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<<   作成日時 : 2016/04/07 23:20   >>

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早く書いておかないといけませんねえ…。肝心の感想記事ではないのですよ、ごめんししゃい。


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「イースタン・プロミス Eastern Promises」(2007年製作)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ David Cronenberg
製作:ポール・ウェブスター&ロバート・ラントス
脚本:スティーヴ・ナイト
撮影:ピーター・サシツキー
プロダクションデザイン:キャロル・スピア
衣装デザイン:デニース・クローネンバーグ
編集:ロナルド・サンダース
音楽:ハワード・ショア
出演:ヴィゴ・モーテンセン(ニコライ)
ナオミ・ワッツ(アンナ)
ヴァンサン・カッセル(キリル)
アーミン・ミューラー=スタール(セミオン)
イエジー・スコリモフスキー(ステパン)
シニード・キューザック (ヘレン)
サラ=ジャンヌ・ラブロッセ(タチアナ)他。


クローネンバーグ監督の「イースタン・プロミス Eastern Promises」。

本編を鑑賞してから早幾星霜。

…でもいまだに詳しいレビュー記事を書けていないの。ごめんなさい。

おそらく、クローネンバーグ監督のフィルモグラフィーの中では、今作は「ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス A History of Violence」に続いてポピュラーな作品と位置づけられることだと思います。グロ描写もものすごく抑え目にしてありますし (笑)。舞台もいつものトロントではなく、完全ロンドン・ロケによって製作が進められました。取り上げる世界は、科学でもジャンキー作家でもなく、衝突事故でも統合失調症でもありません。なんと、ロンドンの裏社会に巣食うロシアン・マフィア。一族の結束を命よりも重んじるという、仁義なきノワール映画です。おそらく観客層も、ヴィゴのファンだからということでご覧になった方の割合がほとんどでしょう。

今作については、日本でも多くの場合好意的な評価を目にします。ありがたいことです。役者陣の好演や、ロケ地となったロンドンのバックアップにも支えられ、監督の鋭利に研ぎ澄まされた演出がひときわ光っていたように感じました。脚本はスティーヴン・ナイト(「堕天使のパスポート」)で、ストーリーも余分な贅肉を排除しつつ、うねりのある上質なものでしたね。物語のキーポイントとなる売春婦タチアナの残した日記の扱いもうまい。それを本人がたどたどしい英語で朗読するナレーションを背後に流すことで、事件の背景と哀しみを如実に表現していて秀逸でした。

ヴィゴ演じる謎の男ニコライの正体に関して、やや禁じ手ではないかという意見もあるようですが、それはサスペンスの質が落ちることを意味しません。きちんと張られた伏線に対しての回答、それがさらに物語の余韻を醸造するという、良質のサスペンス映画の基本はしっかり押さえてあったように思います。しかしながら、この作品の本質はノワール部分ではなく、やはり登場人物それぞれの葛藤する、さらに錯綜する心理ドラマでしょう。そして主人公は、クローネンバーグのこれまでの映画同様、絶対的孤独から抜け出ることは叶わないのです。

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彼の信者になって、早30年の月日が経過しますが、今作を観た後の第一印象は、クローネンバーグも随分変わったなあというのが正直なところでした。悪い意味ではありません。人間、いつまでも同じ場所に立ち尽くすわけにはいきませんし、なんなりと前進しなければ。その意味で、クローネンバーグは、素晴らしい前進を続けていると思うのです。

私が驚いたのは、取り上げる題材が変わったということです。ホラーからサスペンスに転向しただけじゃん、というなかれ。視点が変わったという意味なんですよ。今までのクローネンバーグは、自身と他者とのつながりを非常にミニマムな視点で…乱暴に言ってしまえば己の主観のみで描いていたのです。物語の主人公はクローネンバーグのアルターエゴであり、そのアルターエゴが体験する全てはクローネンバーグの願望、妄想、恐怖を意味していました。アルターエゴと社会との接点は、ごく狭い範囲内でのみ必要最小限に描出されます。おそらくそれは、アルターエゴの絶対的孤独を強調するための意図であったのでしょう。

ところが、「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」以降、アルターエゴと社会との関連性が作品の前面に出てくるようになりました。アルターエゴの孤独以上に、その周囲との関係性が重要視されてきたというか。「ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス」のDVD特典映像で、長年クローネンバーグの撮影監督を務めているピーター・サシツキーが証言していましたが、この頃からクローネンバーグ自身、メガホンを取る際の態度が随分変わったというのですね。私の想像なんですが、この辺りで彼は自分の殻の中に閉じこもるのをやめたのではないでしょうか(笑)。映画の世界においてある意味達観してしまったというのか、己の立ち位置を悟ったというか…(笑)。肩の力がいい感じで抜けた分、対象となる人間と人間の関係性に、よりリアルな質感が加わるようになったのではないかなと。複数の人間ドラマを紡ぐには、監督の視点はより広く高い位置になくてはなりません。あるひとつの視点に固執するのをやめたクローネンバーグの元に、普遍的なストーリーが引き寄せられるようになったのも、多分自然な流れだったのでしょうね。

しかし。

クローネンバーグの追及する“肉体の変容”という大命題は、今作も健在でありました。

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“刺青”でございます。うーん、思わずニヤリとしてしまいましたですよ〜。刺青ときたか。なるほどね。刺青とは、ある種の人間にとっては人生を語り、その人間の存在証明そのものであるわけです。しかして、それを逆用すれば…?人間はいくらでも偽りの存在を演出できるわけですよね。ですが、“偽り”だと思っていたものが、刺青によって逆に“真実”に取って代わられてしまったら…。未見の方は、ニコライが最後に見せる表情に注目しましょう。彼は今現在偽りの存在であるのか、それとも真実の存在であるのか。彼自身、わからなくなってしまったのかもしれません。こういった自己認識の混濁こそ、クローネンバーグ映画が営々と紡いできた大きなテーマなのです。

演技面で目立ったのは、ロシアン・マフィアの大ボス、セミオンのバカ息子キリルを演じたヴァンサン・カッセルですな。情緒不安定でアホだけど、放ってはおけないような、なにかしら惹きつけるものを持っている男を見事に演じていました。儲け役ですな。
ヒロイン、アンナもノーメークっぽくて、厳しい仕事に従事する職業婦人という印象が強く、大変いい感じです。この作品を観て思ったのですが、ナオミ・ワッツは化粧してはいけませんね(笑)。綺麗にメイクすると、却って地味になってしまう。
アンナの叔父さん、ステパンを演じたイエジー・スコリモフスキー Jerzy Skolimowskiはポーランド出身の偉大なる映画監督で、三大映画祭全てで受賞した経験を持つ生ける伝説。押し出しの強さとカリスマ的な存在感を生かして、俳優としての出演作も多く、あの「アベンジャーズ Avengers」にもゲスト出演していたのですが、気付いた方はおられますかね(笑)。彼の出演に関しては、クローネンバーグのたっての希望だったそうですよ。頑固で時にストレートな物言いがトラブルを引き起こすものの、憎めないおっさんを味わい深く好演していました。おっさん対決では、セミオン役のアーミン・ミューラー=スタール(大好き!)と互角の勝負。もちろん、両者が直接対峙するシーンはないのですが、お2人とも短い出番ながら素晴らしいオーラを放っていましたねえ。おぢさん好きにはたまりません。
そして、ヴィゴ。彼のためにニコライという役があつらえられたのかと勘違いするほど、ぴったりとキャラクターにハマっていました。なにも言うことはございません。

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「イースタン・プロミス」の音楽は、クローネンバーグとは名コンビであるハワード・ショアですね。バイオリンをメインとした、美しい、でもでしゃばり過ぎない抑制の効いたスコアは健在です。劇中、ロシアの民謡を歌う歌手が登場するシーンがあります。この歌手がまた朗々とした美声で、東欧独特の哀感溢れるメロディーを歌い上げてくれるのですよ。日本人のもつ繊細な感性に直に響いてきます。顔はブルース・ディッキンソンみたいなんですけど(笑)、無駄にさらさらの金髪ヘアー(しかもロングのストレート)が目を引く方でした…。顔のアップが続いて、なんだかやたらフィーチャーされていたような気もします(笑)。案の定、私も非常に気になる…。誰かしらあれ。



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第51回を迎えるロンドン映画祭 The 51st London Film Festivalでオープニング上映作品に選ばれた「イースタン・プロミセズ Eastern Promises」。英国の雑誌Sight&Soundが、クローネンバーグ監督へのインタビュー記事を掲載していました。

「イースタン・プロミセズ」にかける意気込みやら、メインストリームのジャンルでの映画を作ることについての考えなど、かなり饒舌に語っています。また、ロシアの犯罪者が身体に施す刺青の意味、インタビュアーなら聞かずにおれないであろう(笑)、例のヴィゴの公衆浴場でのアクションシーン。ヴァンサン・カッセル扮するキリルが、実はヴィゴ扮するニコライと性的関係を持ちたいと願っていて(と監督は明言しています)、ニコライもそれを感じ取っていることなど。なかなか興味深い内容となっております。

そう、クローネンバーグ監督って元々よくしゃべる人なんですよ。映画監督にスポットライトを当てるシリーズ「ザ・ディレクターズ」でも、あのちょっと高めのソフトな声で立て板に水のごとくしゃべるしゃべる。
外見や製作する映画の内容から、変人で頑固者で無口というイメージを持たれがちなのですが、あにはからんや意外なほど気さくに何でも話す人です。ただし、“変人” で“頑固者”であるのは事実みたいですね。初期の作品「スキャナーズ」に主演したマイケル・アイアンサイドは、監督が見た夢の話に翻弄されたと告白してますし、「裸のランチ」主演のピーター・ウェラーは、自ら監督に売り込みに行くほどクローネンバーグ・ファンであるにもかかわらず、「彼はきまぐれで付き合い辛い男だ」とにべもなし。まあそれも、長年撮影監督としてクローネンバーグを支えてきたピーター・サシツキーの弁によれば、ここ数年で(キャリア低迷期ですね)監督も変わったということなのですが。

ヴィゴと監督の波長がとても合うということは、彼ら2人の間に似たような感覚があるのでしょうね。今後もさらにコラボレーション作品が生まれることを期待したいと思います。



さてヴィゴは、1993年製作、ダニー・キャノン Danny Cannon監督のデビュー作「プレイ・デッド The Young Americans」で、非情なるマフィア幹部を演じた経験があります。周囲に冷気を漂わせるごとくの、冷血な悪党ぶりは堂に入ったものでしたが、さて肝心の内容の方はいかがなものだったのでしょう。

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「プレイデッド The Young Americans」(1993年製作)
監督:ダニー・キャノン Danny Cannon
製作:ポール・トリビッツ&アリソン・オーウェン
製作総指揮: リチャード・N・グラッドスタイン他。
脚本:ダニー・キャノン&デヴィッド・ヒルトン
撮影:ヴァーノン・レイトン
音楽:デヴィッド・アーノルド
出演:ハーヴェイ・カイテル(ジョン・ハリス)
ヴィゴ・モーテンセン(カール・フレイザー)
イエイン・グレン(エドワード・フォスター)
キース・アレン(ジャック・ドイル)
クレイグ・ケリー(クリスチャン・オニール)
タンディ・ニュートン(レイチェル)他。

麻薬がらみの少年犯罪が横行するロンドン。最近“ヤング・アメリカンズ”と名乗るストリート・キッズたちによる残忍な殺人事件が頻発し、黒幕がどうやらアメリカ人のマフィアである可能性がでてきた。急遽ニューヨークからハリス刑事が呼び寄せられ、彼は現地の警察と協力して捜査を進めることに。だが、地元ロンドンの刑事は縄張り意識が強く、よそ者のハリスとは軋轢ばかり起こしていた。苦労しながらも、ハリスはある聡明な少年ジャックを囮にし、謎の組織に潜入させることに成功する。危険と隣り合わせの任務だったが、ジャックは持ち前の機転で何度も難を逃れ、やがて姿を現した黒幕フレイザーと接触するように。一方で、父子家庭に育ったものの、実の父親との関係はギクシャクしていたジャックは、次第にハリスを父親のように慕うようになる。 組織壊滅のため、なにより固い友情で結ばれたジャックのため、ハリスは一人で組織に乗り込み、フレイザーと直接対決するのだった。

ダニー・キャノンは、もともとアラン・パーカー監督にその才能を見込まれ、映画学校への入学を推薦されたそうです。卒業制作作品がデイヴィッド・リンチの絶賛を受け、一躍、25歳の新鋭は映画界から注目されるようになります。この作品は、彼の商業用映画デビュー作にあたります。

ロンドンの猥雑な夜の光景をクールに切り取った映像、核となるジャック少年とハリス刑事の擬似親子関係を、べとつかない微妙なさじ加減で表現する手際、少年犯罪の深刻化する現状をさりげなく問題提示する演出…。キャノン監督は、新人とは思えないほどタイトな作品を作り上げました。ハリスに扮したハーヴェイ・カイテルからは、いぶし銀の渋みと、犯罪撲滅に燃える熱さ、少年と対峙するときのいささか不器用な誠実さを引き出し、ジャック役のキース・アレンからは、実に自然に澄み切った演技を引き出した腕はなかなかのもの。派手なアクションシーンこそあまりありませんが、いささか手垢のついたような題材にスタイリッシュな味付けを施して新鮮味を付与する演出力は、高く評価されても良いでしょう。バックに流れる音楽もクールそのもの。特にビョークに主題歌を歌わせるセンスは、やはり若者ならではのものでしょうね。サントラも注目の出来です。ヴィゴの役柄は冷酷な麻薬王フレイザー。少ない出番でも、ナイフのように鋭い狂気を得体の知れない雰囲気に忍び込ませ、出色の存在感でした。現在でもVHSでレンタルされているところもあるかもしれません。チャンスがあったらご覧になってみてください。

ちなみにキャノン監督は、2000年代から活躍の場をテレビに移し、「CSI:科学捜査班」「NIKITA / ニキータ」「ALCATRAZ/アルカトラズ」といった人気シリーズの製作、監督の仕事にあたっています。そして、2014年にはテレビシリーズ「GOTHAM / ゴッサム」のパイロット版の監督を務め、番組の成功によってエグゼクティブ・プロデューサーの1人に名を連ねることとなりました。



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