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zoom RSS 「望郷 Pepe le Moko」の思い出 Part 1(ストーリー)

<<   作成日時 : 2014/03/23 00:02   >>

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ジャン・ギャバン主演の名作「望郷 Pépé le Moko」。余りによく知られた作品ですから、みなさん内容はご存知かと思います。が、今回は主役のぺぺの心理の変化よりも、むしろ彼の周囲の人たちのエピソードに注目しつつ鑑賞しましたので、外部エピソードを多少補足しつつおさらいしてみました。こうして改めて見直しますと、やはりこの作品は、ぺぺの物語を主軸に置きながらも群像劇としての面白さに優れますね。
運命に翻弄される人々をペシミスティックに描くと評されるデュヴィヴィエ監督ですが、単に悲劇に押し流されるのではなく、ドラマティックな展開の中でもあらゆる種類の人間性を鋭く見抜く観察眼はさすがのものです。

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“望郷”という名の迷宮。

「望郷 Pepe le Moko」(1937年製作)
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:ロジェ・アシェルベ
原案:ロジェ・アシェルベ&ジュリアン・デュヴィヴィエ
脚色:ジャック・コンスタン
台詞:アンリ・ジャンソン
撮影:ジュール・クリュージェ&マルク・フォサール
音楽:ヴァンサン・スコット&モハメド・イグルブーシャン
出演:ジャン・ギャバン(ぺぺ・ル・モコ)
ミレーユ・バラン(ギャビー)
リーヌ・ノロ(イネス)
リュカ・グリドゥ(スリマン)
ガブリエル・ガブリオ(カルロス)
フェルナンド・シャルパン(レジス)
ジルベール・ジル(ピエロ)
サテュルナン・ファーブル(爺っつぁん)
マルセル・ダリオ(アルビ)
シャルル・グランヴァール(マックス)
ガストン・モドー(ジミー)
ルネ・ベルジュロン(ムニエール)
ポール・エスコフィリエ(ラヴァン)
ロジェ・ルグリ(マックス)
フレール(タニア)他。

フランスがアルジェリアを統治下に置いていた頃のこと。

アルジェリアの首都アルジェには、“カスバ”と呼ばれる独特の風習と歴史をもつ区域がある。ここは本来回教徒が集まる場所であり、昔ながらの回教徒独特の習慣と雰囲気を色濃く残す場所だ。市街から独立した丘の上にあり、狭い家々がその斜面にひしめき合いつつ張り付くように建てられている。年中乾ききった石造りの建物には屋根はなく、家同士は屋上のテラスでお互いに繋がっているため、カスバ全体が巨大な長屋の趣である。その中を縫うように作られた通路は、急な角度の坂道で人1人通るのが精一杯の狭さであり、あちこちに曲がりくねって初めて訪れるものを惑わす迷路となっている。晴天の日にはアルジェの港が一望にできるこの地は、しかしその立地のために、警察の手から逃れたお尋ね者や、あるいは人生を踏みはずし、零落した者たちが世界中から流れてくるようになった。

カスバに隠れるようにして住まう者は、回教徒、黒人、イタリア人のマフィア、スペイン人、ジプシーなど多岐にわたり、あたかも人種の坩堝である。彼らはお互いのテリトリーを柔軟に守りつつ、大事の時には結束して外部からの敵を遮断する。女は皆誰かの情婦であり、日中は通路に出ておしゃべりに花を咲かせ、帰る家もない男どもは、夜になると通路脇に横たわるのだ。その中でも、ヨーロッパからやってきた“お客さんたち”は特別扱いで、情婦の家に寝泊りもできる他、秘密の抜け道となるテラスへも自由に出入りできる。彼らはうだるような暑さ、肌を刺す強烈な陽射し、砂埃が舞うほどの乾きをやり過ごしつつ、たばこや酒に日々慰めを見出していた。

こういった社会の底辺に暮らす者達が集まるカスバに、2年前から顔役として君臨している男がいる。ぺぺ・ル・モコというフランス人だ。彼は、フランス国内で強盗30件、銀行襲撃2件を犯し、パリにその名を知らぬ者とてない有名なお尋ね者である。パリ警視庁が威信をかけてその身柄を拘束すべく奔走したが、結局彼はカスバに逃れ、今はここで篭城しているというわけだ。彼はカスバに来て間もなく、そのカリスマ性と人間的な魅力で老若男女を虜にし、あっという間にカスバ全体を掌握した。そして今では、この2年間彼に尽くしているジプシー女イネスや、元脱走兵でぺぺが弟のようにかわいがっている若者ピエロ、喧嘩っ早くごうつくばりなのが玉に瑕だが腕っ節は強いカルロス、ぺぺが盗み出した宝石を一手に捌く爺っつぁん、無口なマックスやジミー達がいつも離れず影のように彼につき従っている。ぺぺに惚れている3000人からの女達も然り。つまり、カスバが警察から彼を守るための砦となっているのだ。アルジェの警察当局も、もちろん今まで手をこまねいていたわけではなく、何度も抜き打ちでカスバをガサ入れした。しかしそのたびに、カスバ独特の連絡網で情報を察知したぺぺに先回りをされ、警察の方に5人もの殉職者を出しただけで、ぺぺはおろか手下1人も逮捕できずにいたのだ。

警察の威信に泥を塗るこの失態に苛立ったパリ警視庁は、ムニエール刑事をアルジェ警察に送り、現地の刑事たちの尻を叩いた。だが、アルジェ生まれでカスバを隅々まで知る刑事スリマンは、パリからやってきたお偉方のやり方を鼻で笑うばかりだ。いきなりカスバに乗り込んだところで、迷宮のごときカスバの神秘の前に屈するだけであるし、例え運よくぺぺを捕縛できたとしても、それはすなわち自身の死刑宣告を自ら下すようなものだ。スリマンは、彼独自の方法で必ずぺぺを逮捕すると決意していた。ぺぺを捕えるには、まずは彼をカスバから誘い出し、市街まで出てこさせねばならない。ぺぺはカスバに守られているからこそ安泰であるわけで、カスバを一歩出れば、例え顔役といえども一巻の終わりだ。そこでスリマンは、ピエロが軍隊から脱走したときにも、カスバに逃げ込むのを黙認しぺぺに恩を1つ売った。ぺぺは義理堅い男だったのでその恩義に報い、敵対する刑事相手ではあるが、スリマンが自由にカスバに出入りすることを許した。こうしてスリマンは、市街とカスバを毎日のように往復しながらぺぺと親しげに会話し、時に市街の情報などを流して奇妙な信頼関係を作っていったのだ。しかしながら、その優しげな目は常にぺぺを仔細に観察していた。彼の心境に起こるいかなる変化も見逃さず、彼が市街へ出てこざるを得ない機会を作る時をじっと伺っていた。スリマンの武器は警察証でも拳銃でもなく、よもやいつも持ち歩いているステッキでもない。“時間”である。

カスバに流れ着いて2年の歳月が過ぎ、ぺぺの心には抑えがたく望郷の念が沸き起こっていた。ぺぺは相変わらず寄ると触るとスリマンには憎まれ口を叩き、気丈に振舞ってはいたが、この地から外に出られない状況に日々鬱々としていたのである。同居する女イネスにもうんざりし、パリに帰ることができない癇癪を時に彼女にぶつけているのを、スリマンは知っていた。なにかきっかけさえあれば、ぺぺに隙ができる。“その時”が近いことを予測したスリマンは、毎日会うたびにぺぺに心理的揺さぶりをかけるのを忘れなかった。

カスバの中で密かに警察の犬となっている太った小男レジスの協力で、またもアルジェ警察はカスバのガサ入れを行った。しかしスリマンの予想通り逮捕は失敗に終り、ぺぺは腕をちょっと負傷しただけ。だが、ちょうどその場に紛れ込んだ観光客がいた。パリからやってきたギャビーという名の美女だ。彼女は騒ぎの中で連れとはぐれてしまい、途方に暮れていたのだ。スリマンは、全身宝石尽くめのゴージャスな彼女が辺りの泥棒の餌食にならぬよう、黒人の住まいの中に彼女をかくまう。ぺぺは、負傷した手の治療をしに偶然この黒人の家にやって来て、ギャビーと鉢合わせした。身につけていた宝石も魅力的だったが、それ以上にぺぺの心を捕えたのは、ギャビーの全身から発せられる“パリ”の瀟洒な香りだった。彼女は、まさしくパリに暮らす者にしかない独特の雰囲気を纏っていた。またギャビーの方も、この犯罪者に一目で惹かれるものがあった。ぺぺの身体から発散される危険な匂い、男の色気は、隙のある女ならば一瞬にして屈服させられるほど強烈だからだ。2人の交わす視線の間に火花が散ったのを見届けたスリマンは、このギャビーがぺぺの弱点になるやもしれぬと睨んだ。

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その夜アルジェ警察では、ムニエールとアルジェ警察のラヴァンが、この失態の責任のなすり合いをしていた。そこへ、今夜も警察側のスパイとして働いたレジスが仲間のアルビを伴って、とっておきの秘策を申し出る。ぺぺ本人ではなく、ぺぺが信頼する弟分ピエロを街まで誘い出して逮捕すれば、ぺぺは必ずその身を案じて街まで降りてくるだろう。用心深いぺぺをカスバの外に誘い出すのは困難だが、まだ若くて未熟なピエロなら、母親からの手紙を偽造すればまんまと騙せるはず…。アルジェ警察はこの計画に乗り気になるが、スリマンは、仲間を金で売るレジスの卑しさを鼻で笑った。

翌日、ふらりとカスバにやって来たスリマンを待ちかねていたぺぺは、昨夜の女ギャビーのことをあれこれ聞きだす。名前は、誰と来ているのか、どこに宿泊しているのか…。ぺぺがギャビーにのぼせ上がったことを確信するスリマンは、のらりくらりとその質問をかわし、ぺぺを焦れさせた。そして嫉妬深いイネスにも、それとなくギャビーの存在を告げるのも忘れなかった。

市街に戻ったスリマンは、ギャビーに接近するため、彼女が夫と友人たちと食事をとっているレストランにやってくる。わざと彼女の目に付くように隣の席に座り、まんまと彼女たちと同席。話の種に、大犯罪者ぺぺに会いたがるギャビー達は、スリマンの案内でその夜カスバに赴くことになった。

一方ピエロは、はるばる故郷からアルジェまで息子に会いにやってきた母親が、急病になったという手紙をアルビから受け取っていた。それはレジスが母親の筆跡を真似て偽造したものだ。ぺぺと違い、自分に親切なレジスを親しく思っていたピエロはこの手紙を鵜呑みにし、母親の様子を見るためレジスと一緒に街まで降りてしまった。

スリマンに伴われてカスバにやってきたギャビーは、ぺぺと再会した。シャンソンのレコードをかける酒場で、2人は互いにパリの思い出を語り合う。セーヌ川、メトロ、パリ祭…。これらの言葉を唇に乗せるだけで、彼らは懐かしきパリの香りに浸ることができた。同じフランス人だからこそ分かち合える故郷への思慕。偶然にも、ギャビーはぺぺの出身地の近くに生まれていた。彼らはすっかり意気投合し、ダンスを踊り、明日もまた会うことを約束する。ぺぺはカスバを出られないので、ギャビーがぺぺの元にやってくることになった。

その頃、いつまでたってもピエロが戻ってこないのを不審に思ったピエロの情婦アイシャは、レジスと母親の手紙のことを全てぺぺに話した。ピエロがレジスの罠にはまったことを悟ったぺぺは、レジスを一室に監禁し、イネスに街まで降りてピエロを探すよう命じる。ところがイネスは、その途中でスリマンに会い、ぺぺが明日ギャビーと密会するつもりであると知る。ショックと嫉妬で顔面蒼白になったイネスは、その足でぺぺの元に戻り彼を詰問するが、冷たくあしらわれるばかりであった。

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ピエロはよろめく足取りで帰ってきた。腹を撃たれて瀕死の状態で。ぺぺとカルロスはピエロを両脇から支え、彼がレジスに拳銃を突きつけるのを助ける。しかし発砲する直前でピエロはこと切れ、カルロスが代わってレジスにとどめを刺した。気も狂わんばかりに絶叫するレジスの断末魔は、不意に鳴り始めたレコードの音にかき消された。

愛する弟分を失ったぺぺは荒れ始める。彼は街で行われたピエロの葬式にも出られないのだ。今日会う約束をしていたギャビーもやってこない。募る望郷の念は、自由に会うことを許されないギャビーへの激しい思慕の情にすり替わり、信頼していた手下の死と共に彼を焦燥へ追い込んでいく。ピエロの葬式に出席した後カスバにやってきたスリマンに、縋るようにギャビーへの言伝を頼むぺぺには、以前のような堂々とした大犯罪者の余裕はなくなっていた。カスバの熱気、むせ返るような薬草の匂い、異教の音楽、押し合いへし合いする雑多な人々…その全てに嫌気がさしたぺぺは、爺っつぁんとイネスの制止を振り切って狂気のごとく“カスバの外へ出る!”と叫ぶと、一目散に街を目がけて走り出す。カスバを出れば逮捕される。しかし泥酔したぺぺの頭の中には、ギャビーに会いたいという一念しかない。イネスはぺぺを引き止めるために、断腸の思いでギャビーがイネスの家で待っていると告げた。街に出る一歩手前で夢から醒めたぺぺは、イネスに伴われてふらつきながら家に戻った。当然ギャビーがそんなところに1人で来るわけはなく、ぺぺは再び絶望する。

イネスは、煙たがられても怒鳴られても、足蹴にされてもぺぺを愛していると寄り添うが、ぺぺは疲れ切った顔で酒場に向かった。すると、なんと酒場の近くにギャビーが 1人佇んでいるではないか。彼女は夫の目をかいくぐって会いに来たという。ぺぺは我が目を疑い、路地そばの家に彼女を引き入れた。慌しい逢瀬の中、ぺぺはギャビーに抑えがたい想いを吐露する。彼の中でギャビーの輝きはそのままパリの輝きとなり、彼を抗いがたい情念に誘っていく。ギャビーは美しかったが、どこかとらえどころがなかった。完璧な化粧、たえなる香水の香り、美しいドレス、豪奢な宝石に飾り立てられてはいたが、そのまなざしは空ろ。彼女もまた、宝石に囲まれる以前の暮らしのことをぺぺに話そうとはしなかった。わかるのは、彼女が今現在全く満たされない人生を送っていて、旅先の異国の地でぺぺに一目ぼれしたということだけだ。明日も会うことを約束する2人。カスバを出られないぺぺにとって、ギャビーがここにやってきてくれることだけが頼りだ。ギャビーを外に送りだしたぺぺは、浮き浮きとギャビーを歓待する準備をする。香水を振り掛けた花を花瓶に生け、ワインを冷やす。高嶺の花を迎えるには、それに相応しい高価な調度品も必要だ。かつてパリでは粋な伊達者で知られたぺぺは、いっとき砂埃と熱気のカスバを忘れて故郷の思い出に浸る。もちろんイネスには内緒だ。

ところがスリマンは、ギャビーの夫に面会すると、ギャビーがカスバで男と密会している旨を告げ、外聞のためにも保安のためにも彼女を外出させぬよう言い含める。ぺぺを精神的に追い詰め、街に誘い出すためだ。嫉妬深い夫は、外出しようとする妻を責めたてたが、夫の独占欲にも横柄な態度にもうんざりしていたギャビーは、この場で別れると宣言してその制止を振りきるのだった。すんでのところで彼女の足を留めたのはスリマンである。スリマンは、ぺぺとムニエール刑事が撃ち合いとなった挙句、ぺぺが射殺されたと述べたのだ。ギャビーは驚き絶望し、夫と共にすぐさまパリ行きの船に乗ることを承諾せざるを得なかった。

約束の時間を過ぎてもギャビーはやってこない。意気消沈し酒場で飲んだくれていたぺぺの元に、カルロスがやって来た。カスバを脱出する下準備をするため、一度街に降りたいというのだ。カルロスとて、カスバでの毎日に息が詰まる思いをしているのはぺぺ同様なのだ。その気持ちを汲んだぺぺは、カルロスに協力することを約束し、代わりにギャビーに手紙を届けてくれるよう頼む。2時間で戻ると言い置いて街に出たカルロスは、しかしその後二度と戻ってこなかった。

ぺぺはカルロスの妻タニアの家で眠った。タニアは元シャンソン歌手であり、若かりし頃には華やかな舞台を幾つも踏み、聴衆の喝采を浴びる存在であった。しかし容色の衰えと共に、悪い男に貢いで騙された不運も重なって、スターの座から転落。後はお定まりの人生零落コースを辿り、カスバに流れついたのだ。今の彼女は見る影もなく肥え太り、乱暴者のカルロスに毎日のように殴られる暮らしだった。それでも、若い頃に録音したレコードにあわせて歌う声は今だ朗々としており、時折懐かしい昔のパリを思い起こして涙に揺れる以外は、しっかりとパリの情景をメロディーに乗せてぺぺに伝えた。今日のタニアの歌声は、ぺぺの弱った心に殊更堪えるのだった。

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イネスが、ぺぺに懺悔したいというアルビを連れて来た。今までレジスの指示で警察の犬をしてきたが、皆を騙すことにもう疲れたのだという。彼の情報によると、カルロスは街に降りてすぐ警察に逮捕された。カルロスはぺぺの手紙をアルビに預け、アルビは手紙をすぐギャビーに届けたが、ギャビー本人は夫の監視の目が厳しくホテルを抜け出せない。ギャビーもぺぺに会いたがっているので、ぜひホテルまで迎えに来て欲しいという伝言を言付かってきたのだと。顔色を変えるイネスをよそに、いとしいギャビーの名前を聞いてうっかりアルビの話を信じかけたぺぺは、どこかその話に胡散臭い点があることに気づく。アルビを締め上げると、果たせるかな、やはりアルビはスリマンの指示でギャビーの話をでっち上げ、ぺぺに騙っていたのだった。真相は、ぺぺが死んだと聞かされたギャビーは傷心のまま、今日10時の船便でパリに帰るというもの。ぺぺは驚愕し、すぐカスバを出て港に向かうことを決意した。嫉妬に狂うイネスは、ぺぺを思いとどまらせようと必死になるが、それが叶わないと知るや、ホテルで捕縛の網を張って待ち構えていたスリマンに密告する。ぺぺはここではなく船の出る港へ向かったと。スリマンは哀れみの一瞥をイネスに投げかけると、すぐ警察隊を港に急行させる。

港では、体よく船に乗り込んだぺぺがギャビーを探していた。だが船室の窓越しに彼女の姿を見つけた瞬間、スリマンたちが彼を取り囲んだ。もはや逃れる術はない。ぺぺはいさぎよく抵抗するのを諦め、縛についた。スリマンは、港を出る門扉のところで、一目ギャビーを見送らせて欲しいというぺぺの希望を叶えてやる。スリマンの最後の情けだ。ギャビーが甲板に出て、遠くカスバの方角を見つめている。ぺぺは、もはや二度と目にすることもないであろうギャビーの小さなシルエットを見やり、声を限りにその名を呼んだ。しかしそのとき汽笛が鳴り響き、思わず耳をふさいだギャビーには彼の絶叫はついぞ届かなかった。ぺぺは目に涙をためながら、いとしいギャビーが、懐かしいパリが永遠に遠ざかっていくのを見つめた。そして懐から小刀を取り出すと、過たず自身の腹に突き立て、その場に崩れ落ちるように絶命した。一部始終を見守っていたイネスは後悔の念に襲われ、ぺぺの亡骸に走り寄ると、その耳元で許しを請いながらいつまでも彼の頭を抱きしめていた。

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