House of M

アクセスカウンタ

更新情報

zoom RSS 「裁かるるジャンヌ」Part1―カール・Th・ドライヤー監督

<<   作成日時 : 2016/12/23 14:58   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

我が王は、悪魔にあらず、シャルルにもあらず、ただ1人最高のキリスト教徒である。

画像

ジャンヌ・ダルク Jeanne d'Arc

1412年1月6日生まれ
1431年5月30日没
フランス、ロレーヌ地方ドンレミ村出身

農家の娘として生まれ、3人の兄と1人の姉の5人兄妹の末っ子。出身地のドンレミ村はカトリックを信仰していた。
ジャンヌが生まれた当時、フランス北部地方はブルゴーニュ派と連合したイングランドの支配下にあった。フランス国内では、1422年にシャルル6世が亡くなって以降、実質的にフランス側の王位継承者が国王になる道を断たれていたのである。シャルル6世には王太子シャルルがいたものの、1420年にシャルル6世とイングランド国王ヘンリー5世の間で締結されたトロア条約に基づき、フランス王位はイングランドのヘンリー6世に受け継がれたからである。しかしながら、ヘンリー6世がまだ幼いことを理由に、戴冠式は先延ばしにされていた。
ジャンヌは1425年の夏に、聖カトリーヌと聖マルグリット、大天使ミカエルから啓示を受ける。それに従い、彼女は1428年5月にヴォークルールの守備隊長を務めていたロベール・ド・ボードリクールに面会を求めた。イングランド勢力からオルレアンを解放せよという“神の声”を信じたわけではなかったが、ボードリクールは1429年2月、わずかな護衛と馬を彼女に与え、王太子シャルル(シャルル7世)のいるシノンへ向かうことを許した。
ジャンヌ一行はシャルル7世の伝令の力を借り、わずか11日でシノンまでおよそ 600キロの行程を走破した。こうしてシャルル7世はジャンヌと謁見し、見ず知らずの少女から、自身のフランス王位継承権の正統性を立証する極秘事項を聞かされる。その具体的な内容は、後の処刑裁判でもジャンヌ本人が証言を拒んでいるため、現在に至るまで不明である。それが後世、様々な憶測を呼ぶ要因となった。
1429年4月、ジャンヌは男物の服に甲冑をまとい、イングランド軍に包囲されていた街オルレアンに向かった。彼女はそこでデュノア伯ジャンやジル・ド・レらと共に戦い、旗を持って果敢に仲間を鼓舞、1ヵ月後にはイングランド軍を一掃した。実に7ヶ月ぶりにオルレアンは解放されたのである。
勢いに乗ったジャンヌは、シャルル7世の戴冠式をランスの街で行うことを主張し、これを認められた。彼女はシャルル7世を守りながら、道中で待ち構えるイングランド軍を次々と屈服せしめ、ランスへ向かった。そして1429年7月17日、ついにシャルル7世はランスの大聖堂で戴冠式を行い、正式にフランス国王の座に就いたのである。しかしこのとき既に政局の風向きは変わっており、シャルル7世は、王位継承の実現に骨身を削ったジャンヌやアランソン侯などの武闘派勢力を疎んじるようになった。結局、武力でもってパリ奪還を主張するジャンヌたちと、現状のままひとまず静観したいシャルル7世側は対立し、ジャンヌたちはその後フランス国王の援助がないまま、戦闘を余儀なくされる。
そして1430年5月23日、ジャンヌはコンピエーニュの戦いでついに破れ、捕えられる。ブルゴーニュ軍はイングランド軍にジャンヌの身柄を引き渡し、 1430年12月24日にルーアンのブーヴルイユ城に監禁した。1431年2月21日、ジャンヌの受けた“啓示”の是非を巡って異端審問裁判が始まった。裁判の名目は異端審問であったが、要はジャンヌに煮え湯を飲まされたイングランド側の、彼女を処刑するための口実作りである。それを理解していた裁判長ジャン・ルメートルは、裁判を通じて沈黙を守ったため、実際の裁判はジャン・ピエール・コション司教以下60名以上の聖職者たちに委ねられた。3ヶ月間ジャンヌに対し厳しい尋問が続けられ、同年5月30日朝、彼女は異端者として教会からの破門と火刑を宣告された。享年19歳であった。生きながら燃やされるという残虐な処刑に加えて、炭と化したジャンヌの遺骸はセーヌ川に流された。つまりカトリック信者でありながら、死後土に帰ることも許されなかったのである。
1449年11月10日、シャルル7世はイングランド軍を破ってルーアンに入城する。翌年1450年2月15日、シャルル7世自らジャンヌの処刑裁判の再調査を命じた。娘の無念を晴らそうと、イザベル・ロメはジャンヌの復権裁判を求める訴えを起こし、1455年11月7日ようやくこれが実現した。オルレアン市民の嘆願もあり、1456年7月7日、ジャンヌが火刑に処されたルーアンで処刑裁判の破棄が宣言された。
その後、ジャンヌについての研究が進み、その特異で悲劇的な生涯からインスパイアされた文学作品や芸術作品が数多く生み出された。そしてジャンヌは1909年4月18日にローマ教皇ピウス10世によって列福され、1920年5月16日に同じく教皇ベネディクトゥス15世によって正式に聖人の列に加えられることになる。―以下、参考資料として高山一彦氏のジャンヌ・ダルク研究書『ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」』を挙げておく。

ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」 (岩波新書)
岩波書店
高山 一彦

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る


オルレアンの盾持つ乙女は、如何に全うしたか。

「裁かるるジャンヌ La Passion de Jeanne d'Arc」(1927年製作、1928年4月21日コペンハーゲンにてワールド・プレミア上映、1928年10月25日パリにて一般公開)
監督・脚本・編集:カール・Th・ドライヤー Carl Theodor Dreyer
製作会社:ソシエテ・ジェネラール・ドゥ・フィルム(パリ)
撮影:ルドルフ・マテ
舞台美術:ヘアマン・ヴァルム&ジャン・ユーゴー
衣装:ヴァレンティヌ・ユーゴー
時代考証:ピエール・シャンピオン
ピアノ伴奏:柳下美恵
出演:ルネ・ファルコネッティ(ジャンヌ)
ウジェーヌ・シルヴァン(司教コション)
モーリス・シュッツ(ニコラ・ロワズルール)
ルイ・ラヴェ(ジャン・ボーペール)
アンドレ・ベルレイ(ジャン・デスティヴェ)
アントナン・アルトー(ジャン・マシュー)
ジルベール・ダリュー(ジャン・ルメートル)
ジャン・ディドゥ(ニコラ・ドゥ・ウップヴィル)他。

ジャンヌは、修道士ジャン・マシューに伴われ、裁きの場に出てきた。両の足を鎖につながれ、老獪な神学者や聖職者たちの好奇のまなざしにさらされながら。彼女は大きな目を見開き、真実だけを述べることを誓う。
画像

しかしながら、文盲であったジャンヌは自身の年齢を知らない。とたんに尋問を行うコション司教の顔に侮蔑の表情が浮ぶ。この場にはジャンヌの味方など1人もいない。彼女を嘲り、ののしり、貶めて、殺したいと願う人間しかいないのだ。そんな針の筵の中でも、ジャンヌは自らを、フランスを救うために生まれた神の使いだと信じて疑わなかった。そして、満場の敵を静かに見つめながら、“英国人はすべからくフランスから追い出される”と確信をもってつぶやくのだった。たった1人の少女の言に、法廷中の人間が騒然となり、うろたえる。しかし老獪なニコラ・ロワズルールだけは動揺を見せなかった。彼がいきりたつ審問官たちを制し、冷ややかな一瞥をジャンヌにくれると、尋問が再開される。コションがジャンヌに、彼女が見たと主張する聖ミカエルの容姿を尋ねると、あちこちから揶揄が飛び交った。皆、聖人でもない彼女の前に、大天使が姿を現すことなどないとたかをくくっているのだ。ジャンヌは、下卑た問いかけをした僧に向かって目を剥いて反論する。そして、ばかげた質問には、逆に嘲笑を返すのだった。
彼女を愚弄する尋問は続く。”お前はなぜ男の格好をしているのか”。彼女が男装していることを責める問いには、本懐を遂げた暁には再び女の格好に戻ると答えた。これは、彼女がいまだ神の意思を遂げていないと宣言するものであった。彼女の主張の矛盾を突こうと、“神からどんな報酬を期待しているのか”と問いかけが続く。彼女が望むことはただひとつ、魂の救済である。そのまなざしに輝ける神の姿が映っているのか、彼女の表情は晴れやかだった。だがこれは、教会のみが民に魂の救済を与えることが出来ると論ずる彼らの思考に反するものだ。審問官は激昂し、ジャンヌの顔につばを吐きかけた。
画像

法廷が動揺し始める。ジャンヌを聖女だと認める者も出てきたのだ。それは誰あろう、裁判長のジャン・ルメートルその人であった。彼はこれまでの質疑応答を反芻し、ジャンヌをまごうとなき聖女だと認めたのである。そしてジャンヌの前に身を投げ出すと、低く頭を垂れた。“裏切り者”を糾弾するコションたちの憤怒の声を背に、彼はそのまま静かに法廷を後にした。続いて、警備兵もロワズルールに許可を取り、すべて法廷から出て行った。
コションは混乱する法廷を収めるため、再びジャンヌを嘲るような問いを放つ。ジャンヌが本当に聖女ならば、神は彼女になにかを約束されたはずだと。深いため息のあと、ジャンヌは毅然と顎を上げ、彼が裁判に関係のない尋問をして彼女を苦しめようとしていると指摘した。コションはずるがしこく、今の質問について妥当か否かを審問官の審査に問うた。法廷内の殆どがコションに賛同したが、中には異議を持つ者もいた。ジャンヌは屈辱に耐え、涙をこぼしながら答える。神が彼女を牢屋から出してくれるなどと、約束するはずはないのだ。途端に、それみたことかといわんばかりの空気が場を占め、休廷となった。

ロワズルールは、強情なジャンヌに異端の罪を認めさせるため策を巡らせる。シャルル7世の筆跡を真似て、王の署名入りの手紙をでっちあげたのだ。その頃、ジャンヌは独房の中で、孤独と恐怖に身を震わせながら泣き崩れていた。彼女は孤立無援で、ここに神はいない。しかし、窓から差し込む光がちょうど十字架の形の影を作っていた。たとえ影であろうとも、冷たい石の床に映る十字架に救いを見出したジャンヌは、藁で一心に神の冠をこしらえる。牢番達は、そんな彼女の指から指輪を抜き取り、あざ笑う。そこに姿を見せたロワズルールは彼らを叱り付け、偽りの微笑を浮かべながらジャンヌに優しい言葉をかける。彼女の警戒心を解いた彼は、王の署名入りの偽の手紙を彼女に差し出した。そこには、王がジャンヌ奪還のために大軍を集め、ルーアンを攻撃する準備をしており、ロワズルールを信じてその言に従うよう書かれていた。十字架の影は、ロワズルールによって遮られてしまった。神との間に再び距離を感じたジャンヌは、結局ロワズルールを信じるしかなかった。

希望と絶望の間で混乱するジャンヌをよそに、尋問が再開された。審問官は、キリスト同様、彼女自身が本当に神の子であるのか問いかける。ジャンヌの目には冒し難い固い意志の色が燃えている。何かを見据えるように主祷文を唱えると、神が彼女を牢屋から救い出すと約束してくれたと、力強く答えるのだった。これがロワズルールの策略であるとも知らずに。そして、ロワズルールの指示通り、彼女は既に神の恩寵を受けており、神が彼女を天国に救い出すことを確信していると続けるのだった。だがロワズルールの企みを看破したジャン・マシューは、たまらず彼女に警告を発する。ロワズルールはジャンヌに、彼女は教会を必要としないと認めさせようとしていたのだった。それこそが彼女を“異端者”と証拠付けることになる。コションは彼を一喝し、さらに尋問は続く。ジャンヌは自らが誘導尋問に捕えられたことに気づいた。ここで“Oui”と答えれば、彼女は教会を否定したことになり、 “Non”と答えれば、これまでの彼女自身の言と矛盾することになる。固唾を呑んで彼女の答えを待つ審問官たち。苦悶し、裏切りに絶望したジャンヌは、ただひとつの真理を見極めようと彼女にしか見えない神と対話する。ジャンヌはミサを行う許可をコションに乞うた。コションは、ジャンヌが女の服に着替えるなら許可すると答える。ジャンヌを案じるジャン・マシューは、ミサを思いとどまらせようと必死で説得した。女の服を着ることにも罠が潜んでいるのだ。彼女は断腸の思いで男の服を脱ぐことを拒む。コションは、女であるのに男の服を着るジャンヌを、神の娘などではなく悪魔の手先だとののしるのだった。ロワズルールは拷問の準備を命じる。ジャンヌは再び独房に取り残され、涙を流す。牢番たちは、打ちひしがれる彼女をからかい、弄んで笑いものにする。彼女を救ったのは、神ではなくジャン・マシューであった。
画像

拷問室に審問官が集結し、ジャンヌが引き立てられる。広い部屋中に所狭しと並べられた拷問用具に、顔色を失うジャンヌ。しかし勇気を振り絞り、審問官たちよりも神の方が賢いはずだと言い放つ。コションはジャンヌに、彼女の啓示は神からのものではなく悪魔からのものだと宣言した。彼女が追い詰められていくのを物見高く見つめる無数の目。コションはさらに恫喝する。聖ミカエルではなく、悪魔が現れてジャンヌをだまし裏切った結果が今のザマなのだと。動揺しながらも首を縦に振らないジャンヌに、審問官は異端誓絶書に署名するよう強いた。ジャン・マシューが不安げに見守る中、署名を声高に命ずる声が大きくなっていく。逡巡するジャンヌは、しかし署名を拒んだ。コションは、教会に背を向けるならば神に見捨てられ、孤独に打ちひしがれるだろうと声を荒げる。ジャンヌは静かに答えた。“私は既に神の御もとで1人だ”と。彼女の体を引き裂くであろう拷問用具が動き始めた。ジャンヌは恐怖に引きつりながらも、たとえ死のうとも意思を変えないと雄々しく叫んだ。が、その直後に昏倒してしまう。コションはさも忌々しげに、気を失ったジャンヌを独房に戻させた。

ジャンヌは高熱を発しており体力も落ちていた。医師が瀉血を施すと、彼女は意識を取り戻す。ロワズルールはジャン・マシューに聖体を持ってこさせた。彼女との取引のためだ。コションは内心気が進まぬながらも、ジャンヌの弱々しい言葉を聞き取った。死後は清められた土に埋葬されることを懇願するジャンヌに、彼は聖体を見せる。青色吐息のジャンヌは、待ち望んだ正しいキリスト教徒としてのミサを受けられると、目を潤ませる。彼女とて、良きキリスト教徒であることに違いはないのだ。独房内でミサが始まったが、肝心の聖体が彼女の口に入れられる直前、異端誓絶書が差し示された。そう、聖体は、異端を認める署名をすることが交換条件だったのである。ここで署名を拒めば、神の体である聖体を得られないばかりか、それを否定することになる。意志を貫くか、自らを異端と認めるか。弱りきったジャンヌに追い討ちをかけるように、署名を強いる声が四方八方から降り注ぐ。ジャンヌは最後の力を振り絞り、ひとつの結論に辿り着いた。神を心から愛する自分にこんな仕打ちを行う審問官たちこそが、悪魔に遣わされた人間なのだ。コションもロワズルールもだ。彼女は熱に浮かされたように彼らを睥睨する。審問官たちは皆、彼女にとって神への愛を試す試練そのものであったのだ。最大の侮辱を受けて怒りの頂点に達したコションは、ついに彼女の死刑執行を命じた。
画像

火刑台には、ジャンヌを敬う市民たちが押し寄せた。十字架に火が放たれる直前、今一度ジャンヌの前に異端誓絶書が示される。一度は署名を拒んだ彼女だが、彼女の遺体が落とされるであろう土の中から現れた哀れな頭蓋骨の眼窩に、蛆虫が這うのを見るや決意がぐらつく。署名しなければ生きたまま焼かれ、あの頭蓋骨と同じ運命を辿る。ロワズルールはすかさず彼女の耳元で囁いた。王はまだジャンヌの働きを必要としている、と。ついに彼女は項垂れつつ署名し、自分の命を救うことを受け入れた。ジャンヌは朦朧とした意識の中で自嘲の笑みを口元に浮かべた。事の成り行きを見守っていた市民たちは、居並ぶ審問官たちを嘲笑う。

ジャンヌは罪人として髪を刈られる。無残にも切り落とされた髪の毛を見つめていたジャンヌは、突如審問官を呼ぶよう叫んだ。火刑を恐れるあまり、神に背き嘘をついたことの間違いの大きさに、たった今気づいたのである。ジャンヌは涙ながらにコションに懺悔した。命が惜しいばかりに行った署名を撤回し、神のもとへ行かせて欲しいと。自らの運命を静かに受け入れた彼女の涙は、敵対していたはずのコション以下審問官たちの心をも揺り動かした。重苦しい空気を纏いながら、彼らは独房を後にする。ジャン・マシューは沈痛な面持ちのまま、ジャンヌに火刑の準備が整ったことを告げた。恐るべき意志の力でついに信念を貫いた彼女に、その理由を問う。彼はジャンヌの真の言葉を耳に留めておきたかった。ジャンヌは、自らの殉教こそが神の用意した道であり、死によってのみ救済されるのだと自身に言い聞かせるようにつぶやいた。ジャン・マシューができることは彼女の告解を聴くことしかなかったが、ジャンヌは大いにこれを喜ぶ。告解はキリスト教徒にのみ与えられた特権であるからだ。命を捨てる覚悟をしてまで、聖体をその口の中に収めたジャンヌの顔には晴れやかな笑顔が浮ぶ。外では、ジャンヌの処刑に反対する民衆が押し寄せてきていた。
画像

ジャンヌが鎖を引きずりながら出てくると、たくさんの鳩が空を旋回した。火刑台に登る前、キリストの十字架像を抱きしめながら彼女は一心に神に縋る。今夜は神の傍にいられるだろうか。薫り高い天国で、神と共に。死にゆくジャンヌを見つめる目の中には、生まれたばかりの乳飲み子もいる。恐怖にひきつりながら火刑台に縛り付けられるジャンヌ。その頭上を鳩が乱舞し、足元はあっという間に炎に包まれる。煙がもうもうと立ち込める中、ジャン・マシューは彼女に見えるように十字架を高く高く掲げ持った。炎の熱さに涙も乾く彼女の代わりに民衆は泣く。ついに炎が身体を嘗め尽くすと、ジャン・マシューが掲げる十字架だけを見つめながらジャンヌは事切れた。すると民衆の悲しみは怒りに転じ、聖女を焼き殺した警備兵に襲い掛かる暴徒と化した。ジャンヌの身体が残り火の中で黒い炭の塊になっていく横で、暴徒と警備兵が小競り合いを繰り広げる。大混乱の中、ジャン・マシューは自らも煙にまかれながら、十字架を掲げ続けた。彼の目の前で、ジャンヌの塊はゆっくりと崩れ落ちていった。暴徒は狂ったように泣き叫び、混乱に巻き込まれて死んだ老婆の横で孫が泣きじゃくる。必死の形相で武器を振り回す警備兵たちは、ようよう暴徒を追い払ったのだった。

ジャンヌが天に昇るとき、その魂の周りを取り囲んで守る炎があった。そしてジャンヌの心はフランスの心となった。ジャンヌの思い出はいつの時代にも、フランス人の誇りとなるであろう。

裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション [DVD]
紀伊國屋書店
2005-08-27

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

にほんブログ村

「裁かるるジャンヌ」Part1―カール・Th・ドライヤー監督 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる