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help RSS クローネンバーグとダルデンヌ兄弟

<<   作成日時 : 2010/01/30 21:39   >>

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デヴィッド・クローネンバーグは、1999年第52回カンヌ国際映画祭において審査委員長を務めました。

クローネンバーグの作品群は、ヨーロッパにおいて非常に高く評価されており、熱心な信者も多いと聞きます。クローネンバーグのファンサイトを検索しますと、ヨーロッパ方面に非常に優れたサイトを見つけることが出来ます。そして、1996年第49回カンヌ国際映画祭では監督作「クラッシュ」が審査員特別賞を受賞するなど、クローネンバーグはカンヌと少なからぬ関係があるのですね。おそらく、その辺りの経緯から、監督が審査委員長に選出されたものだと思われます。
ですがまあ、そのニュースを知ったとき、少なくとも私は大変不安でありました(笑)。いや、フランスの方々がクローネンバーグの映画を贔屓にしてくださっているのは知っていますが、でもねえ…。世界が注目する最大規模の映画の祭典の、しかも最も重要なポストに、こんな変わり者を据えていいのかと(正直・笑)。

おお、どうか神様。クローネンバーグが素っ頓狂な作品を選んで、世界中の映画ファンをドン引きさせませんように。

祈りが通じたのでしょうか(笑)。彼はパルムドールにダルデンヌ兄弟監督作の「ロゼッタ」を選出しました。当初は、栄えある最高賞には地味なのでは…という声もちらほら聞かれましたが、その後ダルデンヌ兄弟は次々と良作を発表し(「息子のまなざし」「ある子供」)、結果的に、クローネンバーグの先見の妙が証明されることになったのです。


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「ロゼッタ」(1999年製作)
監督:リュック&ジャン・ピエール・ダルデンヌ
脚本:リュック&ジャン・ピエール・ダルデンヌ
撮影:アラン・マクルーン
出演:エミリー・デュケンヌ(Rosetta)
ファブリツィオ・ロンギオーヌ(Riquet)
オリヴィエ・グルメ(Le patron)
アンヌ・イェルノー(La mere)他。

ロゼッタは母親とキャンプ場にあるトレーラーハウスで暮らしている。社会の最下層で貧しく生きる人種だ。ある日、ロゼッタは働いていた工場を突然クビになった。納得できず、暴れる彼女。とうとう警備員につまみ出されてしまう。
これからの生活苦を思って憂鬱になる彼女は、娼婦のように家に男を連れ込むアル中の母親と大喧嘩をやらかす。食べ物を調達するため、キャンプ場の管理人に内緒で池で釣りをするロゼッタ。
家計の足しにと母親の古着を街で売るが、ろくな金にならない。それに、役所では休職届けを受け取ってもらえなかった。うんざりして立ち寄ったワッフルスタンドで、新しい店員のリケと出会う。
リケは親切だった。ワッフルスタンドで仕事の空きがあることを知らせにきてくれたが、リケにトレーラー暮らしであることを知られたくないロゼッタは、彼に殴りかかってしまう。
彼女はワッフルスタンドで働き始めたが、またもや職を失うハメに。みかねたリケは、ロゼッタにこっそり自分が作っているワッフルを売ることを提案する。なんとか職を手にしたい彼女は、そのことをワッフルスタンドの社長に知らせてしまう。
当然リケはお払い箱になった。ロゼッタの裏切りを責めるリケ。ロゼッタは仕事が欲しいだけだと冷ややかに言い返す。しかし家に戻り、母親が酒に酔って眠りこける姿を見たロゼッタは、社長に電話をかけ、自分はスタンドをやめるのでリケを元の職に戻してやって欲しいと頼んだ。
何も知らないリケは、怒り心頭のままキャンプ場まで乗り込んできて、ロゼッタを追いかける。生きるために仕事が欲しいのに、なにもかもうまくいかない現実。その場に倒れ臥し泣きじゃくるロゼッタ。リケは黙って彼女に手をさしのべた。


全編音楽なし。手持ちカメラはロゼッタの視線で周りの光景をとらえます。ですから観客は、スクリーンを通じてロゼッタと同じ苦痛を味わう羽目になります。年端もゆかぬ少女が生きのびようとする、最低の生活。若者の特権である、夢ある未来を思い描くことも出来ない現状。でも、ひどい状況にただ甘んじるわけではなく、生きるために時には卑劣な行為をも辞さない姿に、観客はやりきれなさを感じるでしょう。
映画は、特にあざといストーリー展開があるわけではなく、貧困にあえぐ少女がなんとかサヴァイヴしようとする姿を淡々と映し出していきます。
主人公のロゼッタ役を演じたデュケンヌも、リケ役のロンギオーヌも全くの新人であるせいか、まるでドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥りますね。音楽や衣装、映像技術といったものに頼らない作品作り。しかしドキュメンタリーとは、明らかに次元の異なるある種の迫力…ドキュメントを超えたドキュメントとでも呼ぶべきパワーが漲っているのです。踏みつけられても踏みつけられても、やがて頭を起こす道端の雑草のように、ロゼッタも八方塞りな現実をいつか打破するときが来るのではないか。今作を見ていると、ラストに垣間見えるほんのささやかな希望に、実際に社会の底辺であえいでいる貧困層の若者への無言のエールを感じることができます。悪戦苦闘するロゼッタや似たような境遇のリケの姿を、付かず離れず見守るカメラは、そのままダルデンヌ兄弟のまなざしに直結しているのでしょう。
一切の虚飾を剥ぎ取った現実に、ほんの少しの希望を添えて観客に提出する。それがダルデンヌ兄弟の作品群に一貫して通ずる姿勢であり、また“映画”という芸術そのものに込めたメッセージだと思いますね。

クローネンバーグがこの作品を気に入ったわけがわかった気がします。彼も、極力ハリウッド的な映画ビジネスを避け、己の信念に忠実であり続けていますから。それが観客の混乱と困惑につながることも、ままあるのですが。
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