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zoom RSS 父性の役割と「とうさんはタツノオトシゴMr. Seahorse」―エリック・カール

<<   作成日時 : 2016/11/12 22:10   >>

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「とうさんはタツノオトシゴ Mister Seahorse」
エリック・カール Eric Carle/作
さの ようこ/訳 (偕成社刊行)

タツノオトシゴのかあさんは、ある日たまごを産みました。とうさんは、そのたまごをおなかのポケットの中に大切にしまいます。赤ちゃんが生まれてくるまで、とうさんはたった1人でたまごを守るのです。
ゆらゆら大海原を漂いながら、とうさんはいろいろな魚に出会います。

トランペットそっくりのヘラヤガラ
1人でたまごの巣を守るトゲウオくん
ライオンみたいなミノカサゴ
口の中にたまごを入れて守るティラピアくん
木の葉っぱそっくりのコノハウオ
頭の上にたまごを乗せて守るコモリウオくん
でっかい岩のようなオニダルマオコゼ
おなかにたまごを貼り付けて守るヨウジウオくん
生まれたばかりの小さな赤ちゃんをたくさん従えたナマズくん…

そして、タツノオトシゴのとうさんにも、とうとう新しい命が生まれるときがきました。おなかのポケットから、小さな小さなタツノオトシゴたちが次々転がり落ち、大きな大きな海原へと漂い出ていきます。
「きみたちは、もう立派なタツノオトシゴなんだよ」

とうさんはタツノオトシゴ
偕成社
エリック カール

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アメリカ、ニューヨーク州出身の絵本作家エリック・カールは、元々はグラフィック・デザイナーとして活躍していました。1968年に上梓した絵本「1、2、 3 どうぶつえんへ」と1969年出版の「はらぺこあおむし」で、世界各国の賞を受賞したことから、絵本作家としての評価が高まります。1971年からは絵本制作に専念し、様々な仕掛けを施した独特の作品を発表し続けています。1985年には来日し、日本のファンにも馴染み深い存在となりました。祖国アメリカでも“絵本の魔術師”とあだ名され、鮮やかな色彩をコラージュする手法に幅広い層からの支持を集めています。2002年にはボストンに“エリック・カール美術館”が建設され、たくさんのファンが足を運んでいるそうです。彼が今までに発表した作品は40作を超え、出版部数は世界中で2500万部を突破しているとか。日本では邦訳は全て偕成社から刊行されていますね。エリック・カールの公式サイトはこちら。今までに出版された作品のイメージ、カールが絵本を制作している様子、制作スタジオ内の模様、はたまたカールの子供の頃の写真や友人たちの写真、エリック・カール美術館内に展示されている作品など、貴重な画像の数々を見ることが出来ます。カールの作品自体がカラフルな色使いのものばかりですので、このサイトも、全体的にユーモラスでキュートな感じに仕上がっていますね。
エリック・カール独特の絵世界は、この「とうさんはタツノオトシゴ」でも健在で、非常にポップ。ページをめくるごとに、海藻や岩の絵を描き込んだ透明なシートの中に、別の魚が隠れています。“いないいないばあ”の遊び感覚でページを読み進む楽しみがありますね。また、タツノオトシゴのなんともいえないユーモラスな造形と、切り絵で作られた魚たちのユニークな姿が、とぼけた雰囲気を醸しだしています。

タツノオトシゴは、雌が産み雄が受精させた卵を、雄のほうが守るという珍しい習性を持ちます。たいていの魚は、受精卵はそのまんまほったらかしであるのが常ですが、タツノオトシゴは違うんですね。この絵本には他にも、涙ぐましい努力で卵を守るとうさん魚たちが出てきます。ある者は巣を作って卵を守り、またある者は口の中に卵を入れて…。人間の親ですら満足に自分の子供を守れなくなっている昨今、その姿にはなんだか頭が下がる気もしますね。
魚の世界には、こんなにも育児に参加する(笑)お父さんたちがいるのですよ。しかも誰に強制されたわけでもなく、それが彼らにとって自然の摂理。卵を守るためとあらば、身体を張るのが当たり前なのですね。それに比べ、人間の世界はどうか。世のお父さんたちは積極的に育児に関わりたくとも、社会がそれを許さない風潮があります。“男性が育児休暇を取ることが当然”という社会になることが、ひいては出生率低下を防ぐことにもつながっていくと思うのですがねえ。単純に比較するのはナンセンスかもしれませんが、こと法制度の面に関しては、欧米諸国に比べて日本の子育てを巡る環境は、あまり誇れるものとは言い難いでしょう。
おまけに核家族化が進み、昔のような大家族みんなで代わる代わる下の子の世話をする、といった習慣も廃れてしまいました。“長屋的コミュニティー”とでもいうべき、近所に住む家族同士が協力して育児を助け合うという習慣も然り。我が家もそうですが、大きなマンションに住んでいますとね、小さい子供を抱えてママさん同志のお付き合いに参加することすら難しい場合もあります。もちろん、同年代の子供を持つ親同士で連携を持つという方法もありますが、元々核家族それぞれの生活のリズムが異なるわけで、やはり昔のように気安く育児を助け合える状況ではないというのが実情です。時代と共に家族の形態が変化すれば、子育てを巡る環境も変わって当然。今更核家族をなくすことなど不可能ですから、今現在母親1人にのしかかっている子育ての負担を軽減するためには、核家族内である程度はなんとかしなければいけないのですね。
とはいうものの、この厳しい経済事情の中、お父さんたちに育児休暇をとれとか、たまの休みの日ぐらいきっちり家族サービスをしろなどとは(笑)、大きな声では言えませんよねえ?だからこそ余計に、この本をお父さん方に読んでいただきたいのですよ。
タツノオトシゴのとうさんは、途中で出会うとうさん魚たち1匹1匹に、激励とねぎらいの言葉をかけていきます。

「がんばってくれたまえ」
「かんしん、かんしん」
「なかなかすてきだよ」

画像

この作品は、タツノオトシゴのとうさんと、卵を守るとうさん魚たちとの微笑ましい触れあいを描いて、家族のためにがんばる全てのお父さんたちへ贈られたエールなのでしょう。そしてその背後には、エリック・カールの人間性に向ける優しいまなざしが感じ取れるのです。




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