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zoom RSS FBI失踪者を追え!Without A Trace―S2 EP2「聖職への道Revelations」

<<   作成日時 : 2016/01/07 00:25   >>

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もうすぐクリスマス。恐ろしいことや悲しいことが絶えなかった2015年もあと数日で終わります。ひょっとしたら、今日と明日は、世界中の人々が“神様”という存在を最も身近に感じる時なのかもしれません。

久しぶりにこのエピソードを見返したら、やっぱり泣けてきました。「FBI失踪者を追え! Without A Trace」シーズン2のエピソードの中で、1,2を争うほど好きな内容です。“贖罪 atonement”とはどういうことなのか。宗教や思想の違いを超えて考えさせられる、非常に見ごたえのあるエピソードだと思いますね。

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“イスカリオテのユダ Judas Iscariot”

イエス・キリストの使徒の一人。しかしながら、キリストを囲む最後の晩餐の後、ローマの祭司長と物見高い群集の元に彼を導き、接吻することで、その身柄を売り渡した。得たものは数十枚の銀貨。『マタイ福音書』では、ユダはその後銀貨を神殿に投げ捨て、自殺したことになっている。また『使徒行伝』では、銀貨で買った土地に落ち、内臓がすべて飛び出した状態で死んだことになっている。ユダの名前は以来、“裏切り者”の代名詞となってしまった。この史実から、ユダヤ人一般に対する偏見と迫害の歴史が始まったといっても過言ではない。

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夜のニューヨーク。血まみれの神父が教会にたどりつき、キリスト像の前で祈りを捧げる。そして、彼は姿を消した。

失踪後54時間。失踪者は、ヘンリー・スティーブンス神父。サンジェルマン教会に勤めて12年になるという。2日前の夕食後から行方がわからなくなったらしい。神父と一緒に彼の車も消えていたが、旅行に出たというわけではなさそうだ。なぜなら、末期の肝硬変を患う彼は臓器提供を待つ身であるからだ。やっと肝臓提供者が現れたのに彼と連絡が取れないため、病院から教会に知らせが入り今回の神父の失踪が明らかになった。一刻も早く神父を探し出し、彼に肝臓移植を受けさせなければ、助かる道はない。

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早速FBI失踪者捜索チームの捜査が始まった。ジャックはスティーブンス神父の補佐役であるウォーカー神父に事情を聞く。それによると、スティーブンス神父は1年半ほど前に肝硬変であることがわかった。彼は非常に熱心に地域の信者達のために働いていた。彼自身になにかトラブルがあったことは考えられないが、余命いくばくもない身体のため、やり残したことが多いことに焦りを感じていたかもしれないという。ジャックは今までの豊富な経験から、この話も眉唾ものだと感じていた。成人した男性が失踪する原因は、ほとんどが本人の招いたトラブルであったからだ。
マーティンは神父の担当医師に話を聞く。医師は5 日前神父を診察していた。彼の病状が進みすぎており、肝臓移植しか道はないと神父に諭していた。しかしそれから3日後実際に肝臓提供者が現れ、神父が病を儚んで自殺したということも考えられない。
一方神父の自宅を捜索していたダニーとヴィヴィアンは、そこで血にぬれた札束を発見する。清廉潔白だと思われていた神父となんの関係があるのか。
チームの一人サマンサは、依然として現場復帰を許されていなかった。彼女には精神面でのリハビリが必要だと判断されたためだ。復帰をあせるサマンサは反発するが、仕方なくデスクワークで捜査の一端を担う。そしてサマンサの調べによると、スティーブンス神父は34歳で神父を志して神学校に入るまで、主にフロリダで季節労働者をして暮らすような流れ者であったらしい。また、失踪した日の夜、地元の警察から神父に連絡が入っている。教区内で車の衝突事故があり、神父が呼び出されていたのだ。

失踪後57時間経過。マーティンは警察に急行した。事故の処理を担当した警察官による証言。事故が起こって死人が出た場合、毎回必ず最期の祈りを神父に行ってもらっていたのだった。問題の夜では、車をぶつけられた被害者夫婦のうち妻が亡くなったため、その夫と事故を起こした男との間に揉み合いがあった。神父は被害者の血で汚れるのもかまわず仲裁に入ったが、警察の車を断って歩いて帰っていったという。そこから神父の足取りはふっつりと途絶えたのだ。

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サマンサは、神父の過去の説教の内容を調べなおしている。“神はあなたがなにをしようとも常にあなたと共にある God always stays with you.”仕事上のつまずきを抱える彼女にとって、彼の言葉は心の中に格別染み渡るものであった。

失踪後61時間経過。ダニーとジャックは、神父が監督を務めていた野球チームに入っている少年二人を事情聴取する。そのうちの一人セルジオの証言。神父と仲がよく、ほぼ毎日教会に通っていたというデイヴィッドという少年の母親と神父が口論するところを目撃したという。神父が失踪する2〜3日前のことだ。それ以来デイヴィッドは、神父のところには来なくなった。

失踪後62時間半経過。ダニーとジャックはデイヴィッドの母親テレサから話を聞く。彼女は息子は神父からはなにもされていないし、神父の失踪には無関係だと主張する。なにかを隠しているのは明白だ。ジャックはダニーに、彼女の尾行を命じる。サマンサが突き止めた情報から、神父が頻繁にフレズノの決まった場所に行っていたことがわかる。教会関係者は誰もその事実を知らず、神父の自宅から見つかった札束からは複数の麻薬が検出された。また、フレズノはアメリカでも有数の麻薬製造・取引場所である。これらのことから、神父が重大なことを隠そうとしていたことが明らかになった。
スティーブンス神父の教会で、マッツォー二神父が代わりに説教をしている。ダニーとマーティンは教会に張り込み、そこから逃げようとしていた少年をつかまえた。彼は以前、相談にのってもらいがてら神父に車で家まで送ってもらったという。神父はヘイウッド・ホテルの前で車を止めると、怪しげな男に紙切れのようなものを手渡していたそうだ。少年はてっきり神父が麻薬をやっているのだと思い込んでいた。

失踪後80時間経過。ジャックとヴィヴィアンは、スティーブンス神父に免職処分が下されたことを知る。彼に関しては、麻薬所持の疑い、デイヴィッド少年への性的虐待の疑いも含めすべて状況証拠でしかないのであるが、教会側は、不名誉な疑いをもたれている神父を手っ取り早く切り捨てたいらしい。

ダニーとマーティンに、テレサを尾行している捜査官から動きがあったと連絡が入る。テレサがある男とモーテルにしけこんだという。なんと、テレサと一緒にいたのはマッツォー二神父だった。彼の証言。スティーブンス神父は、テレサとマッツォー二神父の関係を息子デイヴィッドから聞いた。神も母親も信じられなくなっているデイヴィッドのために、スティーブンス神父はマッツォー二神父にテレサと別れるよう直談判したのだった。

ジャックはウォーカー神父から話を聞く。ウォーカー神父はその問題を何度もスティーブンス神父と話し合っていた。スティーブンス神父は、誰にでも過ちはあるのだからと、すぐに枢機卿に報告することはせず、本人に直接注意すると言って聞かなかった。ジャックは、なぜ彼が枢機卿に報告するのをためらっていたのかを勘ぐる。スティーブンス神父自身にも知られてはまずい秘密があったのではないか。それこそ、麻薬取引および乱用だったのではないか。しかしウォーカー神父は違うと断言する。スティーブンス神父は常に自分の信仰心に疑いを持っていた。だからこそいい神父になれたといえる。彼は、救われるためには自ら行動しなければならないという考えの持ち主であったのだ。自分が死ぬことについてすらも、そこになんらかの意味を見出そうとしていた。また、彼は様々な罪深い人の懺悔を聞き、寛容さを養っていったのだ。ドラッグをやっていては、寛容さは生まれてこないはずだ。

ダニーとマーティンは、ヘイウッド・ホテルを捜査する。神父はそこの部屋を定期的に借り、ホームレスや暴力夫から逃げている妻などをかくまっていた。少年が見かけた不審な男ドイルも、刑務所から出所したばかりで、神父に仮の住まいとしてホテルの部屋をあてがわれていたのだ。しかしその部屋から血のついた神父の祭服が発見される。

サマンサの情報から推理して、神父はどうやらフレズノの連邦刑務所に入っていたドイルを定期的に訪問していたらしい。ドイルは覚せい剤の製造で逮捕され、20年の刑期を務めていた。出所したのは2週間前だ。神父の部屋で見つかった札束は、20年前の取引でのドイルの取り分らしい。かつて神父はフロリダで、ドイルと共に麻薬の取引をしていたのか。神父はドイルを社会復帰させようとして、ニューヨークにつれてきたのだろうか。ドイルと神父との間になんらかの事情があったことは明白となった。ダニーとマーティンは、教会の車に乗ったドイルを捕まえる。車からは神父のロザリオが見つかった。

失踪後85時間経過。ドイルの証言。神父がホテルのドイルの元にやってきて、フロリダへ行くから車を運転してくれと頼んできたのだ。失踪当日の夜の車の事故で神父がひどく動揺していたという。途中まで来たが、神父の体調が悪くなったため寝かせている間に、ロザリオと金を残して彼は姿を消していた。方々探したが見つからなかった。自力でフロリダまで行ったのだろう。20年前ドイルと神父は麻薬を製造していたが、捜査の手入れが入ったとき、ドイルだけ逃げ遅れて刑務所入りした。それから17年たってから、初めて神父がドイルのところに面会にやってきた。一人で逃げたことと、今までほったらかしにしていたことを謝りたかったという。

ジャックは、依然としてドイルが20年前の金の取り分をめぐって神父と争ったあげく、殺したものと思い込んでいた。ドイルは用心深く嘘をついているのだと。ヴィヴィアンは、神父はドイルに対して罪滅ぼしをしたがっていたと主張する。今もきっとどこかでなにかの使命を果たそうとしているに違いないと。ジャックは悩む。

サマンサは神父に関するもう一つの重要な証拠をつかんだ。20年前、フレズノ近くのジャクソンヴィル郊外で車の当て逃げ事故が起こっていた。被害者は当時17歳の少年アレックス。加害者はいまだ捕まっていない。被害者の少年の両親は、現在フロリダに健在だという。

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ヴィヴィアンとジャックは早速フロリダに飛び、ようやく神父を発見する。彼は今まさに、そのアレックス少年の両親の住む家までやってきたのだった。ジャックは肝臓移植ができるので、一緒に帰ろうと神父を説得する。神父は20年前の当て逃げ事故から逃げおおせた後、新聞でアレックスの死を知り、人生を一変させたのだった。ジャックの必死の説得にも関わらず、神父は、自分は穢れた心のままで死ぬわけにはいかないのだと言う。両親に謝罪したのち、晴れて私は死ぬことができるのだ、と。神父は、ジャック自身もまた迷える魂を持つ者だと看破し、ジャックのために最後の力をこめて神に祈りを捧げる。それは同時に神父の罪を贖う行為でもあった。そして彼はジャックの前から去っていく。最後の贖罪の祈りを神に捧げるために。ジャックは万感の思いをこめてその後姿を見つめ続けていた。


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今回のストーリーで明らかになるのは、FBI捜索隊チームのリーダー、ジャックの深層心理でしょう。彼はあまりに長く犯罪と関わってきたために、はからずもウォーカー神父に指摘されたとおり、この世に神などいないと信じるに至ったのです。つまり、人間などひとつ裏を返せば皆暗黒面に簡単に落ちてしまうと思っている。犯罪に関わる人間に“良心”などあり得ないと。ですから、スティーブンス神父の周囲の人間の証言すべてを疑ってかかっているわけですね。特に神父がかつて麻薬犯罪に関わっていたらしいことが判明してからは、神父の人間性そのものにも疑問を抱いてしまう。神父は昔の犯罪仲間を裏切った上に取り分の金を渡さなかったため、どこかに監禁されたか殺されたというありきたりのストーリーに違いない、と。

その思い込みが今回の事件の真相を探る目を曇らせてしまうわけです。ヴィヴィアンにたしなめられるほどに、ジャックはかたくなに人間の“良心”を信じられなくなっています。人が人を赦すこと、人は生まれ変われるということすら信じていないのでしょう。しかし神父の足取りを追ううちに、彼が心から過去を悔い、その罪をあがなおうとしていることを知り、ジャックの心境も変化していきます。

ラスト、自分の命も投げ出そうとしている神父が、ジャックのために彼の心の安寧を祈ります。麻薬にまみれ、人を殺していながらその罪から逃れようとしていた過去の神父と、数々の犯罪を通して人間の暗黒面を見続けた故にすさんでしまったジャックの心境には、奇妙にシンクロするものがあるのでしょう。神父は己の魂を自ら救済するために行動しますが、同時にそれはジャックの心をも救済することになります。

ジャックは見失っていた他人への“寛容”を思い出しました。これまでは、仕事への復帰を焦るあまり、仲間への信頼すら失いかけていたサマンサの傷ついた気持ちを汲むことができませんでした。口には出さないものの、ジャックのサマンサへの処遇は、仲間として彼女を思いやるというよりは、捜査官としての彼女の適性を疑っていたためのように思われます。しかし捜査官とて人間。間違いも犯すでしょうし迷いもある。特に今回の事件では、ジャック自身も間違いを犯しました。人の良心を信じなかったという間違いですね。

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ジャックは最後に神父から身をもって知らされた“寛容”を、不器用ながらサマンサへ示そうとします。彼女の現場復帰を早めるために働いたことですね。サマンサにカウンセリングを受けて欲しいというのは、純粋にジャックの彼女へのいたわりの気持ちだと思いますよ。スティーヴンス神父の行動は、ジャックのみならずサマンサにも作用し、かたくなに閉ざされた彼女の心を解きほぐしていきました。彼女にジャックの忠告を素直に受け入れさせたのは、他でもない神父の真心であったと思われますね。

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さて、約1700年前に書かれたとされる『ユダの福音書』の写本が解読されました。その写本は放射性炭素測定やインク分析を施され、本物と認定されたそうです。米ナショナル・ジオグラフィック協会によると、そこには、イエス自身がユダに自分を裏切って刑吏に引き渡すように指示したと書いてあるとか。イエスが特にユダに対し秘密裏に、「お前はあらゆることがらを越えていくだろう。なぜなら、お前はわたしを包んでいるこの男を犠牲にするからである」と述べたと記してあり、つまり、イエスを処刑に導くことによって、イエスの魂を肉体から開放することを手伝ったと解釈できるそうなのです。そうなりますと、今までのキリスト教義のあり方が根底から覆されます。この研究結果によって、キリスト教におけるユダの役割が見直されるのかどうかは今後の論議を待たねばなりませんが、少なくともユダの“卑しい裏切り者”というレッテルは、根拠のないものであったことが明らかになったわけです。

スティーブンス神父は、過去に“神の声”つまり自らの“良心”を裏切り、罪から逃れようとしました。しかし信仰という拠り所を得て、その人生の終わりに至ってやっとその原罪と正面から対峙することが出来ました。神に救われるのを待つのではなく、自らの手で魂を救わねばならないという彼なりの真実を実践したのです。犯した罪故に常に自分の神への信仰に疑いを持っていた彼。だからこそ、良き神の使いとなった彼の魂に、神は必ずや安らかな眠りを与えてくれるでしょう。
同時に、2000年以上もの間世界中のキリスト教信者から一身に罪と憎悪を浴びてきたユダの魂にも、安らかな眠りが訪れることを祈ってやみません。


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