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zoom RSS 「三匹のぶたの話 The Other Story of 3 Little Pigs」

<<   作成日時 : 2016/01/22 12:48   >>

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黒田愛

1981年生まれ、東京出身。
2005年6月没。

和光大学卒業後、第3回MOEイラスト・絵本大賞でグランプリ受賞。第6回Pinpoint Picture Book Competitionで最優秀賞受賞。独特の力強い筆致と油絵のようなあくの強い色使いで、その異才を評価されていたが、23歳で急逝する。


愛情は食物連鎖を超え得るか?

三匹のぶたの話―新釈
白泉社
黒田 愛

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あるところに、腹をすかせたオオカミがおりました。哀れな小鳥を捕まえたオオカミは、さっそく一飲みにしようと口をあーん。すると小鳥は涙ながらに訴えました。
「山の向こうに3匹のこぶたが住んでいます。そのプリプリのこぶたを食えば、あなたの腹も満足させるでしょう」
オオカミは思案し、小鳥を逃がしてこぶた達を探しに出かけました。
3匹のこぶた達は家作りの真っ最中。赤い帽子の長男ぶたはワラの家を、緑の帽子の次男ぶたは木の家を、そして黄色の帽子の末っ子ぶたは、レンガの家をこしらえます。
そこへやってきたオオカミは、よだれを垂らしながらワラの家を一吹き。長男ぶたの家はあっという間に吹き飛んでしまいました。長男ぶたは次男ぶたの木の家へ。次男ぶたの家はたった今出来上がったばかり。急いで家の中に避難した2匹でしたが、追いかけてきたオオカミにはメじゃありません。先ほどよりもさらに大きな一吹きで、木の家も吹き飛ばしてしまいました。
「キャーッ助けてー!」
2匹は汗だくになりながら、必死の面持ちで末っ子ぶたのところへ逃げていきます。それを見た末っ子ぶたは、呑気にレンガの山の上にあぐらをかいていました。なんとまあ、レンガの家は全くできていなかったのです。慌てた3匹は手分けしてレンガを運び、オオカミから逃れるための壁をこしらえました。
むむっ!オオカミはレンガ造りの壁にたじろぎます。ところが、オオカミがそっとレンガに手を触れると、レンガは簡単にはずれ、あろうことか向こうの景色が見えるではありませんか。急ごしらえの壁は、ただレンガを積み上げただけだったのです。オオカミは開いた穴から口を突っ込み、長い舌をべろりと垂らしました。
きゃうっ!怯えた3匹は知恵を出し合います。そして、穴から突き出されたオオカミの口の中に、残ったレンガを押し込んでみました。反射的に牙を突きたてたオオカミはレンガに喰らいついてしまい、にっちもさっちもいきません。その様子を見て、3匹のこぶた達は壁の裏から恐る恐る出てきました。
大きな口を小さな穴から突き出し、その鋭い牙に今はレンガを咥えさせられ、為すすべもなく固まっているオオカミ。その姿は、3匹のこぶた達に、恐怖以上に可愛らしさを感じさせました。やがて山のてっぺんに、レンガの屋根と木の柱、そして中にワラを敷き詰めた立派な家が建てられました。3匹のこぶた達の家です。その裏庭では、 1匹のオオカミが飼われています。オオカミは1日3度、たっぷりと食事を与えられています。身体は相変わらずレンガの壁に挟まったままですが、お腹は毎日満足しっぱなしなので、オオカミもわざわざ逃げようと思いません。もっとも今では、こぶた達の丁寧な世話のおかげで、オオカミはでっぷりと肥え太り、逃げることもままならないのですが…。つまり、あの小鳥がいつかオオカミに言ったとおりになったわけです。

―ジョセフ・ジェイコブスによる『English Fairy Tales』から“The Story of the Three Little Pigs”のあらすじ―

母さん豚は、愛する三匹の子豚たちを外の世界に送り出した。自立を促すためだ。長男豚はわらで家を建てるが、腹ペコの大きな悪い狼が現れて中に入れろと催促する。子豚がそれを断るとわらを吹き飛ばし、あっというまに子豚を食べてしまう。次男豚は木の家を建てるが、長男豚同様、やはり大きな悪い狼に食べられる。三男豚は堅固なレンガで丈夫な家を建てる。やはり大きな悪い狼がやってきて、家の中に入ろうとするが、賢い三男子豚は騙されない。おまけに、レンガの壁は狼が息を吹きかけただけではびくともしない。そこで、狼はあの手この手で子豚を家から外へ連れ出そうとするが、子豚はやはり騙されない。痺れを切らした狼は煙突から家の中に忍び込む。子豚は熱湯の入った大なべを暖炉に用意し、すかさず蓋を閉めて狼をカブと一緒に煮てしまう。おいしいシチューを食べて満腹になった子豚は、その後も幸せに暮らしたという。


私たちが子供の頃に聞いた童話としての“三匹の子豚”というのは、元来ヨーロッパで言い伝えられてきた民間伝承がベースになっています。民間伝承は、当時の人々に生活の知恵や教訓を与える役割も担っていました。そのため、それぞれのお話の随所に説教臭い言い回しがあるのも仕方がありません。さすが、ヨーロッパの価値概念の下に形成されたモラルらしく、その説話も私たち日本人の感覚からすればいささか血なまぐさい面を含みます。
上記した三匹の子豚の原型譚では、わらや木で安易に家を建ててしまった2匹の子豚達の悲惨な運命から、生きる上で決して楽をしようとしてはいけないと戒めていますね。また、堅実に堅固な家を建て、賢く立ち回って狼に勝利した末っ子豚の行動からも、2匹の子豚達の愚かさが強調されています。しかしながら、子豚と狼が互いに食うか食われるかの戦いを繰り広げる弱肉強食的展開は、後年さすがに緩和され、3匹の子豚は力を合わせて狼に立ち向かうストーリーに変化しました。ですが、大きくて悪い狼に象徴される“驕れる者(もしくは力を持てる者)”を戒め、2匹の子豚たちに暗喩される “愚かな者(力を行使される側の弱者)”を叱咤する根幹は揺るぎません。

その厳しくも古いモラルに支配されたお話を、現代の感覚で新たに解釈しなおそうと試みたのが、この黒田愛氏による絵本「三匹のぶたの話」であります。
黒田氏のあくの強い画風もあって、この絵本世界はどこかいびつ。本来絶対悪たるオオカミは、小鳥の苦し紛れの命乞いにもころりと騙されるほどのお人よしに描かれていますし、オオカミに3匹のこぶた達を食うよう吹き込んだ小鳥の造形も傑作。つぶらな瞳に涙をいっぱいに溜めている姿は、どこからどう見ても庇護意識を掻きたてられるのですが、暗い色合いの絵の中では、逆に腹のどこかに一物隠し持っているんじゃないか…と疑ってみたくなるのです(笑)。それは3匹のこぶた達にしても同様で、間の抜けた顔のオオカミに対し、彼らの顔は単純に可愛いとは言い難いもの。ぱっちりと開いたお目めは不気味なまでに大きいし、ポチャポチャと太った肉付きのよろしい体は、キュートというより、むしろ彼らの普段の怠惰な食生活を窺わせてしまう。まあ一言で言えば、可愛げがないのですね(笑)。こぶた達が家を建てるくだりでも、堅実なはずの末っ子ぶたですら、どこかしら現代っ子的だらしなさを感じる態で、思わずニヤリとさせられます。彼らがオオカミを嵌める方法にしても、実に行き当たりばったり、頭を使った形跡はなしに等しい。
“白か黒か”という明快な価値観が崩壊した現在では、善悪の境界線は実に曖昧です。悪であるはずのオオカミだって、実は同情すべき存在なのかもしれませんし、か弱い被害者たるこぶた達が、揃いも揃ってグウタラで共感しにくい連中だったりもするわけです。この絵本は、その辺りの価値観の逆転構造を面白く見せてくれますね。また、この捩れたハッピーエンディングは、現代的解釈だからこそ成り立つもの。“捕食・被捕食”という食物連鎖すら超越してしまった、こぶたとオオカミの共存は、異なる価値観の衝突の狭間にある現代社会を皮肉っているのかもしれません。


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