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zoom RSS 人形は生き続ける−ジム・ヘンソン Jim Henson & his Muppets

<<   作成日時 : 2015/07/29 09:55   >>

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“成長し続け、より良い生活を築くことこそ、人生の意義があると思う。僕はそのためには努力を惜しまないし、そんな生き方を楽しんでもいるよ”

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ジム・ヘンソン Jim Henson

1936年9月24日生まれ
1990年5月16日ニューヨークにて没
アメリカ、ミシシッピー州グリーンビル出身

ジム・ヘンソンことジェームズ・マーリィ・ヘンソンは、幼い頃から人形に親しんでいた。アメリカの著名な人形師であったビル・ベアードやエドガー・バーゲンの影響を受けて、高校時代に彼が作った操り人形第1号は、母親のコートから作ったもの。この緑色のカエルの操り人形は、後にカエルの“カーミット”と名づけられ(少年時代のヘンソンの友人の名前)、子供向け番組「セサミ・ストリート」で大人気キャラクターとなる。メリーランド大学在学中には人形劇団を結成し、大学卒業後にはニューヨークで「エド・サリヴァン・ショー」などに人形操作でゲスト出演も果たした。彼は操り人形(マリオネット)とパペットの特徴を兼ね備えた操演人形を開発し、それを“マペット”と命名する。

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ヘンソンとマペット達の新たな冒険が始まる。ワシントンのスタジオで1955年から始まった、レイト・パペット・ショー『Sam and Friends』は、夜遅い時間帯の放映にもかかわらず評判を呼んだ。ヘンソンが設立したヘンソン・プロダクションは、その後数々のコマーシャルフィルムを製作していく。1963年製作のテレビ番組『The Jimmy Dean Show』では、ヘンソンは犬のロルフのマペットを操作、声をあて、これはプロダクションの生み出した最も古いキャラクターはとなった。この番組での成功を弾みに、彼は1965年に『Time Piece』という短編マペット・ムービーを製作する。これは同年度のアカデミー賞短編映画賞部門にノミネートされた。

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そして、1969年からアメリカで始まった革新的な子供向け教育番組「セサミ・ストリート」に、マペットのキャラクター達を提供したのである。この番組は世界中で放映され、マペット達は子供の人気者となる。ところが、番組が有名になればなるほど、ヘンソンのマペットは子供のためのエンターテイメントとしてしか認知されなくなってしまう。マペットの更なる可能性を信じ、これに飽き足らなかったヘンソンは、1975年「サタデー・ナイト・ライヴ」にスタッフとして参加したが、マペットを主役としたバラエティ・ショーを作りたいという彼の願いは周囲に理解されなかった。彼の目指すユーモアは多分に毒があり、無害なぬいぐるみ・ショー然とした「セサミ・ストリート」のソフトなそれとは趣を異にしていたからだ。彼は英国のプロデューサー、リュー・グレイドの協力を得て、1976年に『The Muppet Show』を製作する。この番組は、レイティングの問題とゲスト出演してもらうスターの不在に常に悩まされたが、セカンド・シーズンに入って視聴率を高めた。

“ヘンソンのマペットは映画媒体には向かない、所詮人形作品など子供だましに過ぎない”という業界内の常識を覆すため、彼は1979年にジェームズ・フローリーを監督に迎えて「マペットの夢みるハリウッド」を製作した。この作品である程度の成功を収めたヘンソンは、後にこの作品をテレビ・シリーズ化する。同年、ジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップをロンドンに設立し、マペットやアニマトロクスの製作のみならず、プロダクション・スタジオとして映画製作にまで活動の範囲を広げていく。そして1981年に、ダイアナ・リッグやピーター・ユスティノフら名優をゲストに迎えて「マペットの大冒険/宝石泥棒をつかまえろ!」で監督デビューを果たす。

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さらに翌年1982年、彼のマペット技術の集大成にしてパペット・ムービーの金字塔「ダーク・クリスタル The Dark Crystal」を監督・製作した。この暗く官能的で、かつ神話的イメージに満ちたアーティスティックなファンタジー作品は、公開当時思うように興行成績をあげることはできなかったものの、今では完成された芸術作品として根強くファンに支持され続けている。
1983年には、最も成功したテレビシリーズ「フラグル・ロック」を製作。これは日本でも一部放映されていた。神話上の生き物トロールも出現するこのご機嫌なファンタジー番組は、アメリカのみならず世界中のファンに強くアピールする。

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(画像は、「ラビリンス/魔王の迷宮 Labyrinth」に主演したデヴィッド・ボウイと、製作総指揮として今作を支えたジョージ・ルーカス、そしてヘンソン)
この後、1986年製作の、マペットと人間の俳優が共演する映画「ラビリンス/魔王の迷宮 Labyrinth」や1987年のテレビシリーズ「ストーリーテラー Jim Henson's Story Teller」において、マペット技術とアニマトロクスの融合はさらに進化し、物語の内容に更なる深みを与えることになる。特に、世界の伝承物語を取り上げた「ストーリーテラー」は、世界中の子供達のみならず大人をも魅了した最良のテレビシリーズであったが、残念ながら第1シーズン全9話で一旦中断された。1989年の「赤いカラスと幽霊船」ではキャラクターデザインを手がけ、「ジム・ヘンソンのウィッチズ」やギリシャ神話に材を取った「新ストーリーテラー」に製作総指揮として携わるが、シリーズそのものは「ストーリーテラー」ほどのクオリティを保てず、ヘンソンが1990年5月16日に細菌感染症が原因で急死すると、放映は打ち切りになっている。

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ヘンソンは、疑いようもなく近代アメリカが生んだ偉大な操り人形師の1人であり、それに留まらず、映画やテレビ作品のプロデューサー、監督として幅広く活動し続けた。彼によって、エンターテイメントの単なる添え物に過ぎなかったパペットが、独立したひとつのジャンルとして認識されるまでになったのだ。また彼は、作品の成功や、マペット・キャラクターを商品化して得られた膨大な収益を、マペット技術の更なる研究や後進の育成、社会への還元に惜しげもなく費やした。彼の名前を冠したジム・ヘンソン財団やジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップの運営、ヘンソンが完成したパペット・ジャンルの伝統を守るため、現在では息子ブライアン・ヘンソンや娘のリサ・ヘンソン、へザー・ヘンソンらが父の遺志を継いでいる。なお私生活では、1959年に結婚した妻ジェーン・アン・ネベルとの間に5人の子供たちをもうけた。

ジム・ヘンソンの公式サイトThe Jim Henson Companyはこちらです。

●フィルモグラフィー

1991年「ジム・ヘンソンのマペットビジョン3-D」
1990年「ジム・ヘンソンの新ストーリーテラー/ギリシャ神話」TVシリーズ、製作総指揮
1989年「ジム・ヘンソンのウィッチズ」(未)製作総指揮
1989年「赤いカラスと幽霊船」キャラクターデザイン
1989年「ジム・ヘンソン・アワー」TVシリーズ
1987年「ジム・ヘンソンのストーリーテラー」兼製作
1986年「メイキング・オブ・ラビリンス」(未)脚本&出演
1986年「ラビリンス/魔王の迷宮」
1986年『The Tale of the Bunny Picnic』TVムービー
1985年『Muppet Meeting Films』ビデオ
1984年「マペットめざせブロードウェイ!」製作総指揮&出演
1983年「フラグルロック」TVシリーズ
1982年「ダーククリスタル」共同監督
1982年『John Denver & the Muppets: Rocky Mountain Holiday』TVムービー
1981年「マペットの大冒険/宝石泥棒をつかまえろ!」(未)
1979年「マペットの夢みるハリウッド」(未)製作&出演
1977年『Emmet Otter's Jug-Band Christmas』TVムービー
1974年『The Muppets Valentine Show』TVムービー
1972年『The Muppet Musicians of Bremen』
1972年『Tales from Muppetland: The Frog Prince』
1969年〜1990年「セサミストリート」TVシリーズ
1969年『Hey, Cinderella!』TVムービー
1969年『The Cube』TVムービー
1965年『Time Piece』
1955年〜1961年『Sam and Friends』TVシリーズ

ジム・ヘンソンの作り上げたカエルのカーミット、ミス・ピギーおよびセサミ・ストリートのキャラクター達は、今もなお世界の子供から大人まで幅広い層に愛され続けています。ことアメリカでは、ほとんどの子供たちが「セサミ・ストリート」を観て育つと言っても過言ではありません。ですから、アメリカでのヘンソンの知名度って大変高いのだそうですね。日本ではせいぜい“「セサミ・ストリート」の人形の人か”程度の認識しかありませんが、アメリカの人々の間には、彼が急死した際には大変大きな衝撃が走ったといいます。亡くなるほんの数日前まで元気だったために、周囲のショックは余計に大きかったようですね。葬儀には、1961年に出会って以来の盟友フランク・オズ、ジョージ・ルーカスなど著名人が大勢駆けつけました。ファンの子供たちやその親の世代、そして彼が創作したマペット達が見守る中、故人の意思を尊重した実にカラフルな葬儀が行われ、たくさんの人々の涙を誘ったと言われます。また、1976年の革新的なパペット・ショー番組『The Muppet Show』で愛唱された歌“Turn the World Around”をハリー・ベラフォンテが熱唱し、ヘンソンへのたむけにしたとか。また追悼として、1990年の9月から翌年2月まで、ロンドンの Museum of the Moving Imageでヘンソンの回顧展が行われました。

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(ヘンソン亡き後のマペットたちのショット。これを見るたび、いやがうえにも偉大な故人の不在が胸に迫ってきます…。いかん、今も泣けてくる…)

私自身、子供の頃NHK枠で放映されていた「セサミ・ストリート」は欠かさず観ていた記憶があります。日本で製作される子供向けの教育番組とは一味も二味も違った、なんともいえない“大人の感覚”に、まだ見ぬ外国への憧れを強くしたものです。長じてからは、番組にゲストとして登場する有名スター目当てに観ていましたね(笑)。次から次へと招かれる豪華なゲスト・スター陣に、いかにこの番組がアメリカ人にとって大切なものであるかを思い知らされました。

フランク・オズとは「セサミ・ストリート」や『The Muppet Show』などで何度もタッグを組み、1982年の「ダーククリスタル The Dark Crystal」では共同で監督も行いました。また、1980年の「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」で登場した、ヨーダのキャラクターデザインをオズと共同で手がけたことも有名ですね(操演と声はオズの担当)。デビュー当初は俳優として活動していたオズも、その後映画監督の道に進みました。
ヘンソンは、人形師としてテレビに出演し始める以前に、試験的にではありますが8ミリや16ミリのフィルムでアニメーションの製作も行っていたようです。そういった、人形の世界に留まらない幅広い分野への興味と探究心が、マペットの開発につながり、ひいてはアメリカのパペット文化に革命をもたらすことになったわけです。

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また、数々のテレビ番組やバラエティ・ショー、映画といった媒体で、自ら生み出し、命を吹き込んだマペット達が活躍するようになっても、パペットに更なる未知の可能性があることを信じて疑いませんでした。ヨーロッパに旅行した際には、かの地で子供だけではなく大人も人形劇を楽しみ、文化として定着している実情を目の当たりにして、アメリカでも大人の鑑賞に耐えうるパペット番組を作ることは可能だと意を強くしたそうです。彼の飽くなきチャレンジ精神と向上心が、「ダーククリスタル」を生み出しました。マペットによるマペットのためのマペットの映画。驚愕のマペット操作技術は、他の分野と合体・進化してさらに洗練され、それに支えられて唯一無二の世界観を表出することに成功したのです。人間によるドラマでもない、もちろんアニメーション世界とも異なる独特の雰囲気。興行的成功とは無縁でしたが、この作品によって、人形劇が芸術の域にまで高められた意義は非常に大きいと思います。

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なんといっても個人的に好きなのは、この「ダーククリスタル The Dark Crystal」と「ストーリーテラー Jim Henson's The Storyteller」第1シーズンですね。「ストーリーテラー」を観直していたんですが、やっぱり味があるわ。まあさすがに、CG技術が頂点に達している今観ると、映像的に稚拙な部分も目に付きます。でも、そんな些細な欠点を凌駕するほど、作品としての味わいが突出しているんです。CG技術って、才能のない監督の作品でもそこそこ観られる程度にはしてくれますが、ヘンソンのこの作品はそんな小手先の技術には一切頼っていません。

ヨーロッパに古来から伝えられる伝承を、精巧なマペットと人間の俳優の共演によって滋味深く描いていますね。ヘンソンの創造するマペットの造形とイメージが、中世ヨーロッパの雰囲気によく合ってもいます。出演陣も意外と豪華でして、全てのエピソードに語り部として登場するジョン・ハートはじめ、「モーリス」でブレイクするかどうかの時期だったジェームズ・ウィルビー、無名時代のショーン・ビーン、「チャタレイ夫人の恋人」以前のジョエリー・リチャードソン、「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」「クライング・ゲーム」等のミランダ・リチャードソン、ジョナサン・プライスなどなど。実力派俳優が揃い、演技を楽しむドラマとしてもなかなか見ごたえのある作品です。全9話を収めたDVDVol.1とVol.2は当館でご紹介済み。

「ジム・ヘンソンのストーリーテラーVol.1、Vol.2 Jim Henson's The Storyteller」Part1―ジム・ヘンソン Jim Henson監督
「ジム・ヘンソンのストーリーテラーVol.1、Vol.2 Jim Henson's The Storyteller」Part2―ジム・ヘンソン Jim Henson監督
「ジム・ヘンソンのストーリーテラーVol.1、Vol.2 Jim Henson's The Storyteller」Part3―ジム・ヘンソン Jim Henson監督
「ジム・ヘンソンのストーリーテラーVol.1、Vol.2 Jim Henson's The Storyteller」Part4―ジム・ヘンソン Jim Henson監督

そうそう、これを観ていて感じたのですが、この作品が「ロード・オブ・ザ・リング」3部作に与えた影響ってかなり大きいのでは。ジム・ヘンソン亡き後、彼がクリエイター界のみならず映画やアニメなどの映像世界にもたらした影響は計り知れませんからね。


ジム・ヘンソンという不世出のアーティストによって命を与えられたカーミットもミス・ピギーも、もちろん今も元気に活躍中です。ジムはいなくなっても、彼のスピリットは時代を超えて受け継がれていますよね。日本では劇場公開は叶いませんでしたが、アメリカでは、マペットたちと映画スターたちが共演する豪華な作品『Muppets Most Wanted』が好評をもって公開されました。

Muppets Most Wanted Official Trailer

公式トレーラーがこちら。リッキー・ジャーベイス、タイ・バーレル、ティナ・フェイといった芸達者たちを中心に、数多くのスターがカメオ出演するスケールの大きな冒険譚になりそうですね。

The Cameos of Muppets Most Wanted

こちらが、カメオ出演するスターたちの映像集。何気にダニー・トレホがプッシュされていて(大笑)、個人的には大満足です。さあ、あなたは、一体何人までスター達の出演を確認することができるでしょうか。


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…今はきっと天国で、パペットの開発に余念がないであろうジム・ヘンソン。テレビから映画界へ飛び出したマペットたちの新たな冒険を、空の上から目を細めて見守っているのでしょう。

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