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zoom RSS 幸せのかたちは十人十色―「ばすくん」

<<   作成日時 : 2015/03/09 08:03   >>

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「ばすくん」
なかや みわ(絵)、みゆき りか(文)教育画像刊行

ばすくんは路線バス。毎日お客さんを乗せて元気に走ります。彼はお客さんの笑顔を見るのがなにより大好き。

ある日ばすくんが勤めるバス会社に、新式のピカピカなバスたちがやってきました。新型バスとばすくんは同じ路線を走ります。朝はお客さんが多いからです。ところがお客さんは、新型バスを目にすると、ばすくんに乗るのを嫌がって新型バスに乗り換えていってしまいます。なぜなら、新型バスはたくさんお客さんを乗せられるし、エンジンも馬力もばすくんより数倍強い。いくらばすくんが頑張っても、新型バスのように早く走ることはできません。
その晩ばすくんは、自分がバス会社の中で一番古いバスになってしまったことに気づきます。新型バスにはかなわないけど、お客さんの笑顔のためにできる限りのことをしようと決心するばすくん。それからも毎日ばすくんは路線を走り続けましたが、ある日とうとう、社長さんから山奥のバス会社へ行くように言われました。彼は古くなり、用済みになってしまったのです。最後の日、ずっとばすくんの世話をしてくれた整備士が、ばすくんを丁寧に洗って燃料も満タンにしてくれました。「長い間ご苦労さん」の言葉だけを餞別に、ばすくんは山奥のバス会社に売られていきました。

山奥のバス会社の路線はすべて山道。坂は険しくて、道も整備されていないのででこぼこです。おまけに燃料も満タンにはしてもらえません。ボディはあっというまにボロボロになっていき、あちこちきしむようになりました。それでもばすくんは、お客さんの笑顔を見られるだけで満足でした。
ある日山道を走っていると、道のでこぼこに足をとられ、ばすくんの車輪が外れてしまいます。山奥のバスは半日に一本しか通りません。お客さんたちはその場に足止めを食ってしまい、みな口々に文句を言い始めました。ばすくんは涙ながらに何度も何度も謝りました。
ようやく代わりのバスが来て、お客さんは去っていきました。ところがばすくんはその後何日もその場に放っておかれた挙句、やってきたレッカー車に山奥のさらに奥に引っ張られていきました。そう、壊れてしまったばすくんは、捨てられたのでした。ばすくんの体には草が生え、苔むしていきました。

ひとりぼっちでたたずむばすくんの元に、ある嵐の晩一匹のたぬきがやってきました。たぬきは、嵐で巣が壊れてしまったために、一晩雨宿りをさせて欲しいと頼みます。ばすくんは大喜びでたぬきを中に迎え入れました。たぬきは暖かいばすくんの中で一晩ぐっすり眠ると、翌朝気持ちよさそうに走り去っていきました。ばすくんはその後姿に、「いつでも来てね!」と何度も叫びます。
季節は冬になりました。あれからばすくんのところには、誰も訪ねてきてくれません。ある晩ついに降り始めた雪がしんしんと積もっていく中で、ばすくんは寂しさのあまり目に涙を浮かべていました。そのまま彼がまどろんでいると、あのときのたぬきがばすくんの前に立っていました。
見ると、山に暮らす動物達がぶるぶる震えながらたぬきの後ろに続いています。今年の冬がはやく到来したために、みんなの冬支度がまにあわなかったというのです。動物達は、ばすくんの中で冬篭りをさせて欲しいと頼んできました。ばすくんは大喜び。「もちろん!春が来るまでゆっくりぼくの中で休んでいってください!」
山の動物たちは、三々五々ばすくんの中に入って行き、それぞれに快適な寝床を見つけて眠ってしまいました。あたりは真っ白な雪に埋め尽くされました。外は凍えるような寒さだけれど、ばすくんの心はあったか。もうひとりぼっちではありませんから。

ばすくん
小学館
みゆき りか

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何年も続く不景気の嵐の中、日本でも多くの会社が倒産したり、また倒産を免れるために多くの会社がリストラを断行したりしました。結果、働き場所を追われた無数のお父さん達が路頭に迷うことに。中には、家族に職を失ったことを言い出せずに、自らの命を絶ってしまった人もいます。
このように、不景気は数限りない悲劇を生みましたが、反面、これまでの“幸せの価値観”を転換させる契機にもなりました。サラリーマンという労働形態が崩れ、必要に迫られてではありますが、世のお父さん達は新しい人生を模索することになったのです。人生も半ば以上を過ぎてから、新たに技術を身に付けるために学んだり、自分で事業を起こしたり。これまでとは全く異なる職種で頑張りはじめたり…。それぞれに自分にできることを熟考したうえで、新しい人生の一歩を踏み出そうとする方がたくさんいらっしゃったことだと思います。
乱暴な言い方かもしれませんが、日本の不景気という現象がなかったら、たぶんみなさん自分の人生を振り返る(それも必死に)ほど追い詰められなかったことでしょう。サラリーマンとして、仕事上の愚痴を酒で紛らわしつつ、家では子供達と奥さんの尻に敷かれて、なんとかんとか一生をやり過ごしていたのでは。もちろん景気はいいに越したことはないですが、しかし不景気からも学ぶべきことは多々あると思います。

この絵本に出てくるばすくんも、まるで不景気でリストラされたお父さんを象徴するような存在です。彼は勤続疲労で古くなり、バス会社を放り出されて山奥の田舎の会社に流れていきます。毎日懸命に真面目に、お客さんの笑顔が見たい一心で走り続ける彼の姿に、目頭が熱くなるのは私だけではないはず。そんな彼もついに破損して、完全に動けなくなります。壊れてしまった彼に文句を言うお客さんたちも、仕方ないとはいえ多分にエゴイスティックに見えますね。日々の生活に流されて、自分のことしか考えなくなってしまっている自分を反省したくなりました。
また、壊れたばすくんを修理もせず、さっさと捨ててしまうバス会社には、欧米式の能力主義を掲げる昨今の日本の会社へのアイロニーが感じられ、いたたまれなくなります。これも、会社の“経済性”を考えればいたしかない面もあるのかもしれませんが、なんにせよ”役に立たなくなったらすぐ捨てる”という日本人の悪い癖であるのは確か。古いものでもきちんと直して、いつまでも使い続ける精神を子供に伝えていかなくてはいけないなと、痛感いたしました。
結局打ち捨てられて、誰からも相手にされなくなったばすくんは、しかし山の動物達に住処を提供するという、新しい形の幸せを見出しました。それまでは、お客さんの笑顔がなによりの幸せであった彼ですが、動物達に安心と快適な住まいを与えることでまだ役に立てることに気づくわけですね。ここに至るまでの彼の悲しみを思うと、とても他人事と切り捨てることはできません。子供に読み聞かせているうち、私達親のほうが、ばすくんに本当の幸福が訪れることを願ってやきもきする始末です(笑)。
幸せのかたちは、人それぞれ。自分が納得できる生き方が出来れば、それでいいのです。幸せとは人から与えられるものではなく、自ら努力しなければ得られませんが、そこに至るまでの過程は紆余曲折あって当然だと思います。何年かかってもいいから、自分なりの幸せを見つける努力と、希望を持ち続けて欲しいという作者のメッセージを感じる作品でした。

なお、作画を担当されたなかやみわさんには、他に「そらまめくん」のシリーズ、「くれよんのくろくん」のシリーズがあります。そういえば、我が家にもありますわ。そらまめくんとくれよんくん。絵が丁寧で色使いも優しく、全体的にほんわかした、かわいらしい雰囲気の絵本を作られる方です。


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