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zoom RSS 「ごちゃまぜカメレオン The Mixed-up Chameleon」―エリック・カール

<<   作成日時 : 2015/12/10 15:30   >>

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"常に君を何か別のものに仕立てあげようとする世界では、ただありのままの君でいることこそが、最大の成果なんだ。 To be yourself in a world that is constantly trying to make you something else is the greatest accomplishment" ラルフ・ウォルド・エマーソン Ralph Waldo Emerson

画像

Just the way you are!


「ごちゃまぜカメレオン The Mixed-up Chameleon」
エリック・カール Eric Carle:文と絵 八木田宜子:訳
(ほるぷ出版刊行)

小さな緑色のカメレオンは、周りに合わせて体の色を変えることができます。ご機嫌の時はつやつやした緑色。不機嫌なときはくすんだ色。お腹がすくと、獲物のハエに向かって長ーい舌をひゅーっと出し、あっという間に食べてしまいます。
カメレオンは、なんということもなく平凡な毎日を送っていました。ところがある日、暇つぶしに丘の下にある動物園を見おろしてみると、そこには色とりどりの美しい動物たちがたくさんいたのです。
カメレオンはため息をついて言いました。「ホッキョクグマみたいになれたらかっこいいのに!」
すると、カメレオンの姿はホッキョクグマのように大きく真っ白になりました。

「いやいや、フラミンゴみたいにきれいになりたいぞ」
すると、カメレオンに、フラミンゴそっくりのピンクの羽と長い足が生えました。

「キツネみたいにスマートになりたい」
すると、カメレオンのおしりにキツネのふさふさした尻尾が生えました。

「お魚みたいになれたら泳げるのに!」
すると、カメレオンの体にはヒレがつきました。

「シカみたいになれたら早く走れるぞ」
すると、カメレオンの頭に大きなシカの角が生えました。

「キリンみたいになれたら、遠くまで見えるのに」
すると、カメレオンの首はキリンのように長ーく黄色になりました。

「カメみたいになれたら、甲羅に隠れられるよ」
すると、カメレオンの背中にカメの甲羅ができました。

「ゾウは一番強いぞう!」
すると、カメレオンの顔に長いゾウの鼻が生え、大きな耳がつきました。

「アシカになれたら、芸当ができるぞ!」
すると、カメレオンにアシカの足が生えました。

そのとき、2人連れの人間の姿がカメレオンの目にとまりました。
「あっ!あの人間みたいになれたら…」
たちまちカメレオンはシルクハットを被り、日傘を差しておりました。
カメレオンはハエを見つけました。お腹はぺこぺこです。でも体中に余分なものがくっついているために、自分の舌を出すことができません。
「ああ、いつもの姿になれたらハエが食べられるのに!」
そのとたん、カメレオンはいつもの姿に戻っていました。ハエはどうしたかって?もちろんお腹の中に入りましたよ!


ごちゃまぜカメレオン 塗り絵本
偕成社
エリック カール

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真っ白な画用紙に、子供たちがクレヨンで自由気ままに絵を描くこと。

この作品は、従来のエリック・カールのカラフルな色使いの楽しさ、素朴な切り絵風イラストの面白さという魅力以上に、その発想の豊かさに感心させられます。絵本冒頭で、自身の娘へ献辞が寄せられていますが、まさしくこれは彼が娘さんと一緒に作り上げた作品なのでしょう。子供がクレヨンで描いたような造形のカメレオン君が、周りに合わせていろんな色に変化していく愛嬌もさることながら、彼が食べようとするハエだけが妙に写実的なのも可笑しい。
また、初めて目にした動物園の動物たちの美しさと多彩さに感動し、あんな風になりたいとカメレオン君が願ってしまうのも、子供が初めて動物園に入ったときの感動の大きさを表現して余りあります。きっとうちの息子達も、初めて動物園に連れて行ったときに味わった感動は、この絵本のカメレオン君と同じぐらい大きなものだったのでしょうね。

さてさて、ここからがこの絵本の最も奇想天外な部分です。

このカメレオン君、変えられるのは身体の色だけではなかったようですね(笑)。ホッキョクグマになりたいと願えばその通りに真っ白な身体になり、フラミンゴみたいになりたいと願えばその通りにピンクの羽と足が生えてきたり。カメレオン君は、あんな風になりたいこんな風になりたいと欲張っているうちに、見たこともないすさまじい生き物に変貌してしまいました。さながら、周囲の環境に合わせて進化を続けてきた地球上のすべての生物の進化の過程を、一気に辿ったような壮観さ(笑)!そうですね、うちの長男も画用紙に絵を描かせると、いつのまにかティラノサウルスとアノマロカリスとプテラノドンが合体したような、どえらいモンスターができあがるのですよ。本人曰く、“地上で最強の生き物(鼻息)!”なんだそうです(笑)。それと同じような発想が、この作品の原動力となっています。こういうアイデアって、大人の感性ではなかなか思いつかないもの。やはり、カール氏が子供の目線を通して制作した作品だからこそでしょうね。
しかしながら、その“地上で最強の生き物”も、そんな姿ではハエ1匹捕らえることができません。カメレオン最大の武器である長い舌が出せないのですからね!そこでカメレオン君、ついもとの姿に戻りたいと願ってしまいます。“あんなふうになりたい”“こんなふうになれたら…”という変身願望は、現状に不満を持っている人間なら誰しもが普遍的に持ちえる欲望です。しかしだからといって、その理想の対象になれたとして、果たして願った通りに幸せになれるものでしょうかね。元の姿に戻ったカメレオン君が、最後に見せる満足そうな緑色。結局これは、他者になりかわることが必ずしもいい経験だというわけではなく、あなたが憧れている対象も、それなりに苦労や問題を抱えているものだということを示唆しています。今あるありのままの自分を大切にしようというメッセージが読み取れる、これは素晴らしい作品ではないでしょうか。

実はこの絵本を改めてしみじみ眺めていて、以前記事にした映画「メゾン・ド・ヒミコ」のことを思い出していました。この映画は、異なる世界に生きる者同士が、葛藤の末にお互いの存在を認識し、敬意を持って接するようになるまでの過程を追ったものです。それぞれが属する世界を、完全に混ぜ合わせてしまうことは残念ながら不可能ですが、少なくともちょっとでも近寄せることはできるという希望も提示されていました。

「ごちゃまぜカメレオン」のカメレオン君は、今自分がいる境遇に倦み、なにか違うものになりたいと願います。ちょうど、「メゾン・ド・ヒミコ」のヒロイン沙織が、己の不幸に飽き飽きしてつい魔が差し、縁を切ったはずの父の世界に引き寄せられてしまうのと似てますよね。なにか違うものになれれば、今の自分を変えられるかもしれないと考えたわけです。確かに、長い人生において、そういう決断を下さねばならなくなる瞬間は何度かあるものですよね。で、決断を下したカメレオン君は、自分にないもので他者が持ち得るもの全てを、一度は手に入れました。でもその結果、その姿は本来彼が憧れ、夢みていた姿とはかけ離れた、グロテスクなものになってしまったのです。今の世の中、自身の欲望に貪欲に生きるエゴイスティックな人間が多いですが、彼らの哀れな末路を見せられているようで皮肉です。

人間は幸せに生きたいと願うために、幸せを“追求する”生き物ですよね。でも「メゾン・ド・ヒミコ」の沙織は、“追及”を続けた結果どうなったでしょう。彼女は、最終的にありのままの自分を受け入れることで、ようやく反目していた父を許し、受け入れることができました。まず、良いところも悪いところも全てひっくるめて自分というものを受け入れてやらねば、他者の存在を理解したり受け入れることなどできないというわけです。つまり幸せとは、どこか別の場所に“追及する”ものではなく、今ここに生きてある境遇に感謝することなのでしょう。カメレオン君も最後には、小さなカメレオンでいられる幸せが一番なのだと感じたに違いありません。そしてこの絵本を手に取れば、きっとあなたも子供のように画用紙になにか描きたくなることでしょう。そこに描かれるのは、まぎれもなく、今のあなた自身の“幸せ”であるはずです。

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