House of M

アクセスカウンタ

更新情報

zoom RSS 新世界と「アバター Avatar」。

<<   作成日時 : 2016/10/25 17:34   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

映画が公開された当時の今作の公式サイトには、“映画の歴史が変わる”という謳い文句がありました。

今では3Dによる劇場公開がすっかりデフォルトになっていますが、思い返せば、映画そのものが“3D”をスタンダードに加えるようになったのは、この作品がきっかけでありましたよね。その意味で「アバター Avatar」は、映画の歴史を確かに変えたといっていいでしょう。

とにかく、3D映えすることを念頭に置きつつ、スクリーンを最大限ダイナミックに躍動させた「アバター Avatar」の驚異の映像体験は、2009年当時の世界を驚愕せしめました。今見直しても、本当に素晴らしい。作品の世界興行収入は、歴代1位となる27億8800万ドル(当時のレートで約2518億円)を記録しており、批評面でも興行成績の面でも結果的に大成功を収めました。

しかしながら、映像技術だけでは優れた映画を作ることができないのは世の理。今作の成功要因は、エンターテインメント部分とドラマ部分の割合がちょうど良い塩梅に配合された、バランス感覚に秀でた部分にもあるのですね。映画でも文学でも音楽でも、要はバランスの問題なんですよ。いくら高尚な哲学を扱っていたとしても、それが独りよがりな映像にしかならないのなら、その作品は“映画”の機能を果たしていないことになると考えています。

画像

初見時の観賞直後感想を一言で。天空の城ラピュタ+風の谷のナウシカ+トランスフォーマー+エヴァンゲリオン+起動戦士ガンダム+エイリアン2+マトリックス+ダンス・ウィズ・ウルヴズ+フューチャー・イズ・ワイルドに、SFという調味料を加えてミキサーにかけたら、こんな作品が出来上がった…というイメージでしょうか。想像していた以上に良かった、というのが正直な感想です。CGやSFXの凄さ、戦闘シーンのド迫力は改めて指摘するまでもなく、162分の長尺をひとときも感じさせないテンポの良いストーリー展開には感心しているぐらいです。3Dでなくとも充分実感できる、尋常でない程の躍動感溢れる映像のつるべ打ち。そして要所要所に、自然破壊や先住民族への迫害やらを繰り返してきた人間へのメッセージも、非常にわかりやすく織り込まれています。先が読める予定調和の筋立てとバカにする人もいるでしょうけど、なかなかどうして、キャメロンの腕はまだ鈍っちゃいないと感じさせてくれます。なにより、彼のエポック・メイキング作品「タイタニック」にただの1ミリも共鳴できなかった私にとっては(苦笑)、これだけいろいろな要素をバランスよく1本の作品に収めてくれた力技に、にやける次第でありますよ。

10点満点中9点。今作を初めて見たフランスでは、2009年の12月16日から封切られました。私たちが見た12月17日午前の上映時間では、お客さんの入りはほぼ満員御礼状態。午後の上映時間も、チケット売り場に長蛇の列が出来ていました。いや、これこそは映画館のでかいスクリーンで観るべきものでしょうね。

画像

「アバター Avatar」(2009年製作)
監督:ジェームズ・キャメロン
製作:ジェームズ・キャメロン&ジョン・ランドー
製作総指揮:コリン・ウィルソン他。
脚本:ジェームズ・キャメロン
撮影:マウロ・フィオーレ
プロダクションデザイン:リック・カーター&ロバート・ストロンバーグ
編集:スティーヴン・リフキン&ジョン・ルフーア&ジェームズ・キャメロン
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)
ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)
シガーニー・ウィーヴァー(グレイス・オーガスティン)
スティーヴン・ラング(マイルズ大佐)
ミシェル・ロドリゲス(トゥルーディ)
ジョヴァンニ・リビシ(セルフリッジ)
ジョエル・デヴィッド・ムーア(ノーム)
CCH・パウンダー(ナヴィの女王モート)
ウェス・ステューディ(エイトゥカン)
ラズ・アロンソ(チューティ)
ディリープ・ラオ(マックス博士)他。

ジェイク・サリーは戦争で負傷して下半身不随になり、海兵隊を除隊した。ある日彼は、政府によってアバター・プログラムと呼ばれるプロジェクトに選ばれる。このプログラムに参加すれば再び歩くことができると聞かされたジェイクは、亡くなった兄の代わりに衛星パンドラへ向かうことを決意する。パンドラは色鮮やかなジャングルが生い茂り、地球上には存在し得ないすばらしい生き物や美しい植物で満たされた楽園だった。だがこの星の大気は人間に有毒であり、よそ者には牙を剥く恐ろしい生き物も生息している。パンドラに入植しようとする人間は、この星に研究者たちと軍隊を派遣していた。アバター・プログラムはパンドラに常勤するグレイス・オーガスティン博士が推進するもので、ジェイクはグレイスの元で働く学者ノームに連れられてプログラムに参加することになった。
パンドラには先住民がいた。科学テクノロジーとは無縁の生活を送り、パンドラの大自然の神秘と調和を保ちながら生きるナヴィである。彼らは、高い運動能力と6番目の感覚を持ち、身長3メートル、長い尻尾と夜には光り輝く青い皮膚を持った、人間によく似た種族だ。人間は、パンドラを植民地化してそこに眠る無限の鉱物を略奪してするため、その手先としてセイフリッジとマイルズ大佐を派遣していた。先住民族ナヴィを駆逐せんとする両者は、ジェイクをアバター・プログラムに参加させ、ナヴィ族とパンドラの地形を偵察する斥候の役割を担わせようとしていたのだった。その企みを感じ取ったグレイスをはじめ、パンドラの自然と素朴なナヴィ族を愛する研究者たちは、セイフリッジとマイルズ大佐と鋭く対立することになる。
そうとは知らないジェイクは、人間の遺伝子とナヴィのそれを操作することによって生み出された仮の肉体アバターを得て有頂天だ。アバターの肉体は宿主である人間の頭脳と連結し、人間の意識がそれをコントロールする。つまり、ナヴィ族にそっくりな外見を持つアバターに宿ることにより、その身体を通じて、パンドラという現実世界で実際に暮らす感覚を得るというわけだ。同じく分身アバターを持つノームとグレイスと共に、飛びぬけた運動能力を誇るナヴィの肉体を介し、ジェイクは再び躍動感を取り戻した。恐ろしいジャングルに置き去りにされたものの、そこでナヴィ族の王女ネイティリに救われたジェイクは、ナヴィ族に受け入れられ、自然と共にある彼らの生活様式を学んでいくのだった。ナヴィ族が眠りに落ちると、ジェイクの意識はそこで“目覚め”て人間の肉体に還る。ジェイクが見聞したナヴィ族に関する情報は全て、侵略軍の指揮を執るマイルズ大佐たちによって分析されていた。
ジェイクの肉体がアバターであることを知らないネイティリたちと、自身が侵略の一端を担っているとは知らないジェイク。3ヶ月の猶予を与えられたジェイクは、ナヴィ族の一員としてパンドラの自然を理解し、やがて心から愛するようになる。ネイティリと愛し合うまでになった彼は、アバターの肉体を手放すときが近づくにつれ、ナヴィ族と別れる辛さに耐えられなくなる。しかし、パンドラの地形を把握したセルフリッジと軍隊は、容赦なくジャングルを伐採し始めた。ナヴィ族と軍隊の間で板挟みになったジェイクは、なんとかナヴィ族を救おうと、数少ない味方とグレイスと共に孤軍奮闘することになる。

アバター ブルーレイ&DVDセット [初回生産限定] [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2010-04-23

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by アバター ブルーレイ&DVDセット [初回生産限定] [Blu-ray] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


そうですね…。おそらく今作をご覧になった方々の中には、“従来のSF映画やインディアンを扱った西部劇のおいしいとこばかりを寄せ集めただけじゃないか”と不満を持たれる向きもあったかと思われます。事実、私自身も観賞している間中、元ネタになったであろう作品の名前が脳裏に浮かんでいましたもの(笑)。
ですが、現在製作される映画の中で、本当の意味でオリジナルであるものなど存在するんでしょうかね。クエンティン・タランティーノの一連の作品、あるいはエドガー・ライトの作品(「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ」等)を観てみても、出尽くした感のある映画言語をいかに面白く組み合わせて再調理できるかという一点に、今の映画の成否がかかっているような気もします。それならば、この「アバター」もオッケーではないかなあ。

なにより私が気に入ったのは、ゲーム業界とタイアップしたことが画面からも丸わかりのファンタジックな映像ではなく(笑)、キャメロン監督の演出にスピードと躍動感が感じられたことです。ポイントは、主人公ジェイクが下半身不随の元海兵であること、そして彼がアバターという分身を通じてのみ真の自由を得られるという制約でしょう。彼は、歩くことすら出来ない不自由で灰色の現実と、アバターという仮の姿であれ、走り、飛ぶこともできる鮮やかな仮想現実の間で揺れ動き、悩みます。カメラは、ジェイクの心情を代弁するかのように何度も2つの世界の間を行き来し、しまいには仮想現実の方に彼にとっての“現実”を見出そうとするその姿に、観客の共感を沿わせようとしているようですね。この、いわゆる緊張と弛緩とでも呼ぶべき作用が、長尺のストーリーに中だるみを与えなかったのでしょう。…キャメロン監督はやっぱりこういうSFものを撮り続けるべきだよなあ(笑)。

画像

役者陣も良かったですよ。ジェイクに扮したサム・ワーシントン君は、「ターミネーター」のときにはあまりぴんとくるものがなかったんですが(ファンの方々ごめんよ)、今作では、いかにも元海兵っぽいマッチョな外見と裏腹に、繊細な内面を魅力的に見せてくれました。そんな彼が、現実と仮想現実との間のギャップに次第に苦悩してゆく姿には、私でなくとも大きな共感を覚えるのではないでしょうか。考えてみれば、映画だって我々観客にとっては一種の仮想現実。現実が過酷であればあるほど、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」ではありませんが、ひととき大きなスクリーンの中に逃げ込んでみたくなるでしょ?たとえ映画という夢の中だけでも、ジェイクが本当の自由を得られたのならば、それを観ている観客にも同様の満足感がもたらされると思いますよ。

今作が公開された当時、ジェイクが最終的に分身の仮想現実たるナヴィの世界を選択する結論に、批判の声があがりました。確かにジェイクの運命には、東洋的な輪廻転生思想の影響が感じられます。特にキリスト教的概念とは相容れないでしょうなあ。しかしながら、ジェイクの選択を“苦しい現実から逃避したいが為の身勝手なもの”と断じるのは、些か行き過ぎの批判だと思いますよ。現実世界だろうが、仮想現実だろうが、其処で生き抜こうとする者にとっては、同じように冷厳なものなのです。例えばジェイクのように、現実世界のしがらみを全て捨てて、別の世界に飛び込んでいくことには、大きな大きな犠牲が伴います。支払う犠牲と同量の、相当な覚悟も要求されるでしょう。簡単なことではないのですよ。

助演で登場するも、さすがの貫禄とオーラで画面をピシリと引き締めてくれるのが、シガーニー・ウィーヴァーです。ご存知、懐かしいキャメロン監督の「エイリアン2」のヒロインですね。映画雑誌に掲載された彼女のインタビューを読みましたが、今作の魅力を“童心に返る”ことができる点だと述べておられました。確かに。惑星パンドラの自然と、そこに暮らすナヴィたちの姿は、子供の頃ワクワクしながら読んだSF冒険活劇の実写バージョンそのもの。劇中、今年還暦だとは到底信じられない、若々しい笑顔を見せてくれる彼女も、気心知れた監督とともに今作の仕事を楽しんだに違いありませんね。

ジョニー・デップ主演の「パブリック・エネミーズ」で、ラストにデリンジャーを仕留める捜査官ウィンステッドを演じ、観客に強い印象を残したスティーヴン・ラング。FBIという体制側の人間でありながら、凛とした孤高を保つ誇り高き捜査官であった「パブリック〜」とは異なり、彼は今回軍隊という絶対体制派の人間、マイルズ大佐に扮しました。まあ、ホンマにやらしいぐらい、戦歴を刻んだ己の筋肉と傷跡を誇示する男でございましてね。物理的な力のみを信じる、頭の固い典型的なヒール役を、それは憎たらしげに演じておられました。“アメリカン・マッチョ”とはこういうもんだという自己主張を、自身の肉体で体現していて迫力でしたよ。彼は元々演劇畑の俳優さんなのですが、彼の有名な舞台に『Beyond Glory』という1人芝居があるそうです。ここでの彼は、アメリカで最も著名な英雄となったある軍人の光と影を見事にポートレイトし、各賞にノミネートされています。テレビや映画で演じる役柄も警察官や軍人といったものが多く、彼のタフな風貌は、やはり“権力”を連想させるものなのでしょう。

他にも、ジェイクと恋に落ちるナヴィ族の娘ネイティリを、素顔はまるで出てきませんがゾーイ・サルダナが好演しております。実は私が密かに愛する(笑)ウェス・ステューディも登場します。ナヴィ族の方のキャスティングも結構豪華でして、CCH・パウンダーなど、素顔が出せないのがもったいない扱い。でもまあ、この贅沢なキャスティングこそ、大作を縁の下で支える原動力となるものですよね。

画像

私自身がこの映画を愛する主たる理由は、例えば、ナヴィ族が暮らす手つかずの大自然の姿が、言葉では語り尽くせないほどの美しい映像で描写されている点です。太古の地球上、まだ人類に壊されたり汚されたりする前の地球上にも確かに存在していたはずの、人類全ての母なる自然。キャメロン監督は、そんな“地球から永遠に失われつつある本来の大自然”を、自然と共存するナヴィ族の生活を真の理想として描くことで礼賛しているのではないでしょうかね。母親に抱かれている赤ん坊のような無条件の愛情と信頼と敬意を向けられているパンドラ星の美そのものが、今作の主題であり、そんなところにキャメロン監督らしさを感じるわけです。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス

にほんブログ村

新世界と「アバター Avatar」。 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる