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zoom RSS 「ジム・ヘンソンのストーリーテラー The Storyteller」Part2―ジム・ヘンソン監督

<<   作成日時 : 2014/07/17 17:57   >>

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第4話:「幸運の持ち主」(ロシア民話より)
監督:ジョン・アミエル
ゲスト出演:スティーヴ・マッキントッシュ(ラッキー)
フィリップ・ジャクソン(王様)
アントニー・オドネル(小男)
ロバート・エディソン(渡し守)
ポーリーン・モラン(女王)

(物語)
幸運の持ち主は、手のひらからまばゆい光が放たれるんだそうだ。この生まれたばかりの赤ん坊もそう。この子は神に祝福された力を持ち、強運と共にいずれ一国の王になるとあらかじめ予言されていた。たとえ、貧乏人の家に生まれ、残酷な王と奇ッ怪な化け物が邪魔だてをしようともだ。
ある寒い土地に、身も心も凍てつくような恐ろしい国があった。その国は、冷酷無比な王様とグリフィンという恐ろしい鳥の怪物によって支配されていた。王様はある日こんな予言を耳にした。貧しい7人兄弟の末っ子に生まれた赤ん坊は幸運の持ち主で、いずれ国の王となるだろうとな。側近達は一顧だにしなかったが、王様はさもしい心根の持ち主だ。どんな迷信であろうとも、危険の芽は早期に摘んでおくに限るとばかりに、予言に該当する赤ん坊を自ら捜し歩いた。ついに幸運の子供は見つかった。両親に金貨をちらつかせ、卑怯な方法でその赤ん坊を奪い取るや、王様はその子を抱えた側近ごと真冬の海に突き落としてしまった。王様はもはや側近さえ信用できず、王座に狂気じみた執着を持っておったのだ。崖の上から海までは目に見えぬほど離れており、身を切るような冷たい波が打ち寄せている…。なんということだ、赤ん坊を殺すなど!だが赤ん坊は、産着が崖の途中の木の枝にひっかかり、かすり傷1つ負わず砂浜の上に降りた。一方側近は海に沈み、哀れグリフィンの朝食になったということだ。
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王様はじきに予言のことなど忘れてしまい、生まれた姫に最大の愛情を注ぐようになった。16年後、姫は輝く黄金色の髪に大きな瞳の美しい娘に成長した。求婚者は後を絶たなかったが、王様は姫を溺愛するあまり彼女を嫁がせようとはさせなんだ。
人々が忙しく立ち働く穀物小屋に、王様自ら検分にやってきた。そこで帳簿をつけていた金髪の少年は、利発そうな顔を輝かせて王様に接見したが、王様は両親と少年の顔立ちが違うことに気づいた。実は少年は17年前、崖の下で子供のなかったその夫婦に拾われたのだという。怪我ひとつしていなかったその幸運な赤ん坊を、夫婦は“ラッキー”と名づけて大事に育てた。そう、そのラッキー少年こそ、17年前王様自ら崖から突き落とした赤ん坊だったのさ。それに気づいた王様は、王妃様に宛てた手紙をラッキーに持たせ、即刻家来となって城で働くよう命じた。今度こそ、王座を脅かす幸運の持ち主の息の根を止めるためにな。
村から城までの間にはうっそうとした森があり、ここで道に迷うと生きては出てこられない。ラッキーも城に向かう途中、夜の闇の中で道に迷ってしまい、挙句足を踏み外して奈落の底へ。ところが彼が落っこちた穴倉は、強盗の隠れ家だった。毛むくじゃらの小男は先を急ごうとするラッキーを引きとめ、親切めかして薬を仕込んだシチューを食わせた。少年をいいカモだと思ったんだろう。ラッキーは疑いもせずにシチューをたいらげ、そのままぐうぐう寝入ってしまった。強盗は早速ラッキーの懐を探ったが、少年は小銭1つ持っていない。仕方がないので王様直筆の手紙を奪うと、そこには恐ろしい命令が書かれていた。ラッキーが城に到着次第、殺害して死体を切り刻め、と王妃様に命じていたのだ!小男は、赤ん坊のようにあどけない顔で何も知らずに眠る少年を哀れに思った。そこで、王様の筆跡をそっくりに真似て手紙の内容を書き換え、元の手紙と摩り替えておき、少年を城の前まで送り届けてやったんだ。
翌朝、ラッキーは城の者に王様の手紙を見せ、王妃と姫に接見した。年頃の姫は少年を一目見るなり恋に落ち、少年もまた雷に撃たれるように姫に恋した。王妃様は少年が携えてきた手紙を見て一瞬我が目を疑ったが、あの冷酷な王様にも慈悲の心が芽生えたのだと喜ばしく解釈したんだな。
予言に勝ったと思い込み、上機嫌で城に戻った王様は、城で祝いの鐘が打ち鳴らされているのを耳にして愕然とした。その頃城では、姫とラッキー少年の婚礼の儀式が催されておったのさ。王様は王妃様を問い詰めたが、なんと少年に持たせたはずの手紙には、姫と結婚させろと書かれてあった。王妃様は、気立てのよい明るいラッキーをいたく気に入っている。そして最愛の姫も、幸せにはちきれんばかりに顔を輝かせている…。当の少年は、改めて王様に感謝と尊敬の意を表している。王様はついに真意を飲み込んで、苦し紛れにこんなことを言い出した。姫の夫となる者は、その勇気を示すためにグリフィンの黄金の羽根を持ってくるべし、とな。もちろん、少年を恐ろしい怪物の餌食にしようという魂胆だ。姫と王妃様は悲しみにくれたが、ラッキーは出立した。
ラッキーは国中を歩き続け、砂漠の中に怪物の爪痕が残されているのをついに発見した。やがて、どんよりと霧が垂れ込め、黒く濁る不気味な湖に出た彼は、向こう岸に怪物がいるに違いないと確信した。船の渡し守は、ボロ布のように疲れ果てた老人で、怪物の呪いのために永遠に船をこぎ続けているのだという。グリフィンの城には山のような宝物があり、大勢の人間が怪物を退治しようと出かけるが、今まで生きて戻った者はいない。渡し守は、ラッキーのような血気盛んな若者をもう何百人と見てきたんだ。ラッキーは、渡し守の呪いを解く方法を探り出すと請け負い、意気揚々と怪物の根城に乗り込んだ。
静まり返った城の奥から、森の中でラッキーを救ったあの強盗がひょっこり顔を覗かせた。小男は妹と共に、怪物に仕えるようになっていたのだ。思いがけない再会に驚く男だったが、グリフィンに料理を食わせている間に逃げるよう警告する。しかし少年にはどうしても黄金の羽根が必要だ。それに渡し守との約束もある。仕方なく小男は知恵を働かせ、少年を食卓の下に隠した。地響きが起こり、耳をつんざくような鳴き声と共にグリフィンが戻ってきた。怪物は見知らぬ人間の匂いがするとしきりに警戒したが、小男はすかさず料理を食わせて気をそらせ、背中を掻いてやった。背中に黄金の羽根があるからだ。だがこの羽根がなかなか抜けない。小男が隙を見て羽根を引っこ抜こうとするたび、怪物は痛がって怒り出す始末。なんとか怪物をなだめつつ、彼はついに羽根を抜くことに成功し、隠れているラッキーに渡してやった。グリフィンは“怪物”と言われたことにいたく立腹し、羽根を抜かれたことに気づかない。彼は己を“神秘の鳥”だと認識しておったのさ。小男はグリフィンを褒め称え、何気なく渡し守の呪いの秘密を聞き出した。呪いをかけられた櫓を誰か身代わりの者に渡しさえすれば、老人は自由になれるのだ。それだけわかれば充分。小男はグリフィンをあやして眠らせた。ラッキーは義理堅い親友に感謝して別れを告げ、怪物の財宝もついでに持ち帰った。もちろん、忘れずに渡し守に呪いを解く方法を授けてな。希望を見出した渡し守の顔に、初めて笑顔が戻ったよ。
一方王様は、黄金の羽根を持ち帰り、誓いを守ったラッキーに力なくうなだれた。だが彼が一緒に持ち帰った財宝を目にした途端、更なる欲望を掻き立てる。金銀財宝で埋め尽くされたグリフィンの城の話を聞くや、自分もその宝を欲するようになったのだ。そこで夜更けにこっそり城を抜け出し、たった1人でグリフィンの城に向かった。待ち構えていた渡し守は、いらいらと怒鳴る王様に櫓を渡し、代わりにあなたが漕いで下さいと促した…。
いつかわしらも、湖で老いさらばえた哀れな渡し守に出会うかもしれんな。気をつけろ、その船を降りればグリフィンの餌食になってしまう。そうそう、ラッキー少年はその後姫と末永く幸せに暮らしたよ。捨てる神あらば、拾う神ありということだ。

悪いことは出来ないもの、因果応報は巡り巡って我が身に災難として戻ってきます。たとえ迷信を信じなくとも、世の中のどこかにそんな人知を超えた業が働いていると感じる瞬間はあるものですね。
このお話のラッキー少年は、絶体絶命の危機に陥っても必ず誰かが救いの手を伸ばしてくれ、時に偶然のいたずらをも味方にして、ピンチを切り抜けていきます。文字通り幸運の持ち主であり、神の意思に守られているという羨ましい限りの人間ですね。しかしこのラッキー少年も、第2話に出てくるフィアノットと同様、本人はどこまでも純粋で素直。自分の幸運を鼻にかけたり、ために奢ることなく、次々と転がり込んでくる幸運を謙虚に感謝の意識に変換していくのですね。ちょっと成功の美酒を味わうと、とたんに天狗になり、周囲が見えなくなる私たちの多くは、ここで猛烈に反省すべきでしょう(笑)。幸運に恵まれても自分らしさを失わない彼だからこそ、挫折を味わっても簡単に絶望したりしない。どこかに必ず希望はあると信じられるから、相手がどんな人間であっても心を許して胸を開くことができ、ために見知らぬ相手からも無償の愛情を受けるのです。例えば強盗を生業にする小男。この男は、強盗を働こうとした自分を信じ、あまつさえ親友だと言って憚らないラッキー少年にほだされ、彼を何度も助けました。真の幸運の持ち主とは、そんな風に己と他人の善意の力を信じて道を切り開いていく者を指すのではないでしょうか。
一方、王様は疑心暗鬼の塊で、王座や物欲、所有欲といった己の執着する欲望にのみ忠実な人間。彼にとっては、愛娘も単なる執着の対象にすぎず、おそらく家族に対してすら本当の意味での愛情を抱いたことはないでしょう。そのどす黒い内面は、魑魅魍魎が跋扈する闇の世界そのまま。一条の光も見出せず、周囲は皆己の敵なのです。彼の国に住まう怪物グリフィンとたいした違いはありません。まあ、グリフィンは、自身を妖怪ではなく偉大なる存在だと認識し、その悪行は棚に上げて極めて高いプライドを持っている点で、まだ王様よりマシかも知れませんが。とにかく王様はあらゆる面で孤独であり、その意味では哀れな人間とも言えますね。彼が執拗にラッキーを殺そうとしたのも、なにより大事な王座を奪われるといった危機感以上に、少年が自分にないものを持っていたためでもあります。純真さ、善意を信じる力、溢れんばかりの愛情、希望。王様は結局最後には、自身が犯した悪行を償うことになりますが、彼は永遠に呪われた櫓をこぎながら、自分に足りなかったものがほんの少しの慈悲心だったことに、果たして気づくでしょうか。
さて、出番は少なかったのですが、王妃様の役で出演していた女優ポーリーン・モラン、テレビ版「名探偵ポアロ」のシリーズで秘書のミス・レモンを演じていた方でした!ポアロは大好きで全エピソード観ていましたので、なんだかうれしくなってしまいましたね。それから、グリフィンとの漫才のような掛け合いが楽しかった小男を演じたのは、アントニー・オドネル。最近作では、「スクープ」や「マッチ・ポイント」にも出てますよ。うーん、ウディ・アレンが好きそうな俳優だわ(笑)。


第5話:「兵士と死に神」(ロシア民話より)
監督:ジム・ヘンソン
ゲスト出演:ボブ・ペック(兵士)
スチュアート・リッチマン(物乞い)
ウォルター・スパロウ(物乞い)
アリステア・フラートン(死神)

(物語)
… 遠い遠い昔のこと。ある国で、20年も続いた戦争がようやく終りを告げた。1人の正直者の兵士も家路を急いでおった。持ってるものといえば、コイン1枚とビスケット3枚。王室直属の軽騎兵隊だったことを示す腕章をつけ、しかしそれ以外の身なりはボロボロでひどいもんだった。髪もひげも伸び放題の有様でな。彼は下手くそな口笛を吹きながら歩き続け、やがてコインも使い果たしてしまった。そのとき、道端でフィドルを奏でる物乞いに出会ったんだ。あまりに素晴らしい音色に兵士も口笛を合わせたが、あいにく金の持ち合わせはない。彼はビスケットを1枚、物乞いに与えた。その物乞いは感謝し、謎めいた微笑を浮かべながら、兵士の口笛がもっと上手くなると請合ったんだ。するとどうだ、兵士の口笛が小鳥のさえずりのように妙なる音色を奏でるようになったではないか!彼はまた道端で物乞いに出会った。今度の男は太鼓をたたいている。兵士は口笛を吹きつつ、くたびれたブーツのかかとを鳴らして陽気に踊り始めた。もちろんその物乞いに2枚目のビスケットを与えてな。彼は3人目の物乞いに出会った。今度の男は見事な手さばきでカードを繰っている。魔法のようなその手際に感嘆した兵士は、物乞いにビスケットを与えようとするが、残念なことにもう1枚しか残っていない。そこで彼はそれを半分に割ったのだが、良心が咎め、思い直して結局1枚分くれてやったのだ。物乞いは感心し、絶対勝負に負けないというカードと、望むものはなんでも、命じればすぐ袋の中に入るという不思議なずた袋を兵士に贈った。
兵士はこの不思議な贈り物に喜び、さらに先を急いだ。川にたどり着いた彼は、試しにガチョウに袋に入るよう命じてみたんだ。するとガチョウはなんとも従順に袋の中に入っていった。兵士はこの獲物を持って街の宿屋に赴き、宿代の代わりにした。宿の主人は腕によりをかけてガチョウを料理し、兵士は久方ぶりのご馳走にありついたのさ。旅の疲れがとれた3日後、彼が部屋の窓を開けると丘の上に宮殿がそびえているのが見えた。なんでもそこはかつては国王の宮殿で随分繁栄したのだが、今は博打好きの悪魔の巣窟に成り果てているのだそうだ。彼らが毎晩金を賭けてカードをするという話を聞き、兵士の頭にある知恵が浮かんだ。彼は、例の袋をかつぎ、口笛を吹きつつ宮殿へ。
宮殿内は荒れ果て、人骨が転がり、静まり返っていた。兵士は口笛を吹きながら悪魔が出てくるのを待つ。果たして、真夜中の12時を告げる時計の音と共に、真っ赤な顔に裂けたような口、頭には角を生やしてこうもりのような羽根を持つ悪鬼たちが群がってきた。勇敢な兵士は驚きもせずにカードを取り出し、樽いっぱいの金を賭けて早速勝負を始めたんだ。しかしそのカードは絶対負けない力を持っている。何度勝負を繰り返しても、兵士の勝ちは変わらなかった。負けがこみ、悪魔達は頭から煙を吹きだして苛立つ。結局そのまま夜が明けてしまった。兵士は例の袋を取り出すと、彼らを1匹残らず袋の中に封じ込めた。そのまま袋を壁という壁に叩きつけ、悪魔達を散々痛めつける。兵士は、1匹の悪魔を家来にし、二度と悪さをしないことを条件に彼らを解き放ってやった。
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悪魔はほうほうの態で地獄へ逃れ、兵士を恐れて固く固くその扉を閉ざした。一方兵士は、悪魔を退治した英雄として王様から褒美を頂き、金持ちになった。彼は妻と息子にも恵まれてこの上もなく幸せに暮らしたんだ。ところがある日、その幸せに翳りがさした。息子が高熱を出して苦しみ始めたのだ。どんな薬も効かず、死を待つばかりになった息子を見て、兵士はふと家来にした悪魔のことを思いだした。呼び出された悪魔が水の入ったグラスを掲げ、息子を覗きこむと、その足元には蒼白な顔をした黒衣の男がうずくまっていた。死神だ。死神が人間の枕元までやってくると、その人間は助からぬという。そうなる前にグラスの水を振りかけて退散させればよい。息子の高熱は嘘のようにけろりと治り、兵士はそのグラスと引き換えに悪魔を自由にしてやった。
やがて兵士は奇跡を起こす男として、魔法のグラスを持ち、死にゆく人々を救済する旅に出た。死にかけた病人の足元に死神がおれば、水を振りかけてこれを追い払い、枕元におれば遅すぎたと悲しんだ。大抵は間に合って多くの命を救い、感謝されていたのさ。ある日兵士の下に、老いた国王からの手紙が届いた。王様が死の床に臥し、早急に助けが必要だというんだ。兵士はいつものようにグラスを透かして王様を覗き込んだ。ところが、死神は既に王様の枕元に居座り、不気味な笑みを浮かべている。手遅れだった。王妃様はご自分を身代わりにと懇願したが、兵士にはそんなことはできない。そしてグラスを通して死神に語りかけたのだ。王様の代わりに自分にとり憑いて欲しいとな。死神はすぐ王様の傍から姿を消した…。王様をはじめ、奇跡の出現に沸き立つ皆を置いて、兵士は静かに去っていった。
兵士は自宅で患いついた。だが顔に死相が現れてもなお、彼は諦めるということを知らん男であった。彼はグラスを透かして死神を確認すると、魔法の袋を取り出し、奴をその中へ封じ込めたのだ!兵士が死神を捕らえた噂は瞬く間に国中に広まった。翌朝には世界中に。兵士は、死神を捕らえた袋を森の奥深く、一番高い木の枝に吊るした。そしてためしに、自分がそこから下に飛び降りてみた。だが、死神のいない世界に死は存在しない。やがて世界中の誰もが死ななくなった。戦争をしても誰もかれも無傷だし、心中した恋人達もぴんぴんしとる!永遠の命を世にもたらした兵士は、たちどころに有名になった。彼は口笛の吹き方も思い出して上機嫌であったが、ある日窓の外を見て衝撃を受けた。そこいら中に、死に切れずに老いさらばえた身体を引きずる、哀れな老人達があふれていたのだ。安寧な死の迎えを待っていた彼らは、しかし一向に死ねずに苦しんでいた。兵士は彼らの苦しみに耐えかね、死神を袋から解放した。誤った行いをしてしまった自分を殺し、世界にあるべき死を戻して欲しいとな。だが死神は兵士と袋を恐れて、彼の元から逃げ出してしまった。
こうして、再び地上には死が戻ってきたが、死神に恐れられた兵士だけは死から見放され、生き続けることになった。周囲の人々が老いに従って安らかに死んでいくのを見ながら、1人取り残される苦しみはいかな兵士とて耐えがたい。彼は骨と皮ばかりになった身体をようよう引きずり、ある日地獄へ降りていった。罪を犯した自分の魂を地獄に入れてもらうためだ。しかし、袋を抱えた兵士の姿を見るや、悪魔は怖がって門扉をしっかと閉めてしまう。そこで兵士は粘りに粘り、天国への地図を悪魔からもらいうけると、一緒に200名の迷える魂を引き連れて天国の門まで導いていった。彼は天使に、死神を捕らえた非を詫び、200名の魂と共に天国へ入る許しを乞うたが、彼だけは許されなかった。兵士は1人に袋を託し、天国の中に入ったら自分を袋の中に入れるように頼み込んだ。しかしな、天国には“記憶”というものは存在しないんだ。魂は天国に召されると、生まれる前の姿に戻ってしまうから。兵士は長い間天国の前で待ち続けたが、やがてその存在を忘れられ、諦めて地上に引き返した…。そして今もどこかでさまよい続けている。
かわいそうだと思うかね?いやいや、この我が良き友人は簡単にくじける男ではない。今もどこかで信念を曲げずに頑張っておるさ!

天にまします我らの神よ。もしその慈悲を賜えるならば、この兵士の魂に安らぎをお与えください。
この男はただただ純粋なる良心の命じるがままに、物乞いになけなしのビスケットを与えました。あなたもその徳に感じ入ったからこそ、かの物乞いをして兵士に不思議な力を与えしめたのでしょう。彼は己の不潔なる欲のみのためにその力を用いはしませんでした。自ら進んで国のために悪鬼を退治したのですから。彼はまた、知恵のまわる、不屈の精神の持ち主でもありました。息子の命を救った魔法の力を得るや、それを死におびえる数多くの人々を救うために用い、これに功徳を施したのです。自分だけ助かればよい、自分だけ得をすればよい、というさもしい考えはこの男に限ってはありません。彼は自らを犠牲にしてまで国王に奇跡をもたらしました。彼は国王と故国に忠誠を誓った兵士、金持ちになってもそれを片時も忘れなかったのです。
ただひとつ、彼が過ちを犯したといえるなら、彼が死神を捕まえてしまったことでしょうか。死は生きとし生けるもの全てに平等に訪れるもの、自然の摂理、いわばあなたのご意思であります。彼はたとえ一時だとしても、確かに世界から死を駆逐し、あなたの意思に背いてしまいました。ですがそれも、無益な戦争で尊い人命が失われる世界を救うため、また死を恐れる苦悩から人を解放するためと信じたまでのこと。真の平和をこの世にもたらしたいと願った結果なのです。この兵士に、よもやあなたに成り代わろうなどという不埒な考えなどあろうはずもない。それが証拠に、彼は“永遠の命”が人に苦痛しか与えぬ悪魔の誘惑であることを悟り、己の思い違いを悔いたではありませんか。人は老いて死ぬることを恐れるものですが、それは限りある生の輝ける証なのです。
最後の慈悲を乞うて、天国の門まで多くの迷える魂を導いてきたこの男から、未来永劫死の功徳を奪うとは、それはあまりにも残酷な仕打ち。どうか、この自己犠牲精神の犠牲となった哀れな兵士の上に、安寧が訪れますように。今もどこかで、飄々と口笛を吹きつつさまよっているであろう、この男の魂に安らぎをお与えくださいますように。
粒ぞろいのエピソードの中でも、このヘンソン自らが監督したお話は逸品ですね。絵画の中にお話の登場人物を閉じ込めてみたり、窓から見える外の風景をあえて絵画のような色調で描いたり。映像の美しさはいうに及ばず、語り部が物語の中と現実を自在に行ったり来たりする面白さも格別です。劇中登場するマペットの造りも動きも実に精巧。特に印象的だったギャンブル好きな悪魔は、どことなく日本の赤鬼を連想させる部分があり、悪魔ながら妙に親しみを覚える風貌だったりします。また、子供のように小柄な死神の造形も、単に不気味な雰囲気に留まらない何かを感じさせます。さすがはマペットの父ですよね。
これぞ男の中の男、愛すべき兵士を飄々と演じたのは、ボブ・ペック。彼はあまり有名な俳優さんではないのですが、他の出演作に「ジュラシック・パーク」(1993年)や「フェアリー・テール」(1997年)がありました。英国ヨークシャー州リーズの出身で、1999年に53歳の若さで亡くなっています。ご冥福をお祈りします。


第6話「本当の花嫁」(ドイツ民話より)
監督:ピーター・スミス
ゲスト出演:ジェーン・ホロックス(アーニャ)
ショーン・ビーン(庭師/王子)
フレデリック・ウォーダー(トロール、トロロップ)

(物語)
トロールと付き合ったことがあるかね。なんともはや、気難しいことこのうえない連中だ!昔あるトロールが娘に家出され、家事をやらせる者がおらんで困っておった。そこで、身寄りのない人間の娘アーニャを家に連れてきたんだが、これまた無理難題を押し付けて彼女を困らせては折檻していじめる始末。彼女が逃げないようにその腰を鎖でつなぎ、重い棒で彼女の背中をぶっておきながら、そこに残るアザをひどく嫌う。全くトロールとは、矛盾に満ちた生き物だな。
イボイノシシのような醜い顔にでっぷり太ったトロールは、ある日アーニャに、袋の中の羽毛を全て取り出し、ひとつ残らずまた元に戻すよう言いつけた。自分は羽毛アレルギーだというのにな!単にアーニャをいじめるためだけの、意味のない仕事だ。二言目には恩を忘れるなと恩着せがましくのたまうトロールに、彼女はほとほと嫌気が差しておった。だが彼女には他に行くあてなどない。いつものように唇を斜めにゆがめて、黙って頷くしかなかった。しかしながら、羽毛は部屋中に飛び散り収拾がつかん。泣きそうになっていたところへ、真っ白い毛並みの立派なたてがみを蓄えたライオンが姿を現した。ライオンは低い穏やかな声で、自分はアーニャの心の中から彼女を助けに現れたのだと話した。そして彼女を安らかに眠らせたのだ。彼女が目覚めると、どんな魔法を使ったものか、羽毛はすっかり元通りになっていた。
また別の日には、トロールはアーニャにこんな難題を申し渡した。深く広い沼の水をさじで1さじずつ掬い出し、水を空っぽにしろというのだ。しかもそのさじは、穴だらけ。これでは何百年かかっても水は掬い出せんだろう。頭をうなだれ、唇を斜めにゆがめたアーニャの前にいつぞやのライオンが現れた。トロールの折檻を怖がる彼女を、ライオンは再び眠らせる。ライオンはものすごい勢いで水を飲み始め、トロールの言いつけは無事守られたのだ。しかし、カンに触ったトロールは難癖をつけ、結局アーニャの背中をひどくぶってしまった。こんな主人に仕えねばならん運命とは、さぞ嘆かわしいことだったろうな。
翌日のトロールの言いつけは常軌を逸しておった。干上がった沼地に、夜までに立派な宮殿を建てろというのだ。ライオンは彼女の窮地を知って現れ、やはり彼女を優しく眠らせる。彼女が眠っている間に壮麗な宮殿を建ててしまったのさ。宮殿は中も外もそれは豪華で、食卓の上には豪華なご馳走まで乗っていた。トロールは不機嫌もアーニャの存在も忘れて貪り食い、ワインを取りに倉庫へ行こうと扉を開けた。その瞬間…奈落の底へと真っ逆さまに落ちていった。慌てるアーニャの前にライオンが現れ、彼女につけられた鎖を食いちぎった。ライオンは、トロールから彼女を解放するために策を練っていただのだな。
アーニャは、トロールの奴隷から一転して宮殿の女主になった。ぼさぼさだった金髪を美しく結い上げ、みすぼらしいボロ服を脱ぎ捨ててまばゆいドレスに身を包み、召使達に傅かれる毎日。宮殿に1人で暮らす娘がいるという噂はあっという間に広まり、彼女に求婚する者が後を絶たなかった。世界中の金持ちが彼女に目通りを願ったが、どの輩もつまらん。1年後、うんざりした彼女が窓の外を見ると、庭で働く1人の青年と目が合った。美しい金髪に気品のある顔立ちの庭師だった。アーニャの胸はときめき、一目で恋に落ちた。庭師の青年も同じで、2人はやがて結婚を誓い合ったのさ。なに、使用人がお姫様になるなら、庭師だって王子様になっちゃいかんわけはあるまい?
アーニャは庭師に、その美しい頬には誰にもキスさせないでと懇願し、庭師もまた彼女に誓った。ある日のこと、庭師は婚礼の準備のために街へ出て行った。アーニャは婚礼のドレスを縫いながら待ち続けたが、彼は帰って来ない。とうとう寂しさに耐えかねた彼女は、愛する庭師を探しに出かけた。どこまでもとぼとぼ歩いて、雪に覆われた野原に出た頃、途方に暮れた彼女の前にあの懐かしいライオンが姿を現した。ライオンは彼女を背中に乗せて宙を飛び、遠く離れた街まで連れて来た。そして彼女に3つの贈り物を授けると、庭師の元へ急ぐよう諭したのだ。そこへ、あの庭師が馬上の人となって現れたが、アーニャを知らない様子で黙って会釈したまま去って行ってしまった!アーニャは我が目を疑う。しかし彼女の目には、さらに驚くべき光景が映った。あの死んだトロールそっくりの女が、厚化粧を施した醜い顔をシルクに隠してしゃなりしゃなりと歩いてきたのだ!そう、彼女はトロールの娘だったのだな。妖怪といとしい庭師が一緒にいるだなんて。庭師はアーニャを忘れてトロールの娘と駆け落ちでもしたか?なんにしても、彼の本当の花嫁はアーニャ以外にいない。彼女は庭師を救うため決然と街へ向かった。
トロールの娘はトロロップという名で、魔力でその街を支配している。彼女はある日、見目美しい王子様と出会って彼に魔法をかけ、無理やり婚約したという。トロロップは金銀財宝に目がない欲深い女で、ハンサムな男もコレクションの1つに過ぎない。王子様は彼女にとって“宝物”なのだ。アーニャは知恵を絞った。そしてトロロップを誘い出すために、ライオンからの贈り物の1つから美しい絹を山と出してみせた。トロロップは途端に欲に目がくらむ。アーニャは、絹を贈る換わりに王子様と一夜を過ごさせて欲しいと頼んだ。2人きりになれば、彼にかけられた魔法も解けるかもしれんからな。だが、豪華なベッドで眠る王子様は、アーニャがどんなに呼びかけても一向に目を覚まさない。それもそのはず、彼は強力な眠り薬を飲まされておったのだ。
次の日、アーニャは2つ目の贈り物を取り出し、中からとめどなく金貨を出した。金貨の触れ合う音を聞きつけたトロロップは目を剥き、王子様との一夜を条件に贈り物との交換をしたんだ。アーニャはその夜も、王子様に向かって必死にささやきかけたり歌を歌ったりした。だがやはり彼は目覚めない。
一方、トロロップの城に捕えられていた囚人達は、事の成り行きを全て聞いて知っている。夜ごとのアーニャの嘆きもな。王子様がなにも気づかないのに焦れた彼らは、外に出てきた王子様に、アーニャが毎晩“自分こそあなたの本当の花嫁だ” と泣いていることを知らせてやった。だがトロロップの強い魔法に操られている彼には覚えがない。毎晩夢も見ずに眠っているのだからな。
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贈り物は最後の1つになった。アーニャは色とりどりの宝石をトロロップに見せ、王子様との最後の一夜に賭ける。アーニャは彼の胸の上で涙を流した。1粒、2 粒、3粒…。ついに王子様が目を覚ます。アーニャは喜びのあまり彼の頬に口付けた。するとどうだろう、トロロップの魔法が解かれ、王子様はなにもかも思い出したのさ。アーニャこそ本当の花嫁だと。その頃城の地下室では、トロロップの目の前から贈り物の絹や金貨や宝石が全て霧のように消えてしまっていた。魔法の効力がなくなったんだな。騙されたと知ったトロロップは地団駄踏んで悔しがったが、アーニャと王子様は既に逃げた後だった。手に手をとって走る2人を、軍隊を率いて猛然と追いかけるトロロップ。だがライオンが現れ、2人を背中に乗せると風のように谷と崖を越え、あっという間にアーニャの宮殿まで彼らを送り届けた。
やれやれ!ようやくトロロップから逃れてしっかと抱き合う2人を残し、ライオンは最後の仕事にとりかかった。そう、トロロップは犬並の嗅覚を頼りに、鼻息も荒く宮殿にたどり着いていたんだよ。彼女は怒りに震え、鼻をひくつかせながら2人の匂いをたどった。そして、ついに嗅ぎつけた扉を力いっぱい開けると…そこは奈落の底へ続いていたのだった。哀れ、トロロップも父親と同じ運命をたどったのさ。
その後、アーニャと王子様が幸せに暮らしたのは言うまでもなかろう。2人は宮殿に立派なライオンの像を飾り敬った。そして生まれた子供たちにも、心の中の願いはいつか必ず通ずると言って聞かせたということだ。

日夜、奴隷のごとくトロールに酷使されていた哀れな孤児アーニャは、助けを求める心の叫びに応じて出現したライオンに窮地を救われます。ライオンはにっくきトロールをやっつけ、その支配からアーニャを解放してくれたばかりか、宮殿での夢のような豊かな生活まで与えてくれたのですね。ライオンとはアーニャにとって、絶対的な力と無償の愛情と高潔な精神でもって彼女を庇護するもの。いわば、両親の身代わりでしょう。このお話が言い伝えられた時代、おそらく国のそこ此処で、親を早くに亡くし、劣悪な環境下の奉公先で労働させられる子供が多くいたに違いありません。雇い主に反抗したり、なにかヘマをやらかせば容赦なく折檻されたでしょうし、ろくに食べ物も与えられなかったかもしれません。鎖で繋がれ、トロールのいわれなき虐待に耐えるアーニャの姿は、当時社会の底辺で苦しんでいた、恵まれない子供たちの姿そのままであったと思われます。ならばライオンは、そんな子供たちの希望の象徴とも言えるでしょう。いつかきっと大いなる力が、自分たちをひどい生活から救ってくれる。未来に夢を描くことも叶わない中で、彼らはあえかな希望をおとぎ話の中に求めたのでしょうか。
このお話で面白い点は、ヒロインを虐待し、あまつさえ恋人をも魔力で横取りしようとする妖怪トロールの造形ですね。ものすごいご面相です(笑)。モアイ像と笑福亭笑瓶ちゃんとイボイノシシを無理やり混ぜ合わせて、ブルドッグでシェイクしたような不細工さ。アーニャと庭師を取り合うことになるトロロップは、そこにさらに白塗り厚化粧が加わり、うっかり幼い子供が見たら泣き出すやもしれません。またトロールは、すぐ他人を虐げるくせにその結果を嫌う矛盾を抱え、猜疑心とひがみの塊であり、物欲の権化でもあります。しかしまあよく考えれば、これは我々人間の本性そのものではあるまいか。トロロップがアーニャの見せた絹や黄金に目をくらませ身悶える様を見ていて、なんとなく後ろめたい気分になるのは、おそらく多分に人間くさい彼らの性格付けのせいでしょうね。
妖怪に囚われの身になるのが、か弱い女性ではなく、ちょっと頼りないプリンス・チャーミングだというところもおかしいです。辛い生活からなんとか脱出して自信を付けたアーニャは、恋した庭師を取り戻すため魔法の力でトロロップに勝負を挑みました。女と女の意地の張り合いと駆け引きは、見ていてかなり笑えましたね。
なにか問題が起こるたびに、唇をゆがめてほっぺたをふくらませる、かわいいアーニャを演じたのはジェーン・ホロックス。彼女は特徴的な声の持ち主で、なんといっても、大ヒットミュージカルの映画化「リトル・ヴォイス」の天才シンガーLV役が強烈。その後は「チキン・ラン」や「コープス・ブライド」等、アニメの声の出演が多いです。あまり出番がないですが、アーニャとトロロップに両腕を引っ張られる役得(?)な美しい庭師/王子様役で、小豆時代のショーン・ビーン(豆)が出ています。ピチピチです(笑)。ロマンチックなおとぎ話の王子様にふわさしい美貌を買われたのでしょうが、それだけという気もしますね。だとしても、ファンにとっては貴重な作品であることは間違いありません。

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