら直感的に理解できるリアリティです。これは、列車内できょうだいが食べるお弁当シーンでも再現されていますよね(笑)。末の子のお弁当が、まさしく幼児が好むメニューだったりするのもすごく笑えます。

あるいは、彼らが向かう駅の情景。今回もまた、駅構内に弁当屋や土産物屋や軽食屋など、小さな店が雑然とある様子がうまく描写されていますね。各店に置いてある品物ひとつひとつに至るまで念入りに描きこまれ、どこか懐かしさを感じるレトロな雰囲気と、一瞬どこの国の光景かわからなくなるほど妙に垢抜けたイメージが渾然一体となった、独特の絵世界が広がっています。余談ですが、アマゾンに掲載されたカスタマーレビューを読んでいて気づいたことが。今作の駅の描写が微妙にオシャレな感じで、ピヨピヨ・シリーズのような親しみやすさというのか、既視感を今ひとつ覚え辛いといった感想があるようなのですね。工藤ノリコ作品の魅力のひとつに、“そうそう、自分にも昔あんなことがあったなあ”という、大人が共通して持っている懐かしい原風景の再認識があります。それは、もちろん今作でも健在ではあるのですが、日常的に日本の地方の駅に見られるような雰囲気からは、あえてずれたイメージを狙っているようにも思われます。個人的には、モンパルナス駅の雑多な構内を思い出しましたね。

そして、そんな絵の中にいる人物 (動物ですが・笑)の表情や仕草などが実に細かく描き分けられていて、目を凝らせば、それぞれが駅にやってきた理由やこれからどこへ行く予定であるのか、また各人の普段の生活背景までもが透かし見えてくる仕掛けになっています。駅も空港同様、様々なドラマを抱えた人々が集まり、そのドラマが一時交錯する場所でありますが、今作の駅のシーンや列車内のシーンに立つ大勢の人たちの背後にあるドラマを想像してみるのも、今作の大きな楽しみでしょう。まさしく、ディテールから細かいドラマをいくつも紡ぎ出し、主旋律に絶妙に絡めることでストーリーに厚みをもたらす、工藤ノリコ節炸裂といったところ。駅で出会い、たまたま同じ列車に乗り合わせた乗客たちが、ほんのひととき同じ空間を共有する。それぞれがそれぞれのリズムでてんでに行動しているように見えて、列車がトンネルを抜け、いきなり目の前に青い海原が広がったとき、皆ペンギンきょうだいたちと一緒にその風景に名状しがたい感動を覚えているのです。その場に流れるちょっとした連帯感といったものは、誰にでも経験あるものでしょう。それに幸せを感じられるのは、列車が目的地に到着すれば、再びそれぞれがそれぞれの生活の場に散っていくことが暗黙のうちにわかっているから。共有する連帯感が一瞬のものであるからこそ、彼らは、駅で自分たちを待ってくれている者へ、新たに思いを馳せることができるのではないかなあと思いますね。
実は、渡仏のために乗った大韓航空の機内で、韓国人の若い女性グループに出会ったのですが、ちょっと彼女たちのことを思い出しましたねえ。さすがは韓国女性、積極的かつ大胆かつ人懐っこい方たちでして(笑)。うちの子豆1号を、“可愛い可愛い”とおもちゃにしておりましたのよ(大笑)。1号、半泣き状態でしたが(再大笑)。パリには観光に行くのだと言っていましたが、彼女たち、今頃どうしていますかねえ…。

さて、ペンギンきょうだいたちにはおばあちゃんが迎えに来てくれていましたし、ペンちゃんの落とした切符を拾ってくれた乗客のおじさんには、立派なリムジンと部下たちが迎えに来ておりました。白くまの親子には、おじいちゃんのお出迎えがあったようです。大荷物を抱えていた1人旅のペンギンは、友人か親戚なのか、たくさんのペンギンたちの歓迎を受けて嬉しそう。列車に乗り込む前に繰り広げられていた乗客それぞれのドラマが、今度は少し形を変えて続いていくのですね。その流れを追う楽しさと、ほんのちょっぴり感じる寂しさ。旅にはつきものの感慨ですね。

さらに、“海の駅”の構内描写がまた凝っていまして、大変面白いです。ここでの主たる交通手段は犬ぞり(笑)。駅の外では、あちこちで犬ぞりの出迎えが待っており、タクシー乗り場にも犬ぞりが発着したりします。ペンギンや白くまが犬ぞりを操る図は、なんだかやけに可笑しいですね。ペンギンきょうだいがたどり着いたおばあちゃんの家では、猫もペットとして飼われているのです(笑)。きょうだいは、まだ赤ん坊のいとこたちと遊んだり、おばさんに切ってもらったスイカやゆでトウモロコシを食べたり。ペンギンを人間に置き換えれば、このペンギンおばあちゃんの家の情景はそのまんま、田舎のおばあちゃんちの思い出に早変わりしますよね。 “昔見た風景の再確認”は、この作品を手に取るであろう子供より、むしろその親世代を捉えて離さないはずです。

絵本に登場する動物たちは、漫画チックにデフォルメされたキュートな絵柄ですが、よく見ると三白眼で目が据わっていたりします(笑)。正反対の要素で奇妙なバランスを取る面白さは、例のピヨピヨたちほどのインパクトはさすがに薄れましたが、相変わらず何度見ていても飽きないものですね。あ、そうそう、お話が終わった次のページに、絵本のはじめのころに出てきたあるものの正体が明かされています。うっかり見落とさぬよう、ご注意あれ。


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