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zoom RSS 「パリの灯は遠く Mr. Klein」ー間違えられた男。

<<   作成日時 : 2015/12/21 19:24   >>

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“間違えられた運命”を受け入れよ。

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アラン・ドロン Alain Delonを主演に迎えて製作されたジョゼフ・ロージー Joseph Losey監督サスペンス映画「パリの灯は遠く Mr. Klein」(1976年)の日本語国内版DVDが、2008年12月4日に廉価版にて再発されました。未見の方の方が多いに決まっているのは百も承知ですが、もし興味をもたれた方がおられたら、ぜひとも手に取っていただきたい逸品です。

ジョゼフ・ロージー監督のキャリアの中でも晩年に位置する今作、ある意味映画作家としての彼の集大成的な色合いも濃い内容です。全くの別人と自分のアイデンティティーが取り違えられてしまった不条理と恐怖。そして、真実の己の姿を誤解されたまま、最悪の運命に向かって突き進むしかない主人公の味わう絶望は、赤狩りでハリウッドを追われ、故郷に戻ることも許されなかったロージー監督の人生を象徴しています。私自身は、「パリの灯は遠く Mr. Klein」にこそ、ロージー監督の生き様全て、そしてロージー流演出の全てがつぎ込まれているような気がしてなりません。

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「パリの灯は遠く Mr. Klein」(1976年製作)
監督:ジョセフ・ロージー Joseph Losey
製作:レイモン・ダノン
脚本:フランコ・ソリナス&フェルナンド・モランディ
撮影:ゲリー・フィッシャー
音楽:エジスト・マッキ&ピエール・ポルト
美術:アレクサンドル・トローネ
出演:アラン・ドロン Alain Delon(ロベール・クレイン)
ジャンヌ・モロー Jeanne Moreau(フロランス)
シュザンヌ・フロン(La Concierge)
ミシェル・オーモン(Le Fonctionnaire)
マッシモ・ジロッティ(チャールズ)
ミシェル・ロンダール(ピエール)
ジュリエット・ベルト(ジャニーヌ)
フランシーヌ・ベルジェ(ニコール)他。

1942年3月。ナチス・ドイツ軍占領下のパリ。パリ内のユダヤ人狩りも苛烈を極め、街はどこも重苦しい空気に包まれる。だが独身の美術商ロベール・クラインにとっては、この悲惨な時代はむしろプラスに作用していた。彼は告発されたユダヤ系の人々が手放した、高価な美術品を安く買いたたいては高く売りさばき、大もうけしていたのである。
ところが、ある朝1人の男が極秘で美術品を売りに来たとき、1通の郵便物が投函されていることに気づく。その郵便物とは『ユダヤ通信』。これは、ユダヤ人たちがナチスの目を逃れて情報交換する際に用いられる冊子だった。ロベールは不審に思う。父親も母親も共に生粋のフランス人であり、自分がユダヤ人に間違われるいわれなどなかったからだ。だが、もし自分と同姓同名の別人が存在したとしたら…。そしてそのもう1人の“ミスター・クライン”がユダヤ人で、ナチス軍に目をつけられたとしたら…。不安と焦燥のうちに悶々とするロベール。パリでは日ごとにユダヤ人狩りがエスカレートしている。彼はついに身の潔白を証明しようと父親の元に赴き、弁護士ピエールにも出生証明書を制作するよう依頼した。しかしロベールの母親がアルジェ出身であったことから、フランス同様ナチス占領下にあるかの国での調査、手続きは遅々として進まない。そうこうするうち、ついにロベール宅に警察の手入れが入る。完全に“もう1人のミスター・クライン”と間違われてしまったロベールは、全財産を没収される。愛人ジャニーヌも失い、孤立無援の彼は独力でもう1人の自分を探そうと決意する…。

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ナチスによるユダヤ人の迫害を、市井の目線からリアルに描いた作品であり、一種の反戦映画と考えられます。ですが、ただシリアスなだけの内容でなく、主人公が全くの別人に間違われることが悲劇の発端となるというアイデアが、一捻りしてあって大変面白いわけです。“面白い”といってしまっては語弊があるでしょうが、そのアイデアがサスペンス映画としての今作の側面もブラッシュアップし、映像の緊張感が途切れないばかりか、主人公の遭遇する理不尽な悲劇…ひいてはナチスの非人道的な行動…をより強調しているのですね。訴えたいテーマやモラルを、そのまま丸ごと観客に差し出すのではなく、サスペンスというエンターテイメントを纏わせてより暗示的に映像に昇華させる手法。昨今では主流になっている“社会派サスペンス映画”のカテゴリーの中でも、今作は、テーマ性と娯楽性がうまく融合し、双方が互いに切磋琢磨された作品として上位に位置すると思われます。

また、今作のモチーフである“アイデンティティーの誤解”は、コンピューターによって厳しく管理・監視される現在の社会構造の中でも、充分に起こりうることだと思います。というより、現在の社会の中でこそ一層身近に感じられる恐怖ではないでしょうかね。コンピューターは万能ではありませんし、世界中から集められた個人情報を管理するのは、私たちと同じ人間なのですしね。

ともあれ、チャンスがあれば、ぜひご覧になってみてください。アラン・ドロンの力演も見事。ロージー監督がこれまでに蓄積してきた映像テクニックも堪能できます。そしてなにより、最後のシーンは今観てもかなり衝撃を受けます。主人公と共に憔悴の一途を辿っていたストーリーが、最後の最後にわずかに残った希望と共に打ち砕かれていきます。泥炭のごとき重く苦々しい余韻が後を引く今作、記憶に残る作品だと思いますよ…。




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