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zoom RSS 恋する赤鬼−「ヘルボーイ Hellboy」

<<   作成日時 : 2015/10/03 22:48   >>

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ギレルモ・デル・トロ Guillermo del Toro監督の待望の新作「クリムゾン・ピーク Crimson Peak」は、今月末に日本でも公開されます。アメリカでは少し早く16日公開。世界中でこの作品がヒットしますように念じつつ、当ブログで扱ったギレルモの過去作品を再掲します。

思えば2013年はギレルモ・ファンにとって本当に良い一年でありました。ギレルモが「パシフィック・リム Pacific Rim」で、日本のロボット・アニメ、ウルトラマン、怪獣…といった日本独特のオタク文化への愛情を、よりによってハリウッド資本を使ってハリウッド映画で大爆発させてしまったのですから(笑)。ただ、アメリカの観客には、このロボットや怪獣への熱い偏愛、そして、人種、文化の違いや利害関係を超えて地球のために協力することの重要性を訴える尊いメッセージが、ただの1ミクロンも伝わらなかった(彼らには理解できなかった)と聞き及びます。

そこでわたくしめ、日本で「パシフィック・リム Pacific Rim」が公開された時には、まずは2D字幕版で鑑賞しました。自分が子供の頃にテレビで見て育ち、また大人になってからも自分の子供と一緒にテレビで見てきたロボットや怪獣たちが、まったくもって本物としか言いようのない存在感でスクリーンいっぱいに暴れる様を見せ付けられ、なんと上映開始5分で号泣することに(笑)。

巨大人型ロボットと、ブニョブニョした肌の質感もリアルな不気味怪獣が、街中を破壊しながらプロレスやってるのを見て、わたしゃなんで泣いてるのか。でもな、自然と泣けてくるんだよ。ロボットアニメや怪獣に興味がない人には、さっぱり理解できないだろうけどさ。子供の頃からワクワクしながらテレビで見て大好きだった、それこそ子供の頃の大事な思い出の一部だった怪獣やロボットが、今でっかいスクリーンで目の前で暴れてる。思い出が思い出のままに終わらず、映画という媒体を借りて今まさに目の前で現実になっているわけです。それは、私のような思い出を持ってる人たちにとっては、ある意味“夢が叶った”と表現しても過言じゃないほどの出来事なんですね。…大好きなスターを目の当たりにして失神したり、絶叫したりする女の子達の気持ちが痛いほど分かるよ。

そんなギレルモには、ぜひとも万全の体制で、彼が撮りたいと思うテーマを追求していって欲しいと心から願います。日本でも彼の知名度がもっと上がり、彼のファンがもっともっと増えることを祈って、彼の輝ける黄金のオタク・スピリット炸裂の一篇をご紹介します。本筋よりもディテールの凝り具合を細かく楽しんでください。


悪魔の姿で生まれてきたことは変えられずとも、心を善き人間に変えることは出来るはずだ。

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「ヘルボーイ Hellboy」(2004年製作)
監督:ギレルモ・デル・トロ
製作:ローレンス・ゴードン&マイク・リチャードソン&ロイド・レヴィン
原作:マイク・ミニョーラ
原案:ギレルモ・デル・トロ&ピーター・ブリッグス
脚本:ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
特殊メイク:リック・ベイカー
音楽:マルコ・ベルトラミ
美術:ステファン・スコット
編集:ピーター・アマンドソン
衣装デザイン:ウェンディ・パートリッジ
視覚効果:ティペット・スタジオ
出演:ロン・パールマン(ヘルボーイ)
ジョン・ハート(トレヴァー・“ブルーム”・ブルッテンホルム教授)
セルマ・ブレア:(リズ・シャーマン)
ルパート・エヴァンス(ジョン・マイヤーズ捜査官)
カレル・ローデン(怪僧ラスプーチン)
ジェフリー・タンバー(トム・マニングFBI局長)
ラディスラヴ・ベラン(クロエネン)
ビディー・ホドソン(イルザ)
ダグ・ジョーンズ(エイブ・サピエン)
コリー・ジョンソン(クレイ捜査官)他。

第2次世界大戦の末期、1944年。敗戦色濃いドイツでは、ナチスが怪僧ラスプーチンの邪悪な計画に最後の望みを託していた。ラスプーチンは、オカルト結社トゥーレ協会が開発した装置と自らの霊能力により、この世と地獄を結ぶ門を開こうとしていたのだ。ナチ将校さえ怖れる不気味な武装集団とラスプーチン、その忠実なる門徒にして愛人の女性将校イルザの面々は、スコットランドのトランダム大修道院跡で、いよいよ世界を破滅させる計画を実行に移す。ところが、それを事前に察知していたオカルト研究界髄一の博識家ブルーム教授率いる連合軍が現場を襲撃し、すんでのところでラスプーチンの企みを頓挫させる。ラスプーチン本人は魔界の門の向こうへ吸い込まれたが、魔界から1匹の悪魔の赤ん坊が現世に生み落とされてしまった。ブルーム教授は、この大きな角を生やした全身真っ赤の悪魔の赤ん坊を保護し、“ヘルボーイ”と名づけて我が子として育てることにした。
その60年後。年老いたブルーム教授は末期がんに侵されていた。余命いくばくもない彼の目下の懸念は、慈しんで育ててきたヘルボーイの将来だ。彼は、教授が設立した超常現象調査防衛局BPRDのエリート・エージェントとして、日々極秘裏に魔物退治に活躍していたのだが、世間からは認められない禍々しい存在であるがゆえに、仲間のFBI捜査官にも毒舌を浴びせるようなひねくれ者になってしまっていた。ヘルボーイや、同じくBPRDエージェントの半魚人エイブ・サピエンのような存在を偏見なしに受け入れ、理解できる人材を後任として育成する必要がある。そんな教授のおめがねに適ったのが、新人FBI捜査官マイヤーズであった。
マイヤーズは、人里離れた場所の地下に建設された巨大なBPRD本部に、恐る恐る足を踏み入れた。彼を出迎えたのは、水槽の中でくつろぐ半魚人エイブ・サピエンと、笑顔のブルーム教授である。初めて目にする人ならぬ者の姿に唖然としつつも、マイヤーズはその優れた環境適応能力を発揮し、ついにヘルボーイその人と対面する。BPRD本部のさらに奥深い場所、幾重にもロックされ厳重に管理された部屋に、ヘルボーイは暮らしていた。この部屋の鍵を保管し、ヘルボーイが毎日たいらげる大量の食事の支度等身の回りの世話をするのが、マイヤーズの新しい任務であった。現在ヘルボーイの傍らで勤務しているクレイ捜査官は、ヘルボーイとは長年の付き合いになり、私生活でも友人同士だ。そのクレイをして、魔物退治にあたるときも基本的に一匹狼である気難し屋のヒーロー、ヘルボーイの信頼を得るまでの道のりは、長く険しいものであったのだ。案の定ヘルボーイは、自分の姿とコミックの“ヘルボーイ”を見比べて呆けているマイヤーズを鼻であしらい、相手にもしない。
しかしマイヤーズがBPRDに着任して早々、マンハッタンの博物館で強力な悪魔サマエルが現れた。誰かが魔界からサマエルを召喚したのだ。警備員が全員惨殺され、展示品が荒らされた壮絶な現場に、BPRDのメンバーと、彼らとは協力関係にあるFBI捜査官が急行した。もちろんマイヤーズも一緒だ。エイブの透視能力とサイコメトリー能力に従って、いつものように1人でサマエルを追っていくヘルボーイ。彼をフォローしようと必死でその後を追うマイヤーズ。車に轢かれそうになったマイヤーズを放っておけず、仕方なく助けてやったヘルボーイは彼を現場に戻し、マンハッタンの地下鉄に赴く。不気味な触手で人知を超えた攻撃を仕掛けてくるサマエルに苦戦するヘルボーイであったが、ホームで死闘を繰り広げた末にようやくこれを退治した。その頃エイブは、現場で起こったことを透視していた。彼の目に、怪僧ラスプーチンの愛人だったイルザとクロエネンが暴れる様子が再現される。彼はブルーム教授に、サイコメトリーでラスプーチンがついに復活したことを知らせた。

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その事実はブルーム教授にさらなる心痛をもたらす。ヘルボーイの信用を得られずに悩むマイヤーズに、自分が死んだ後も“息子”の傍についてくれるよう諭すのだった。ヘルボーイを、悪魔ではなく人間として生きさせるために。そんな育ての親の気遣いも知らず、ヘルボーイは任務を終えるとさっさと姿を消していた。ずっと片想い中のリズに会うため、彼女が自らの意思で入院した精神病院を訪れたのだ。リズには生まれながらにして不可思議な能力が備わっていた。念動発火能力である。危害を加えられたり、怒りのために感情が高ぶったりすると、自らの身体から炎を噴き出すのだ。炎の力でビルを吹き飛ばすこともできるほどの、強力な発火能力をコントロールできるようになったのはごく最近のこと。彼女は自分が能力を発動することのないよう、病院で投薬治療を受けることにしたのだ。そんな事情を知りながら自分に好意を寄せてくれるヘルボーイを、リズも心憎からず思ってはいたが、BPRDのメンバーになることだけは固辞していた。またもや振られて悄然と肩を落とすヘルボーイには、魔物に対峙するときの自信満々な様子は窺えなかった。
ラスプーチンの魔の手は、ヘルボーイの周囲に着実に迫っていた。夜、病室で眠っているリズの枕元にラスプーチンが立ち、彼女の念動発火能力を暴走させる。その結果、彼女は無意識のうちに病院を火の海にし、大爆発を起こしてしまった。病院に居づらくなったリズはマイヤーズに説得され、かねてからブルーム教授とヘルボーイが希望していた通り、BPRD本部に移り住むことを決意した。優しく自分を労わるマイヤーズに、リズもようやく心を開くのだった。
ヘルボーイが退治したサマエルの死骸から事件の手がかりをつかんだエイブは、ラスプーチンのアジトを発見するため、ヘルボーイと FBIと共に探索を開始した。地下の水脈で、人工的に増殖されたサマエルの卵を発見したエイブは、怪僧のアジトを守るサマエルのうちの1匹に重傷を負わされてしまう。ヘルボーイと共に地下に入ったFBI捜査官も、1人、また1人とサマエルの餌食となっていく。孤立したクレイもまた、音もなく忍び寄ってきたクロエネンによって瀕死の重傷を負った。エイブは一命を取り留めたものの、大事な友人を失ったヘルボーイは怒りに震える。ところが、クレイの隣に倒れていたクロエネンが、自ら仮死状態を演出していたことは見抜けなかった。“死体”としてブルーム教授のラボに運び込まれたクロエネンは、身体中つぎはぎだらけ、まぶたと上下の唇ははがれ、心臓はなく、代わりに特殊なネジ巻きのようなものがはめ込まれ、血液は干からびて砂と化していた。彼はとっくの昔に生ける屍となっていたのである。禍々しい肉体を目の当たりにした教授はため息をつく。教授が自室に下がったのを見計らうようにして、生ける屍は静かに“再生”した。
リズがBPRDにやってきて喜んだのもつかの間、ヘルボーイは、リズとマイヤーズが急接近するのを見てやきもきする。十数匹の子猫とテレビとビールと葉巻が友達の、相も変わらず自堕落な私生活を続けるヘルボーイに、リズがちょっぴり愛想を尽かしたのが原因だ。マイヤーズとリズのデートに、ストーカーよろしくくっついていったヘルボーイは、マイヤーズに明るい笑顔を向けるリズにショックを受ける。本来、この世の人々に存在を知られてはならないはずのヘルボーイであったが、そんなことは言っていられない。マイヤーズに向かって石を投げつけたヘルボーイは、偶然出会った少年に失恋を慰められるという、大の大人の男として情けない事態に陥っていた。
その頃、仮死状態から復活したクロエネンとラスプーチンが、ブルーム教授の元にやって来ていた。60年前にヘルボーイが現世に生み落とされたのは、ラスプーチンの肉体が魔界に消滅したことと引き換えであった事実が明らかにされた。つまりヘルボーイは、ラスプーチンが生み出したも同然、魔界への門を開く“鍵”となる存在だったのだ。教授の長年の教育によって眠らされている悪魔の生に、ヘルボーイ自身が気づきさえすれば、彼はその岩石状の巨大な右腕でもって魔界の門を開くことが出来る。ラスプーチンは、ヘルボーイが真正の悪魔として目覚め、この世に破滅をもたらす暗黒の未来をブルーム教授に幻視させる。それでもなお教授は、ヘルボーイの正義の心を信じていた。「彼は私の愛する息子だ」その言葉を最後に、教授はクロエネンの手によって事切れた。
雨が降りしきる中、教授の葬儀が執り行われた。ヘルボーイは、愛する父親の棺を担ぐことも許されず、その形見の十字架を怒りと共に握り締めた。ラスプーチンとクロエネンへの復讐を心に誓って。

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ラスプーチンがモスクワに飛んだ。60年前の魔界召喚実験の残骸が、ロシア軍によって発見されたのだ。これでお膳立ては揃った。後はヘルボーイをおびき寄せれば、魔界の門を開けることが出来る。そうとは知らず、急遽組まれた特別捜査チームの指揮を執ることになったマニングとヘルボーイ、リズ、マイヤーズの一行は、ラスプーチンの足跡を追ってモスクワへ向かう。いよいよ因縁の対決の火蓋が切って落とされるのだった。


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スペイン内乱と少女の幻想譚を巧みに融合させた傑作「パンズ・ラビリンス Pan's Labyrinth」の成功で、ギレルモ・デル・トロ監督は一躍名声を獲得しました。しかし、彼のフィルモグラフィーを見てみると、その作品傾向ははっきり二分化されることがわかります。

●フィルモグラフィー

2015年「クリムゾン・ピーク Crimson Peak」兼脚本&製作
2014年〜2015年「ストレイン沈黙のエクリプス The Strain」兼原作小説、脚本、製作
2013年「パシフィック・リム」兼脚本&製作
2012年「ホビット 思いがけない冒険」脚本
2011年「ダーク・フェアリー」製作&脚本
2010年「ロスト・アイズ」製作
2008年「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」兼原案&脚本
2008年「ルド and クルシ」製作
2007年「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」声の出演(ニュースの声)
2007年「永遠のこどもたち」製作総指揮
2007年「ヘルボーイ・アニメイテッド ブラッド・アンド・アイアン」(TVムービー)製作
2006年「パンズ・ラビリンス」兼製作&脚本
2006年「ヘルボーイ・アニメイテッド ソード・オブ・ストームス」(TVムービー)製作
2004年「ヘルボーイ」兼原案&脚本
2004年「タブロイド」製作
2002年「ブレイド2」
2001年「デビルズ・バックボーン」兼製作&脚本
1997年「ミミック」兼原案&脚本
1992年「クロノス」

昆虫大好き、日本のアニメ大好き、ファンタジー大好き、でも触手とか粘液とかも大好き、なので、結局ホラー映画が大好き♪という、実にわかりやすい嗜好の持ち主、ギレルモ監督(笑)。ハリウッド資本の下で製作した作品には、特にそういった彼の特殊な嗜好が顕著に現れています。彼のもうひとつのライフワーク、つまりスペイン内乱という史実を独自の視点で解釈した作品群にも、出来不出来の波はあれど、彼の創作意欲の根源を知る上で非常に興味深いものがありますね。
「パンズ・ラビリンス」が、厳しい現実と幼い自己を摺り合わせることができない子供ならではの驚異の幻想世界を描いて、ついに彼なりの方法論で現実世界を看破したのだとしたら、今作と次の「ゴールデン・アーミー」は、現実世界に疲れた大人のための娯楽ファンタジーを展開していると言えるでしょう。もちろん、アメコミという荒唐無稽な媒体をフルに活用し、己の趣味を映像に反映させることにも抜かりはありません(笑)。
彼の作品群に共通するポイントとして、異形の者への限りない偏愛が挙げられます。前出の「パンズ・ラビリンス」では、ヒロインに試練を下す牧神パンをはじめとする、各種のクリーチャーたち。今作では、とうとう異形中の異形、悪魔がヒーローになってしまいました。アメコミ映画の生命線は、特徴的なキャラクターの描き分けがきちんと出来ているか否かにあると考えますが、その点、今作に登場するぶっ飛んだキャラたちには、それぞれギレルモ監督の愛情がたっぷり注がれていることが窺えますね。

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“悪魔が正義の心を持てるのか”というジレンマに常に悩まされるヘルボーイは、非常にアンビバレントな存在です。姿かたちは完全に悪魔であるのに、人の最も善き心を持つ純粋な男。赤鬼そのもののいかつい風貌の上に、酒飲みでヘビースモーカー、でも恋する女性を前にしては小学生並みの幼稚な醜態を晒してしまう。ヘルボーイの魅力とは、まさしくこの“ギャップ”にあるのです。しかし今作では、彼の“見かけの割りにキュートな一面”を詳細に描こうとする余り、彼とマイヤーズとリズの恋の鞘当てに予想以上の時間が割かれていたことが、映画全体のリズムとテンポを鈍らせてしまったようにも思います。ヘルボーイが体現する “不器用なおっさんのキュートさ”とは、おそらく観客の多数を占めるであろうオタク風味の(笑)成人男性にこそ、深い共感を呼ぶのでしょうから(ヘルボーイのキャラクターはギレルモ監督のアルターエゴでもありますな)、ちょっと残念ですね。

また、世界の明暗を分けることになる彼の存在そのものが、今作のテーマにも直結しています。ブルーム教授の台詞にもあるように、“本人の努力と周囲の理解次第で、誰でも正義を貫くことは出来る”という明確な主張が、今作の骨子であろうと思われます。「ゴールデン・アーミー」でも感じたのですが、今日び、こんな気恥ずかしくなるような正論を正々堂々と主張できるのは、もはやファンタジー映画の領域しかないのではないでしょうかね。

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ヘルボーイの仲間である半魚人エイブ・サピエンは、ギレルモ監督作品常連の俳優ダグ・ジョーンズによって魅力的に演じられています。地上での任務時には、水を満たしたタンク付きの特別スーツを着用し、目にはコンタクトレンズをはめるなど、その造形以上にディテールの細かさが楽しい。…楽しくてたまりません(私が・笑)。
また、生まれ持った超能力のせいで社会から疎外されていたリズも、通常の映画ならば救いようのない女性像になりがちでしょうが、ギレルモ監督の手にかかればあら不思議、三白眼セルマ・ブレアも可愛らしい女の子に早変わりです(笑)。ラストにはヘルボーイに念願の春を届ける役回りで、アメコミによく登場するセクシーダイナマイト系のヒロインとは異なる魅力を見せてくれました。シリーズの常連では、マニング局長もなかなか面白いキャラクターでしょうね。現実派でヘルボーイを毛嫌いする小役人気質ながら、ラスプーチンの霊廟ではこそこそと小さく活躍します(笑)。作品のお笑い担当ですね。

そして、今作中ビジュアル的にたぶん一番かっこいいと思われるのが、脇役で一言も台詞を発しないクロエネンです。

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初登場時は、ナチ秘蔵の凄腕殺し屋ということでスタイリッシュなロングコート姿だし、舞台が現代に移って再登場したときも、全身にフィットする黒のボディスーツに、精巧な意匠が凝らされた胸当て、対猛毒マスクを思わせる不気味なマスクですっかり身体を覆いつくしたルックスで目立つこと(笑)。正直、主人公のヘルボーイがむっつりおっさん仕様なのもあって(それが魅力ではあるけれど)、その切れ味鋭いアクションに独創的な美すら感じてしまいます。…ですが。書いちゃっていいかしら。ここだけの話、クロエネンのトンファー捌きって、「リベリオン Equilibrium」のガン=カタを連想させませんか(笑)?
ラスプーチンとその忠実な愛人イルザが、悪事のスケールの割りにかなり地味な存在で、幕引きもあっさりしたものだったことから、クロエネンが最も観客の視線を奪う役どころだったのは間違いないでしょう。そうですね、あっけない最期といえば、ラストのラスボス、触手ぬめぬめ怪物のアクションも地味でした(笑)。マイク・ミニョーラの原作でも悪役は割りと簡単にやっつけられるので、これは原作に則った展開なのですが、映像としてみると作品の物足りなさに繋がると思われます。

ラスプーチンの霊廟の、からくり屋敷のような美術センスには、日本のアニメからの影響が大きいとよく言われますが、他にもクロエネンの身体についた細かいネジ巻きなど、小物や背景のディテールの凝りっぷりは相変わらず変態の域に達しており、素晴らしい。他ではあまり言及されることがありませんが、ギレルモの監督作品でコンビを組み続けている“Wギレルモ”の片割れ、撮影監督ギレルモ・ナヴァロ Guillermo Navarro (2007年の「パンズ・ラビリンス Pan's Labyrinth」でオスカー受賞)のカメラワークが、今作でも相変わらずいい味を出していますね。私は、彼のダークで湿り気を帯びた色合いの映像がたいそう気に入っています。特に今作では地下での攻防が多いので、暗闇と人工的な明かりの危うげな境界線など、全体的に“作りこんだ”映像が、原作のオカルト風味をうまく表現していました。

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アメコミ映画にもシリアスを求める昨今の風潮のせいで、シリアスとコミカルの演出配分がどっちつかずでもあった今作への一般的な評価は、大概低いものです。でも、ギレルモ監督の原作アメコミへの並々ならぬ思い入れと熱いリスペクト、彼の美的感覚の源泉も感じられ、私自身はとても好きな作品なのですね。原作のオカルティックな作風を映像に完全移植することはできなくとも、雰囲気は充分尊重しつつ、ギレルモ監督自身の嗜好をふんだんに織り込んだ独自の作品に仕上がっています。

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