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zoom RSS ウソから出たマコト?―「宇宙人の解剖 Alien Autopsy」

<<   作成日時 : 2015/06/04 19:36   >>

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“ロズウェル事件(ロズウェルUFO事件)の概要:

1947年7月アメリカ合衆国ニューメキシコ州ロズウェル付近で、何らかの飛行物体が回収された。アメリカ軍は回収された物は極秘の調査気球であり、それが墜落したのだと主張している。ところが、多くのUFO擁護者たちは残骸が墜落した異星人の乗り物のものであり、軍は乗り物を回収したことを隠蔽しているのだと信じている。この事件はそれ以来、激しい憶測、噂、疑問、調査の対象となってきた。実際に何が起こったのかについては広く意見が分かれ、どの証拠が信用できるかについての激しい議論がある。この事件は広く知られるところとなっており大衆文化現象としても引用される。一部の者にとっては、「ロズウェル」は「UFO」の別名であり、それは最も有名なUFO事件(と主張される事件)に位置づけられるだろう”
−Wikipedia『ロズウェル事件』より抜粋”

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「宇宙人の解剖(未) Alien Autopsy」(2006年製作)
監督:ジョニー・キャンベル
製作:ウィリアム・デイヴィス&バーナビー・トンプソン
製作総指揮:マイケル・クーン&レイ・サンティッリ
脚本:ウィリアム・デイヴィス
音楽:マーレイ・ゴールド
出演:デクラン・ドネリー(レイ・サンティリ)
アント・マクパートリン(ゲイリー・シュフィールド)
ビル・プルマン(モーガン・バナー)
Götz Otto(ラズロ)
モーウィーナ・バンクス(ジャスミン)
ハリー・ディーン・スタントン(ハーヴェイ)
オミッド・ジャリリ(メリック)
ジョン・カーター(モーリス)他。

はるばるアメリカからやってきたドキュメンタリー映画の監督モーガンは、“宇宙人の解剖フィルム”ヤラセの張本人であるレイ・サンティリとゲイリー・シュフィーウドの2人にコンタクトをとることができた。はなから彼らを詐欺師扱いしていたモーガンは、彼らへのインタビューを始める前に“このことは誰にも口外しない”という契約書にサインするよう強いられたとき鼻白む。だがネットで検索すると、どうやらこのさえない風貌の男2人レイとゲイリーは、例のフィルムの本物の仕掛け人であるらしい。これは世紀のスクープネタが得られるかも。モーガンは俄然乗り気でレイたちへのインタビューを開始した。それは今から 10年前の1995年のことだった。

レイは、ロンドンで違法コピーDVDを売って歩いているしがないチンピラだった。ある日おとり捜査官にとっ捕まった彼は、親友ゲイリーから借りていた車もろとも在庫を全て没収されてしまう。窮したレイは、食品会社で下っ端事務員をしていたゲイリーを強引に誘ってアメリカのマイアミまで赴く。そこに、著作権なしのエルビス・プレスリーのお宝映像を写したフィルムがあると聞いたからだ。闇で売りさばけば相当の儲けになる。2人はフィルムの持ち主ハーヴェイと会い、無事に契約を済ませる。ところがハーヴェイは、実は誰も知らない秘蔵のフィルムがあるとレイに耳打ちする。レイは夜になるのを待って、1人でハーヴェイの自宅まで赴いた。果たしてそこで見せられたフィルムとは、なんと50年前ロズウェルで回収された UFOから運び出されたエイリアンの解剖フィルムであったのだ!ハーヴェイはその頃従軍カメラマンであった。ある晩突然叩き起こされ、飛行機に5時間乗せられた挙句着いた先が聞いたこともない名前の基地であった。そこで彼は上層部から、エイリアンの遺体の回収とその解剖を行う過程の一部始終を撮影するように命じられた。それがレイが見たフィルムである。フィルムは何本かに分けてコピーされ、そのうちの1本をハーヴェイが所持していた。いずれ軍の方から、誰かがそのフィルムを取りに来ると信じて。

しかしその後時代が急変し、アメリカ軍は大幅に組織が改変され、CIAが誕生したりした。そのドサクサに紛れ、以前ハーヴェイにエイリアンの撮影を命じた組織もなくなってしまっていた。結局その後、誰もハーヴェイの持つフィルムを取りに来るものはいず、50年間ハーヴェイもまた秘密を守り通したのである。しかし、マイアミでひっそりと暮らしていたハーヴェイも、いい加減この軍事機密に属するかもしれないフィルムと縁を切りたかったのだ。そこで、何も知らないレイにフィルムを売ることにしたのである。

レイは興奮してこのエイリアン解剖フィルムを購入する契約を交わす。だがそのためには3万ドルという資金を用立てねばならない。ゲイリーは以前車を購入する際に知った、ハンガリー出身の怪しげな古美術商ラズロをレイに紹介した。ラズロは裏では麻薬のブローカーもやる人物で、極めて暴力的なマフィアである。そして偏執的なUFOマニアで、ミステリー・サークルの中で真っ裸で宇宙と交信するのが大好きという変人でもあった。彼にこの世紀のスクープ・フィルムを売れば、高額で買い取るだろう。飴でも舐めるように殺人を行うラズロを前にしてちびりそうになるレイであったが、なんとか交渉は成立。ハーヴェイから買い取ったフィルムをラズロに渡す約束で、3万ドルを引き出すことに成功した。

意気揚々と古ぼけたフィルムをロンドンに持ち帰ったレイたちは、早速友人たちと一緒に鑑賞会を行う。だがフィルムは劣化が激しく、再生してもほとんどなにも見えない状態であった。これではラズロは納得しないだろう。レイとゲイリーは、フィルムを映像ラボに持ち込み、専門家のジェフリーに出来る限りの修復を依頼する。だが、50年間高温多湿なマイアミの倉庫で眠っていたフィルムは、外気に触れて腐食が始まっていた。売り物にならないフィルムを前に、死を覚悟するレイ。しかし、おばあちゃんの102歳になるボーイフレンド、モーリスが代々精巧なマネキン人形を製造する仕事をしていることを聞くと、とんでもないアイデアを思いつく。それは、本物そっくりに作ったエイリアンの人形を用意して、それを解剖する様を撮影するというもの。つまり、レイが見たオリジナル・フィルムの通りに、映像をリメイクするということだった。撮影と監督は、普段はケバブ屋だが週末には結婚式のビデオ撮影をしているメリックが担当し、エイリアンの制作はモーリスがあたる。エイリアンの生々しい傷口や、解剖されて露になる身体の内部組織は、メリックの店の従業員が豚の血でこしらえた。執刀に用いる道具一式は、メリックのガールフレンドであるジャスミンが用意。こうして、皆の力を合わせて“エイリアン解剖フィルム”のリメイクの手はずが整った。

そしていよいよゲイリーの実家で、“でっちあげフィルム”の撮影が始まったのである。皆が固唾を呑んで見守る中、執刀するのはレイとゲイリーだ。だが撮影は、カメラアングルや演技にこだわるメリックの奮闘も虚しくなかなかはかどらない。事情がよくわかっていないレイのおばあちゃんが、しょっちゅう“スタッフ”にお菓子や食べ物を配っては邪魔しに来るし、撮影途中で突然ゲイリーの姉が旅行から帰ってきて、エイリアンを見るなり卒倒したり。失敗続きの撮影ではあったが、なんとかフィルムはできあがった。レイとゲイリーはエイリアンの人形を庭に埋め、証拠を隠滅。レイは決死の覚悟で偽物フィルムをラズロに渡しに行くのであった。

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いつヤラセがバレるか戦々恐々とするレイの傍らで、ラズロはフィルムを観る。果たして、ラズロはそのフィルムを本物と信じ込み、感動の涙さえ流すのだった。

とりあえずラズロをだまくらかすことに成功したレイは、さらなる悪事を思いつく。ラズロが騙されるぐらいなら、他の連中も騙せるのではないか?彼らはフィルムを何本もコピーし、買い手を募ることにする。そしてフィルムに信憑性を持たせる演出として、ロンドン博物館でフィルムの上映会を行う段取りをつけた。当初密かに行う予定だった上映会だが、地方紙に掲載されたその告知記事を見た全国紙の記者、好奇心旺盛な一般の観客が大勢詰めかけ、急遽上映会は大規模なものになる。レイはちゃっかり1人1人から入場料を取り、ゲイリーは詐欺がバレるのではないかと肝を冷やす。結果は大成功。誰一人としてこのフィルムが偽物だと見破れなかったのだ。レイもゲイリーも勢いづき、このフィルムを世界中のテレビ局に売る決意を固める。こんな儲け話は一生に一度だ。稼げるときに稼げ。彼らは世界中のスクープに飢えたテレビ局に高額でフィルムを売りさばき、とんとん拍子に大金を手にする。

しかしその大成功の直後、ゲイリーは怪しい人物に監視され始める。しかもレイとゲイリーが勝手にフィルムを売買したことを嗅ぎつけたラズロが、利益の8割を取り分として要求。窮地に陥ったレイとゲイリーは、フィルムの放送をやめさせようとした。ところがその矢先、突然ラズロが緑のレンジローバーにひき殺されてしまう。彼らの背後により巨大な組織の影が覆い始めたのだった。

ここまで話を聞いたモーガンは、元CIA工作員と名乗る人物にインタビューを試みる。どうにもあまりに話がうまくできすぎているからだ。しかし彼によると、レイのフィルムは偽物だとわかってはいたが、“本物”を隠蔽するためにそれを隠れ蓑に利用しようという上層部の判断があったのだそうだ。レイのフィルムを人々が本物だと信じれば、世界中の関心はそちらに向く。また、レイのフィルムが詐欺だと知れたとしても、それはそれで結構。人々の関心はエイリアン事件そのものから離れていき、“真実”はより深い闇に覆われていくだけだと。

しかし運命のテレビ放映は世界中で一斉に行われ、それを観た世界中の人々はフィルムを本物だと信じた。そう、番組に出演してコメントした専門家でさえも。ついにレイたちは、世界を騙くらかすことに成功したのだ!緊張から一転、お祝いムードに包まれるレイとメリックたちだったが、ゲイリーの胸は不安で一杯だった。詐欺はいつか必ずバレる。 CIAだって裏で画策しているではないか。だが現実には、アルゼンチンやベネズエラのテレビ局から、レイの元へトーク番組への出演依頼が殺到する。レイは調子に乗ってトーク番組に出演しまくり、事実を脚色してあることないことしゃべりまくる。そしてついに“オリジナル・フィルムはどこにあるの?”という単純な、そして詐欺であることがバレる肝心要の質問が、レイに相次ぐことになる。おまけに、トーク番組行脚を続けるレイとゲイリーたちに近づいてきたセクシー金髪美女が、実はテレビ局から差し向けられたスパイだったことが判明する。テレビ局は大スクープを狙って、オリジナル・フィルムを売った張本人であるハーヴェイに接近しようとしていたのだ。ハーヴェイがあのフィルムの鍵を握る人物だからだ。早速ハーヴェイの暮らす家に、テレビ局の取材チームが押し寄せる。

ハーヴェイも、もちろんテレビで放映されたフィルムを見ていた。そして、レイたちが偽物フィルムを作ってしまったばかりに、ハーヴェイまでも詐欺の片棒を担ぐ形になり、彼は慌てて逃げ回る羽目になる。アメリカのテレビ局はハーヴェイに独占インタビューをしようと追い掛け回すが、彼はあくまで証言を拒否する。仕方なくレイとゲイリーは、似たような背格好のホームレスの老人を急遽ハーヴェイに仕立ててテレビの特番に出演させた。だがその老人は妙に真に迫った演技を披露。なんと元俳優であったという。それを目にした世界中の視聴者は彼をハーヴェイその人だと信じ、尚一層フィルムが本物であると確信を深めたのであった。潜伏先のダイナーでその様子を見たハーヴェイもびっくり仰天。これで彼がテレビ局に追われることはなくなり、レイとゲイリーも信じられないツキに守られ、誰に疑われることなく75万ドルもの金を手にしたというわけだ。皆で山分けしても10万ドル以上の儲けだった。

偽物フィルムの視聴者は世界中でトータル1200万人といわれる。以来、その真偽を巡って専門家の意見は割れている。…そして現在に至る。

まさしく信じられない話を聞かされたモーガンは、狐につつままれた面持ちで最後に彼らに訊ねる。実際のフィルムにはなにが写っていたのかと。モーガンとて、それが本物のエイリアン解剖フィルムだと信じているわけではないのだ。ところが。

2人が75万ドルの札束を前に浮かれていたとき、オリジナル・フィルムを修復していたラボのジェフリーがやってきた。フィルムの一部が少しだけ修復できたのだと。ジェフリーの様子はおかしかった。恐怖に苛まれたような目で、呆然と立ち尽くしているばかりだ。2人は早速修復された部分を上映してみる。そこには…本物のエイリアンの死体が…写っていたのだ…

いまさら出てきた正真正銘、本物のエイリアン解剖フィルム。これをどうしたらいいのか。あの偽物フィルムを巡る大騒動をもう一度繰り返す気力は、さすがの2人にもなかった。そこで思い余った彼らは、オリジナル・フィルムを土の中深くに埋めてしまったのだった。それが10年前の話だ。以来、彼らはこの最後の究極の真実をひた隠しにしてきたのだ。

…つまり、そのオリジナル・フィルムはまだそこにあるということだ。モーガンの目がギラギラと輝き始める。

「よし、掘りに行くぞ!」

もちろんその前に、モーガンは再び新たな契約書にサインさせられる羽目になった。誰のアイデアか?レイとゲイリーの差し金に決まっている。彼らは今まで何度もこの手で大勢を引っ掛けてきたのだから。

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エンドクレジットの後、本物のレイとゲイリーが画面に登場する。彼らは本作の製作総指揮でもある。レイに最初にフィルムを売ったカメラマンは、レイが外国人だということで安心して手放せると思ったにちがいない。…こんな大騒動を引き起こすことになるだなんて、彼が哀れではないか?そしてもう一度、“エイリアン解剖シーン”がカラーで再現される。一体全体、なにが真実でなにがウソなのか?それはレイとゲイリーにもわからないだろう。

ゲイリーいわく、「レイは利益が得られるとわかれば、なんにだって飛びつくんだよ」

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なんとまあ、“実話”を基にしているらしいですよ。まあ、それとてどこまで信じられる話かわからないですけどもね。ただ言えるのは、このお話が人間の持つ深層心理を上手く突いたものであるということです。

“宇宙人の解剖”の様子を克明に写したビデオ。ありましたねえ。私も観た記憶がありますよ。日本でもしばらくは、事の真偽を巡って騒がれていたと思いますが、なんにせよ日本人は飽きっぽいですからね。過熱気味だった論議も、しばらくすれば何事もなかったかのように沈静化していきました。

しかし世界には、UFOや地球外生命体といった分野の話に特別な感慨を抱く人たちがいます。実際にそういったものが存在すると固く信じる人たちや、そんなものはありっこないと頑なに否定する人たちにとって、このビデオを巡る堂々巡りにも似た議論は、終わることがないのでしょうね。つまり、事の発端であるロズウェル事件とは、永遠に尽きない謎の泉であるのです。あるいは、手に届きそうで届かない真理の象徴というのか。50年前、ロズウェルで本当はなにが起こったのか。これもまた“藪の中”同様のお話です。政府はただの事故だと主張し、一部の者は、いやこれこそがエイリアン捕獲の隠蔽工作だと信じる。“真実”を取り囲んで喧々諤々議論する人間の数が増えれば増えるほど、意見は錯綜し、肝心の真実の輪郭がどんどんぼやけてしまうのです。この映画「宇宙人の解剖」にも、そういった人間心理の落とし穴というのか、集団ヒステリーの罠が巧妙に描かれています。

海賊版を売りさばくチンケな小悪党レイが、ひょんなことから足を突っ込んでしまったロズウェル事件の置き土産。この世に存在しないはずのエイリアンの解剖を写した映像を巡り、UFOマニアもそうでない者も、映像が生み出す現実的な“富”に目がくらんでしまうのですね。これをマスコミに公表すれば、映像の持ち主たる者はたちまち世界一の有名人になれますし、テレビは放映権のためなら天文学的な金を用意するでしょう。そこに罠があったわけです。

マフィアのような古美術商ラズロに絡んでしまったばかりに、失われた解剖ビデオを“リメイク”する羽目になるレイとゲイリー。彼らは、方や小悪党、方や真面目だけがとりえの事務員という凸凹コンビです。いつもレイが後先考えぬ暴走を起こしては、ゲイリーがその尻拭いを行うというパターンですね。そしていつの間にやらゲイリーがレイのリズムに同調させられてしまっていて、一緒に危険な賭けにも出る羽目になるという。今回の宇宙人解剖ビデオ騒動も全く同様です。がしかし、なし崩し的にレイの仕事に付き合い、共に危ない橋を渡ることになったゲイリーも、一連の大騒動を潜り抜けるうちにふてぶてしさを身につけていきます。ちょっと成功すれば浮つき、周囲からチヤホヤされるとすぐに有頂天になる風船頭のレイと違い、ゲイリーは重大事にも慎重に対処しますよね。今回、大胆さだけは買える相棒の度胸も手伝い、ゲイリーはこの解剖ビデオの大仕事を通じて、かつて職場で望んだような“やり手”に成長するのですよ。当初彼が想像したのとは、形は違ったでしょうけどね。典型的とはいえ、このレイとゲイリーのコンビはなかなか息の合った面白いバディです。

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さて、この映画最大の見所は、なんといってもこの“リメイク”撮影のシークェンスでしょう。なんの変哲もないロンドンの一軒家の居間で(笑)、レイの仲間たちがそれぞれの職業を生かした特技を駆使し、なんと政府の最高機密であるはずのビデオを、かなりリアルに再現してしまうのですから皮肉なもんです。政府の機密情報ってそんなレベル?と疑いたくなるほどですよね。レイのおばあちゃんの彼氏モーリスは、マネキン技術をマニアックに展開して精巧なエイリアンを作ってしまうし。普段はケバブ屋の親父メリックも、カメラアングルにまでこだわりまくる熱の入った演出で大活躍です。ケバブ屋の従業員も、豚の血やら詰め物の料理やらを用意して即席特殊効果マンに変身。レイのおばあちゃんは、いつものように天然ボケをかまして撮影の邪魔をするし。この撮影シーンは、彼ら脇役のチャーミングな魅力が最も発揮された部分です。素人の撮影大会は妙な熱気に包まれていて、自主制作映画の現場そのもの。映画好きなら彼らの気合いが理解できますし、その目的は何であれ、現場の高揚感も共感をもって受け入れられます。ただし、映像そのものはリアルなので、未見の方はご注意を。特に皮膚をはがすときの“音”は、相当嫌悪感を誘いますのでね。

ともあれ、レイたちが作ったビデオは、世界中で“本物”だと信じられました。よく観ればおかしい箇所だってあったはずなのに、です。人間は、自分たちが住まう地球以外にもどこかに必ず知的生命体がいて、人類とのコンタクトを待っているのだと思いたいのです。ラズロの弁じゃないですけど、そうすれば“私たちは孤独じゃないと思える”からでしょう。そんな深層心理が、大衆をしてレイのビデオを本物だと信じさせたわけです。誰かが“これは本物のエイリアンに違いない!”と叫ぶとしますよね。すると、実は半信半疑だった者もなんとなく周りの雰囲気に気おされ、信じようかという気になってしまう。これこそが、集団ヒステリー状態のからくりです。人間の判断力が、いかに状況に左右されやすいかを如実に語るものですね。レイとゲイリーは、結果的にその点を上手く利用した形になりました。オリジナル・フィルムはどこにあるのだと追及されたり、そのオリジナル解剖ビデオを撮影した張本人であるハーヴェイにマスコミの魔の手が迫った際にも、“より本物らしく見えるもので真実を演出する”というワザで、集団ヒステリーを思う通りに誘導していきます。時折明るみに出る大規模な詐欺事件の根本は、案外このようなことではないのかと思いますね。偽物であろうとなんだろうと、本物らしく見えさえすれば、次の瞬間からはそれが本物に成り代わる、ということです。

この映画は、レイとゲイリーが語る物語と、それを取材するドキュメンタリー作家モーガンの目線で確認される事実が絡み合ってできています。モーガンは我々観客の代弁者であり、観客が2人の話に疑問を感じれば、絶妙のタイミングでモーガンが彼らに質問をぶつけるという構成もうまいですね。レイとゲイリーの過去に、モーガンとのやり取り(現在)が挿入され、さらに2人の話を裏付ける CIAの工作員の談話(現在)まで登場します。ために時制があちこち移動するのですが、さほど違和感がありません。編集もスムーズで実に小気味よくストーリーが進んでいき、観客は混乱することなくどこまでがホントかわからぬレイとゲイリーの話に驚嘆できますね。要所要所で流れる音楽も、妙に80年代チックでレトロ感アップ。このシニカル・コメディに独特の雰囲気を与えていました。

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彼らのホラ話に翻弄されるうち、モーガン=観客がいつの間にか煙に巻かれたような心境に至るのは、やはり人がなにか一筋の真実にすがりたいと願う気持ちを持っているからでしょうね。複雑化した世の中で、これこそが真理だと思えるものは本当に数えるほどしかありません。寄る辺ない孤独感、不安感といったものは常に現代社会を生きる人々についてまわります。私たちは容易に人の話を信用しない生き物ですが、だからこそ“たった一つの真実”という言葉に崇高な響きを見出してしまいますよね。レイとゲイリーの話にしたってどこまで本当か知れたものではないし、かといってエイリアン解剖ビデオのオリジナルはどこかに眠っているはずだとも信じたい。その人間心理の泣き所を心得たのが、このレイとゲイリーという人物だったのでしょう。

英国コメディの良いところは、脇に至るまでキャラクターの個性がきちんと描きこまれていることです。この映画も同じく、レイ、ゲイリー以外のキャラクターたちは皆忘れがたいほど個性的ですね。レイとゲイリーを取材に来るドキュメンタリー作家に扮したビル・プルマン、レイに解剖ビデオを売るカメラマンのハリー・ディーン・スタントン、レイの愛すべき仲間たち、そして狂えるマフィア、ラズロ。みなさん、とにかく強烈です(笑)。
特にスタントンなんて、いつ宇宙人に変身して母星に帰ってくのかとハラハラしながら観てましたよ(違)。彼は怪しさ満開のキャラクターを、いつものように飄々と演じていました。また、個人的に最も気になった脇役はラズロですねえ(笑)。あの007シリーズに登場した、“ジョーズ”という敵役を覚えておいででしょうか。大男のリチャード・キールが演じて人気となったキャラですね。ラズロ役の男性、このジョーズにそっくりなのです。背も高いですし、筋肉隆々。しかもすぐブチ切れて、蟻でも捻り潰すがごとく人殺しを行う。ビジュアルだけでも相当怖いのです…が、ラズロは実はボディーガード(小山のような体躯の黒人。ちなみに男性)を恋人になさっているという設定です。彼に“ダーリン”と呼びかけていたので、きっとラズロさんの方は“ハニー”なんでしょうね。素敵すぎます。細かいことですが。
主演の2人は全く未見の俳優でしたが、英国のテレビ界で活躍する若手だそうです。共に達者な演技で、将来が楽しみですわ。

おまけ。

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こちらが映画のエンドクレジット中にも登場する“本物(たぶん)”のサンティリ。映画ではもっとこぎれいな格好をしてますが(笑)。


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