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zoom RSS “ブルータートルの夢 The Dream of the Blue Turtle”とスティング。

<<   作成日時 : 2016/02/21 21:58   >>

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英国の産んだ最強のトライアングル・ロック・バンド、ポリス The Police。1985年、ツアーを終えたバンドが活動を一端休止するのと時を同じくして、その中心人物たるスティング Stingはアメリカのジャズ界にこんな招待状を出した。

『君の才能、求ム!スティングと一緒に、ニューヨークのワークショップでセッションしてみないか?―“スティング”ことゴードン・マシュー・トーマス・サムナーより』


この彼の呼びかけに応じて集まった若手ジャズ・ミュージシャンたちの中から、とびきりテクニックに優れた者を選びだしたスティング。ウィントン・マルサリスの弟ブランフォード・マルサリス(サックス)、元ウェザー・リポートのオマー・ハキム(ドラムス)、元マイルス・デイヴィス・バンドのダリル・ジョーンズ (ベース)、ブランフォードと活動を共にしていたケニー・カークランド(キーボード)。超一流の腕を持ったミュージシャンばかり、かつ若さに溢れたパワフルな陣容である。スティングは、ポリスに参加する以前はジャズをプレイしていた経験がある。彼が本格的にジャズ畑のミュージシャンとがっぷり四つに組むプロジェクトを立ち上げたのは、いってみれば原点回帰のようなものだったのだろう。スリーピース・バンドとして、できうることは限界までやり尽くした感のあるポリスが事実上解散状態にあったこの頃、彼がもう一段階上のアーティストに成長するためには、どうしても必要だった通過儀礼であったと思われる。

さて、才能とやる気に満ちた4人のメンバーを選定したスティングは、かつてポリスのツアーでバックボーカルを担当していた、ドレット・マクドナルドとジャニス・ペンダーヴィスを加えて、新しく“ブルー・タートル・バンド”を結成した。1985年3月、バルバドスのレコーディング・スタジオで、書き下ろし済みの10曲のプロデュースをピート・スミスとスティングが行いつつ、ニュー・バンドのリハーサル及びレコーディングが開始された。そして完成したアルバム「ブルー・タートルの夢」は、1985年6月17日無事にリリースされたわけである。尚、アルバムからは“セット・ゼム・フリー”(ビルボード第3位)、 “フォートレス・アラウンド・ユア・ハート”(第8位)、“ラヴ・イズ・ザ・セブンス・ウェイヴ”(第17位)、“ラシアンズ”(第16位)の4曲がシングルカットされ、いずれもヒットを記録している。こうして、スティングのソロ・アーティストとしての輝かしい第一歩が踏み出された。


ブルー・タートルの夢
ユニバーサル インターナショナル
2003-08-27
スティング

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「ブルー・タートルの夢 The Dream of the Blue Turtle」
●収録曲
1. セット・ゼム・フリー
2. ラヴ・イズ・ザ・セブンス・ウェイヴ
3. ラシアンズ
4. チルドレンズ・クルセイド
5. シャドウズ・イン・ザ・レイン
6. 黒い傷あと
7. コンシダー・ミー・ゴーン
8. ブルー・タートルの夢
9. バーボン・ストリートの月
10. フォートレス・アラウンド・ユア・ハート(CDエクストラ)

どんなジャンルの音楽であろうと、1枚のアルバムの中には、気に入った楽曲があればそうでない楽曲もありますよね。あるいは、質の高い楽曲とそうでもない楽曲が混在する場合もあると思います。いわゆる“捨て曲”というやつがどうしてもあるのです。しかしこのスティングのソロ・アルバム第一弾には、捨て曲は存在しません。10曲すべてが、高い質とテクニック、テンションに支えられた名曲揃いなのです。ジャズ、ソウル、レゲエ、ロックンロール…多岐に渡るジャンルの音楽を貪欲に吸収しながらそのいずれにも固執しない、より自由な“スティング節”の構築に成功していると思いますね。彼はポリス時代にも、バンドの代表曲のほとんどを手がけてきましたが、ソングライティングの才能は、枯れるどころか今なお滾々と涌き続ける泉であるのだとしか考えようがありませんね。
現在の音楽業界では、ジャンルの融合はごく当たり前に行われています。様々な音楽の形態は、あらゆる方法であらゆる次元でミックスされ、また新たなジャンルの音楽を生み出しつつあるのです。スティングが凡百のミュージシャンと一線を画すところは、様々な音楽の本質をきちんと理解した上で、その真髄のみを抽出、自らの楽曲に反映させる技に長けていることでしょう。もちろんこれは、彼に真のインテリジェンスが備わっていなければ不可能ですし、言及するまでもなく高度の音楽センスは必要不可欠です。スティングは、図らずもソロ・キャリアの第一歩において、独自に昇華された“ミクスチャー・ミュージック”を完成させてしまったのではないかと思うのです。

“セット・ゼム・フリー If You Love Somebody Set Them Free”は、ポリス最後のアルバム「シンクロニシティー Synchronicity」からの世界的大ヒット曲“見つめていたい Every Breath You Take”へのアンサー・ソングであると言われます。歌詞の内容も、本当に愛する者ならばむしろ自由にするべきだというもので、ともすれば相手を束縛することにもなりかねない愛の形を一歩押し進めたと解釈できますね。アルバムの第一声をこの曲にしたのは大正解で、複数の巨大な才能がスパークするようなバンドの音を、見事にスティング独特の声で1つにまとめ上げていることが伺えるのです。インストゥルメンタルの部分によく耳を凝らすと、ジャズ特有の自由奔放なバンド・サウンドが闊達にうねっているように聴こえます。ですが、実はこれら全てが、考え抜かれたアレンジの上で展開されるアンサンブルだというのですから、もう脱帽するしかありません(笑)。小憎らしいほど自信満々にバンドの音をコントロールし、返す刀でオーディエンスをも挑発してみせるスティングには、ポリス時代よりも一層音楽を楽しんでいる余裕すら感じられますね。文句なくクールです。
“ラヴ・イズ・ザ・セブンス・ウェイヴ Love is the Seventh Wave”は一転して楽しげなレゲエ調の楽曲です。レゲエへの愛着はポリス時代から顕著でしたが、ここではさらに洗練された趣き。フェイドアウトしていくラスト、ちらっと“見つめていたい”の歌詞が口ずさまれたりして、遊び心も充分です。
“ラシアンズ Russians”は、グラミー賞でオーケストラをバックに演奏されていたのを鮮明に覚えていますね。重々しいメロディ・ラインに、当時の政治状況を意識したメッセージ色の濃い歌詞が乗ります。尤も、現在の世界情勢は、歌詞の指摘する内容から一転してしまいましたが。しかし、人類を巡る状況が混沌としているのは今も同様であるわけで、その中で未来ある子供たちを育んでいかねばならない親の苦悩は、さらに増したともいえるでしょう。それを考えると、暗澹たる気分に陥ります。
個人的に大好きな“チルドレンズ・クルセイド Children's Crusade”は、第1次世界大戦から現代まで、国家の駆け引きの犠牲になるのは常に若者たちの尊い命であると歌っています。静謐なメロディが、シニカルな歌詞を携えながら次第に盛り上がりをみせ、クライマックスではジャジーなアドリブを戦わせるバンド・サウンドへなだれ込む構成。何度聴いても引き込まれます。
そして、元々はポリスの曲であった“シャドウズ・イン・ザ・レイン Shadows in the Rain”。オリジナルも非常にパワフルでかっこよかったのですが、アレンジとリズム隊が違うと、こんなにもイメージが変わるものなのですねえ。曲のトップからテンションは高めで、バンドは水を得た魚のごとくすさまじい勢いで重いグルーヴを生み出します。何も考えずに、ひたすらうねるグルーヴに身を任せることのできる楽曲になりました。
スティングの少しハスキーな歌声が艶やかな、“黒い傷あと We Work the Black Seam”と“コンシダー・ミー・ゴーン Consider Me Gone”。地を這うようなグルーヴに酔えるジャジーな曲ですね。前者は、悲劇的な現状に静かに憤りをつのらせてゆく歌詞が、絶望の大きさを物語っています。後者の方は、新たにソロ・アーティストとしてキャリアを築いていこうとするスティング自身の本音がちらりと伺えるようで、興味深い曲ですね。
アルバム中最もアバンギャルドなイメージの強い“ブルー・タートルの夢 The Dream of the Blue Turtles”は、インストゥルメンタルです。各メンバーが自由闊達に演奏しまくっている楽曲なのですが、刺激的なサウンドに比して全体的なムードはコミカル。最後に聴こえる笑い声はスティングかしら。
深い深いウッドベースのリズムが印象に残る“バーボン・ストリートの月 Moon Over Bourbon Street”。歌詞から察せられる物語は、月明かりの下で密かに街をさすらうドラキュラの嘆きのよう。非常にドラマチックな楽曲で、その歌詞世界が映像になって目に浮かびますね。映画やドラマ出演にも積極的だったスティングらしい逸品です。また、スティングのボーカルとデュエットしているかのような、マルサリスの素晴らしいサックスが堪能できる曲でもあります。
“フォートレス・アラウンド・ユア・ハート Fortress Around Your Heart”は、広がりのあるギターの音が特徴的で、アルバムのラストを飾るに相応しい楽曲です。ロック調の力強いメロディをジャズ調のリズムが支え、感動的なクライマックスを迎えるこの曲は、リリースされてから20年以上経過しているとは信じがたい、今もって新鮮な魅力に溢れていますね。ただ奪い合うだけの激情的な愛ではなく、なにもかもを呑み込んだ上での包容が必要であると歌われる歌詞は、今こそ身に沁みるものではないでしょうか。

あらゆる音楽を愛し、受け入れる。でも迎合はしない。このアルバムは、ジャンルやスタイルのみならず、人種や文化の違いをも乗り越えて相互に理解し合おうと、身をもって示し続けるスティングその人を表す作品となりました。


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「スティング/ブルー・タートルの夢〜 A Band Is Born」(1985年製作)
監督:マイケル・アプテッド Michael Apted
製作:デヴィッド・マンソン
製作総指揮:ギル・フリーゼン
撮影:ラルフ・D・ボード
音楽:スティング
出演:スティング
オマー・ハキム
ダリル・ジョーンズ
ケニー・カークランド
ブランフォード・マルサリス

「ブルー・タートルの夢」のレコーディングが終了後、スティングはバンドを引き連れてパリに渡ります。目的は、ライブ・ツアーに備えてのリハーサルですね。
バンドは、更に高次元のコラボレーションを求め、17世紀に建てられたという洋館にこもってリハーサルを繰り返していきます。このドキュメンタリーは、リハーサルの模様と、その後行われたパリのマガドールでの初ステージに密着したものです。
面白いのは、カメラがとことんスティングのプライバシーを追っていること。二番目の妻トゥルーディー・スタイラーが息子ジェイクを出産したハプニングまでも挿入されるのです。スティングが神妙な面持ちで赤ちゃんの誕生に立ち会うシーンなど、アーティストとしての彼のイメージからはおよそ想像できないものでしょうね(笑)。まあ普通は、ミュージシャンの素顔を明らかにすると、途端に音楽が聖性を失ってしまうものです。ところがこのドキュメントは、そんな志の低い作品ではありません。スティングのみならず彼の周囲の人々全て(バンド・メンバーはもちろん、マネージャーまで!)の、パリでの暮らしぶりとリハーサル風景を徹底的に取材し、彼らの生の声を丁寧に拾い上げているのです。その結果、スティングたちが徐々にバンドの輪郭を作り上げていく過程を目の当たりにする臨場感は、ゾクゾクするほどスリリングになりました。そればかりか、作品を通じてスティングという人間像までもがくっきりと浮かび上がってくるのです。
白状すると、この作品を観るまで、私のスティングに対する心証は良いものとは言えませんでした。確かに才能はあるしカリスマ性も充分。彼1人でもポップ・アイコンになるであろうことは容易に理解できますが、なんというか、あの天上天下唯我独尊的イメージが癪に障っていたのですね(笑)。尊敬はするけど、あんまり好きにはなれないというか。しかしこの映画は、そんなスティングへの認識をすっかり改めさせてくれます。その知性の高さ、あらゆる“違い”を呑み込み、包容しようと努力する真摯な生き方を、本当にはじめて理解できましたね。また私自身は、スティングを英国人らしからぬメンタリティーの持ち主だと思いこんでいたのですが、さにあらず。彼のインタビューを見るにつけ、英国人の美徳のひとつであるユーモア感覚は、やはり彼にもしっかり根付いていることがわかります。以前ご紹介したスチュアート・コープランドの私小説風ドキュメンタリーでは、常に不機嫌で攻撃的で笑顔も見せなかった彼ですが、ここでは非常にリラックスしており、新しいバンドとの未知なる冒険に目を輝かせていました。

「燃え尽きるつもりはないし、とにかく常に前進していたい」

ミュージシャンとしても人間としても成熟しつつあった彼が、プレッシャーからも解放され新しいバンドとのセッションに打ち込む姿は、観る者の心を捉えて離さないでしょう。良いドキュメントとは、登場人物と同化するかのような臨場感と同時に、対象の全体像を観客にわかりやすく提示できねばなりません。その意味でも、この作品は遜色ない仕上がりだと思いますね。己の仕事への不満をカメラに向かって咆えるマネージャーには悪いですが(笑)、バンドのパフォーマンスがついにお披露目される初ステージのカタルシスは、極上の陶酔をもたらしてくれます。ステージの中央に立つスティング同様、私たちもまた、彼の音楽世界に起こった化学反応を驚きをもって体験しているのですね。あらゆる紆余曲折を乗り越えて手にしたエモーションは、なにものにも換え難いのであろうことが、ひしひしと実感出来る貴重な110分でした。日本では、レイトショーにて劇場公開もされました。


ブリング・オン・ザ・ナイト
ユニバーサル インターナショナル
2003-08-27
スティング

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「ブリング・オン・ザ・ナイト Bring On the Night」
●収録曲
Disk:1
1. ブリング・オン・ザ・ナイト〜ホエン・ザ・ワールド・イズ・ラニング・ダウン
2. コンシダー・ミー・ゴーン
3. ロー・ライフ
4. 黒い傷あと
5. 世界は悲しすぎる
6. ブルー・タートルの夢/破壊者
Disk:2
1. ワン・ワールド/ラヴ・イズ・ザ・セヴンス・ウェイヴ
2. バーボン・ストリートの月
3. アイ・バーン・フォー・ユー
4. アナザー・デイ
5. チルドレンズ・クルセイド
6. ダウン・ソー・ロング
7. サハラ砂漠でお茶を(CDエクストラ)内容:ラヴ・イズ・ザ・セブンス・ウェイヴ

さて、パリでの初ステージから3ヵ月後、10ヶ月に及ぶワールド・ツアーを敢行したスティングと仲間たち。
「ブルー・タートルの夢」の大成功も後押しして、このライヴ・アルバムにはステージの熱狂が存分に収められています。私としては、むしろこのライヴ盤の方を強くお勧めしたいほどですね。なんといっても、腕利きのジャズ・プレイヤーばかり揃えたバンドですもの、真の魅力はステージでこそ発揮されるでしょう。
キーボードを担当していたケニー・カークランドは既に故人となっているのですが、その彼の生前の鬼気迫る演奏が飛び出す1曲目から、バンド・サウンドはトップギアに入りっぱなしです(笑)。“ブリング・オン・ザ・ナイト”後半では、サックスのブランフォード・マルサリスがラップで乱入。スタジオでの演奏とは一味も二味も異なる絶妙なアレンジで展開される楽曲の数々は、ライヴならではの迫力が漲っていますね。これ以降、洗練の度合いを深めていくスティングのソロ・キャリアの中でも、「ブルー・タートルの夢」が特別な位置を占めているのは、このライヴ盤のせいであるかもしれません。




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