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zoom RSS 「まぼろしの市街戦 The King of Hearts」―ハートの王様と戦争ごっこ

<<   作成日時 : 2015/12/06 00:00   >>

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ハートの王よ、貴方に尋ねる。戦争と狂人、一体どっちが狂ってる?


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「まぼろしの市街戦 Le Roi de Cœur The King of Hearts」(1966年製作)
監督:フィリップ・ド・ブロカ Philippe de Broca
製作:フィリップ・ド・ブロカ
脚本:ダニエル・ブーランジェ&フィリップ・ド・ブロカ
撮影:ピエール・ロム
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:アラン・ベイツ(チャールズ・プランピック通信兵)
ピエール・ブラッスール(ゼラニウム将軍)
ジャン=クロード・ブリアリ(公爵)
ジュヌビエーヴ・ビジョルド(コクリコ)
ミシュリーヌ・プレール(エグランティーヌ夫人)
フランソワーズ・クリストフ(公爵夫人)
アドルフォ・チェリ(アレクサンダー・マクビベンブルック大佐)
ジュリアン・ギオマール(デイジー僧正)他。

第1次世界大戦のさなか。パリ北方に位置する小さな寒村は、ドイツ軍からの開放を待っていた。ドイツ軍はその村から撤退する際、後からやってくる英国軍への置き土産として、村をまるごと吹き飛ばせるほどの時限爆弾を仕掛けていった。村の広場に立つ大きな時計塔は、真夜中の12時になると、中世の騎士の格好をした人形が出てくる仕掛けになっている。爆弾の導火線はその人形につなげられた。つまり、時計が明日の真夜中12時を指すと同時に村は吹っ飛んでしまう。ドイツ軍の将軍付きの理髪師は実はレジスタンスであり、この事実を知ると、大慌てで村人に知らせた。村人は一人残らず逃げ出した。同時に彼は、英国軍に暗号で時限爆弾のことを知らせたが、肝心の騎士の人形のことを説明する前に、村人の異変を察知したドイツ軍兵士に射殺されてしまった。

さて、暗号を受け取って困ったのが英国軍である。真夜中の12時に村が吹っ飛ぶことはわかったが、爆弾の仕掛けられた場所がわからない。“騎士”が一体なにを意味するのか。レジスタンスと接触し、暗号を解読、そして速やかに爆弾の解除を行わなければならない。そこで、フランス語に堪能だというだけで、伝書バト係りのチャールズ・プランピック通信兵が無理やり現地に送り込まれることになった。

プランピックは伝書バト2羽を相棒に村へ潜入する。ところが、後処理を行っていたドイツ軍兵士たちと鉢合わせし、逃げ惑っているうちに精神病院に入り込んでしまう。すかさず彼は患者の間にもぐりこみ、トランプを手にとって「ハートのキングだ!」と叫ぶ。兵士達を振り切ると、彼も病院の外へ飛び出していく。ところが、居合わせた患者達はプランピックを“ハートの王様”だと勘違いしてしまう。「みんな喜べ!ハートのキングが戻られたぞ!」

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外へ出たプランピックは、道端で転んで頭を打ち気絶する。その間に村からはドイツ軍兵士も立ちのき、残されたのはサーカスの動物達と精神病院の患者達だけになってしまった。開けられたままの病院の門から患者達が外に出てくる。久しぶりの外界。彼らは思い思いの場所で羽をのばす。公爵と公爵夫人は、村の名士の家から豪華な衣装を拝借し、二人並んで村を闊歩。デイジー僧正は、あこがれの寺院に入り込み、僧正の袈裟を身に着けて神の庭で遊ぶ。エグランティーヌ夫人は爆撃で壊れかけた娼館に入り、派手な化粧をしてすっかり娼館のマダムに納まった。ゼラニウム将軍は、打ち捨てられたサーカスの動物達を軍隊に見立てて指揮する。マルセルは大好きな理髪店に直行し、さっそく他の患者達を相手に開業。

目覚めたプランピックは教えられたとおり、理髪師のレジスタンスを探す。ところが理髪店にいたマルセルは、もちろん爆弾や暗号のことなど知らない。まったくかみ合わない会話にいらだつプランピックは、チンパンジー相手にチェスをしていたゼラニウム将軍に会いに行くが、ここでももちろん爆弾の情報は得られない。村の広場で色鮮やかな衣装で踊ったり、ラグビーをしたりしている人々を見て、呆気にとられるプランピック。彼は伝書バト2羽にメッセージを託す。

「どうやら村が違うようだ」
「爆発の危惧はない」

1羽のハトがドイツ軍に見つかり、撃ち落されてしまった。そのメッセージ「爆発の危惧はない」に不信感を募らせたドイツ軍は、斥候を出す。一方、もう1羽のハトのメッセージを読んだ英国軍も、意味がわからず同じく斥候を派遣する。
そんなことは露知らず、一人焦るプランピック。彼は皆が娼館に集まっているのを目撃し、自分も入り込む。なんとか爆弾のことを聞き出そうとがんばったが、なしのつぶて。エグランティーヌ夫人はうぶそうなプランピックを見て、彼に娼婦コクリコをあてがう。かわいらしいコクリコに惹かれるプランピックだが、なんと公爵に『ハートのキング』だと見破られてしまう。

大騒ぎになった。プランピックは“100年ぶりに王国に戻った王様”の役割を与えられ、公爵夫人の監督のもと、戴冠式を行うべく無理やり寺院に連れて行かれるのであった。らくだに引かせた車で村を練り歩くプランピック。そこへ登場したのが、ドイツ軍。パレードと勘違いした患者達に大歓迎を受ける始末。患者達はみな寺院に集まり、戴冠式が始まった。香をたき歌を歌い、デイジー僧正が高らかに戴冠を宣言する中、プランピックは寺院を抜け出しドイツ兵を追跡する。彼らが爆弾を埋めた位置を確認したプランピックは、あわてて寺院に逃げ帰る。そこで王冠を頭に戴き、戴冠式のお芝居に付き合いながらも、気が気ではないプランピック。塔の天辺から広場を見ると、なんとドイツ軍の戦車を横取りしたマルセルとゼラニウム将軍が、ドイツ兵を追っかけまわして遊んでいるところだった。ドイツ兵たちはほうほうの態で逃げ帰った。英国の斥候たちも村にやってきたが、『国民』から『国王』への贈り物である自転車を陽気に乗り回す色とりどりの人々、象やチンパンジーやらくだが跋扈する光景を見て、恐ろしくなった彼らもまた逃げ帰ってしまった。

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国民達は、国王に妃を捧げようと相談する。公爵夫人とエグランティーヌ夫人は、夫人の娼館からコクリコを連れてくる。コクリコは王妃になることを快諾し、電線の上を歩いて国王が眠る寝室までやってきた。王妃のキスで目覚めたプランピックは、集まってきた国民たちに説明する。爆弾の導火線が時計につながっているのだ、と。なんとかしなければ真夜中に村は木っ端微塵になってしまう。しかしプランピックの話を理解した者は誰もいず、国王のために村中の時計を集めてくる始末。万策尽き果てたプランピックは、彼らを助けるため、村を離れるように仕向ける。ところが、彼らは、村の外壁から先へは一歩も出ようとしない。

「外には猛獣がいっぱいだ」
「外界との間には石の壁がある。危険だ、殺されてしまう」
「現実の世界は苦しいだけですよ!お戻りください!」

外壁に立ち尽くして戻ってくるよう懇願する彼ら国民を置き去りにはできない。プランピックは村に戻ってくる。死の危険が刻一刻と迫ってくるがどうしようもない。国民たちに怒りをぶちまけてしまったプランピックは、コクリコと共に寝室に帰る。国民達も、どうやら国王のご機嫌を損ねたらしいと、それぞれに行きたい場所へと散っていく。

公爵と夫人は優雅に語らう。
「生きるも死ぬも簡単なことだ。ただ目をつむるだけ」

マルセルとデイジー僧正は寺院へとやってくる。
「楽しく生きるためには世間を離れるのが一番だよ」

ゼラニウム将軍とエグランティーヌ夫人は、街道にベッドを出して同衾する。
「軍隊を作りましょう。簡単よ。売春宿のなかでどんどん産むの。所詮売春婦と将軍の世の中よ」

運命の真夜中が近づく。ドイツ軍と英国軍が固唾を呑んで見守る中、プランピックはコクリコから意外なことを聞く。
「もうすぐ時計から騎士が出てくるの。それを見て死ぬのを待ちましょうか。よろいを着た騎士が鐘を打つのよ」

「…それだっ!!」

プランピックは、12時まであと3分というところで、時計塔によじのぼり、騎士の人形に仕掛けられた導火線を無事に処理した。
「助かったぞ!」

今度こそ本当のお祭り騒ぎだ。プランピックはサーカスよろしく時計塔の上でブランコをし、コクリコに王冠を与える。国民みなでポルカを踊る。

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英国軍は爆発しなかった村を見て、プランピックの手柄を喜び、ドイツ軍は将軍の副官を処刑した。

村では相変わらず総出でポルカを踊り続けている。そこに、上機嫌の将軍に率いられた英国軍がやってきた。英国軍の兵士達も混じってお祭り騒ぎは延々と続く。プランピックは将軍に事の顛末を報告しようとするが、両手に花の将軍には通じない。女性陣にねだられて、あろうことか花火まで打ち上げてしまった。

景気良く上がる花火を見て、ドイツ軍は、やっと爆弾が爆発したかと喜ぶ。これで村も英国軍も木っ端微塵だ。さて村に戻るぞ。

踊り明かして広場で居眠りしている英国軍の兵士達。コクリコとの別れを惜しむ間もなく、プランピックは軍に戻り、いざ出立のときを迎えた。ところがエグランティーヌ夫人と公爵夫人らに無理やり連れ戻され、広場を見下ろすバルコニーに将軍らと共に座るハメに。

「国王よ、これから行進が始まりますぞ。見物しましょう」

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プランピックらが見守る中、英国軍はラッパの音も高らかに進軍を始める。ところが、そこへ爆破作戦成功を確認しにドイツ軍が戻ってきてしまった!広場で鉢合わせする両軍。たちまちそこは戦場と化し、両軍いっせいに撃ち合いを始めた。そして、あっという間に相撃ちで全滅。両軍の中で生き残ったのはプランピックだけになってしまった。

「こりゃ、お遊びにしてはちと度がすぎるぞ」

目の前で繰り広げられた狂気じみた殺戮にウンザリした患者達は、三々五々、帰り支度を始める。呆然としたプランピックをその場に残し、彼らは衣装を脱ぎ捨て、『家』である精神病院に戻り始めた。

「さあ、もう充分遊んだ。うちに帰ろう。あんたも自分の世界に戻りなされ」

コクリコもプランピックに別れを告げた。その直後、村の人たちを伴ってフランス軍が村に戻ってきた。すべてが元通りになった。フランス軍の将軍は、感謝を込めてプランピックと相棒のハトに勲章を授けた。そして、次の作戦のためにぜひ彼の力を借りたいと、フランス軍と共に次なる駐屯地まで連れて行くことになる。
ジープに揺られながら村を離れるプランピック。精神病院の建物が遠くなっていく。あの信じられない一夜を、共に過ごした善良なる国民達。懐かしさがプランピックの胸にこみあがってくる。ついに彼はジープから飛び降り、軍服を脱ぎ捨てた。

精神病院の門の前で仁王立ちしている男がいる。病院を管理するシスターたちが目にしたのは、すっ裸に鳥かごを持ってにこやかに微笑むプランピックの姿であった。


「リオの男 L'Homme de Rio」(1963年)、「カトマンズの男 Les Tribulations d'un chinois en Chine」(1965年)などの、ジャン=ポール・ベルモントとのコンビ作で、一躍世界的に有名になった娯楽派の映画監督、フィリップ・ド・ブロカ。彼が長年共同で脚本を書いてきた脚本家ダニエル・ブーランジェとともに、1967年に仕上げた作品がこの「まぼろしの市街戦」です。荒唐無稽なブラック・コメディの体裁を借りながらも、戦争の狂気と人間の存在の不確かさを痛烈に皮肉った映画ですね。

この作品は、公開当初、従来のブロカ調の軽妙なアクション・コメディを期待した観客には受け入れられず、特にフランスでの興行成績はふるいませんでした。加えて、戦争を笑いものにするというブラックさが、批評家の受けをも低下させてしまったようです。ところが、ベトナム戦争が泥沼化の様相を呈しはじめていたアメリカでは、ヒッピー・ムーヴメントの勃興と共に、学生達の間で熱烈な支持を集めました。特にラストの、すっぽんぽんで鳥かごを持ち、精神病院に入ろうとする主人公の姿は、当時の反戦を訴える学生達のイコンにまでなったそうです。そして現在では、ブロカ監督の作品の中でも傑作のひとつと数えられるようになりました。練り上げられたストーリー、フランス映画界を代表する名優たちの、エレガントかつ天衣無縫なアンサンブル演技、そして、主人公に扮したアラン・ベイツの誠実そのものの存在感。今作がロケした街サンリスの、中世にタイムスリップしたかのような美しい趣きも、この摩訶不思議な反戦コメディに情緒を与えます。

劇中の、戦争の傷跡も生々しい爆撃された街なかの光景と、その中をこの世の春と闊歩する狂人たちの楽しげな様子の対比は、言葉を失うほど強烈です。一度ご覧になっていただきたい。まるで夢を見ているような風景なのです。色とりどりの衣装をひらひらさせて、壊れかけた広場を踊り狂う人たち。彼らを狂っているというのは簡単です。が、美しい村をボロボロにするまで破壊していく戦争の狂気は、どこにも閉じ込められることなく許されています。一体どっちが『狂人』なのか。爆弾をあちこちの国に投げつけるのが、大国の“遊び”であるなら、それをこそ“禁じられた遊び”とするべきでしょう。

最後のシーン。『公爵』が病院の窓辺で厳かに言います。

「諸君、この世で最上の楽しみは、この病室の窓辺から眺める景色だ」

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“正常”とされる外の世界は危険が一杯、猛獣が跋扈する辛い世界。うっかり出て行けばあっという間に殺されてしまう。だから、この病院で窓から美しい景色を眺めるのが一番だよというセリフは、戦争がなくならない当時の情勢への痛烈な皮肉です。これはそのまま、今現在でも通用する言葉でしょう。悲しいことですね。今だって世界のあちこちで紛争が後を断たない上に、新たな戦争の火種さえ点いているのですから…。


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