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zoom RSS 子供の声を聞いてー「トムとトーマス Tom & Thomas」

<<   作成日時 : 2016/06/05 09:41   >>

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ショーン・ビーンの出演作品の中でも、家族でご覧になれる数少ないものを(自虐)ご紹介。…そろそろ「Bravo Two Zero」(この作品のタイトルだけは、日本語表記あるいは邦題にするのが凄くイヤ・笑)か「The Field」(国内版DVD出してください)の話もしたいですねえ。

僕らのパパは世界一!

「トムとトーマス Tom & Thomas」(劇場未公開)(2002年製作)
監督:エスメ・ラマーズ Esme Lammers
製作:ローレンス・ジールス&ディック・マース
脚本:エスメ・ラマーズ
撮影:マーク・フェルペラーン
音楽:ポール・M・ヴァン・ブルーゲ
出演:ショーン・ビーン Sean Bean(ポール・シェパード)
インデイ・バ Inday Ba(セリア)
アーロン・ジョンソン Aaron Johnson(トム&トーマス2役) アーロン・テイラー・ジョンソン Aaron Taylor-Johnson
ライアン・ネルソン(トム&トーマスダブル)
デレク・デ・リント(バンクロフト氏)
ビル・スチュワート(フィンチ)
ショーン・ハリス(ケヴィン)
ジェラルディン・ジェームズ(ミス・トロンプ)

クリスマスを間近に控えた冬のロンドン。街中にイルミネーションが輝き、ショーウィンドウには色とりどりの飾り付けがされている。雪のちらつくロンドンの片隅に、その施設はあった。身寄りがなくここに入所しているトムは、今夜も監視の目を逃れて部屋を抜け出し夜空を見上げていた。大好きな宇宙に思いを馳せる。彼の夢は、いつかこの施設を出て宇宙飛行士になることなのだ。
施設の裏口から、辺りをうかがうようにして大きな荷物を担いだ背の高い男と、施設の下働きをする小男フィンチが出てきた。フィンチは、施設の少年ビリーの私物を道に放り捨て、なにやら注射器を背の高い男に手渡そうとしている。2人が口論になった隙に、男の飼い犬がトムの匂いを嗅ぎつけて突進してきた!慌ててその場を逃れるトム。凍りついた道路に足をとられながら、必死に犬の追跡をかわす。だが途中で転んでしまった…。

トーマスは全身にびっしょり汗をかいて、ここで悪夢から目覚めた。番犬のライカが心配そうに見つめている。恐ろしさから眠れない彼は、父親ポールが夜通し絵を描いているリビングルームにやってきた。彼はひんぱんに悪夢を見る。ポールはただの夢だと相手にしてくれないが、トーマスにはわかっている。自分が観る夢は、もう1人の自分―トム―が体験している、本当に起こっている出来事なのだ。トーマスがいくらそう主張しても、大人達は…父ですら、トムは空想上の友達だと取り付く島がない。

結局トーマスがベッドに連れ戻された頃、トムも施設の冷たいベッドの中で身じろぎしていた。なんとか犬は巻いたが、先ほど目にした光景は一体なんだったのだろう…。彼は背の高い男とフィンチが自分を追い始めていることに、まだ気づいていなかった。

翌朝。父1人子1人の雑然とした家に、銀行からの督促の連絡が入る。ポールはこの家のローンに追われる身だ。今回も彼は画商のフレディに前借りしなければならない。トーマスは子供なりに父の窮状を察し、誕生日プレゼントはいらないと申し出た。

施設は、ビリーがここを逃げ出したことで持ちきりだ。怖がりのビリーがいなくなったなど考えられない。だがフィンチは恐ろしい形相で、昨晩の目撃者が落としていった帽子の持ち主を探していた。それはトムのものだった。
彼はあえなくフィンチに連れ出されてしまう。同じ頃学校の授業中だったトーマスは、トムのただならぬ気配を感じ取って怯える。一方トムも、バカと言われていきり立つフィンチに恐れをなしていた。彼は棒を振りかざし、昨晩なにを見たか言えと迫ってきたのだ。次の瞬間トムの頬に平手打ちが飛び、激痛はトーマスの頬にも伝わった。

フィンチはトムに折檻を加える。バンクロフト施設院長がビリーの失踪の件で警察が来たことを知らせに来て、トムは解放された。彼は必死の思いで窓ガラスに“助けて”と書く。しかしそのメッセージを見る者は誰もいなかった。
トーマスはトムの危機を察して、授業も上の空だ。トムは、再び彼を監禁しようとしたフィンチをうまく出し抜いて施設を逃げ出した。だが窓から落ちてしまい足をくじく。同じ痛みを感じて苦しむトーマスは、放課後居残りさせられた。担任の先生はポールを呼び出し、トーマスがノートに書き付けた“助けて”の文字を見せる。トーマス自身になにか心の問題があると考えた彼は、福祉委員のミス・トロンプに相談するよう父子に促した。
最近成績もおもわしくない息子を憂う父に、トーマスは火星に行く勉強をするんだと言い張る。それがトムの願いでもあるから。父子はミス・トロンプを家に迎えるために、ごった返した部屋を片付けた。トーマスは父の心配などどこ吹く風で、アポロの月面着陸時の交信記録を暗唱し、階下の住人宛ての飛行雑誌を読みふける。果たして“総督”と呼ばれる彼女は時間通りにやってきた。トーマスは授業中も上の空で独り言をつぶやくことが多い。友達も少ない。彼は養子だが、それは本人も理解しているはず。だがミス・トロンプは、一時的に彼を寄宿舎に預けてはどうかと提案した。仕事と育児の両立に悩むものの、亡き妻ならきっと反対するだろうと、ポールは気が進まない。

デパートにはプレゼントを買い求める人々がごったがえし、サンタクロースの扮装をした呼び子が買い物客に愛想を振りまいている。ロンドンはクリスマス一色だ。だが帰る家もなくさすらうトムには食べるものとてない。仕方なく、ハトに餌をやっているおばさんからパンをめぐんでもらう。寒さをしのぐため、トムはデパートで売っていたコートを万引きする。すぐ警報が鳴り、警備員が追いかけてきた。だがその男は心臓病持ちの男だった。走って発作を起こしかけた彼を助けたトム。男は代わりにトムのコートについているタグを取ってやる。トムにとっては、願ってもないプレゼントとなった。

誕生日プレゼントを買いに出かける途中のトーマスとポールは、今まで顔を見たこともなかった階下の住人と初めて鉢合わせした。彼女はシリアという。女性ながらパイロットを務めている。いつか街角で見かけた、かっこいいバイクにまたがっていた人だ。彼女が独身だと聞いてなぜかうれしそうなポールの気持ちを代弁するかのように、トーマスはシリアを誕生日パーティに誘う。

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トーマスは、トムが万引きしていった同じ店で、同じコートをプレゼントにせがむ。彼らは続いて宇宙博物館にやってきた。ポールが息子に隠れてサプライズパーティを企画する間、トーマスはぶらぶらと鏡の部屋で遊ぶ。それより少し遅れてトムも同じ博物館に入ってきた。なにかに引き寄せられるように鏡の部屋に足を運んだトムは、そこで自分と全く同じ顔をした少年―トーマス―がたたずんでいるのを目の当たりにした。おまけに着ているコートも全く同じ。錯覚ではない。トーマスはトムの頬に触れたのだから。そのとき迷子の館内放送が流れ、トーマスはその場を駆け出していった。彼はトムをこの目で見たと父に訴えたが、かんかんのポールは聞く耳を持たない。
トーマスは、養子に来たころ腕につけていたペンダントの飾りをしげしげと眺める。片割れがどこかにあるはずだ。きっとトムの腕にもあったはずの片割れが。

その夜フィンチは、トムも見つけ次第外国に売り飛ばすと相棒の男に脅された。どうやら彼らは、施設の子供達を闇のルートで斡旋する悪事に手を染めていたようだ。そしてそれにはバンクロフト院長も一枚噛んでいたのだ。

閉館した宇宙博物館では、管理人が館内で眠っていたトムを見つけた。警察に知らされれば一巻の終わりだ。だがこっそり家を抜け出したトーマスも、同じ頃博物館に足を踏み入れていた。管理人が2人の少年に混乱している間に彼らは博物館を脱出し、ようやく再会を果たしたのであった。
朝日が昇る。アポロの月面着陸交信記録、うまくことが運んだときの合言葉は“タッチダウン!”。これだけで彼らはお互いがトムとトーマスであると確信できる。トーマスはポールに内緒でトムを家に連れ帰った。いくら父親でも、やはり大人は信用できない。なぜなら彼らはすぐに警察に通報するからだ。ライカは、大好きなトーマスが2 人いるのを見て驚く。トーマスがゲームソフトを探している間に、トムの方がポールに呼び出されてしまった。ポールが息子に黙って誕生日パーティを準備していたのだ。いきなり見ず知らずの人たちにハッピーバースディを歌われ面食らうトム。彼にとってはおばさんもおばあちゃんも赤の他人だ。施設で教えられたとおり、皆にきちんと敬語をつけて感謝する。だがその姿は大人達には奇異に映る。ドア越しにトムが招くピンチを感じ取ったトーマスは気が気ではない。その上、何も知らない父は仲の悪いクラスメイト、ブルースまで呼んでいる。意を決したトーマスは、プレゼントされた宇宙服に身を固めてパーティに紛れ込んだ。案の定ブルースはトムに絡み、喧嘩っ早いトムとの間に一触即発の雰囲気が流れる。なんとかその場は無事収まったが、トムと入れ替わったことがバレないうちに、トーマスは早々にトムを自室に引っ張り込んだ。ポールのエージェントでもあるフレディは、新しい絵の催促をした。トーマスにかかりきりのポールには頭の痛い催促だ。

トムは、施設で何人もの子供が行方不明になっている事実をトーマスに説明した。誰かに誘拐されたに違いないが、証明する手立てがない。それに、2人が双子であると実証できれば、ポールは正式にトムも養子にするだろうが。
翌朝トーマスは、シリアの家のドアにメッセージを差し入れた。プレゼントしてくれた飛行訓練用のシュミレーションゲームに関する質問だ。シリアのゲームはいかしているが、肝心のテスト勉強はさっぱり。学校からの帰り、トーマスは施設に忍んでいった。フィンチと相棒の男が揉めている。
突然帰宅したポールに怒られ冷や汗をかいたトムは、施設の鍵の隠し場所を見つけたトーマスに、双子の証拠となるペンダントを探そうともちかけられる。だがさしあたっての問題は夕食だ。ポールにばれないよう、彼が台所に立った隙に1人づつかわりばんこに食卓につく。ポールがパーティで態度をトムに説教し始めると、トムはつい生まれついての汚い言葉で応酬してしまった。行儀よくしないと寄宿舎に入れられる。雲行きが怪しくなってきたことを察知したトムは、慌てて世界中の首都の名前を諳んじてみせた。トーマスがいくらがんばっても一つも覚えられなかったのに。施設では、毎朝の体操のときに機械的に暗唱していて、うんざりするほど頭に入っているのだ。
夕食後、シリアがポールの家にやってくる。今夜は彼女はトーマスのお客さんだ。真剣な表情で一緒にゲームをする2人の姿を見て、ポールの胸になんともいえない感慨が去来する。

入れ替わり作戦が成功した双子は、学校でも入れ替わることにする。地理のテストの前に、トーマスはトイレでトムと入れ替わった。算数のテストのときはトーマスが教室に。これで成績はAとB。今日はトムがポールの車に乗る番だ。トーマスはブルースとの喧嘩の仕方を教わる。初めてブルースをやりこめて意気揚々のトーマスは、校門を出たところでトムを付け狙う男とかち合ってしまう。自転車で街中を逃げ惑うトーマス。獰猛な犬をけしかけられ、デパートの中を駆け抜ける。だが到着した警察にあっさり捕まってしまった。
家ではトムがトーマスの身を案じていた。ポールは突如良くなった息子の成績のことをミス・トロンプに知らせる。ミス・トロンプのいる福祉課では、最近施設からの脱走者が増えていることに不審を抱いていた。その行方不明になった子供のリストの中に、トーマスと瓜二つの少年トムを見つけて息を呑むミス・トロンプ。
トーマスは警察によって施設に連れてこられる。彼は皆の前で自分はトーマスで施設の子供ではないと訴えるが、もちろん誰も信じない。バンクロフト院長と腰ぎんちゃくフィンチに囲まれ、トーマスは絶体絶命となった。
ポールは完成したばかりの妻ローラの肖像画をトムに見せた。彼女が亡くなって以来初めて描けた笑顔の絵だ。だがトムはそれどころではない。
トーマスはフィンチの手を振り払い、バンクロフト院長の部屋に舞い戻った。院長はミス・トロンプからの電話に必死に釈明しているところだった。彼は証拠隠滅のために、トムを施設に預けた女性からの手紙を燃やそうとしていたのだ。トムに双子の兄弟がいるとわかれば、自分達が陰で行っている人身売買も明るみに出る。トーマスは、焦げかけた手紙と封筒の中に入っていたペンダントの片割れを身に付ける。しかし逃げようとしたところでフィンチに捕まり、物置小屋に押し込められ注射を打たれた。
トムはここにいたってついに、ポールに自分がトーマスではないと明かしたが、なにがなんだかわからないポールには寝耳に水の話だった。早く施設に行ってトーマスを助けないと手遅れになる。トムはフィンチに折檻された傷跡をポールに見せた。トムは医者を呼ぼうとするポールを振り切って、施設に走る。ライカがついていく。仕方なくポールもトムとライカの後を追っていった。
施設の裏口からトーマスが運び出されていった。トムは間一髪で車に滑り込む。ポールはライカと共に施設に入り、バンクロフト院長にトーマスの行方を訊ねる。そのとき、トーマスに持たせたはずの携帯がフィンチの手にあることを知った彼は、フィンチと院長の態度に不審なものを感じた。施設の物置小屋で恐ろしげな手術道具や薬品を発見した彼は、急ぎ警察に通報する。

一方トーマスとトムを乗せた車は、無情にも空港に到着した。トーマスは動物達と一緒に飛行機に乗せられ、ナイロビに送られるのだ。その便の機長はシリアであった。トムは意を決し、荷物に紛れて同じ飛行機に乗り込む。
施設では、警察が姿を消したフィンチとバンクロフト院長を探していた。唯一の目撃者であるピート少年から、2人が空港に向かったという情報を得るポール達。空港では、フィンチとバンクロフトが高飛びしようとしていた。商売も潮時だ。

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シリアは飛行機を離陸させる。ホイールベイにひそんでいたトムもろとも。トーマスは薬が切れて目を覚まし、あらん限りの力で檻を蹴り始めた。トムも次第に寒くなる機底で、必死に手足をばたつかせる。その物音に驚いた動物達が暴れ、機長であるシリアにも報告が届く。
ポールは警官隊を引き連れ、空港にやってきた。フィンチを見つけたが、慌てた彼は銃を抜く。ロビーに悲鳴がとどろいた。フィンチは逃げ込んだトイレで警官隊に逮捕される。
ホイールベイは零下24度まで下がった。トムは凍え動けなくなる。シリアは、少年が滑走路を走る姿を見たのが、どうしても気がかりであった。もしその子が機底にひそんでいたら?今頃凍りついているはずだ。副機長は彼女の胸騒ぎを一笑に付すが、シリアは機長権限で空港に引き返すことを決断する。機はすぐに空港に戻り、シリアはホイールベイの中でトムが意識朦朧となっているのを見つけた。
トーマスをナイロビの組織に売り渡そうとしていた男は、トーマスに致死量以上の麻酔薬を打とうとして、突如意識を回復したトムに飛び掛られる。彼はトムを人質に飛行機を降りようとしたが、到着した警官隊に取り囲まれそのまま御用となった。ポールは再び倒れこんだトムに駆け寄る。そこに、シリアによって救出されたトーマスがやってきた。初めてトムとトーマスが会話するのを目の当たりにしたポールは、ただ呆然とするしかなかった。

数日後、トムとトーマスは街角のテレビニュースで、バンクロフト院長が違法の児童誘拐のかどで逮捕されたことを知った。連れ去られた子供達は無事保護されたという。双子はポールに、手紙をもう一度読んでくれるようせがんだ。もう何度も読んでやったのだが、待ち合わせたシリアがやってくるまでの間、ポールはもう一度絵本を読むように手紙の内容を話して聞かせた。
9年前彼らを生んだ母親は、病院の前に生まれたばかりの双子の赤ん坊を置き去りにした。育てる自信がなかったからだ。だがその手紙を残した女性が、トムをコートの下に隠して連れ去った。だから病院のスタッフがトーマスを見つけたときには、彼らが双子だなどとわからなかったのだ。そしてトーマスはポールの家に引き取られ、トムの方はやがて施設に引き取られることになったというわけだ。

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シリアがバイクにまたがってやってきた。ポールは目を輝かせて婚約者を迎える。双子は宇宙博物館に行きたいと声をそろえた。「お願い、パパ」と。トムもポールをようやく“パパ”と呼べるようになったのだ。こうして“家族”になった4人は、意気揚々と博物館に向かう。明日はクリスマス・イヴ、双子に“家族”という名の最高のプレゼントが贈られた。

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ショーン・ビーンが、「ロード・オブ・ザ・リング」の撮影の合間を縫って参加した作品です。彼にとっては初めてといってもいいぐらいの、善良で普通の父親の役柄でした。おまけにこのキャラクターは、彼が若い頃に憧れていたという画家でもあります。彼がこの作品を、出演作の中でもお気に入りに挙げているのも頷けますね。

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ストーリーの方は、養子として引き取られた子供に、実は生き別れになった双子の兄弟がいて、そこに孤児院施設での児童誘拐の陰謀が絡んでくるというもの。トーマス少年が未だ見ぬ双子の兄弟の存在を第6感で感じ取る様子や、孤児院に入れられているトム少年の方が孤児院での悪巧みから逃れようと孤軍奮闘する様子などは、子供向け映画とはいえ、かなり力の入ったサスペンスタッチで描かれています。トーマスとトムが、双子ならではの意識の共有に導かれ宇宙博物館で初めて対面するまでは、画面になかなか心地よい緊張感が漂います。
2人が再会を果たしてから、トーマスの父親であるポールを欺いて2人で1人の人物“トーマス”を演じるコミカルシーンは、子供ながらに大人の世界に知恵で挑む痛快さを感じさせて厭味がありません。まあ普通に考えればね、いくら双子とはいえ、ちょっとした仕草や言葉などで、9年間も一緒に過ごした自分の息子とそうでない子供の違いぐらいわかりそうなもんですが。ここはポールパパのお人よしさ加減に免じて、あくまでも子供向けファンタジー物語と受け入れることにしましょう。

さて、せっかくうまくいっていた双子入れ替わり作戦ですが、いつまでも大人を騙しおおせるものではありませんね。トーマスとトムが双子の兄弟であることを、きちんと証明しなければ。正直なところ、最初から実は2人が兄弟だったのだとポールに明かしておれば、後半に起こる騒動は避けられたのかも知れません。しかしここで気に留めたいのは、トムが幼い頃から大人の愛情に飢えた環境で育ったということ。彼は孤児院の中ですら、守ってもらえる後ろ盾もなく常にサバイヴしなければならなかったのです。周囲にいる大人達は、身よりもなく孤独な彼がどうなろうと誰も気にかけない。そんな状況で彼に大人を信用せよと言ったところで、どだい無理な話でしょうね。だからトーマスがポールに相談しようと言っても、トムはかたくなにそれを拒むのです。大人は信じられないからと。この辺りの子供の描写は、ディケンズ作品に出てきそうな、イギリスならではのシニカルな視線が感じられますね。現実でも、ストリートチルドレン化する孤児が世界中にあふれる昨今、あながち虚構だからと捨て置けないことです。

ここでちょっと余談を。私はこの作品はフランス版と国内版を持っていますが、フランス版には、トムがフィンチに暴力を振るわれるシーンはカットされていましたね。フランスに限らず、大人による非力な子供への暴力(性的なものも含め)問題は、今や世界規模で憂うべき深刻な状況となっています。映画業界には、視覚的刺激の強い映像作品でこういった描写を映し出すのを嫌悪する傾向も根強くあり、良くも悪くも映画は時代を映す鏡であることの証明となっています。
またこの作品には、トーマスが児童誘拐組織に捕まり、動物用の檻に入れられた上に海外に売り飛ばされていく様子も丁寧に描かれています。これは実際にありうる暗鬱たる現実であり、今も尚明らかにされていない人身売買の闇に、嫌が応でも思いを馳せざるを得ません。単なるファンタジー映画にいくばくかの翳りを感じるのは、おそらくこうした描写のためでしょうね。
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トーマスがさらわれ、ポールの理解が得られなかったトムは、単独で兄弟を救いに向かいます。“施設”のうさんくさい管理人を目の当たりにしたポールも、ここに至ってようやく葉を真剣に受け止める気持ちになります。トムが1人で空港の滑走路に入り込み、あまつさえ整備技師の目をすり抜けて飛行機にもぐりこんでしまうくだりは、いくらなんでも奇想天外にすぎますが、要は自分の命を投げ出しても大事にしたい人間の絆があったのだということ、大人はやはりどんなにつまらぬことでも、子供の言葉にきちんと耳を傾けねばならないという教訓だとも思えますね。

クライマックスでは、トムの大活躍により悪漢どもはあえなく駆逐されます。虐げられ続けた弱者である子供が、強い力を持つ悪い大人をこらしめたのですね。このある種の逆転劇が、観客特に子供達にカタルシスを与え、シカゴ国際子供映画祭で審査員賞を受賞した要因ともなったのでしょう。でも大人たる私達が注意しなければならないのは、ここでこらしめられている大人は、なにも悪者ばかりではなく、子供の言葉に耳を貸そうとしない親達も含まれるということです。子供が発するサインは、子供の目線まで下がっていかないとわかりません。日々の生活に埋没しがちな私達も、ここら辺でちょっと反省する必要があるでしょう。

さて、この作品の主たるプロットそのものは、殊更斬新さを感じるものではありません。演出も定石どおりの域を越えませんしね。しかし、主軸となる物語とは直接関係ない、ちょっとしたサイドストーリーになかなかいい気分にさせてくれるシーンがあるのです。例えば、1人でロンドンをさすらうトムがコートを万引きするところ。その店の警備員は、一見、弱者の敵たる典型的な大人としてトムに迫ってきます。が、発作を起こしてしまった彼は逆にトムに助けられ、職を失うのも省みず、この万引き少年を逃がしてやるのですね。時はクリスマス。犯罪に頼らざるを得ない、社会の底辺で苦しむ子供達にも、これぐらいのサプライズがあってもいいじゃないかと思わせてくれます。
そして、トーマスを男手一つで育てるポール。冒頭では、彼は妻を亡くしたショックから立ち直ってはいませんでした。それでも出来うる限りの愛情を込めて、懸命に子育てをしようと頑張る姿は、同じように子育てに悪戦苦闘する親御さんたちの共感を呼ぶのではないでしょうか。彼が描く妻の肖像画はいつも悲しげでした。彼自身の心境の現れですね。しかし、美しくも凛々しいシリアと出会ってからは、新しい恋愛の対象を見つけた思春期の少年のように高揚してしまいます。彼は映画後半になって初めて笑顔満面の妻の肖像画を完成させることで、ようやく妻の死という現実を克服できたのです。そのせいで、息子へ注がれるべき注意力が若干散漫になってしまったことは否めないでしょう。
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まあでも、仕事と子育ての両立というのは、どこの国の親にとっても同じように難問なのだなとしみじみ思いました。ポールがトーマスのために不器用ながらも奮闘する様、その努力がが今ひとつ息子とかみ合わないおかしさ、逆にしっかり者の息子のほうが父を思いやる微笑ましさ。画面に丁寧に施された父と息子の描写はさりげなくも愛情に満ち、トムとトーマスの物語を柔らかく受け止める受け皿の役目を果たしているのでしょうね。ショーンも、他の作品で見せるような怜悧な表情はなく、始終伏し目がちです。若干高めの声で、舌足らずにも聞こえる独特の訛った英語をしゃべり、いつもより格段に気弱そうな男を好演していました。

作品全体の印象は、昔読んだドイツの児童文学作家エーリッヒ・ケストナー(1899年2月23日生まれ1974年7月29日没)の著作の雰囲気と似ています。「エーミールと探偵たち」や「飛ぶ教室」、「ふたりのロッテ」等の作品ですね。「トムとトーマス」を観ていて感じたのは、これらの作品は、大人になった今でこそ深い感銘を受ける物語ではないかということです。

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ごくごく一部にしか需要のない情報ではありましょうが、マニアックなトリビアをひとつ。最後に不器用なパパ・ショーンと結ばれる素敵な女性機長さんセリアを演じたインディ・バですが、実は「クリミナル・マインド」のホッチ捜査官役で知られるトーマス・ギブソン氏主演の珍品(でも、後半の裁判シーンから結構面白い展開になりますよ)「モンキー・キング The Lost Empire」の冒頭部分にちらっとだけ登場します。黒のスーツでびしっとキメた社長秘書役でした。シャープなお顔立ちなので、「トム&トーマス」然り、キャリア志向の女性を演じるとお似合いですね。「モンキー・キング」では出演時間はほんのわずかなのが非常に残念。トーマス演じるニコラスと最終的に結ばれる“女神”より、本編には全く絡まないインデイの印象の方が強いのは、おそらく私の思い入れのせいでしょうね。そのインデイ、2005年に32歳の若さで亡くなってしまいました。女優としてのキャリアが花開こうとしていた矢先の悲劇。返す返すも残念でなりません。


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