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zoom RSS 称えよ、豆である人を―「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」

<<   作成日時 : 2017/04/23 14:02   >>

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泣いても笑っても、「Mr.ビーン」はこれで見納め。

今にして思いますとね、このビーン・シリーズというのは、英国人の秘められたる一面を面白おかしく暴く作品であったのですよね。彼の服装、あるいは数少ない台詞の発音から察するに、生まれも卑しからぬいっぱしの紳士であるビーンが、周りの迷惑顧みず、私の息子達並の行動をとってしまうという皮肉(ローワン・アトキンソンは、ビーンに10歳程度の少年の精神を与えている)。マナーにうるさくて個人主義の徹底した、質実剛健、独立独歩を美徳とする英国を支える麗しき“英国紳士”を一皮剥けば、実はこ〜んな幼稚でわがままな本性が現れるだなんてね。英国という国から私達が連想するクールなイメージは、ビーンによって完膚なきまでに破壊されてしまいますが、それはおそらくローワン・アトキンソン自身が狙った効果であるでしょう。当の英国紳士がビーンのネタをどんな風に捉えているのか、ぜひ一度伺ってみたいですね。
それと同時に、まだ未見の方は、この作品のラストにも注目していただきたい。芸術性だのはたまた金だのと、本来の純粋な娯楽性を見失いつつある映画産業に、ビーンが痛烈な一撃をかましてくれます。しかし、映画産業の戦略にいいように踊らされている私達観客も、同時に笑い者にされているような気がしますけどね。相変わらずのビーンの毒っ気には、思わず苦笑してしまいます。


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「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」(2007年製作)
監督:スティーヴ・ベンデラック
製作:ピーター・ベネット=ジョーンズ&ティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー
製作総指揮:リチャード・カーティス他。
キャラクター創造:ローワン・アトキンソン&ロビン・ドリスコル
原案:サイモン・マクバーニー
脚本:ロビン・ドリスコル&ハーミッシュ・マッコール
撮影:バズ・アーヴァイン
プロダクションデザイン:マイケル・カーリン
編集:トニー・クランストゥーン
音楽:ハワード・グッドール
出演:ローワン・アトキンソン(ビーン)
エマ・ドゥ・コーヌ(サビーヌ)
ウィレム・デフォー(カーソン・グレイ)
カレル・ローデン(エミール)
マックス・ボルドリー(ステパン)
ジャン・ロシュフォール他。

“ミスター・ビーンの日記”

○月▲日
私ミスター・ビーンは、教会のくじ引きでなんと一等賞を引き当てる。景品は、カンヌへの1週間の旅とビデオカメラ。この時期カンヌではちょうどカンヌ映画祭が開催中だ。これはもう、映画祭を突撃レポせよとの神の思し召しに違いない。私は英国人だ。超特急でリヨン駅まで向かって何が悪い。

○月△日
リヨン駅からカンヌまで向かう列車に乗る。せっかくだから記念写真を撮りたいではないか。私はその辺を歩いていた男を捕まえてカメラを渡す。あ〜あなた〜英語わ〜かりますか〜?わからん男だな。私のアーティスティックな注文が理解できないのか。こいつに付き合ってたら、列車が出てしまう!

○月■日
列車には、あの頭の悪い男の息子とやらが乗っていた。ステパンというその少年は、映画監督である父親エミール・ドエトフスキーと一緒にカンヌへ行く途中だったという。なんてこった!これからは私が(迷子の)ステパンをカンヌまで連れてかなきゃならんじゃないか。しかし、またもトラブルが発生し(私は悪くないのに)、私はステパンと2人、駅のホームに取り残される羽目に。しかも私はキップもパスポートも財布も持ってないんだぞ!どうしてくれる。

○月□日
ここはまだカンヌには程遠い街のようだ。仕方がない。映画監督の息子なら芸のひとつもできるだろう。私はステパンと一緒に、素晴らしいセンス溢れる大道芸を披露した。(主に私の名演技のお陰で)私たちは無事、カンヌまでのバス賃を稼ぎ出した。しかし!苦労して買った切符が、しかも私の切符だけが、にっくきニワトリのエサになってしまった!ステパンだけがバス上の人となり、私はまたしても1人ぼっちに。

○月×日
私は英国人だ。なにがあっても取り乱さない。パンがないならケーキをお食べとアントワネットも言ったじゃないか。バスがないなら自転車に乗るがいいのだ。ツール・ド・フランスの連中に混じって日頃の健脚振りを披露するも、さすがにカンヌまでチャリをこぐわけにはいかない。仕方なくヒッチハイクにも精を出したが、どこだかわからんド田舎まで来てしまった。ん?なんだあれは。向こうで、エミールより頭の悪そうな男が撮影してるぞ。せっかく私が現場で天才的な才能を発揮してやったのに、それを生かせないだなんてバカな男だ。そのバカはカーソン・クレイ、アメリカ人の映画監督だそうだ。道理でな。しかし出演していた美女は私好みだ。彼女はフランス人の新進女優サビーヌで、バカのカーソンの新作にも出演しているという。私は彼女の好意で、車でカンヌまで送ってもらえることになった。

○月△日
フランスは狭いな。高速の途中で寄ったサービスステーションで、ステパンがうろうろしているのを発見した(再会ではない。私が彼を見つけてやったのだ)。ともあれ、ようやく彼を捕まえることができてめでたい。ステパンとサビーヌ、そして私は、車中エレガントな会話を交わしながら、一路カンヌへ向かう。

○月▲日
抜けるような青空!輝く太陽!これこそがリゾート地!これこそがカンヌ!道中へこたれなかった私への、神からのご褒美だ!しかしなんたること!エミールのアホが、この息子の恩人たる私をステパン誘拐犯として警察に通報しやがったのだ!いかん、このツイードのジャケットと赤のネクタイという上品ないでたちでは、私がビーンだと知れてしまう。窮した私は、ヘドが出るほどばかげた変装に身をやつし、ステパンとサビーヌと共にカンヌのプレミア会場へともぐりこんだ。大丈夫。私は以前にも、アメリカの美術館に潜入したことがある。しかも英国人だし、スパイの真似事なら任せておけ。

○月□日
おお、折りしも会場では、もう1人のバカことカーソンの映画が上映中だ。しかしまあなんという退屈な映画だろう。これなら、私の撮りためたビデオの方がよほど見事な出来栄えだ。しかもサビーヌの出演シーンがほとんど削られてしまっている。ここはきっちりしておかねば、彼女への示しがつかないだろう。ところがこの私の英断が、冗談を解さぬ連中によって映画祭を揺るがす騒動に発展してしまう!まったく、困った連中だ!


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Mr.Bean Is Back!

1989年から1991年にかけてテレビで放映された、30分のコント劇「ミスター・ビーン」シリーズ。一度目にすれば忘れられないインパクトのある風貌、その強烈過ぎる顔と妙にひょろ長い手足を変幻自在に動かしつつ、世にも可笑しな騒動を巻き起こすはた迷惑なおっさんの日々の活躍(?)を描いた作品です。日本でも繰りかえし放映され、カルト的な人気を得ましたよね。
サイレント映画時代のチャップリンや、バスター・キートンから連なる伝統に則り、ミスター・ビーンはほとんど言葉を発さず、表情と身体の動きのみで観客の笑いを引き出します。それは、簡単なようで実は大変に困難なお笑いなのですが、しかし一方では、言語や文化の違いによるギャップが介在しないというメリットもありますよね。ですからビーンの笑いは、あらゆる世代、あらゆる国の人たちに普遍的にアピールするのです。「ミスター・ビーン」のテレビ・シリーズが、世界中で好評をもって迎えられたのも頷ける話ですね。
さて、このミスター・ビーンという奇妙なキャラクターは、演ずるローワン・アトキンソンが舞台で披露したスケッチ(コント)“いつでもどこでも眠る男”が雛形になっていると言われます。確かにそのスケッチはテレビ・シリーズでも見られましたし、初映画化作品「ビーン」(1997年)の冒頭で、美術館の監視員をやりながら熟睡するシーンでも繰り返されました。独立したキャラクターとして命を吹き込まれたビーンは、いつでもどこでも茶系のツイード(ひじの部分に黒い布が当てられていることもある)、赤いネクタイ、丈がつんつるてん気味のスラックスという外見を得ました。
いい年をしたおっさんにも関わらず、やってることも頭の中も“9歳の少年”並み。イタズラ好きでワガママで、悪知恵が働き、突拍子もないアイデアを臆せず実行するクソ度胸があるくせに、ささいなことに妙なこだわりを持っていて…。うちの息子も、こんな調子でよくトラブルを引き起こしてくれますが(笑)、始末に負えないのは、本人にまるっきり悪気がないことなんですよね。ビーンも同じくで、また“大切に思うモノ”へのこだわり、愛着の度合いは、周囲に果てしなく迷惑をかけるほどハンパではないことが伺えます。それに、たまにしゃべる言葉を聞くと、単なるアホとも言い切れないのですよね。発音はどちらかといえば気取ったアッパークラスだし、身だしなみも、いつも同じコーディネートとはいえ、典型的な英国紳士のそれです。こだわりに対して一本気なところといい、唯我独尊のようでいて実は弱きものを見ると放っておけない一面といい、ビーンは意外と良家の出身であったりするやもしれません(笑)。
よくビーンを称して、表向きエレガントで知性的な英国人の、抑圧された幼児性の具現化だと言われます。しかしビーンの自由奔放さは、制約の多い社会で生きる私たち現代人の密やかな憧れでもあります。だからこそ、彼が劇中どんなハチャメチャな事態を引き起こしても、大人の観客は眉をひそめて苦笑こそすれ、内心では大いに溜飲を下げているわけですね。また、ビーンが勝手気ままに振舞うことが、本人の預かり知らぬところで、日常に散見する“権威”へのアンチテーゼになっている点も、ビーンをしてクールならしめている要因だと思うのです。

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さて、シリーズ初の映画化作品となった「ビーン」(1997年)は、彼のホームグラウンドたる英国を離れ、アメリカが舞台となりました。おそらくそのせいで、昔ながらのハリウッド・ファミリー・コメディの枠内に、ビーンが無理やり押し込められたかのような窮屈さが露呈してしまったのですね。尤も、この作品よりレベルの低いギャグ映画なんてゴマンとありますし、個人的には、細かいスケッチの質もお話の出来も悪くないと思っています。しかしなんといっても、ファンが求める爆発力に欠け、ビーンが全体的におとなしくて説教臭い存在に落ち着いたのは、いかにも残念です。結局、従来のファンからは色よい評判を得られず、繊細なアトキンソンはその結果に大いに傷ついたと言われます。彼が、ビーンのキャラクターをさらに発展させることに限界を感じ、新たなキャラクター創造を模索したり、他の劇映画への出演を重ねたりしたのはそのためですね。
2002年から2003年にかけて、新たに製作されたアニメ版「ミスター・ビーン」(全26エピソード)が放映されました。アトキンソンにビーンの映画版第2弾製作を決意させたのは、前作から 10年という月日が経ったことと、年齢的にビーンを演じられるのは今が最後だという事実。ビーン独特の動きを再現するには、かなりの体力と運動量を要求されますし、ビーンの魅力の1つに“年齢不詳”というものがありますしね。確かに既に50代に差し掛かっているアトキンソンにとっては、今作で有終の美を飾りたいというのが本音でしょうね。
紆余曲折を経て実現したビーン映画第2作目では、前回の失敗を踏まえて、テレビシリーズ時代のノリを再現することに重点が置かれています。前回は、“マトモにしゃべるビーン”を売りにして却ってしらけてしまったわけですが、今回は初心に戻り、ビーンを全く言葉の通じないシチュエーションに放り込むことで、彼のパントマイム的可笑しさを強調する形になっているのですね。

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冒頭のカンヌへの旅行をゲットするシーンから、短いスケッチをテンポ良く重ねつつ、ロードムービーならではののんびりしたムードの中で、ストーリーは快調に進んでいきます。意思の疎通のままならない少年と、少年より精神年齢は低そうな(笑)ビーンの交流が、なんともいえずほのぼのと可笑しい。フランスの片田舎の牧歌的な風景と、それに全くそぐわないビーンのキリキリ舞いのギャップに笑いつつ、もう1人のビーンの旅の仲間サビーヌを加えることで、画面に安定感が生まれました。テレビでは、ビーンはいつもぬいぐるみのテディと一緒だったのですが、今回彼(?)は旅に同行していません。それがビーンの状況に孤立感を与え、同時に活躍の場を広げることにもなりました。カンヌまでの珍道中は、ビーンにとって日常生活を離れた冒険譚となり、彼の行動にいつも以上のワイルドさをもたらしています。

自転車での激走シーンや、ビーン・シリーズではおなじみ、高級レストランの中での食事ネタ(今回はエビ)等面白いスケッチもあるのですが、私が今回特に気に入ったのは、ビーンの旅の道連れになる(させられる?笑)サビーヌとステパンを加えた3バカトリオの噛み合わない車中での会話ですね。ビーンの存在だけが妙に浮いていた前作のような違和感は皆無で、凸凹トリオがなんともいい感じで一枚の絵の中に馴染んでいるのですよ。

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旅は道連れ、世は情け(笑)。旅を経て意気投合した彼らがいよいよカンヌ入りし、ビーンに着せられた汚名を晴らすため、映画祭の会場にもぐりこむ段から、画面ははさらにボルテージを上げていきます。にっくきカーソン・クレイに意趣返しするいたずらが、どんなどんでん返しを招くかは、本編をご覧になってからのお楽しみ。果たしてビーンはステパン少年誘拐の疑いを晴らすことが出来るのか、はたまた、天下のカンヌ映画祭を騒ぎの渦に巻き込んだビーンたちの運命やいかに。クライマックスでは、映画用にスケール感を増したハラハラドキドキが、最高のカタルシスをもたらしてくれますよ。“自分らしく生きることの大切さ”を、まさかビーンのおっさんから教えられるとは思ってもみませんでした(笑)。

前作以上にのびのびとビーンを演じたアトキンソン。しかしながら、彼のコメディへの取り組みは非常に真摯で、かつ緻密な計算に基づいたものです。彼の持つ最高のキャラクターであるビーンを、キャリアの集大成に相応しい渾身のお笑いで魅せてくれました。これがビーンの見納めになるのは寂しいですが、最高の形でビーン・シリーズを終えることができたのではないでしょうかね。
ステパン役を演じたのは、破格の大河テレビドラマ「ROME」にも出演したマックス・ボルドリーです。さわやかな美貌の持ち主で、ビーンと組んでパントマイムを披露するシーンでは、なかなか芸達者なところを見せてくれますよ。将来が期待できる逸材ですね。
カーソン・クレイに出演シーンを削られる憂き目に遭う新進女優のサビーヌには、「ミッション・クレオパトラ」のエマ・ドゥ・コーヌが扮しました。持ち前のコケティッシュな魅力で、初々しくサビーヌを演じておられましたね。嫌味のないルックスは日本人受けするのではないでしょうか。
そして今作最大のサプライズは、我が愛しのウィレム・デフォーでしょう(笑)!実は、デフォー自身はもっとコメディ映画をやりたいのに、ハリウッドではなかなかキャスティングされないというジレンマを抱えていました。まあ確かに、「処刑人」での陶酔型悪ノリトゥー・マッチ演技を観てみても、コメディの素質は充分にあるかと思われます。そんな、今や名優とまで謳われる彼が、カーソン・クレイをビーンに負けないインパクトで演じ切っております。自身の監督作品がカンヌで上映されるシーンに注目。才能ゼロのくせして、己の作品に自己陶酔する痛々しい映画監督(笑)を、リアルに体現してくれていますよ。…一体誰をモデルにしたのかしら…とか思ったり(笑)。

テレビ・シリーズでは、ちょっぴり輪郭のぼやけた古臭い画面が、ビーンのイメージにマッチしていい味を出していました。この映画版では、風光明媚なカンヌを舞台にしていますので、さすがに映像は美しく撮られていますし、全体的にフランス風味のこじゃれた雰囲気が付加されていますね。まあそれが嫌だと感じる方もいらしゃるでしょうが、映画作品としてのバランスを損ねるものではありません。寛容な心で対峙してください (笑)。


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1997年製作の映画版第1作目。ビーン好きには概して評判が悪い作品ですが、コメディ作品としては、なかなか健闘していると思いますよ。

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名優というより、今や“怪優”とお呼びした方がしっくりくるような気がする(笑)ウィレム・デフォー先生も、大ノリで空気が読めない“巨匠監督”を熱演しておられます。とにかく、やりたくて仕方なかったコメディをハリウッドではやらせてもらえない鬱憤を、ここぞとばかりに晴らしていらっしゃいますよ(大笑)。

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