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zoom RSS マイケル・ナーヴァと「このささやかな眠り The Little Death」

<<   作成日時 : 2013/06/17 23:51   >>

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マイケル・ナーヴァ Michael Nava

1954年9月16日生まれ
アメリカ、カリフォルニア州サクラメントのガーデンランド出身

ナーヴァはその名が示すとおり、ガーデンランドという街のバリオ(ヒスパニック系の人々が住む一画)でメキシコ系アメリカ人の両親の元に生まれました。人種のるつぼであるアメリカにおいても、今尚差別の対象になるマイノリティに属します。
彼が子供のころ住んでいたバリオは、歩道も街灯もなくにわとりが走り回り、一瞬カリフォルニアであることを忘れるようなたたずまいだったそうです。そんな低所得者層が暮らす地域で、近所には同じメキシコ系の祖父母、叔父叔母が大所帯で住んでいるという環境の中、ナーヴァは成長しました。母親と継父は折り合いが悪く、毎日のように夫婦喧嘩していたとか。ある日、母親に殴りかかろうとした継父を止めようとして、その継父に壁に叩きつけられたナーヴァ少年は、今後決して大人たちに自分の本心を明かすまいと固く心に誓ったそうです。

「たぶん、普通の子供だったら家出するところを、わたしは想像力の世界に家出したのだ……。わたしが大人になって小説を書いているのは、そのときに大人たちに言えなかったことを今言っているからだろう」

ナーヴァ少年は、本や想像の世界に慰めを求め、また重要な発見をしました。それまで、同性に惹かれる気持ちをなす術なく隠してきた彼は、本のなかにそれを見出し、ついに本当に家と故郷を捨てる決意をかためます。
17歳でコロラド州率大学に入学したナーヴァは、詩と歴史を学びました。卒業後、中南米の偉大な詩人ルーベン・ダリオ研究のため1年間ブエノスアイレスに滞在。再び北米に帰ると、スタンフォード大学のロースクールに入学、法曹界を目指します。そして、自らの意思を実現してロサンジェルスの検察庁に入りました。これに関しては、検察官になったという説と弁護士になったという説があり、はっきりしないのですが、サンフランシスコのカリフォルニア最高裁のスタッフとして働いていました。おそらく公選弁護人という立場であろうと思われます。そういった本業をこなすかたわら、彼は小説を書き始めます。ここに至るまでの様々な経歴が、彼の作品にいっそうの深みと確かな裏づけを与えているのでしょう。

さて、ジョゼフ・ハンセンの多大な努力によって、ゲイ・ミステリに市民権が与えられた後、ハンセン・フォロワーと呼ばれる新しいゲイ・ミステリの作家たちが次々と生まれました。
その中でも、ナーヴァはとりわけ優れた作家であり、ハンセン自身の絶賛を得て「このささやかな眠り」でデビューしました。始め、ボストンにあるアリソンというゲイ小説専門の出版社から発表されたこの作品は、一般のミステリファンからも高く評価され、シリーズとしてじわじわと人気を集めていったのです。
ゲイでヒスパニック。まるでナーヴァ自身を体現するかのような、シリーズの主人公、ヘンリー・リオス。彼は誇りをもって従事してきた弁護士という職業にすら懐疑的なっている、人生に倦みかけた男として、シリーズに初登場します。自分にとってのアイデンティティの在りどころが崩壊しかけていたのですね。ある悲劇的な事件を通じて、彼は己の存在に誇りを取り戻していくわけですが、後に続くシリーズを通じて絶えず問いかけられるのは、「マイノリティとはなにか、マジョリティとはなにか」ということです。ゲイでしかもヒスパニックであるリオスが味わう差別は、一体どこから生まれるのか。
事件を解決していく過程で結果的にリオスが明らかにしていくのは、マイノリティの視点から見る「アメリカの家族の実像」です。マジョリティとされるアメリカ人の多くが、実は、自分を孤立した存在(マイノリティ)とみなしていること。その孤独に捕らわれたくなくて、マジョリティという実体のない概念にすがっている事実。それが結局自らのアイデンティティにすり代ってしまっていることにすら気づかない、「多くの善き」アメリカ人。つまり、マジョリティによるマイノリティへの差別・弾圧は、不確かな概念の上に成り立つ自我の確認作業であるという皮肉。
ハンセンのブランドステッターシリーズが、シリーズが進むにしたがって皮肉にも「マイノリティであること」という一番のテーマから離れてしまったのに対し、ナーヴァの場合はシリーズが進むにつれむしろますます、「ゲイであること」「マイノリティに属する人種であること」に強いこだわりを見せるようになります。しかし、一見特殊なマイノリティの世界を描いているようで、実は普遍的なアメリカ人の内実を描いているのは、前述した通りです。

このリオス・シリーズは、第2作「ゴールデンボーイ」で決定的な評価を得、次の第3作「喪われた故郷」でついにマス・マーケットに登場します。ちなみに、ハンセンのブランドステッター・シリーズが出版されたのと同じ出版社でした。そして、2001年に発表された第7作「RAG AND BONE」を最後に、ナーヴァはリオス・シリーズも、ゲイ・ミステリの執筆も終了することを宣言しました。残念なことですが、一般小説を書きたいという本人の意向だそうです。

●ヘンリー・リオス・シリーズ
「このささやかな眠り」(1986年)
「ゴールデンボーイ」(1988年)
「喪われた故郷」(1990年)
「秘められた掟」(1992年)
以上第4作まで邦訳が創元推理文庫から刊行。
「The Death of Friends」(1996年)
「The Burning Plain」(1997年)
「Rag and Bone」(2001年)

●ノンフィクション
「Created Equal:Why Gay Rights Matter to America」(1994年)、ロバート・ダヴィドフとの共著。

●短編
「Street People」 マイケル・ナーヴァ編「Finale:Short Stories of Mystery and Suspense」(1997年)収録
「Grief」 ダリル・ピルチャー編「Certain Voices:Short Stories About Gay Men」(1991年)収録

ストレートノヴェル
「Unlived Lives」(1999年)

●歴史小説
The Children of Eveシリーズ
「The City of Palaces (TBA)」
ナーヴァの祖父を主人公の一人とした、メキシコ革命を題材にとった小説。

・2008年10月、ナーヴァは長年のパートナーであったGeorge Herzogと結婚しました。パートナー共々、カリフォルニア在住とのことです。


悲しみは、正義の半身だわ。そして残りの半身は『希望』というの。

このささやかな眠り (創元推理文庫)
東京創元社
マイケル ナーヴァ

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ヘンリー・リオス、33歳。将来を嘱望された重罪裁判を専門とする刑事訴訟担当の公選弁護人であったが、ある殺人事件で被告を死刑判決から救うことが出来ずに第一線をはずされてしまった。現在はサンフランシスコの片田舎にある郡拘置所内で、小悪党どもの犯罪の罪状認否専門の弁護士としてくすぶっていた。
彼は自分がヒスパニック系の人種であることや、ゲイであることで体感する様々な差別や抑圧に押しつぶされそうになっていた。その上、自身が生きていると実感できる唯一のこと―弁護士という職業にも行き詰まりを感じていた。
しかし、ロースクール時代からの友人、アーロン・ゴールドから同じ弁護士事務所で働くことを提案されても、「金持ちの代理人をしていたのでは、大衆の叫びは聞こえてこない!」と断ってしまうリオス。彼は自分が法の代理人であるという信念を、とっくの昔になくしてしまったしまったにも係わらず、もはや他の生き方を模索できる年齢ではないことに暗鬱となる。
ヒューと出会ったのはそんなときだった。7月最後の朝。拘置所の『オカマ専用』独房でヒューは憔悴しきっていた。彼は麻薬不法所持と警官に対する暴行で逮捕されていた。確かに彼は麻薬中毒者ではあったが、それが彼の美しさ―ブロンドに青く真摯な瞳―にいささかの翳りも落としてはいなかったのだ。リオスは一目で運命的なものをヒューに感じ彼に助力を申し出たが、心は開かれず、名刺を1枚手渡すことができただけだった。
ヒューは、すぐにスミス氏という代理人によって保釈金を支払われ、保釈された。
一方リオスも、自分がついに公選弁護人としての情熱を失ったことを認め、オフィスを辞める。結局彼は小さな弁護士事務所を開くが、当然顧客などいようはずもなく、毎日を酒びたりで過ごすことになる。
ヒューと出会ってから2週間ほどたったある夜、突然ヒューがリオスの家を訪れた。命を狙われている、一晩かくまって欲しい、と。
ヒューは、サンフランシスコの大財閥で由緒ある名門の家柄の末裔だった。しかし一族の資産はすべて祖父ロバート・パリスが実権を握り、一族の末裔で財産の正当な相続者であるヒューを憎んでいたという。ロバートはその名門の出身である妻を言葉巧みに騙し、結婚した貧しい農民の出の人間であった。一族の財産をすべて手中におさめるため、孫息子であるヒューを排除しようとしているのだ。
死に怯える彼を助けたいと思いつつ、彼の主張をどこか信じきれないリオス。それでも二人は導かれるように愛を交わした。
その後ゴールドからはヒューと関わりを持つのをやめるように警告されたが、リオスは取り合わなかった。
ある日ヒューからカストロ・ストリートで会って欲しいと連絡が入り、ゲイ御用達のバーでリオスはヒューと再会する。ヒューは抜き差しならない状況に追い込まれており、助けを求めてきたのだ。ヒューの腕に真新しい麻薬の注射の跡を発見したリオスは、祖父に殺されるというヒューの主張が妄想ではないかと疑ったが、その後1週間、ヒューの家に滞在し、蜜月の日々を過ごした。
寝物語に、ヒューの家族の話を聞かされたリオス。母親は詩人で健在だが疎遠。父親は死んだ。父が死んでから祖父に育てられたヒューは、ゲイであることでことあるごとに祖父から疎まれたこと。そして祖父は、男にしては美しすぎるという理由で、子供の頃にヒューに性的暴行を加え、全寮制の男子校に放り込み、今は彼の命を狙っているという。ヒュー自身は、あちこちの大学をたらいまわしにされるうちに、麻薬に溺れるようになり、今では重い中毒患者である。
リオスはそれでも、ヒューの手助けになろうと誓った。ところが、自宅に戻ったリオスに、衝撃的なできごとが待っていた。ゴールドは、ヒューは麻薬中毒者であるだけでなく、その父親同様精神疾患を患っていること、祖父への憎しみのあまり、祖父を脅迫していた事実を告げたのだ。証拠となる、ヒューから祖父にあてた手紙を渡されるリオス。
直後、彼はヒューが死んだことを知った。麻薬に酔ったあげく、深さわずか3フィートしかない川辺で溺死したらしい。警察はろくに初期捜査もせず、ヒューの死を事故死と断定した。死体を確認したリオスにはとても信じられない。彼はヒューの言葉を信じなかった自分を激しく呪った。ヒューの主張は本当だったのだ!
リオスは、ヒューの死を祖父ロバート・パリスによる殺害であることを立証する決意を固めた。それがヒューへの愛の証明であると信じて。
かくして、先の見えない闘いが始まった。敵はサンフランシスコ最大の財閥統帥にして法曹界の権力者、ロバート・パリス判事。
ところが事態は困難を極める。殺人課のトレス警部には、以前法廷でやりこめられた意趣返しで、全く相手にされなかった。彼の部下のテリー・オルメス婦警は、現場に残された不自然な足跡や死体の傷から、ヒューが殺されたということに同意してくれたが、しかしその唯一の状況証拠も、トレスによって握りつぶされていた。
リオスはまず、判事の事務処理を行う事務所で働くゴールドと対峙する。ゴールドは、判事の周辺の人間がヒューを執拗に追っていたこと、そしてヒューと最後の接触を持ったリオス自身もつけまわしていることを知らせた。さらに、20年前に起こった判事の妻と息子の1人の交通事故死にも関与しているらしいことをにおわせる。
さらなる手がかりを求めて、リオスはヒューの母キャサリンを訪ねた。彼女は息子の死を少しも悲しんでいない。死んでくれたのは親孝行だった。さらにホモの泣き言はたくさんだと、ひどい侮蔑の言葉でリオスを追い払ってしまった。
リオスは判事の妻と息子の交通事故死に関しての調査をオルメスに託し、かつての好敵手、ソニー・パターソン検事の捜査への協力をとりつける。また、最後の切り札と決めていたグラント・ハンコックに会いに行く。
ハンコックは、ヒューの一族と肩を並べるほどの名家の出身だった。そして、リオスとハンコックはかつてロースクールの同級生で、かつて激しく愛し合った仲でもあった。ヒューの属する特権階級に切り込むためには、ハンコックのような後ろ盾が必要だったのだ。リオスはハンコックから、ロバート・パリスの義理の兄ジョン・スミスがリンデン財団の半分を所有していることを聞く。しかしハンコックも、ヒューの他殺を立証するのは不可能だと取り合わなかった。それどころかリオス自身にも危険が及ぶだろうと。リンデン一族はアンタッチャブルな存在だった。
オルメスとリオスは、判事の妻と息子の自動車事故が巧妙に仕組まれた他殺であることを突き止めるが、物的証拠も目撃証人さえ消されたあとだった。また、ナパにあるシルバーウッド精神病院にヒューの父親が収容されていることもわかり、リオスは面会に行く。ドクターに必死に食いつき、なんとか面会の許可をもらったが、父親はすでに薬漬けの廃人と化していた。その場に現れたキャサリン・パリスに追い払われたが、彼女の後を追いかけ、もう一度話をしてくれるよう説得するリオス。酒の力を借りて、キャサリンは辛い過去を語る。ロバート・パリスが、離婚されそうになっていた妻を息子もろとも事故に見せかけて殺したこと、口封じのため自分は大金と引き換えに息子ヒューを祖父に売ったことを認めた。それでも、もう自分にはなにもできないと協力を拒んだ。
ロバート・パリス判事が妻の遺産目当てに、妻と息子の一人を殺し、もう一人の息子を精神病院へ放り込み、あげくに事の真相を知った孫息子を亡き者にした。事件の概要はわかったものの、ここでなんとロバート・パリス当人が老衰で死亡してしまった。振り出しに戻ったリオス。
判事の壮麗な葬式を見送りながら、リオスは詩を諳んじる。

家々、繁華街、隣近所の家並み
 長い年月の間にわたしが歩きつくし、眺めつくしてきたきみ
 喜びにつけ悲しみにつけ、わたしは心に刻んだ
 あまりに多くの状況を、あまりに多くの事件を
 そしてついにきみはわたしの感覚すべてになったのだよ

            「同じ空間で」より引用―『C・P・カヴァフィス詩集』

誰にもその死を悲しまれなかったヒュー。リオスも彼の死を悼み悲しむことを許されなかった。それは彼らがゲイだったからだ。やりきれなさに襲われるリオス。
ところが、リオスの自宅からヒューの手紙が盗まれ、また、リオスに重大な事実を告白しようとしていたゴールドが何者かに殺される。判事は死んだが、事件はまだ解決してはいない。誰かが陰で暗躍しているのだ。
グラントの手を借り、なんとか判事の義理の兄、ジョン・スミスに会おうとするリオス。手がかりを求めての行動だったが、彼の配下の殺し屋に命を狙われるはめになる。ついにリオスはある重大な決意をする。
キャサリン・パリスを説得して、ロバート・パリス判事の遺産相続人―ジョン・スミス―に対し、不法生命侵害訴訟を起こさせることだ。ロバート・パリスは数件の殺人を犯した。その被害者の遺族でもあるキャサリンには、殺人者である判事の遺産相続人に対し、遺産の半分にあたる額の損害賠償を請求する権利がある。もとより、その殺人を証明する手立てはなく、裁判に勝利する可能性はない。しかし、ロバート・パリスの犯罪を裁判の場で公にさらすことにより、新聞やテレビといったメディアによって、彼の作られた栄光は地に落ちることになる。そうすることが唯一、ヒューの無念を晴らす方法なのだ。
リオスはキャサリンに訴える。自分の息子に不名誉な死因を許さないで欲しい。今のままでは彼の遺体をハゲタカどもに投げ与えたも同然だ。自分はそれを黙って見ているわけにはいかない。なぜなら彼を愛していたから。キャサリンはついにリオスのヒューへの深い愛情を理解し、受け入れる。
「あなたのヒューへの愛情のほうが私のそれよりはるかに上質よ」
こうして二人は訴訟へ向けて協力しあうことになった。裁判を行うと決定したときから、リオスの元には全米のあらゆる新聞、テレビからの取材が殺到する。そしてリオスの語る事件の概要や訴訟理由などを連日報道するのだった。これこそリオスが狙っていた状況だった。ところが、この状況は思わぬ事件の黒幕を動かすことになる…。


ハードボイルド小説における探偵たちの矜持が己の信念を通すことならば、このヘンリー・リオスの道はイバラの道といっても過言ではありません。彼はヒスパニックという自らの出自に対しての偏見と戦い、また、一般には理解されがたい同性愛への偏見とも戦わなければなりません。この作品冒頭では、まさにリオスはこの二つと戦いながら仕事のキャリアを築くことに疲れ果てていました。
しかしヒューという青年を愛することによって、彼は生き続ける意味を見出します。そして皮肉なことですが、最愛の者を喪失した痛みが彼を突き動かし、さらにはリオス自身の人生を再生させる力を与えたのですね。ヒューの死は金持ち一族の陰惨な権力闘争の犠牲であり、読者をも暗鬱とした気分にしますが、リオスがヒューの無念を晴らそうと奔走する過程で生きる輝きを取り戻すことが救いとなっていると思います。
冒頭では人生に疲れた老人のような趣の彼ですが、その心には「金持ちの代理人をしていたのでは、大衆の叫びは聞こえてこない」という熱い情熱が渦巻いています。しかしだからといって、声高に利己的な正義を押し付けるのではなく、また暴力や拳銃で事態を解決するのでもなく、あくまでも法律の範囲内で行動するリオスには非常に共感を覚えます。彼は弁護士らしく、関係者から対話によってその本心を引き出し、時に法律を盾にとって、事件の核心に迫っていくわけです。壁にぶちあたってもくじけることなく、誠実に事件に対峙するリオスに、私は真の勇気を感じるのですが、どうでしょう。

最後に、リオスは事件の黒幕の犯罪を立証することについに成功します。ですが彼は、自分が求めていたものが正義ではなく、単なる悲しみのはけ口だったのではないかと心情を吐露します。犯罪を立証したところで死者が帰ってくるわけではない…。愛の喪失は何物に拠っても埋められないのです。そのリオスの痛みは私たちにも容易に想像できるでしょう。オルメスはリオスの気持ちを察し、さりげなくこう言います。

「悲しみは、正義の半身だわ。」
「そして残りの半身は『希望』というの」

さて、ナーヴァは以前詩を学んでいたこともあり、この作品中でも詩の引用が多くされています。それは作品に単なるミステリ以上の深い感慨をもたらしていますが、ここではストーリー上で印象的な役割を果たしている、ギリシャの詩人カヴァフィスについて少しだけ触れておきましょう。

20世紀ギリシャの最大の詩人と謳われたカヴァフィス。1863年、裕福な商人の息子として生まれました。後に英国に渡って教育を受け、公務員となり一生を独身で過ごしたそうです。生存中は詩集を刊行しなかったのですが、E・M・フォースターなど一部の熱狂的なファンによって作品は詩集にまとめられました。彼は同性に対する愛情と官能を隠すことなく詩に謳いあげ、その作風は常に地中海を思わせる美しいものでした。日本でも翻訳が出版されております。

カヴァフィス全詩集
みすず書房
コンスタンディノス・ペトルゥ カヴァフィス

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