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zoom RSS 愛しい人が眠るまで―アンソニー・ミンゲラ Anthony Minghella

<<   作成日時 : 2015/10/30 08:22   >>

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「イングリッシュ・ペイシェント The English Patient」。アンソニー・ミンゲラ監督の作品の中では最も好きなものです。人が一生の中で経験するあらゆる感情が、この1作の中に凝縮されているような気がしますね。題材の性格からして、おそらく若い人たちには理解できない類のお話でしょうが、ある程度年齢を経、人生の苦味を知った上で観ると、映像の行間からあふれ出てくる感情のマグマに圧倒されてしまうのです。


「イングリッシュ・ペイシェント」等で知られる映画監督・脚本家のアンソニー・ミンゲラ氏が2008年3月18日、ロンドンのチャリングクロス病院で死去しました。享年54歳。氏はへんとう腺と頸部のガンの除去手術を受け、手術そのものは成功したそうなのですが、術後の合併症が原因で亡くなったようです。まだ54歳という若さであり、これからもっと多くの監督作を観たかった映画作家だっただけに、その早すぎる死が悔やまれてなりません。


“愛情だけが人を救済する Only love relieves us from the pain.”

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アンソニー・ミンゲラ Anthony Minghella

1954年1月6日生まれ
2008年3月18日没
英国ワイト島出身

アイスクリーム工場を経営するイタリア人の両親の元に生まれる。北ヨークシャー州のハル大学を卒業後、戯曲を書く傍ら同大学の講師として働いた。1984年には、 London Theater Critics Awardのその年の最も有望な新人に与えられる賞を獲得し、その2年後、1986年には“Made In Bangkok”で最優秀戯曲賞を得た。
演劇界で快調なキャリアをスタートさせた後、テレビ界にも進出。いくつかのテレビ・シリーズに脚本家として参加した。中には、ジム・ヘンソン製作による「ストーリーテラー」シリーズや、ショーン・ビーンも出演経験がある英国の人気ミステリー・シリーズ「モース警部」なども含まれている。1990年の「愛しい人が眠るまで」で、脚本兼任で念願の監督デビューを果たした。後の映画界での活躍は周知の通り。レイフ・ファインズ、クリスティン・スコット=トーマス、ジュリエット・ビノシュの奇跡の三位一体を実現した「イングリッシュ・ペイシェント」(1996 年)で、アカデミー賞9部門を制覇して興行的にも大成功を収め、押しも押されぬ巨匠の地位を獲得した。
マット・デイモンとジュード・ローという豪華な顔合わせで製作された、「太陽がいっぱい」のリメイク「リプリー」(1999年)では、パトリシア・ハイスミスの原作のイメージにより忠実な作品になったという評価を得た。この作品で出会ったジュード・ローとは、その後「コールド マウンテン」と「こわれゆく世界の中で」の2作品でタッグを組み、 “愛の贖罪”をテーマとしたドラマを展開することになる。劇作家としてキャリアをスタートさせ、自身の監督作でも脚本を手がけてきた人物らしく、登場する人物の細やかな内面描写に特徴がある。また“愛情”をテーマにした濃密な人間ドラマを、“ストーリーテラー”のあだ名に恥じぬ筆捌きで脚本に織り込む名手でもあった。
2003年には英国映画協会の会長に就任し、シドニー・ポラック監督と共同で製作会社“ミラージュ・エンタープライズ”を立ち上げた。ジョージ・クルーニーがオスカーにノミネートされて話題になった「フィクサー」や、レイフ・ファインズとニコール・キッドマンが共演する予定であった (後にケイト・ウィンスレットに交替)「朗読者」の製作を担当するなど、精力的に活動していた矢先の訃報だけに、関係者やファンの受けたショックは大きい。
私生活では、「愛しい人が眠るまで」に起用した女優キャロリン・チョアと結婚、息子マックスと娘ハンナをもうけた。兄弟のEdanaと Dominicは同じく脚本家であり、息子マックスは俳優になり「綴り字のシーズン」や「シリアナ」等に出演している。また娘ハンナは「リプリー」でスタッフとして働くなど、ショービジネス一家でもある。
ミンゲラが演出した俳優達―レイフ・ファインズ、ジュード・ロー、レネ・ゼルウィガー、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・スコット=トーマス―がことごとくオスカー・ノミネーションの栄誉に浴していることからも伺えるように(彼らのうちビノシュとゼルウィガーは助演女優賞を獲得した)、彼は個々の俳優の演技プロセスそれぞれに最大限の理解を示していた。俳優に監督の演出を強制するのではなく、彼らの個性を尊重した上で、その最高の瞬間を逸せず作品にフィードバックする勇気の持ち主であったのだ。鋭敏な感性を以って俳優達を観察していなければ、到底できない芸当である。従って、力量のある俳優達からの信頼感は特に厚かったという。

●フィルモグラフィー


2010年『Margaret』製作総指揮
2008年『Ninth』脚本
2009年『New York, I Love You』監督&脚本
2009年『Bucco Blanco』製作総指揮
2008年『The No. 1 Ladies Detective Agency』(TVシリーズ)監督&製作総指揮&脚本
2008年「愛を読むひと」製作
2008年『Love You More』製作
2007年「フィクサー」製作総指揮  
2006年「輝く夜明けに向かって」製作  
2006年「こわれゆく世界の中で」監督&製作&脚本  
2005年「ザ・インタープリター」製作総指揮  
2003年「コールド マウンテン」監督&脚本  
2002年「ヘヴン」製作総指揮  
2002年「愛の落日」製作総指揮
2001年「アイリス」製作総指揮
2000年『Play』監督 
1999年「リプリー」監督&脚本
1996年「イングリッシュ・ペイシェント」監督&脚本
1993年「最高の恋人」監督
1990年「愛しい人が眠るまで」監督&脚本
1987年〜1990年「モース警部」(TVシリーズ)脚本
1990年「ジム・ヘンソンの新ストーリーテラー」(TVミニ・シリーズ)脚本
1989年『Smith and Jones in Small Doses』(TVシリーズ)脚本
1989年『Living with Dinosaurs』(TVムービー)脚本
1988年「ジム・ヘンソンのストーリーテラー」(TVシリーズ)脚本
1986年『Boon』(TVシリーズ)脚本
1985年『Grange Hill』(TVシリーズ、8エピソードを担当)脚本
1985年『What If It's Raining』(TVムービー)脚本
1981年『Maybury』(TVシリーズ)脚本

奇をてらわないオーソドックスに徹した演出、人間同士の関係性に焦点を絞った複雑で繊細な心理ドラマ、先を急がないゆったりとしたテンポの作風。ミンゲラ監督のフィルモグラフィーには、ハリウッド製のジェットコースタームービーに慣れた観客の眠気を誘うような作品が並びます。
しかし、かつてデイヴィッド・リーン監督を産んだ英国映画の土壌は、その系譜に立つ優れた映画作家を輩出しました。ミンゲラ監督は、映画という概念が根本から揺らぎ始めた現代において、頑固に古き良き時代の映画スタイルを守っていたと思います。彼の関心は常に人間の心の機微に向けられ、愚かで不安定な存在の人間が“愛”を中心に織り成す、時に不条理なドラマを活写し続けました。それはあたかも、愛情による魂の救済、あるいは原罪の贖いを、フィルムの上に見出そうとする行為のようにも思えてきます。
2003年から英国映画協会の会長を務めていたミンゲラ監督、この役職がなかなかの難物だったそうで、生前の彼の映画製作に多大な犠牲を強いたとか。脚本を書く時間もメガホンを持つ時間も奪われてしまい、“ジュード・ローを主演に考えていた企画に集中できない”と嘆いていたそうです。残念ですね。

できれば今後も、その熟練された観察者のまなざしで、ストーリー、演技、音楽の幸福で完全な調和を映画に刻んで欲しかったです。


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