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zoom RSS 「ジム・ヘンソンのストーリーテラー The Storyteller」Part3―ジム・ヘンソン監督

<<   作成日時 : 2014/07/18 00:04   >>

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第7話「三羽のカラス」(ドイツ民話より)
監督:ポール・ウェイランド
ゲスト出演:ミランダ・リチャードソン(魔女)
ジョナサン・プライス(王)
ジョエリー・リチャードソン(王女)
ロバート・ハインズ(王子)

(物語)
11月のとある日、ある国で女王が亡くなってしまった。遺された王様と3人の王子、王女は、国民と共に母の死を嘆いていた。

弔問の列は途絶えることなく、国中に悲しみが広がる中、ただ1人魔女だけは顔に冷酷な笑みを浮かべて、王様に取り入ろうとてぐすね引いて待ち構えていた。彼女は絶大なる権力を手に入れ、女王の証である冠を頭に頂きたかったのさ。失意のどん底にあり、放心状態の王様にいともたやすく近づくと、邪法でもって自らの顔を亡き女王そっくりに映してみせた。王様はすぐさま魔女の手に堕ち、彼女と再婚すると子供たちに告げた。

しかししっかり者の王女は、魔女の心に隠された悪を敏感に感じ取り、容易に心を許そうとしない。魔女は亡き母を想い続ける4人の子供たちを排除しようと、毎日彼らに恐怖を与えた。王様は魔女の魔法に操られてはいたが、時に彼女の見せる顔が邪悪なものであることに恐れを抱いた。そしてある日こっそりと、子供たちをピンク色の別荘に連れて行ったのだ。この家は美しい森の中にある小川のほとりに建ち、魔法の糸をたどらねば絶対に見つからないという。王様は子供たちをここに避難させたのだな。

もちろん魔女は王様の目論見を見破り、コウモリの姿に化けて魔法の糸を発見した。彼女は自分で邪法を織り込んだシャツを手に糸をたどり、隠れていた子供たちの前に現れた。王様は魔女の邪法により森の中で迷い、子供たちの元へ赴くことが出来ない。魔女はその隙に王子たちに邪法をかけ、彼らを真っ黒のカラスにしてしまった。王女はその様子を目の当たりにし、助けを求めて慌てて駆け出す。王様は王女の叫び声を聞きつけ、魔女に詰め寄った。魔女は王様の関心を引くことが出来ないと悟ると、悪鬼のごときまなざしで王様をねめつけた…。

王女は走り続けたが、やがて森の中で力尽きた。そこに3羽のカラスに身をやつした王子たちが現れ、彼らを助けるため、王女に3年3ヶ月3週間と3日の間口を閉ざしてくれと頼み込んだのだ。そうすれば彼らにかけられた呪いは解ける。王女は自らの口に指を当てて、誓いを立てた。しかしそれは、彼女が挨拶はおろか、筆談すら出来ない状態に追い込まれることを意味する。王女は人目を避け、森の中で木のうろを寝床に長い間ひっそりと暮らした。ところがある日、別の国から1人の若い王子が森にやってきた。彼は何も話そうとしない王女を見て、彼女が口のきけない娘だと勘違いした。そして彼女を哀れみ、食べ物を渡して自分の身の上話やら今までに経験したことなどを語ってきかせたのだな。王子はやがて王女の美しい瞳や唇に魅了されていき、それから毎日彼女の元へ訪れた。王女も王子に惹かれ2人の心が通じ合うようになると、とうとう王子は彼女に求婚した。

王子は王女を自分の国に連れて帰った。驚いたことに、その王子も母を亡くし、年若い継母をもらったのだという。王女の胸は張り裂けそうであった。なぜなら自分も同じ境遇だったのだからな。王子は両親に彼女を紹介したが、王様の隣にはあのにっくき魔女がいるではないか!魔女は王女の父王をさっさと毒殺し、別の王様の後妻に納まっていたのさ。なんたること!魔女の魂胆を見抜いていても、王女には一言も話すことは許されない。彼女にできることといえば、憎しみと怒りを込めて魔女をにらみつけることだけ。もちろん魔女の方も逃した王女を憎み、2人の女の間には静かな、しかしマグマのように熱い闘いの幕が切って落とされたのだ。

王女はやがて身ごもり、元気な男の子を出産した。王女はたった一度でいい、息子の名前を愛情を込めて呼んでみたかった。魔女は舌なめずりしながら玉のような赤ん坊を見つめている。ある朝王女が目覚めると、その腕には赤ん坊はおらず、代わりに人形がいた。なにがあったのか答えられない王女は、苦しみのあまり庭の地面に穴を掘り、穴に向かって一晩中気がふれたように叫び続けた。全ての悲しみを吐き捨てるようにな。3羽のカラスは王女の頭上で舞っている。約束の日はまだ先なのだ。王女は、どんなに辛くとも誓いを守らねばならない。一方魔女は、王女が赤ん坊を殺めたのではないかと王子に吹き込みおった。

まもなく王女は無言のまま2人目を出産した。沈黙の誓いを立ててから2年2ヵ月後のことだ。王女は昼も夜も眠らず赤ん坊の傍にい続けたが、ついに疲れのためにまぶたを閉じてしまった。翌朝、彼女の腕の中にはきいきい泣き喚く子豚が抱かれていた…。今や城の中では、口さがない者たちが、子供を2人も失った王女の過失を責め立てている。彼女が話せないのもきっと魔女の呪いのせいだろうとな。王子の王女への信頼もついに揺らぎ始めてしまった。魔女はここぞとばかりに邪法を駆使し、亡き王子の母の顔を王子に見せる。彼女は王女に見張りをつけようと約束する。3ヵ月後3人目の赤ん坊が生まれたが、王子は継母の勧めのとおり赤ん坊を他所に預けようとする。もちろん王女は頑として受け入れない。魔女の目がぎらぎらと輝き、眠る赤ん坊と王女をにらみつける。出産の疲労に勝てず、とうとう王子も眠ってしまった。彼らが目覚めたとき、既に赤ん坊はおらず、ベッドは一面灰だらけになっておった。王子は怒り狂い、王女を魔女だと断罪した。魔女も王子と王様に加勢し、王女を魔女として明日火あぶりの刑に処せと高らかに宣言する。

3年3ヶ月3週間3日沈黙の誓いを貫いた結果が、このざまだ。3羽のカラスとの約束の刻限は処刑の日の正午。王女は自分が無実だと釈明することもできない。正午にはまだ随分時間があったが、王女は柱に縛りつけられた。正午になる前に、王妃である魔女自らたいまつの火を掲げる。王女の足元に今まさに火がつけられるという瞬間、3羽のカラスが魔女に襲いかかった。はずみで魔女のマントに火がついた途端、魔女は灰となって崩れ落ちた。3羽のカラスも王子の姿に戻った。それをみた王女は、思わず「私の兄弟たちよ…」と漏らしてしまった。ついに呪いは解け、4人は固く抱き合う。王子たちは王女の子供たちを連れて来た。魔女によって井戸に捨てられた赤ん坊は、王子たちが助けだし密かに育てていたんだな。王女はどんな逆境にあっても兄弟との誓いを守り続けた。その努力が兄弟や子供たち、愛する夫、そして自分自身をも救ったのさ。
しかしながら王女は、約束の3年3ヶ月3週間と3日間よりほんの3分早く声を出してしまったため、末の王子の片方の翼が残ってしまったんだがな。まあ、彼らの味わった艱難辛苦に比べれば、そんなことはほんのささいな不幸にすぎんさ…。

おそらくこのシリーズ中最も豪華なキャスティングのお話です。魔女には、当時「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」や「太陽の帝国」で脂の乗り切った演技をみせていた英国女優、ミランダ・リチャードソン。魔女に運命を狂わされながらも、その奸計を見破った王様にジョナサン・プライス。同じく王女には、名監督トニー・リチャードソンと名女優ヴァネッサ・レッドグレーヴを両親にもつサラブレッド、ジョエリー・リチャードソンが扮しています。

ミランダは、後の「クライング・ゲーム」で披露した冷酷無比なテロリスト役を髣髴とさせる悪女演技を全開させていましたね。女優として注目された「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」でも、愛した恋人を射殺する情念の女を演じていましたが、ここでは純然たる悪を時に妖艶に、時に悪魔のような邪悪な表情で演じきっておりましたよ。
私この方大好きなんですけど、いつ観てもいい女だなあ(笑)!後にケン・ラッセル監督の「チャタレイ夫人の恋人」で全裸を披露するジョエリーも可憐なのですが、やっぱりミランダの色気には敵わないわ。小柄だけど、全身から己の欲望にのみ邁進する女の凄み、良心もなにもかも捨てきった女の底知れなさを発揮して、圧倒されます。

一応彼女は魔女という設定ではありましたが、こんな女は現実世界にもいたでしょう。類稀なる魅力と強固な意志の力で権力の道をのしあがっていく女は、皆すべからく“魔女”と呼ばれて蔑まれていたのですよ。こうした民話では最後に魔女の悪は駆逐され、善の力を信じ続けた王女が勝つという、勧善懲悪の図式がことさら明確に示されますが、それも、社会の中で華やかに生きる女への世間の妬み、やっかみが背景にあったせいかもしれません。中世世界を暗黒たらしめた魔女裁判もそう。社会の中で少しでも目立つ女は魔女として弾劾され、無実の罪を着せられて殺されました。彼女達は、女は子を産み、夫に従い、家庭を守るべしというモラルを強いる社会の犠牲になったと同時に、他人の幸運をうらやみ妬むという、人間の忌むべき性の生贄になったのです。


第8話「運命の指輪」(ドイツ民話より)
監督:スティーヴ・バロン
ゲスト出演:アリソン・ドゥーディ(サップソロウ)
ジェイムズ・ウィルビィ(王子)
ジェニファー・サンダース(悪い姉)
ドーン・フレンチ(悪い姉)

(物語)
さあ、今日話すのは指輪にまつわるお話だ。

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とある国に、この指輪をぴったり指にはめることができる女性を国の女王とするという、奇妙な法律があった。王様には3人の娘がおった。自分のことしか関心のない身勝手な姉2人に、彼女らにこきつかわれる心優しい妹サップソロウだ。王妃を亡くしてからというもの、王様にとって娘たちは唯一の生きがいだった。だが彼女たちはいずれ結婚して家を出て行く。老後のために王様は後妻を迎えようと決意した。指輪は代々女王の指に輝き、受け継がれてきた。妃を決めるのはこの指輪だ。

性悪な姉2人はカンカンだ。自分たちの気に入らぬ継母がやってきたらどうしてくれるというわけさ。彼女たちは、父への不平不満を妹のサップソロウにぶつけた。王様が城を不在にすると、姉2人の妹いじめはますますエスカレートする。サップソロウは、しかし孤独ではなかった。彼女には森の動物たちという秘密の友達がいたからだ。動物たちはせっせと美味しい木の実や果物を彼女の部屋に運び込み、その無聊を慰めた。

ある日、妻探しの旅から王様が帰ってきた。結局王妃探しは城内で続けられることになり、我こそはと思う女性が引きもきらず、毎日城にやってきては指輪をはめていた。姉2人は、新しい女王を迎えるのをなんとか阻止したい。ために、指輪を自分たちで試してみようと考えたのだな。姉2人のどちらかに指輪が合えば、父も後妻選びを断念するだろうと。ガリガリの姉は指が細すぎてだめ、ふとっちょの姉の方は指が太すぎてまるっきり合わない。太い指に食い込んだ指輪を、親切にもサップソロウは抜いてやったのだが、間の悪いことにそこに王様が現れた。床に落ちた指輪をこっそり拾ったサップソロウは、落とすまいとそれを自分の指にはめてしまったのだ!王妃のはめる指輪がなくなっていることに気づいた王様は、娘たちを問い詰める。姉2人がいたずらの罪を妹に着せると、王様は指輪がサップソロウの指にぴったりと納まっていることに驚愕したんだ。この驚くべき知らせはたちまち国中に広まった。さあ大変だ、サップソロウは法の定めるところにより、父王と結婚せねばならん。しかしいくら法律とはいえ、父親と結婚なぞできるわけがない。それは父王とて同じ気持ちだった。父と娘が結婚など!

サップソロウは婚礼のため、月のように青白く輝くシルクのドレスを作ってくれるよう頼んだ。側近が国中駆けずり回ってドレスを探す間、彼女は考えを巡らせた。そして美しいドレスが到着すると、次は銀の星が散りばめられたドレスも所望したのだ。側近がまたまた国中を駆け回る間、サップソロウは自室に閉じこもり、動物たちの力を借りて別の衣装を縫っていた。星のドレスが到着すると、今度は太陽のような黄金色のドレスを望んだ。時間稼ぎだよ。黄金のドレスが縫われる間、動物たちはサップソロウの部屋で慌しく作業していた。そしてついに黄金のドレスが縫いあがると、彼女は明日王様と結婚すると皆に告げたのだ。父王も悲痛な面持ちだ。結婚は逃れられんのだからな。次の日、いよいよ挙式が執り行われることになった。沸き立つ城下の喧騒をよそに、サップソロウは動物の手になる毛皮と無数の羽根でできた汚らしい衣装を着込み、姿を変え己の過去も捨て、こっそり城の外へ逃げ出したのだ。

2年後、全身毛むくじゃらのサップソロウはとある城の中にいた。床に這い蹲り、手をかじかませて重労働に従事する働き女としてな。ある日城の王子がはじめて娘の前にやってきた。舞踏会にガチョウのパイ詰めを出すよう命令するためだったのだが、娘は無言で床を磨いている。王子は、まるで獣のように醜い娘が彼を見つめるのを快く思わず、彼女を蹴飛ばして去っていった。その夜、城では12羽のガチョウのパイ詰めがふるまわれ、着飾った娘達が王子の関心を引こうと踊っていた。しかし美しい王子は誰とも踊ろうとしない。そこに謎の女性が到着した。月のように青白く輝く妙なるドレスに身を包んだ、あでやかな娘だ。王子は目を見張り、思わず彼女を踊りに誘った。彼らは2人きりで踊り続けたが、楽の音が途絶えると、娘は足早にその場を去っていく。一目で恋に落ちた王子を残してな。

今夜も舞踏会が催される。城内の召使たちは忙しさにてんてこ舞いだ。仕方なく、毛むくじゃらのぞうきん娘が王子にタオルを届けにいった。王子は娘の汚い顔を見るとうんざりした。娘は大胆にも、王子と対等に口をきこうとする。身なりのみすぼらしい自分を、外見だけで判断して疎んじようとする王子に異を唱えたのさ。少しでもいいから自分の顔をきちんと見て欲しかった。昨夜一緒に踊ったのは自分だと王子にわかって欲しかったんだ。だが王子は、二度と顔を見せるなとさっさと娘を追い払ってしまった。その夜行われた舞踏会で待ち続ける王子の前に、昨夜の娘が再びやってきた。今度は銀色の星を一面にちりばめたドレスを着て。娘はこの世のものとも思われぬ美しさだ。王子は夢中になったが、娘はやはり駆け出していく。必死に名を問う王子に、彼女は彼が昼間ぞうきん娘にぶつけた不躾な言葉を投げて返した。果たして王子は気がつくだろうか?

恋わずらいに沈む王子に、ぞうきん娘が声をかけた。確かにこの城内で、王子に気楽に声をかけるのはこの変わった娘だけだ。しかし彼女が、王子は恋した娘のドレスに目を奪われただけではないかと鋭く言い当てると、王子は例えその娘がボロをまとう貧乏人であろうとも一緒になりたいと叫んだ。彼は外見ではなく、彼女の目、声、全ての美しさに恋したのだと…。娘はなんとか王子に気づいてもらおうと、自分もハンサムで金持ちで高慢な男に恋をしたと訴える。どんなに高慢であっても、彼のことを思うだけで胸が高まり、心臓が飛び出さんばかりになるのだ。王子はまさしく自分も同じだと同意したが、やはりぞうきん娘の正体には気づかなかった。あくまで彼の中では自分は王子、娘は単なるぞうきん娘なのだな。その夜の舞踏会、王子は恋の相手を待ち続けたが、ぞうきん娘は皿洗いに追われて城を抜け出せない。舞踏会が終わり、城の外階段に座り込んで落胆していた王子の前に、黄金色のドレスをまとった娘が現れた。そのまま2人は階段の踊り場でダンスしたが、真夜中を告げる鐘が鳴るとやはり娘は去っていった。王子の手の中には彼女が残していった黄金色の靴が1足。

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翌日、王子は国中に触れを出した。黄金色の靴にぴったり合う娘こそ、我が妃にするとな。運命の指輪の次は運命の靴だ。ぞうきん娘…サップソロウは靴で幸福を掴むことができるのだろうか。

国中の娘たちが城に押し寄せてきたが、誰の足にも靴は合わない。召使の1人は冗談半分で、ぞうきん娘にも未来を賭けて試してみるようけしかけた。娘は頷き、広間に向かう。そこでは驚いたことに、サップソロウの姉2人が靴に足を押し込めようと頑張っておったんだ。ふとっちょの姉は無理やり靴を履いたが彼女には窮屈すぎ、今度は脱げなくなってしまった。そのときぞうきん娘が名乗り出て、靴を履かせて欲しいと王子に願った。どんな化け物であろうと、誰にでも試す権利はある。王子はうんざりしながら許可した。するとどうだろう、彼女の足に靴はぴったりと納まったのだ。ぞうきん娘は、王子がさいぜんの約束を守るかどうか問い正した。信じられぬ思いで事の成り行きを見守っていた王子は、しかしぞうきん娘に笑顔で結婚を誓ったのだ。その瞬間、広間に森の動物たちが一斉に集まり、ぞうきん娘の身に付いた毛皮や羽根をきれいに取り去っていく。その後に現れたのは、あの舞踏会にやってきた美しい娘だ!サップソロウが黄金色のドレスを纏っていたのだ。王子は心の底から驚き、彼女に再度愛を誓い、彼女も秘められた過去を全て明らかにした。サップソロウは自分を蔑んだ2人の姉も許し、今度こそ心から楽しく王子と踊り明かしたのだ。
おかげで王子もサップソロウも、婚礼の朝には寝坊するかもしれないな。

ディズニー映画でも「シンデレラ」というタイトルで親しまれている童話の原型ですね。私は以前“灰かぶり娘”というタイトルの、やはり民話を読んだことがありますが、このお話も出典は同じでしょうね。お話が言い伝えられていくうちに、細部が少しずつ変化していったのでしょう。

シンデレラはひたすら哀れで不幸な境遇の娘、優しい魔女の手助けがなければ、舞踏会に行くことも王子様に見初められることもできませんでした。ところが元々のお話では、シンデレラつまりサップソロウは、自らに課せられた運命に果敢に挑戦してゆきます。襲い来る不幸にもめげず、自ら進んで人生を切り開いていったのですね。彼女は、法律という建前に惑わされ、それから逃れられなかった父の元では幸せにはなれませんでした。そこで愛する家を捨て、本当の自分をそのままの姿で慈しんでくれる人を探しに…つまり真実の幸せを探すために、世間の荒海に出ていきます。

ロバと王女 デジタルニューマスター版 [DVD]
ハピネット・ピクチャーズ
2006-07-28

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余談ですが、父と娘が婚姻するという筋は、当時高貴な家柄で当たり前のように行われていた近親相姦のメタファーでしょうかね。カトリーヌ・ドヌーヴの若き日の主演作に「ロバと王女」(ジャック・ドゥミ監督)という作品がありますが、これもやはり、父王に結婚を迫られた王女がロバに身をやつして難を逃れようとするお話でした。

サップソロウは最下層の使用人として働いていた城の王子様に恋をします。そこで、婚礼のために作らせた3着のドレスを纏い王女として彼の前に現れるのです。単に王子様を手に入れるだけなら、最初から綺麗な身なりで彼に近づけばよいわけで、彼女はなぜこんな回りくどいことをしたのでしょう。
彼女は、常日頃化け物と蔑まれている娘と、豪奢なドレスを纏った王女としての娘を、同一人物だと王子様がきちんと判断できるかどうか試したかったのですね。王子様が化け物と王女を同じ人間だと気づくということは、つまり彼が人の見かけに惑わされず、その本質を見極められることを意味します。どんなに汚い格好をしていようが、その目をよく見、その声を注意深く聞けば、化け物と王女が同一人物だとわかるはず。まあ残念ながら、王子様はやはりやんごとなき人の例に漏れず、身分の上下で他人の価値を推し量るような男ではありましたが。
サップソロウは、最後のチャンスとして黄金の靴を(シンデレラはガラスの靴を)幻の恋に揺れる王子様に託します。彼は最後の最後に化け物にも公平な慈悲を示し、相手がどんな人間であれ、一旦交わした約束を守るという男らしさを見せます。結局その王子様の心意気が、サップソロウの心を縛っていた目に見えぬ呪縛を解くことになりました。今回ヒロインにかけられていたのは魔法ではなく、自身を襲った思いがけない不運に傷つき、真実の愛情に臆病になった1人の女性の悲しみでしょう。ちょっと回り道はしたけれど、王子様からの愛情がまぎれもない本物だとわかったサップソロウは、これでようやく幸せを掴みとることができたのです。

王子様を演じたのは、「モーリス」でブレイクする寸前のジェイムズ・ウィルビィです。身分の高い人間が、下々の者を物同然に扱って当たり前の時代の話とはいえ、ぞうきん娘の背中を蹴っ飛ばすのはかなり勇気のいるシーンだったのではないでしょうか。ウィルビィは、あんまり時代物の衣装が似合っていないようにも感じるのですが(笑)、恋に絡めとられ悩む姿はまさしくおとぎ話の王子様そのもの。禁じられた愛情に苦悶するモーリスを思い出させますね。
サップソロウを演じたのは、「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」でヒロインに抜擢されたアリソン・ドゥーディー。ここでは、全身毛むくじゃらのビッグ・フットみたいな風貌で現れて、観客の度肝を抜いてくれます。

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