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zoom RSS 「星に魅せられて(10ミニッツ・オールダー イデアの森)」―マイケル・ラドフォード監督

<<   作成日時 : 2015/09/10 09:31   >>

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豪華な映画作家が集ったコンピレーション作品「10ミニッツ・オールダー イデアの森」の中から、今や新世代ジェームズ・ボンドの顔となったダニエル・クレイグが主演したエピソード、“星に魅せられて(Addicted to the Stars)”をご紹介。実はこれ、監督はマイケル・ラドフォードその人だったんです。
このコンピレーションには、他にも各国の名匠による素敵な作品があるのですが、私は中でもとりわけこのエピソードを愛しております。


時間はいつか行き交う。

「10ミニッツ・オールダー イデアの森 Ten Minutes Older / The Cello」(2002製作)
監督:ベルナルド・ベルトルッチ「水の寓話」
マイク・フィギス「時代×4」
イジー・メンツェル「老優の一瞬」
イシュトヴァン・サボー「10分後」
クレール・ドニ「ジャン=リュック・ナンシーとの対話」
フォルカー・シュレンドルフ「啓示されし者」
マイケル・ラドフォード Michael Radford「星に魅せられて Addicted to the Stars」
ジャン=リュック・ゴダール「時間の闇の中で」

以下、「星に魅せられて Addicted to the Stars」スタッフ&キャスト

脚本:マイケル・ラドフォード Michael Radford「星に魅せられて」
撮影:パスカル・ラボー「星に魅せられて」
音楽:ジョスリン・プック「星に魅せられて」
出演:ダニエル・クレイグ Daniel Craig(セシル)「星に魅せられて」
チャールズ・サイモン(マーティン)「星に魅せられて」
ローランド・ギフト(パイロット助手)「星に魅せられて」
ブランカ・カティック(若い娘)「星に魅せられて」
クレア・アダムソン(テクニカル・アシスタント)「星に魅せられて」他。


セシル(クレイグ)は夢を見た。幼いわが子マーティンと遊ぶ夢。「マーティン!こっちだよ」

宇宙船コックピット内。セシルは相棒のパイロット(ギフト)と共に覚醒した。80光年に渡るタイム・トラベルを終了し、西暦2146年に帰還したのである。タイム・トラベルの目的は宇宙探査。彼は星々を駆け巡り、未開の惑星を調査することを職業としている。
旅を終え、ようやく故郷に帰るときがきた。セシルは相棒に問うた。
「帰ったらなにをする?」
「女を探すよ。絶滅してるかもしれんがな」
「家族には会わないのか?」
「もう会わないことにしたんだ。君もやめとけ」

地球に戻った彼らは、早速医師の診断を受けた。セシルの肉体は、出立前よりもほんの少し―10分間だけ―老いただけであった。しかし、紛れもなくここは自分の知る数十年後の地球だ。頭が混乱するのを避けられないセシル。
自宅でシャワーを浴び、外を眺めると、見知らぬ建物が無数に建ち並んでいた。ヒューマノイドのアシスタント(アダムソン)は、40年前に建設されたものだと答える。
セシルは外出する。どうしても会いたい人がいるからだ。歩くことすらままならぬ未来の都市。仕方なく彼は地下鉄に乗る。ひたすら歩き続ける彼を若い娘(カティック)が呼び止めた。
「お待ちしていました」
彼は、息子マーティンの家に通される。マーティン(サイモン)は年老い、老衰した体をようようソファに横たえていた。しわくちゃの顔をなお笑顔にゆがめながら、マーティンはセシルに声をかける。
「やっと帰ってきたんだね。ずっと待っていたよ」

画像

セシルの重い口からは、「許してくれ」という言葉しか出てこなかった。疲れてうとうとし始めたマーティンの頬を優しくなでるセシル。帰ろうと腰を上げたセシルに、マーティンは「パパ!」と呼びかけた。
「愛しているよ」
「ああ、お父さんもだよ」
娘はセシルに問う。
「また行かれるのですか?」
「ああ、行かねばならないんだ」

セシルは、調査のため到着したとある惑星の地表に、我が子マーティンの写真をそっと置いたのだった。



かくも豪華なコンピレーション・フィルムができあがりました。映画史に名を残す巨匠達が、“時間”をテーマに、その独自の解釈と考察を10分という上映時間の中に凝縮させた短編集です。この企画は、もう1本の「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」と合わせて完成品とされます。
“時間”という概念はいかようにも解釈することができるために、どの監督の作品も多少難解で哲学的な面を持っていますね。しかし、決まっているのは時間と予算だけ、内容に関してはすべて監督の裁量に任されたことで、彼らはそれぞれ自由な発想の元で個性的な映像を作り上げています。

2000年の「ブルー・イグアナの夜」の製作・公開後、マイケル・ラドフォードもこの刺激的な企画に参加することになりました。過去、世界中の思想家や哲学者たちが挑戦してきた“時間”への解答を得るため、彼が選んだ方法論はなんとSF!
タイム・トラベルを行っているという特殊な状況下の男を主軸に据えることにより、“時間”そのものの解釈ではなく、“時間の流れ”の不条理さ、“時間への人間の無力感”をより打ち出したかったのではないでしょうか。
また、通常の時間の流れから取り残されている男セシルは、強烈な孤独感にも苛まれています。ここでもまた、さまよえる異邦人的な(セシルは実際に時間をさまよっていますし)、ラドフォードその人を思わせるキャラクターが登場しますね。この孤独感ゆえに、セシルはもはやタイム・トラベルをやめるわけにはいかなくなってしまった。彼は息子を亡くした後も、きっと宇宙を飛び続けることでしょう。そのことが、彼の唯一の存在意義となってしまったから。

SFを題材にしていても、ラドフォードらしさがあふれる好編となりました。肉体は若いままの父親と、死に肉体を蝕まれた老いたる息子の邂逅。でも心の中では、幼い日の父と息子の愛情でしっかりとつながっている二人の姿は、せつなさと共に、“時間”の概念を越えた至上の愛を観客に知らしめてくれます。

さて、この作品で主人公を演じたダニエル・クレイグさんは、幾多の艱難辛苦を乗り越えて(笑)、新シリーズの007のボンド役者として認められることになりました。今後もあくの強い個性的な演技力はそのままに、より幅広い観客層にアピールする俳優に成長されていくのではないでしょうか。彼の活躍も楽しみですね。


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