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zoom RSS ひまわりの花が咲いたら―「カレンダー・ガールズ Calender Girls」

<<   作成日時 : 2012/01/05 18:10   >>

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私たちは、たとえ盛りを過ぎても咲き誇る。

「カレンダー・ガールズ Calender Girls」(2003年製作)
監督:ナイジェル・コール
製作:ニック・バートン&スザンヌ・マッキー
脚本:ティム・ファース&ジュリエット・トウィディ
撮影:アシュレイ・ロウ&オリヴァー・カーティス
音楽:パトリック・ドイル
出演:ヘレン・ミレン(クリス)
ジュリー・ウォルターズ(アニー)
シアラン・ハインズ(ロッド、クリスの夫)
ジョン・アルバートン(ジョン、アニーの夫)
ペネロープ・ウィルトン(ルース)
ジョージ・コスティガン(エディ、ルースの夫)
セリア・イムリー(シーリア)
リンダ・バセット(コーラ)
アネット・クロスビー(ジェシー)
フィリップ・グレニスター(ローレンス、カメラマン)
ジョン・ポール・マッコール(ジェム、クリスの息子)
マーク・ピカーリング(ガズ、ジェムの友人)
ジェラルディン・ジェームズ(マリー)他。

夫と共に花屋を経営する闊達なクリスと、ひまわり好きな夫と仲むつまじいアニーは親友同士。性格は対照的な2人だが、だからこそとても気が合っていた。彼らは英国ヨークシャーの片田舎ネイブリーに住んでいる。英国の中でも、少し街中を離れれば、壮大な自然が広がる有数の土地だ。
自然は美しいが、その中で暮らすクリスとアニーたちにとって、ここでの生活は退屈きわまるものであった。中年女性たちの唯一の社交の場といえば、地元の婦人会のみ。毎週木曜日に催される定例集会では、ブロッコリーの栽培方法だの、敷物の歴史だの、格安海外旅行のすすめだの、眠気を誘う議題ばかりが取り上げられる。クリスもアニーも、ほとほと嫌気が差していた。
平凡ながら穏やかな毎日が過ぎる中、アニーの夫であるジョンが突然白血病で倒れてしまう。年齢的な問題もあり、ジョンの容態はあっというまに最悪の状態に。子供のいないアニーにとって、ジョンを失うことは耐え難い孤独を意味する。クリスは、不安と恐怖に苛まれる親友をなんとか力づけようとする。しかし必死の看護のかいもなく、ジョンはアニーに遺言代わりの詩を一遍残して逝ってしまった。

“ヨークシャーの花は女性に似ている。盛りを過ぎてもなお美しい…すぐ枯れてしまうのだが”

クリスは、ジョンの思い出をこの地に残すため、彼の最期を看取った地元の病院に彼の名前をつけたソファを寄贈しようと提案した。しかしそのためには費用を捻出しなければならない。彼女は、生前のジョンが、毎年婦人会が発行するカレンダーの売り上げを伸ばすためなら、自分がモデルを務めてもいいとジョークを飛ばしていたことを思い出した。そうだ、婦人会から有志を募って自分たちがモデルになってカレンダーを制作すればいい!でもただの写真ではダメだ。世間で話題になってカレンダーを売るためには、付加価値が必要なのだ。クリスが思いついた“付加価値”とは、なんと“ヌードになること”であった!
アニーはクリスのアイデアに驚きながらも、もし夫が生きていれば、きっと面白がってくれるだろうと考え直す。彼はこう言ったではないか、“盛りを過ぎてもなお咲き誇るのが女性だ”と。ジョンへのはなむけのために、また悲しみに沈むアニーを元気付けるために、とうとうこの大胆な試みが動き出した。
しかしながら、いくら芸術的な写真を撮るとはいえ、50歳をとうに過ぎた女性たちがヌードになるとは、あまりにも突拍子がなかった。第一そんなものを世間が見たがるのか。クリスとアニーの必死の説得にもかかわらず、仲間たちは尻込みする。お堅い婦人会の代表マリーも、そんな不埒な行動を許さじとばかり、あれこれ妨害工作を企てる。
周囲の嘲笑と妨害にもめげず、クリスとアニーは粘り強く交渉を続け、ついに仲間たちと他の有志の女性たちの賛成を得ることができた。自分たちの趣旨を理解してくれるカメラマンも見つけ、どこにでもいる普通の中年女性たちによるオールヌード・カレンダー作りが、ついに実行に移されたのだ。当初こそ、男性カメラマンの前で裸になることに躊躇する女性たちだったが、いざ撮影が始まると皆ノリノリだ。今脱がなきゃいつ脱ぐんだとばかりにドレスを脱ぎ捨て、裸でポーズをとる。彼女たちの生き生きとした美しい笑顔は、ひとつひとつカレンダーの中に収められていった。
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彼女たちの家族や、街の人々の反応は複雑だ。しかし出来上がったカレンダーはなかなかの出来栄えで、広く発行するために得たスポンサーの助けもあり、瞬く間に全英じゅうで話題になってしまった。マスコミはこの格好の話題に飛びつき、連日“カレンダー・ガールズ”たちにインタビューのマイクを向け、朝から彼女たちの家の前でカメラを持って待ち構える。もちろんカレンダーは予想以上の売れ行きを見せた。つい数日前まで退屈な日常に倦んでいた女性たちが、突然その動向を注目されるセレブになってしまったのだ。
舞い上がるクリスや仲間たちを尻目に、しかしアニーの内心は揺れ動いていた。そもそもは亡き夫ジョンへの追悼のために始めたことが、今や彼女たち自身のエゴの産物に成り果てているからだ。実際問題、有名になりすぎたための弊害も出始めている。クリスの息子ジェムは母親の行動のために傷つき、ドラッグに走ろうとした。クリスの夫ロッドはタブロイド紙の匿名記者に騙され、彼ら夫婦のプライバシーを世間に晒される羽目に陥った。
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カレンダー・ガールズがついにハリウッドに招待されるに至り、アニーの胸にくすぶっていた疑問は、より大きな不満となって親友クリスに向けられることになってしまう…。

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事実は小説よりも奇なり。以前ご紹介した「フル・モンティ」と同様、1999年ヨークシャーで素人女性によるヌードカレンダーが制作された事実を元にした映画です。
映画でも言及されていたように、アニーの旦那さんが白血病で逝去されたのを契機に持ち上がった企画だったそうです。白血病撲滅のために基金を作り、各団体へ募金するための費用を捻出するため。しかしそうした目的はともかく、いざヌード・カレンダーが出来上がってみると、その刺激的な話題性から、モデルになった女性たちはたちまちセレブに祭り上げられてしまいます。本当にハリウッドにも招かれて、有名なトークショー、ジェイ・レノ・ショーにもゲスト出演。CM にまで登場し、いっぱしの“時の人”扱いですな。

彼女たちが従来のモラルを突き破り、思い切って裸一貫でカメラの前に立つまでの奮闘振りは、見ていて実にすがすがしいものでした。現代は“露出狂”の時代とはいえ、やはりあの年代の女性たちが己の裸を人前に晒すのには、非常な勇気を要したでしょう。裸って人間にとって最もパーソナルなものですし、こと彼女たちは自分自身を抑制するように教育されてきたでしょうから。
でも彼女たちの表情を見ていると、いつの時代でも女性とは、チャンスさえあれば自身を思い切り解放する場を求めているのではないかなあと思いますね。いざ写真撮影が始まると、彼女たちの表情が俄然キラキラと輝き、より大胆になってくるからです。今まで家庭や世間によって押さえつけられていた自我が自由になったからでしょうね。その気持ちは充分理解できますよ。
また、人生の酸いも甘いも噛み分けた彼女たちの間で交わされる会話の面白いこと!話題が話題ですから、シモにまつわるジョークが頻繁に飛び交いますが、英国人特有の自虐ウィットや、含蓄溢れる格言にまぎれて全然いやらしくない。女性なら共感できる本音も満載ですしね(笑)。
世のたいていの女性がそうであるように、日常に埋没する人生から、ひょんなことをきっかけにその日常を飛び越えていった彼女たち。自分自身でさえ気づかなかった秘めたる自我に目覚め、それを乗り越えた先で見たものはなんだったのか。普通の女性が経験する戸惑いと喜び、その心の機微を丁寧に掬い取った脚本と演出には、思わず見惚れるものがありますね。
青い鳥を探し求めたあの兄妹は、結局家に帰って真実を手にしました。カレンダー・ガールズもまた、ひとときの夢の時間を冒険した後、懐かしい我が家こそが最高の幸せであったと実感します。それは当たり前のことながら、なかなか人生の中で気づくチャンスがないのも事実ですね。雄大なヨークシャーの自然の中で、以前と変わらずちょっぴり怪しげな太極拳に興ずる彼女たちは、しかし以前とは少し違う自信に満ちた表情で前を見据えているのです。

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大胆な冒険の言いだしっぺであり、親友のために威勢のいい啖呵を切って活躍する明るいクリスに扮したのは、「クィーン」でついにオスカーを獲得したヘレン・ミレンです。私にとってヘレンといえば、なんといっても「第一容疑者」!この傑作警察ミステリーでも明らかなように、ヘレンは強くてかっこいい女性を演じるとすごく輝く役者さんですよね。おまけに、まだ売り出し前のリーアム・ニーソンを見込んで、彼に徹底的にマナー等を教え込み、一流の俳優に育て上げたという逸話を持つほど、面倒見の良い姐御でもあります。ええ、もちろん、しっかりその間リーアムをご賞味あそばしたことは有名で、還暦を越えた今でも“セクシー・クィーン”の通り名を保持されているのもむべなるかな(笑)。実際、劇中披露される彼女の美乳(爆)は垂涎モノです。うらやましい限りですね。
彼女は、この情け深くて本音で生きているような女性クリスには、まさにうってつけの人材だったでしょう。周囲の期待に応え、彼女も世界中の映画賞にノミネーションを受けるほどの大熱演を見せました。時にパワフルに、時にコミカルに、また影ながら自分を支えてくれた夫には可愛らしく。万華鏡のように変幻自在に変化する女の感情を、様々な表情で演じ分けてくれました。個人的には、クリスが婦人会の本部で大演説をぶつシーンがお気に入り。世間が“オンナ”に強いる理想と、同時にそんなモラルに縛られる大勢のオンナたちにウンザリした、オンナ自身の鬱憤が発露する瞬間ですからね。これはおそらく、全ての女性が抱えているであろう現実的な本音だと思います。まあいかな女傑とて、分不相応な成功の美酒に二日酔いを起こし、なにより大切なはずの家族やアニーとの友情を失いそうになってしまうのも、また現実ではありますが。
アニーを演じたのは「ハリー・ポッター」シリーズでも知られるジュリー・ウォルターズ。ぶっ飛んでいくクリス(絶対B型・笑)と対照的な、物静かで芯の強い女性を好演しました。アニーのモデルになった女性のたっての希望で実現したキャスティングだそうですよ。クリスと共に冒険の第一歩を踏み出すことに躊躇はしないが、思わぬ騒動に浮き足立つこともしない沈着な性格。映画は、このアニーとクリスの絆を中心に進んでいきます。
ですから、彼女たちがハリウッドで言い争うシーンはいたたまれないですね。お互いがお互いのためを想って始めたことだったのに、その結果友情に亀裂が入るだなんて。「フル・モンティ」でも、最後の最後にガズとデイヴの間の絆が揺らぎます。しかし深い部分で繋がっている絆ならば、いつかは必ず修復可能であることも確かですよね。この作品も「フル・モンティ」も、英国映画らしく感傷的なシーンは最小限にとどめ、人間同士の絆の美しさを賛美する内容になっています。

鑑賞後の感想は爽やかなものでしたが、不満がないわけでもありません。それは、カレンダー・ガールズたちの周囲の人たちの姿が、ほとんど描かれていないこと。上映時間の関係上仕方ないのかもしれませんが、ガールズの変遷が丁寧に描写されているだけに、実に惜しい減点です。クリスの夫ロッドと息子ジェムの葛藤にスポットライトが当たれば、この物語はもっと深みをもったことでしょう。
ガールズが脱皮し、羽ばたいていった影には、周囲の人々の理解と不断の協力と犠牲があったと思われます。思えば、私たちが普段健やかに毎日をやり過ごせるのも、やはり周囲の理解と協力があってのこと。それを忘れてはいけないということですね。


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