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zoom RSS 名作に見る人間心理―「からすのパンやさん Mr. Crow's Bakery」

<<   作成日時 : 2016/05/14 00:04   >>

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からすのパンやさん (かこさとしおはなしのほん (7))
偕成社
加古 里子

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「からすのパンやさん」
かこ さとし:文と絵 (偕成者刊)

いずみがもりはからすの町。たくさんの木が生えている森です。
くろもじ三丁目の角の中くらいの木に、からすのパンやさんのお店がありました。
そこでは、つい先ごろ四羽の赤ちゃんが生まれたばかり。赤ちゃん達は揃って元気でしたが、みな身体の色が黒ではありませんでした。それでもからすのお父さんとお母さんはうれしくて、白色の子にはオモチちゃん、黄色い子にはレモンちゃん、赤色の子にはリンゴちゃん、茶色の子にはチョコちゃんという名前をつけました。
パンやのお父さんは、朝早くから起きてパンを焼く準備をしなければいけません。でも赤ちゃん達が泣き出すと、飛んでいってあやしたりするものですから、黒こげパンやら生焼けパンをこさえてしまいました。パンやのお母さんも、お店を掃除してきれいにします。でも赤ちゃん達が泣きだすと、飛んでいっておっぱいを飲ませたりおしめを取り替えたりするので、時々お客さんを待たせたり、お店が汚れたままになってきました。からすのパンやには、次第にお客さんが来なくなりました。
お客さんが減り、店が貧乏になっても、オモチちゃんもレモンちゃんもリンゴちゃんもチョコちゃんも、すくすく元気に成長していきました。やんちゃな4羽の面倒を見つつ、からすのお父さんとお母さんは一生懸命パンを焼いて働きました。子供たちへの毎日のおやつは、売れない黒こげパンや生焼けパンです。すると、他のからすの子供たちがそのおやつパンに興味津々。お店にパンをたくさん買いに来ることになりました。そこで、4羽の子供達はお父さんとお母さんを手伝って、みなで力を合わせてパンを焼きました。ほかほか、こんがり、なんともおいしそうないろいろな形のパンができました。
次の日大勢の子供たちがお店にやってきました。パンはたちまち売り切れ。小さなお客さんたちが帰っていくと、からすのパンやさんは早速お店を隅から隅まできれいにしました。そして、とっても素敵な変わった形の楽しいパンを、どっさりこんと焼きました。香ばしい匂いが森いっぱいに広がると、からすの子供達は我先にとパンやさん目がけて飛び立ちます。その騒々しい物音に、寝ぼけたサイチどんが起き出しました。焼きたてパンの売り出しの知らせに、大きな入れ物をもって飛び出します。それを見たあわてんぼのゴロベエどんは、“パンやの店が焼けた”とばかりに勘違いし、消防署に電話をかけてしまいました。
早速消防署がやってきます。
救急車も飛んできます。
ついでに武装警官の一連隊も駆けつけます。
いずみがもりの空はてんやわんやの大騒ぎ。火事を一目見物しようと、森中のからす達がみんなパンや目がけて飛んできたのです。パンやさんは上を下への大騒ぎとなりました…。


絵本「からすのパンやさん」のパンをつくろう!―Have Fun With Bread!
文化出版局
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絵本の作者あとがきによると、このお話のベースになったのは1951年、かこ氏の先輩に当たる方の結婚を祝って制作した手作り絵本だそうです。その後、いろいろな場所で子供達に読み聞かせのテキストとして取り上げられていくうち、ストーリーが練り上げられていったもののようですね。絵本の初版は1973年、現在までに300を超える版数を数えています。このお話がいかに多くの子供達に愛されたかがわかりますね。

かこ氏自身は、この作品に登場する個性豊かなからす達のインスピレーションを、ロシアのモイセーエフ舞踏団の演目「パルチザン」から得たと述懐しておられます。戦闘に疲れたパルチザンの行進を描いた作品だそうですが、兵士や農民、労働者から老若男女に至るまで、個々の人物の表情が実に躍動感に溢れ、豊かなのだそうです。なるほど、この絵本には膨大な数のからすが登場しますが、一羽一羽、異なる個性を与えられて多彩ですよね。

焼きたてパンを買おうと、まずはからすの子供達が飛び立ち、次にそれを見たサイチどんが飛び出し、お次はゴロベエどんの勘違いのせいで消防隊、救急隊、警官隊まで飛んできてしまいます。しまいには、物見高い野次馬連中が一斉にパンや目がけて集まり、個々のからすが大きな一集団に膨れ上がっていく過程は壮観です。と同時に、一羽一羽異なる考えと個性を持っていたはずのからす達が、不確かな情報に踊らされた挙句、大きなひとつの集団と化して同じ思考に突き進んでいく恐ろしさも感じますね。わが息子には、歌のようにリズム感の良いセンテンスが大受けでしたが、集団ヒステリーはこんな風にして生まれるものかもしれないと思うと、親としてはちょっと複雑な心境でしたねえ。

ともあれ、一度は収拾がつかないほどに混乱したからす達も、パンやのお父さんの機転で見事落ち着きを取り戻します。それがパンやの末永い繁盛に繋がるのですから、ストーリーの起承転結も、なかなかに粋な運びですね。ぜひ手にとって確かめてみてください。

物語前半は、からすのお父さんとお母さんの子育て苦労譚になっており、今現在育児に苦闘中の親御さんには身につまされるお話ではないでしょうか(笑)。普通のからすとは違う色に生まれついた我が子を大きな愛情で包み、大事に慈しむ彼らの姿を見ていると、現在頻発する児童・幼児への虐待事件に暗澹たる気分になります。親は、我が子がどうであれ、ありのままの姿を受け入れて愛するべきである。今の私たちは、こんなごくごく当たり前のことすら思うようにできない状態であるのですね。立派に成長した子供たちと一緒にパンを焼き、店を再び盛り立てていくからすの両親を見るにつけ、親となった我が身の在り様を振り返らずにいられません。

さて、長男にこの本を読んでいたとき、彼のお気に入りとなったページがあります。からす親子が焼き上げる個性豊かなパンの数々ですね。実においしそうな黄金色に染まった、変わった形のパンは、見るからに子供が好みそうなものばかり。長男はこのページにさしかかると、必ず本読みをストップさせて、自分が食べてみたいパンを選んでいましたね。てんとうむしパンだの、ひこうきパンだの、その日によって欲しいパンは異なるようでした。毎日の食事をおいしくいただくには、いつもとはちょっと目先を変えた面白い趣向を試みてみるのも効果的なのでしょうね。まあ、料理担当の母親にしてみれば、毎日毎日そうそう手の込んだことをしていられないわっ!ということですが(笑)。
読み聞かせは4歳ぐらいからがいいでしょうね。文字数が結構多いのですが、読み進めていくうち、歌を歌うように内容を暗唱できるようになります。小学校の低学年ぐらいまでは充分楽しめる内容だと思いますよ。

ところで、この作品は英訳もされています。

Mr.Crow’s Bakery―からすのパンやさん(英語版) (R.I.C.Story Chest)
アールアイシー出版
加古 里子

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「Mr. Crow's Bakery―からすのパンやさん」(英語版)
あの、リズムのよいセンテンスは英語に翻訳しやすいのでしょうね。単語や文法は平易ですので、お子様の英語教育のテキストにもできますよ。


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