House of M

アクセスカウンタ

更新情報

zoom RSS 夢か現か幻か…―「幻影師アイゼンハイム The Illusionist」

<<   作成日時 : 2015/03/20 00:17   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

張り巡らされる蜘蛛の糸。

「幻影師アイゼンハイム The Illusionist」(2006年)
監督:ニール・バーガー Neil Burger
製作:マイケル・ロンドン&ブライアン・コッペルマン他。
製作総指揮:ジェーン・ガーネット&トム・ヌナン他。
原作:スティーヴン・ミルハウザー『幻影師、アイゼンハイム』(『バーナム博物館』所収)
脚本:ニール・バーガー Neil Burger
撮影:ディック・ポープ
プロダクションデザイン:オンドレイ・ネクヴァシール
衣装デザイン:ナイラ・ディクソン
編集:ナオミ・ジェラティ
音楽:フィリップ・グラス
出演:エドワード・ノートン(幻影師アイゼンハイム)
ポール・ジアマッティ(ウール警部)
ジェシカ・ビール(公爵令嬢ソフィ)
ルーファス・シーウェル(皇太子レオポルド)
エドワード・マーサン(興行師フィッシャー)
カール・ジョンソン(医者/老紳士)他。

19世紀末、ハプスブルグ家による帝国支配が末期に近づいていた頃、ウィーンでは“奇術”が庶民の見世物として大きな人気を集めていた。中でも天才と崇められていたのは、幻影師アイゼンハイムという男。次期帝位を密かに狙う皇太子レオポルドは、奇術好きの腹心の部下、ウール警部からその見事な出し物の噂を聞き、婚約者ソフィを伴って観覧に訪れる。長年アイゼンハイムとコンビを組んでいる興行師フィッシャーは、御前観覧に緊張の色を隠せないが、当のアイゼンハイムはいつもと変わらず飄々としたままだ。大掛かりなイリュージョンの助手として、観客席から希望者を募ったアイゼンハイムは、レオポルドに導かれて舞台に上がってきた婦人を見て息を呑む。なんと彼女こそ、アイゼンハイムの初恋の女性ソフィであったのだ。アイゼンハイムは、少年時代に出会った不思議な老人に導かれるようにして、奇術の道へ入った。奇術に必要な特殊技術の訓練に励む日々のさなか、公爵家の令嬢ソフィと出会い、一時は駆け落ちまでするほど愛し合ったのだった。しかし、彼らの間にある身分の差はいかんともしがたく、結局周囲の人間によって2人は引き裂かれてしまう。直後、生まれ故郷を旅立ったアイゼンハイムは、そのまま15年間行方知れずになっていた。

画像

舞台での再会から数日後、アイゼンハイムとソフィは、人目を避けつつ馬車の中で慌しく邂逅した。そして、15年前からお互いへの気持に変わりはないことを確認する。レオポルドによって王宮に招かれたアイゼンハイムは、女遊びの激しさや次期帝位への野望等、黒い噂の絶えないレオポルド本人に対し、挑発的な奇術を仕掛ける。怒り狂ったレオポルドは、アイゼンハイムの失脚を謀るため、ウール警部にアイゼンハイムの周辺を探らせた。アイゼンハイムに接触するチャンスを得たウール警部は、本心では敬愛する偉大な奇術師の不思議な魅力に惹かれつつも、その弱点を探るべく捜査の網を張る。ほどなく、アイゼンハイムとソフィの密会の模様がレオポルドに報告された。
ある日、屋敷に婚約者を呼び出したレオポルドは、アイゼンハイムとの密会という自らへの背信行為の事実を突きつけ、即刻幼馴染と手を切るよう迫った。頑として受け入れないソフィの頬を力任せに殴るレオポルド。ソフィは、元より気の進まなかったこの政略結婚を白紙に戻すつもりで、皇太子に別れを告げる。怒りに任せて彼女の後を追いかけたレオポルドは、厩舎の中でソフィと揉みあう。やがて女性の悲痛な悲鳴が辺りに響き、血まみれでぐったりと馬にもたれかかった彼女の姿が目撃される。瀕死のソフィを乗せたまま駆け出した馬は、ほどなくして近くの湖畔で発見される。ウール警部率いる警察の捜査陣はじめ、知らせを聞いて青ざめた様子で駆けつけたアイゼンハイムたちは、首の付け根から肩までを刀のような鋭利な刃物でざっくりと切り裂かれた哀れなソフィの遺体に直面した。物言わぬ遺体に取りすがるアイゼンハイムは、ウール警部に、この殺人は皇太子のしわざだと叫ぶ。レオポルドとソフィが口論していた事実は、複数の召使たちから証言を得ている。ウール警部は、殺人の現場は誰も目撃していないことと、容疑者がよりによってハプスブルグ王家のプリンスであることを鑑み、早計な判断は控えるようアイゼンハイムに諭すのだった。
通り一遍の捜査に基づき、ソフィ殺害犯を探索する一方で、ウール警部の勘は、この殺人事件に何かしらおかしな点があることを告げていた。皇太子の御前では慇懃な態度で口をつぐむウール警部も、皇太子を最有力容疑者と断定した上での捜査を独自に続けていた。巷では、皇太子邸で起こった公爵令嬢殺人事件の噂話でもちきりだった。日ごろの素行の悪い皇太子への反発から、専ら、レオポルドによる暴力が殺人に発展したのではないかという噂がまことしやかに流布していたのだ。時を同じくして、天才幻影師アイゼンハイムは、死者を甦らせるという不気味なイリュージョンを披露した。政治が乱れ、人心が困惑する中でのこのイリュージョンは、人々の間にアイゼンハイムへの畏怖の念を強く巻き起こす。アイゼンハイムを神と同一視する者まで出る始末だ。やがてアイゼンハイムは、スキャンダルの当事者である死せるソフィを、舞台の上で甦らせてしまった。観客は興奮し、真犯人は誰なのかと死者の幻影に詰め寄る。ウール警部はこれ以上の混乱を避けるため、アイゼンハイムを王家への背信行為のかどで逮捕せざるを得なくなった。警察に連行されるアイゼンハイムを釈放するよう、民衆の怒りと混乱は頂点に達する。これを受けてアイゼンハイムは、自分はマジシャン以外の何者でもないと告げて、混乱を収める。事実、そうなのだ。ウール警部も、アイゼンハイムの死者甦りイリュージョンのネタは分析できていたため、これ以上人心を乱さぬよう厳重注意するに留めた。

画像

アイゼンハイムは、最後のイリュージョンを舞台で披露した後引退する旨を、興行師フィッシャーに伝える。今まで行ってきた数々の奇術のネタを明らかにした書類を、餞別に手渡して。奇術師にとって、ある意味命よりも大事なものを受け取ったフィッシャーは、アイゼンハイムが本気でこの世界から消えようとしていることを確信した。果たしてその日はやってきた。舞台上に現われたアイゼンハイムは、今度は自らが幻影と化し、大勢の観客の目の前で忽然と消えてしまったのである。ウール警部は、アイゼンハイムの部屋に残された手帳を複雑な思いで見つめる。
事件現場で、皇太子の持つ宝刀の宝石と、ソフィが持っていたペンダントを発見したウール警部は、皇太子をソフィ殺害の真犯人と断定し、重々しい足取りで皇太子邸へ趣いた。いかな王家の人間といえど、1人の人間を殺して、その罪から逃れたままではいられない。ウール警部は、まずは1人でレオポルドと対峙した。皇太子は、帝位乗っ取りにしても、誰も政治のことなど省みようとしないから画策したことだと逆上する。邸の外に警官隊が到着したのを見たレオポルドは、一旦はウール警部に銃口を向けたものの、もはやこれまでと観念してみずからのこめかみを撃ち抜いた。
砂を噛む思いで皇太子の最期を看取ったウール警部に、1人の少年が近づいてくる。思ってもみない人物から、思わぬものを言付かったというのだ。そのメッセージを見たウール警部は驚き、絡み付いていた全ての謎がするすると解けていくのを感じる。そして、世界中でおそらく自分1人だけが知るその“偉業”に、心底感嘆するのだった。


幻影師 アイゼンハイム [DVD]
東宝
2008-11-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る


ピュリッツァー賞を受賞した経験がある作家スティーヴン・ミルハウザーの、「バーナム博物館」という短編小説集に収められた同名の短編を、商業用長編映画はこれで第2作目となる新鋭監督ニール・バーガーが脚色、映画化した作品です。全米公開時は、当初たったの51館での封切りというひっそりとしたスタートでしたが、作品の完成度の高さが口コミ評判を呼び、最終的には1438館まで拡大公開されたそうです。エドワード・ノートン、ポール・ジアマッティ、ジェシカ・ビール、ルーファス・シーウェルといった、今ひとつ華に欠ける地味な顔ぶれながら、作品は22週に渡ってランクインする異例の超ロングラン・ヒットとなりました。

さて唐突ながら、わたくし豆酢という人間は、殊のほか“マジック”をみるのが好きでございます。いえいえ、なにも、そのマジックのネタを解明するのが得意というわけじゃありません。むしろ、“種明かし”に関しては全く無能。目の前10センチの所でマジックを披露されても、きっと死ぬまでそのタネには気付かず終いでしょうね(笑)。私にとっては、マジックの種明かしなどは、むしろどうでもいいことの領分に属するものなのです。一見不可能と思われる事象が、マジシャンの鮮やかな手際によって展開されるのを目撃する快感に、敵うものはありませんからね。なんというのか、見事に騙される快感とでもいいましょうか。私にとって“マジックが好き”というのは、純粋にそのマジックが主導する世界に身をゆだねるのが好きだという意味であります。今作「幻影師アイゼンハイム」の語り部的存在であり、天才マジシャン、アイゼンハイムと観客である私達を結ぶ橋渡しの役目も担うウール警部も、さしずめ私のような“マジック好き”であるのでしょう。
日本では今作とほぼ同時期の公開となった「プレステージ」も、マジックの世界を舞台にしたお話でした。奇しくもマジシャンを主人公とした映画が2本比較されることになり、こちらアイゼンハイムの方はワリを食ってしまった感もありますね。「プレステージ」が“マジック”そのものを主軸に据え、それに人生を狂わされてしまう男たちの愛憎劇を描いたのに対し、この作品は、マジック自体は、その種明かしに至るまであくまで秘められた世界に留め置き、“マジック”のトリックを最大限に行使して己の目的を遂行しようと格闘する男の姿を追っていきます。
上記したウール警部という人物の行動―警察として公爵令嬢殺害事件を捜査する―を通じて、謎の多いアイゼンハイムの言動の真意を推理していくことが、今作のテーマであり、最大の楽しみでありますね。つまり、真相を一切知らされないウール警部と私達観客は、全く同じ立場でこの物語に立ち会っているわけで、アイゼンハイムと、もちろん今作の監督であるバーガー監督の両方によって劇中に蜘蛛の糸のごとく張り巡らされた伏線と、目にする事柄のみから、この事件の謎とアイゼンハイムを結ぶ糸口をつかもうとするのです。今作に関しては、これを具体的に明かしてしまうと、未見の方の興趣を著しく損なうことに繋がるので、これ以上詳しいことは書きません。あとはご自身の目で実際に確認していただいた方がいいでしょう。

画像

全てを観終わった後で、“オチがつまらん”と感じるのも、“こりゃ騙された!”と感じるのも個々人の自由。この作品を“マジック映画”として観賞するのか、あるいは“古典的なミステリー映画”として観賞するかによって、観賞後の感想は変わってくると思います。
ちょっと話は脇道にそれますが、映画「シックス・センス」が“ミステリーの禁じ手”を破ってしまって以来、観客は、目に見えるものが果たして劇中の中での真実なのかどうか、困惑する傾向にあります。ホラー映画ではよくあるのですが、例えば“今までのお話はぜ〜んぶ夢でしたぁ”オチとかね(笑)。今作でも実は“マジック”のシーンにVFX効果が用いられたりして、殊更非現実感が増してしまい、そのマジックが本当にマジックなのか、それともアイゼンハイムの超人的なパワーによるものなのか、わかり辛い部分がありました。マジックの種明かしを最小限に抑える意図があったのでしょうが、これは今作のマイナスポイントといえるでしょうね。
つまり、「シックス・センス」的な大ボラも甚だしいオチを今作に期待すると、当然“つまんない”という結論になりましょうし、ミステリーの王道に則った作品だと考えれば…事実、今作はミステリー映画としては、細部に至るまで丹念に考え抜かれた非常に端正な作品だと思います…、ラストのウール警部同様、“そうか!やられた!”と膝を打つことになるでしょうね。まあ、観る人の“性格”によっても、得られる感慨は変わってくる作品ではないでしょうか。

19世紀末期という、廃れゆくハプスブルグ王家の断末魔のごとき陰鬱な雰囲気は、今作に一種異様なイメージを付加しています。純然たるハリウッド作品とは一味違った感慨ですね。実際にウィーンの街で撮影を行った効果でしょう。古い時代の象徴である王家が崩れ、新しい時代に移り変わっていく世相の混乱は、民衆をして非現実の世界のものであるイリュージョンにのめりこませました。イリュージョンという非現実が現実世界を凌駕する様子が、劇中でも触れられていましたが、キーパーソンの1人であるレオポルド皇太子も、そんな現実に歯がゆい思いをかみ締めていたと思われます。王家が新時代という大波に押し流されていったように、それを食い止めようと足掻いたレオポルドもまた、周到に仕組まれたトリックによって自滅します。あるひとつの目的のために全てを投げ打ち、人生最大にして最後の大芝居を打った男とは、ある意味では、“民衆による新時代”の象徴であったのかもしれません。




人気ブログランキングへ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス

にほんブログ村

夢か現か幻か…―「幻影師アイゼンハイム The Illusionist」 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる