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zoom RSS 紫煙とクリスマスの関係―「スモーク Smoke」

<<   作成日時 : 2016/12/10 19:19   >>

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映画界では、巨大遊園地を思わせるメジャー大作映画と、小規模ながらリスクを厭わない刺激的なインディペンデント映画の二極化がどんどん進んでいます。その中間を埋めるのが、Netflix、Amazon、Huluといった配信会社になりつつある昨今。映画界の激変に伴い、テレビ、音楽その他の業界も変化を余儀なくされている状況です。

古き良き時代は終わり、はてさて、映画界は今後どう変わっていくのでしょうかね。

映画を観ていても、最近、徒労感や砂を噛むような虚しさを強く感じるようになりました。

…ああ、煙と涙が目に沁みるねえ。

紫煙とクリスマス・シーズンにちなみ、素晴らしい作品をひとつご紹介しましょう。禁煙中の方にとっては目の毒かも知れませんが…。


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"...And then I send up a curl of tobacco smoke at Christmas. "

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「スモーク Smoke」(1995年製作)
監督:ウェイン・ワン Wayne Wang
製作:ピーター・ニューマン&グレッグ・ジョンソン&ケンゾー・ホリコシ&ヒサミ・クロイワ
原作:ポール・オースター Paul Auster原作「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」
脚色:ポール・オースター Paul Auster
撮影:アダム・ホレンダー
音楽:レイチェル・ポートマン
挿入曲:スタンダード・ナンバー『煙が目に染みる Smoke Gets In Your Eyes』のカバー・ヴァージョン
『Downtown Train』&『Innocent When You Dream』byトム・ウェイツ 
出演:ハーヴェイ・カイテル(オーギー・レン)
ウィリアム・ハート(ポール・ベンジャミン)
ストッカード・チャニング(ルビー)
ハロルド・ペリノー・Jr (ラシードことトーマス・コール)
フォレスト・ウィッテカー(サイラス・コール)
アシュレイ・ジャッド(フェリシティ)
ジャレッド・ハリス
メアリー・ウォード
ジャンカルロ・エスポジート他。

1990 年夏。ニューヨーク、ブルックリンの下町にあるオーギー・レン(カイテル)のタバコ屋には、今日もなじみの客達が集まっている。贔屓の野球チームのふがいなさを野次る彼ら。そこへ、近所に住む作家ポール・ベンジャミン(ハート)がいつものタバコを買いに来る。オーギーは彼のファンだ。タバコの話をポールにふると、彼はひとくさりタバコにまつわる逸話を話して聞かせる。いわく、エリザベス1世の寵臣ウォルター・ローリー卿が、英国王室にタバコを広めた。そして彼は女王にタバコの煙の重さを計れると宣言、いぶかる彼女の前で、新しいタバコを計りにのせ重さを計る。おもむろにタバコを吸い、灰と吸殻を計りにのせ、その重さを計る。最初の重さから後の重さを差し引けば、それが煙の重さというわけだ。
ポールは小説家で、3、4冊素晴らしい本を出版したが、 7年前に7番街で起こった銀行強盗に愛妻が巻き込まれ死亡してからは、書く気力を失ってしまったのだった。オーギーは回想する。ポールの妻はいい人だった。亡くなったときには確か妊娠4ヶ月か5ヶ月ぐらいだったはずだ。でもその赤ちゃんも亡くなってしまった。ポールはまだ痛手から立ち直っていない。

第1章ポール

ポールは漫然と道を歩いていた。廻りも確かめずにぼんやりと道路を横切ろうとした瞬間、黒人の少年に抱きとめられた。トラックがすぐ近くまで迫ってきていたのだ。間一髪で轢かれるところを救われたポール。彼は無理やり少年に礼をする。少年はラシード・コール(ぺリノー・Jr)と名乗った。ポールはラシードを家出少年と勘違いし、家に泊まっていくよう勧めたが、ラシードは申し出を断る。
オーギーの店には、いろんな愛煙家がやってくる。素晴らしい仕立ての背広を着て、別荘を持っているような。実はオーギーは、陰でこっそりキューバ産葉巻の密売をしようとしていたのだ。禁制品のキューバ産葉巻を欲しがる判事や弁護士どもに売りさばこうというのだ。
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オーギーが店を閉めようとすると、ポールがタバコを買いに走ってきた。店のカウンターの上に使い込まれたカメラが置かれているのを見たポールに、彼は説明する。毎朝、雨の日も晴れの日も、同じ時間に同じ場所で同じ角度から同じ風景を撮影する。朝の8時、7番街と3丁目の角の場所。もう14年続けている。ライフワークなんだと。ポールは今までに撮り溜めた4千枚の写真を見せてもらう。どれも同じ写真だと、とばし見しようとするポールを諫めるオーギー。同じように見えるかもしれないが、全部違う表情なんだ。晴れの日、曇りの日、夏、秋…、同じ顔、違う顔、新しい顔が常連になり、古い顔が消えていく…。太陽光線は毎日違う角度から差してくるんだ。写真の中に今は亡き妻エレンの姿を見つけたポールは、泣き崩れる。
自宅で執筆中であったポールに来訪者が。いつかのラシード少年である。せいいっぱい虚勢を張りながらも、彼はやはりトラブルを抱えていたのか、泊めてほしいと言って来た。ラシードはポールの書棚の中になにかを隠す。狭い家での男二人の共同生活は大変で、仕事の出来ないポールは、ラシードに出て行ってくれるよう頼む。良心の呵責に悩まされるポール。

第2章ラシード

ラシードが出て行って2日後、すさまじい剣幕の黒人女性がポールを訪ねてくる。「甥のトーマスはどこ?居場所を知っているんでしょう!」
彼女の話によると、ラシードと名乗った少年は彼女の甥で、本名はトーマス・コール。ラシードがポールに語っていた身の上話はすべて嘘であった。トーマスと叔母は貧しい開発地区に住んでおり、ブルックリンの下町にある高校に通っている。彼の母親は12年前に亡くなり、それと時を同じくして、幼い息子を残したまま父親は蒸発してしまった。しかし郊外の給油所でその父を見かけたという知り合いの話を聞いて、トーマスは生き別れになった父親を探すために、叔母の家から出て行ったらしい。
郊外の寂れた給油所兼自動車修理工場。左腕に義手をつけた男は、昨晩から給油所をスケッチし続ける見知らぬ少年を叱り付ける。気味が悪いからとっとと失せろと。話をきけば、その少年はここで雇って欲しいと言うではないか。しかし3週間前にこのおんぼろスタンドを買い取って商売を始めてこのかた、客はただの一人も来やしないのだ。このままだとじき倒産だ。人なんて雇う余裕はない。
ある日オーギーの店に中年の女がやってくる。名はルビー(チャニング)。18年前に別れた元恋人だ。彼女は片目を悪くしたらしく、フック船長のようなアイパッチをつけていた。生活に疲れた、かつての面影もない女。彼女は思いつめた様子で、助けて欲しいと言い始めた。ルビーとオーギーの間に娘がいたというのだ。名はフェリシティ(ジャッド)で 18歳になる。1年前に家出して、たちの悪い男と同棲している。ブルックリンのスラムでヤク漬けになって。それだけならまだしも、フェリシティは妊娠しているのだ。なんとか娘を連れ帰りたいと、力添えを頼みに来たルビーを、オーギーはけんもほろろにつき返す。かつてオーギーは彼女のために宝石店に強盗に入り、あっさり捕まり、ム所入りする代わりに海軍に入隊させられたのだった。オーギーが戦場でひどい目に合っている間、ルビーは別の男と結婚した。裏切られたと知ったオーギーは決して彼女を許さない。第一、金もないし。
日がな一日、義手の男の給油所を見つめ続ける少年。男はついに折れ、少年を雇うことにした。事務所の上にある空き部屋を貸してやり、時給は5ドル。バイトだ。交渉成立。男はサイラス・コール(ウィッテカー)と名乗り、少年はポール・ベンジャミンと名乗った。
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ポールことトーマスは、サイラスに義手のことを訊ねる。サイラスは彼に、12年前に起こった自動車事故のことを話す。当時の妻は亡くなり、彼自身は左手を失ってしまった。そして新たに付けられた義手の先についた鉤を見るたびに、自分がいかに愚かで身勝手なゲス野郎であったを思い出すのだと語った。
夕方、サイラスの妻が赤ちゃんを連れて彼を迎えに来た。仲むつまじい家族の団欒の様子を見て、胸が張り裂ける思いのトーマス。いても立ってもいられず、ポールの家にやってきた。納屋から拾ったおんぼろテレビをプレゼントだ、と偽って。ポールは彼に叔母さんのことを話し、逃げねばならないトラブルのことを問いただす。観念したトーマスは、街のチンピラクリムと仲間達が強盗を働いている現場に出くわしてしまったことを話した。クリムにもう少しで射殺されるところだった。なんとか逃げ延びたトーマスは、警察ではなく、白人が住む地区にあるポールの家に逃げ込んだ、というわけだ。白人世界と黒人世界は決して交錯しないので安全なのだ。結局そろっておんぼろテレビを観る二人であった。

第3章ルビー

ルビーが車でオーギーを迎えに来た。娘に会って欲しいという。でないと自分が娘に会わせてもらえないからだ。彼を無理やり娘フェリシティの住むスラムにつれてくるルビー。フェリシティは母親には反抗するが、父親には会いたいようだ。出てきたフェリシティは、ひどい顔色で疲れきった表情だった。おまけに安娼婦さながらのつっけんどんではすっぱな物言いに、すっかり嫌気が差すオーギー。
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「あんたほんとにこの女と寝たわけ?信じらんない!」
フェリシティはすでにお腹の子供を堕胎した後であった。詰め寄るルビーとオーギーに、とっとと消えろと吐き捨てる。しかし出て行く彼らを見送るフェリシティの目は、いまにも泣き出しそうであった。
ポールはトーマスに一人のスキーヤーの話をする。彼は25年前、一人でアルプスにスキーに行った。ところが雪崩に遭い、雪に呑まれてとうとう彼の死体は発見できなかった。彼には幼い息子がいたが、息子も長じてスキーヤーとなり、去年アルプスにスキーに出かけた。雪山を半分滑り降りたところで弁当を食べていると、足もとの氷の中に、一人の人間の遺体が眠っているのを発見した。よく見るとその遺体は自分にそっくりで、彼はそれが25年前に遭難した自分の父親だとわかった。しかし父親よりも自分の方がずっと年老いている。幼かった息子は、いつのまにか死んだ父親の年齢を追い越してしまったのだ。
トーマスは今日17歳の誕生日だ。お祝いに彼に本を買ってやるポール。彼は本屋の店員に、新作を待っていると話しかけられ、しどろもどろになる。トーマスが如才なく彼女を誕生祝いに誘い出し、3人でクラブに行くことになる。うまくポールと本屋のエイプリルを踊らせるトーマス。そこへオーギーが、新しいガールフレンドを伴ってやってきた。酔っ払ってご機嫌な彼に、ポールはトーマスを店で雇ってもらえないかと頼む。
翌日からトーマスはオーギーの店で働き始める。ポールの家に帰ると、1942年の包囲下のレニングラードで起こった逸話を話す。作家バフティンは、死を覚悟してタバコを一服したくなった。しかしタバコを巻くための紙がない。仕方なく、10年かけて書き溜めた原稿を破り、それでタバコを楽しんだのだ。信じないトーマスに証明しようと、書棚をあさったポールは、そこで紙袋を見つける。中には大量の紙幣が。ポールはトーマスに真実を話すよう詰め寄る。つまり、トーマスはクリムたちが盗んだ金を横取りしたため、彼らに追われるはめになったのだった。全部で6千ドル。金は絶対に返さないとがんばるトーマスに困り果てるポール。
オーギーはトーマスを店に残して、葉巻の取引に向かった。トーマスは掃除道具をいい加減に片付けて、ポルノ雑誌を読みふける。オーギーが戻ってきた。秘蔵の葉巻を入れたダンボールが、水浸しになっているのを見つけたオーギーは、激怒する。トーマスのミスだ。
オーギーの葉巻取引は大失敗に終わった。今やトーマスの親代わりのポールが、トーマスを連れてオーギーに会いに来た。3年かけて5千ドルはたいて貯めた葉巻がパアだ。しかもオーギーの信用は丸つぶれ。もう葉巻の商売は出来ない。トーマスは謝罪のために、例のちょろまかした6千ドルから5千ドルをオーギーに渡すのだった。ポールがとりなし、トーマスとオーギーは仲直りした。
「このクソガキめ」
「あんたこそクソ野郎だよ」
夜、ポールの家にクリムとその仲間が殴りこんできた。トーマスの行方を吐けと迫る彼らに、あくまでシラを切るポール。外から帰ってきたトーマスは、クリムたちがついにやってきたことを察し、そのまま逃げ出す。
翌日朝、オーギーが店で頭の弱いジミーにパラドックス原理の説明をしていた。「オーギー、わかった。パラダイスは天使が住んでるところだろ?」
そこへ包帯だらけの姿のポールがやってくる。警察が来てくれたので、この程度で助かったのだ。ポールはトーマスの行方を心配している。
オーギーは、あきらめてピッツバーグに帰るというルビーと会った。娘の人生は自分ではどうしようもないという彼女に、フェリシティをリハビリ施設に入れろと忠告するオーギー。そして、葉巻の商売がうまくいったんだと嘘をついて、例の5千ドルをルビーに渡すのだった。驚き、感動するルビーは、大声で泣き始める。オーギーは最後にひとつだけ彼女に訊ねた。
「フェリシティは本当におれの娘か?」
「そうかもしれないし、そうでないかも…。確立で言えば50-50ってとこかな」

第4章サイラス

サイラスの納屋でペンキ塗りをしているトーマス。そこにサイラス一家がやってきた。ピクニックをするので、一緒にどうかとのお誘いだ。トーマスが準備していると、なんとオーギーとポールが車で乗り付けてきた。あわてて出てくるトーマス。しどろもどろなトーマスを尻目に、おやじ二人はサイラスに自己紹介した。トーマスがここではポールの偽名を使っていたため、いぶかしむサイラス。ポールとオーギーは、トーマスに本当の名前をサイラスに告白するようにけしかける。トーマスはとうとう本名を―トーマス・ジェファーソン・コール―名乗った。それはサイラスの捨てた息子の名前なのだ。逆上したサイラスは思わずトーマスを殴ってしまう。彼は義手を振り上げながら泣き叫ぶ。
「大嘘つきめ!嘘に決まってる!」

親子の殴り合いの後。ポールとオーギー、トーマスも加えたピクニックの一団は、ご馳走を前に、実に気まずい雰囲気の中で誰も一言もしゃべらなかった。トーマスはそっと赤ちゃんの頭をなでる。

第5章オーギー

1990 年冬。オーギーのタバコ屋では、なじみの連中が湾岸戦争の話をしている。ポールがやってきた。いつものタバコを1箱でいいという。新しい彼女が心配するからと。オーギーはうれしそうに、仕事のことを訊ねた。なんとポールは、N.Y.タイムズからクリスマスにちなんだショートストーリーを書く依頼を受けていたのだ。そりゃすごいと喜ぶオーギーだったが、ポールはネタがなくて困っているという。そこで、オーギーはとっておきのクリスマスの話をポールに語って聞かせることになった。「その代わり昼飯をおごれよ」
ダイナー。オーギーは街角の写真を撮り始めたきっかけを話し始める。76年の夏、彼は今のヴィニーのタバコ屋に雇われた。ある日ガキがポルノ雑誌を万引きしているのを見つけた彼は、走って追いかけていった。すると、途中でガキが財布を落としたのに気づいた。財布の中には免許証とスナップ写真が入っているだけだった。でも賞状を抱えて笑っているそいつの写真を見ていると、通報する気が失せてしまった。一生恵まれない下町のガキだ。雑誌の1冊や2冊くれてやってもいいじゃないか。その年のクリスマス。財布を持ち主のロジャーに返してやろうと、住所を頼りに訪ねていった。やっとの思いで家まで着くと、ロジャーはいるか聞いた。するとたいそうな老女が出てきて、「ロジャー、来てくれたの?」と言うのだ。彼女は盲目でオーギーを孫のロジャーだと勘違いしたようだった。オーギーは仕方なく老女と抱き合った。でもいくら盲目でも孫と他人の区別はつくだろう。彼女はオーギーを孫だと信じたいようだった。そこで、とっさにオーギーも彼女の望みどおりに、孫のロジャーを演じることにしたのだ。その日一日老女と過ごし、口からでまかせの嘘をついて、調子を合わせた。いいタバコ屋に勤めていて、もうすぐ結婚するんだとか…。彼女も嘘だと知りつつ喜ぶフリをした。腹が減ったので近所でいろいろ買い込み、老女秘蔵のワインで豪勢なディナーをとった。ところがオーギーはトイレを借りた際に、とんでもない行動をとった。シャワーの仕切り棚に、箱に入った新品のカメラが積まれていた。どうせ盗品だ。1箱それを失敬して、何食わぬ顔で居間に戻ると、老女は眠っていた。後片付けをすませて、孫の財布をテーブルに置き、そのまま黙って彼女の家を後にした。3、4ヵ月後に再び同じ家を訪ねると、老女はいず、別の家族が住んでいた。おそらく亡くなったのだろう。老女は最後のクリスマスをオーギーと楽しんだのだ。たとえそれがあかの他人であっても、彼女は彼のおかげで幸せになった…。
しかしポールは、その話が嘘であることを見抜く。オーギーは謎めいた笑顔を浮かべた。
「秘密を分かち合えない友達なんて、友達と言えるかい?」
「…それもそうだ。生きてることの証だからな」

トム・ウェイツの『Innocent When You Dream』が流れるなか、モノクロ映像で「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」が語られていく。

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原作者ポール・オースター自身による素晴らしい文字世界からの脚本を得て、つつましく暮らす人々の人間模様がつづられる映像詩。本作は、役者達の演技と思わせない達者な演技と、ワン監督の脚本に書かれた台詞に頼らない、映像の行間を掬い上げるような演出が幸福な出会いを果たしました。実際、劇中で話される台詞も俳優たちのアドリブが多数採用されているそうで、そういった演出がこの作品にリアリティを付加していることは一目瞭然ですね。レイチェル・ポートマンの美しいピアノの旋律も、映像を押しのけてでしゃばることなく、登場人物に優しく寄り添います。
ニューヨークは大都会です。いろんな人間がいて、人間の数だけドラマがあるはず。ポール・オースターの原作小説も素晴らしかったのですが、シリアスに描けばかなり重くなったであろう題材をこれだけ軽やかに、感傷に陥る一歩手前でとどめたワンの演出は卓越していると思います。ニューヨークの下町に住む人々の人生を、つかず離れず、絶妙な距離を保ちながら時にリアルに、時に幸せなフィクションを交えながら描く、大人のための寓話。
オーギーという実に魅力的なダメ親父を中心に、市井の人々のごく平凡な日常に静かに波紋を広げるドラマは、オーギーが長年撮り溜めたモノクロの写真に写る人々のように、あちこちで偶然の出会いと別れを編み出していきます。オーギーと仲間たちの物語は、最後に語られるとっておきのクリスマス・ストーリーに向かって、ゆっくりと一つに束ねられているのです。

いい年をした男達の優しさと情けなさ、ロマンティシズムを描いて、この作品は愛おしい宝石のような映画に仕上がりました。この作品は、すべてのスモーカーと、忙しい毎日になにかをなくしかけたすべての人たちに捧げられたものです。

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ちなみに、この「スモーク Smoke」、リマスター版が今月日本でリバイバル上映される予定です。

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