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zoom RSS 暗闇と寓話−「緑色の髪の少年 The Boy With Green Hair」Part2

<<   作成日時 : 2014/04/29 22:46   >>

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「こんな話、大人は誰も信じない。たとえエバンス博士でもね。だって大人は口では信じるといっても、後で必ず心変わりするもの」

博士はことさら怖い顔を作ってピーター少年を諭した。他人のハンバーガーを食べておいて話さないつもりなら、君は恩知らずだと。子供のような博士の言い分に、ピーターは呆れてしまう。博士はここで作戦を変える。
「よし、話さなくてもいいよ。実際君の話なんかに興味ないからね!」
ますます呆れたピーターは、続きを話し始める。

翌朝風呂に入っていた僕は、おじいちゃんに小言をもらわないように髪の毛にも石鹸の泡をしっかりつけて洗った。シャワーで泡を流すと、なんと髪の毛が鮮やかな緑色に変わっていたんだ!鏡でそれを見た時には驚いたさ!石鹸のせいかなと思って、別の石鹸でもう一度ごしごし洗い直した。…でもやっぱり僕の髪の毛は緑色のまま。おじいちゃんに知らせても、ちっとも本気にしない。そりゃそうだ。緑色の髪の毛の人間なんてこの世に1人もいないもの!世界でたった1人の人間!僕はちょっぴり誇らしい気持になって、鏡の前で髪の毛を立てて遊んでみた。

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その髪のまま牛乳配達のデービスさんに空き瓶を渡し、友達のペギーに挨拶した。さすがに彼女もびっくりしてた。一晩で緑色になっちゃったんだと答えると、彼女はかっこいいと喜んでくれた。でもデービスさんは僕の髪の毛を見て階段から転げ落ちてしまい、おじいちゃんはトーストを落っことしてしまった。しかもおじいちゃんなど、僕が髪の毛を緑に染めたと思い込んでしまった。そうじゃないことがわかると、今度は僕が病気じゃないかってオロオロし始めた。僕はどこも悪くない。それにこの髪の色はおじいちゃんが魔法をかけたせいだろう?だって昨晩僕を驚かせると言っていたし。でも、おじいちゃんの“サプライズ”とは、鮮やかな色合いのスカーフだった。これを僕にプレゼントしてくれるつもりだったんだ。じゃあ僕の髪の毛はどうなる?このままじゃイヤだ。元の黒髪に戻りたい。

おじいちゃんも動転しながら、そのうち治る、必ずいい事が起こると懸命に慰めてくれた。将来僕が素晴らしいことをやり遂げて、歴史に名前を残すとか!おじいちゃんらしいポジティヴ・シンキングは、とりあえず僕を朝食に向かわせた。おじいちゃんの提案で、とりあえず僕は医者に診てもらうことになった。口にこそ出さないけれど、きっと僕が何か悪い病気にかかったと思ってるんだ。でもおじいちゃんは得意の歌を歌い始めた。

緑の髪を見に
人々が集まるだろう

僕は嫌いな帽子をかぶっておじいちゃんと外に出た。そこへペギーと女の子達がやってきて、髪の毛を見せてとせがむ。嫌々だったけど、彼女達に緑色の髪を見せてあげた。皆かっこいいと褒めてくれたけど、僕は内心複雑だ。だって街中を歩けば、大人達は僕の髪を見て驚き、口をあんぐり開けて目を見張るんだもの。やっぱりこの髪の毛はおかしいんだ。

町医者のカヌート先生は僕の身体を隅々まで調べたけど、結局どこも悪いところは見つからなかった。原因が分からないし、髪の毛の色が元に戻る薬もない。この髪が無害かどうかもわからない。それなのにカヌート先生は、医学の歴史に残るケースだと言い出す始末だ。そんなことより、誰か髪の毛を元に戻して欲しい。おじいちゃんは、応急措置として髪を黒に染めることを言い出したけど、僕はイヤだった。何とかして元に戻したい!髪を全部切るのもダメだ。大人は切ってしまえばいいことだと簡単に言うけど、そうじゃない。他の人のように、僕だって普通の髪になりたいだけなんだ。このままでは学校にも行けない。今日はそのまま家に帰ることにした。

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家の外では友達が楽しそうに遊んでいる。僕だって仲間に入りたいのに、こうして家に閉じこもって何日にもなる。おじいちゃんはふさぎ込む僕に手品を見せてくれたけど、僕の気は晴れない。おじいちゃんは学校に行こうと促す。ズボンに継ぎを当てたときと同じこと、周りの人はすぐその姿に慣れてなにも言わなくなるさ。僕はおじいちゃんの大きな身体の影に隠れるように歩いたけど、街の人は皆白い目でじろじろ見つめる。犬まで僕に吠え掛かってくる。犬が噛み付いてもその主人は見てみぬ振りだ。床屋さんも雑貨屋のパイパーさんも牛乳屋のデービスさんも水道局の人も、僕のほうを見てひそひそ噂話をしている。おじいちゃんは、皆の前で僕の髪の毛の異変が自然のものであることを宣言したが、大人達は納得していない。僕が伝染病にかかったんじゃないかと疑ってる。皆原因が何かを知りたいんだ。牛乳のせいか、それとも水のせいか。僕を前にして皆口篭っているが、僕の髪の色が街の人に未知の恐怖を与えていることがよくわかる。髪の毛が緑色に変わるなんてあまりにも奇妙なことで、街の人達には到底受け入れがたいことなんだ。おじいちゃんだけは、緑色の髪に誇りを持てと励ましてくれたけど。でも元に戻らなかったら?僕にはそれだけが不安だった。

学校では、子供達が寄ってたかって緑色の髪の毛を囃し立てる。ペギーですら、僕に近づくと病気が伝染すると思い込んで怖がる始末だ。仲良しの友達は、僕に向かって二度と学校に来るなと吐き捨てた。それがイヤなら髪を切れと言うんだ。僕の髪は忌まわしいばい菌扱いだった。ブランド先生も僕の髪を見て困惑しているのがわかる。僕は死刑台に向かう心境だった。先生は授業を始める前に、黒髪の人は何人いるか、茶色の髪の人は何人いるか、金髪の髪の人は何人か、挙手させて数を確認した。緑色の髪は僕だけ、赤毛も1人だった。要はそれだけのことだ。皆それぞれ髪の色が違うにすぎない。先生はそう子供達に教えて僕を助けようとしたが、それも無駄だった。結局、髪の色が変わってしまったのは、両親の死の事実を突きつけられたことが原因だったのだ。僕は偶然、おじいちゃんに預けたパパからの手紙を見つけた。

“息子ピーターへ。16歳の誕生日にこれを読むことを望む…”

他の子供を助けて死ぬなんて、パパもママも僕のことなどどうでもよかったのだろう。僕は怒りに任せて手紙を破ってしまった。僕がこんなにも辛い思いをしているというのに。皆に疎まれ、天涯孤独の身の上になっているというのに!

僕は森に走っていった。この街にはもういられない。戦争孤児に安楽の場所などないんだ。僕は小道を走り抜け、木々の間から差し込む明るい日差しに照らされた草の上に身を投げた。髪の色と同じ草。今や自然の緑は僕と同じように思える。そこではじめて僕は思い切り泣くことができた。ふと見やると、色鮮やかな緑色の葉の上に、僕の涙が朝露のようにこぼれ落ちた。不思議な思いで涙の軌跡を見ていると、遠くから僕の名前を呼ぶか細い声が聞こえる。幼い少女の声に導かれ、僕は森の中の廃墟にたどり着いた。そこには、いつか見た戦争孤児救済ポスターに写っていた子供達が、そのままの姿で立ち尽くしていた。胸に手を置いた少年、焼け跡でうなだれる幼い兄妹、親を亡くした東洋の赤ん坊…。目の錯覚ではなかった。僕が近づいていくと、少女が赤ん坊を抱き上げて僕を迎える。彼らは僕の髪の毛を見て告げた。僕を待っていたと。僕が彼らの元へ来るのを望んでいたのだと。赤ん坊を抱いた少女は、悲しげな瞳のまま答える。緑は春の色、希望に満ちた色。あなたの髪は美しいのだと。少年は続ける。

「その髪は人生の転機だ。皆君の髪に注目する。それなのになぜ君は泣いているんだ」
「ある日突然こんな髪になってしまったら、泣きたくもなる」
「それは違う。その髪の色には理由があるんだ。誰しも緑色の髪になれるわけじゃない。つまり君は選ばれた人間なんだ。その髪の色で皆の注目を集め、なぜ緑色の髪になってしまったか人々に説明する義務があるんだ。人に問われればこう答えればいい。“僕は戦争孤児だからだ”と。“戦争の恐怖のせいでこんな髪になったのだ”と。出会う人全てに…世界中の人々に戦争の恐怖を伝えてまわるんだ。もう二度と戦争が起こらないようにするために。大人達が君を信じればもう戦争は起きないし、戦争孤児も増えない」


僕は天啓を得た。みんな気づいてない。戦争で死ぬことを当たり前のことだと思ってる。それが間違いだとみんなに伝えなければ!それからの僕は、街中の人達に戦争の恐ろしさを説いて回った。デービスさんにも、医者にも、床屋さんにも、パイパーさんにも、もちろんブランド先生にも。でも大人達はますます困惑していった。とうとうカヌート先生とデービスさんが、おじいちゃんの家に押しかけてきた。充実感でいっぱいの僕に、彼らは冷水を浴びせるようなことを告げた。僕の髪の色のせいで、デービスさんの牛乳の売り上げが減っていると。牛乳が奇病の原因だという噂が街中に広まっているからだ。もちろん根も葉もない噂に過ぎないが、無知の人々は今やパニックに陥っている。それを静めるため、この髪の毛を切らねばならない。さすがのおじいちゃんにもこればかりは止めようがない。髪を切ってしまえば元の黒髪に戻る可能性もある。おじいちゃんは僕を言い含めようとしたけど、僕はあくまで抵抗した。髪が緑色になったのは、そこに大きな意味があるからだ。

でもデービスさんに迷惑をかけるのは心苦しい。もう一度よく考えるため、僕はあの森の廃墟に行ってみた。戦争孤児たちがいるかもしれない。今は彼らの助言が欲しかった。日が沈みかけ、空が紫色に暮れはじめた。森の中も薄暗い。自転車を抱える僕の目の前に、街の子供達が姿を現した。あちらからも、こちらからも。おそらくそこに潜んでいたのだろう。僕はあっという間にハサミを持った子供達に取り囲まれた。僕の髪の毛を切るつもりなんだ。僕は自転車を捨てて一目散に逃げだした。今まで仲間だった少年達が、一団になって追いかけてくる。メガネをなくした少年に捕まりかけたが、なんとか追っ手を振りほどいて走る。僕は自転車に飛び乗って人っ子1人いない街の中をひた走り、おじいちゃんの家に着くと脇目も振らずに部屋に飛び込んでいった。

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おじいちゃんに事の次第を告げると、おじいちゃんはカヌート先生の言葉を伝えてくれた。髪の色が緑色であるということは、危険を意味する。街中の人々からの迫害に、いずれ僕が耐えられなくなるだろうと。街の人達は牛乳や水のせいだと言い、子供の親達は教育委員会に抗議している。こうなっては、おじいちゃんにも僕を守りきれない。僕が傷つく前に髪の毛を切るべきだって言うんだ。結局おじいちゃんも僕を信じていない。おじいちゃんは、緑色の髪にではなく、僕が戦争の愚かしさを説いて回ることに困惑しているんだ。髪を切れば、僕の心を支配する悩みからも解放され、生まれ変わったように世界が変わるはずだと思っている。頭をすっきり剃ってしまえば、夏は涼しくて都合がいいって。そんな問題ではないのに。誰も、おじいちゃんですら、僕の言うことに耳を傾けてくれないし、信じてもくれない。もうなにもかも終りだ。僕は絶望し、床屋に行くことを決意した。

街中の人たちが見守る中で、床屋が僕の髪の毛をバリカンで剃り落とした。おじいちゃんにはその音に耐えられないようで、向こうを向いてしまった。緑色の髪が床に落ちていく。僕の目からは涙が零れ落ちた。僕の生きる意味が込められているはずの髪の毛が、あっという間になくなってしまった。床屋が差し出す鏡を見る気には到底なれなかった。床屋は僕の髪の毛を記念に持って帰るよう、周囲の人に呼びかけたが、誰も答えなかった。剃り落とされた緑色の髪は、罪深い大人の身勝手さの証であるからだろう。ハサミを持って追いかけてきた少年達ですら、丸坊主の僕を見て後ろめたさに苛まれているようだった。おじいちゃんは、これで元の普通の生活に戻れると慰めてくれたが、僕にはそうは思えない。おじちゃんが僕を気遣ってくれているのは痛いほどわかるが、僕の心の傷はそれすらかき消すほど深いものだったのだ。
それ以来僕は一切口を開かず、何も食べず、誰にも心を開かなかった。僕の心は凍りつき、おじいちゃんの苦しげな謝罪も受け入れられない。おじいちゃんはやがて諦めて僕のそばから離れていった。その夜、僕は身の周りのものだけを持って、おじいちゃんの家を出た。おじいちゃんに別れを告げるのはやめにした。僕は黙ってここを去るべきだろう。

「それが昨夜の話なんだ。なんだか随分昔のことのような気がするけど。信じてくれる?」
「いいや。だって君は自分でも信じてないだろう?」
「とんでもない、全部本当のことだ!」
「もしそうなら、一度髪の毛を切ったぐらいで逃げ出したりしないぞ」

エバンズ博士はそっけなく、ピーター少年にこれからどこへ行くのか尋ねた。遠くへ行きたいと願う少年に、しかし博士は家出することを許さなかった。なぜなら、取調室の外にはおじいちゃんとブランド先生、カヌート医師が待っていたからだ。あらかじめ事情を知っていたエバンス博士が、皆に連絡をつけておいたのだった。表情を固くするピーターに、おじいちゃんは父親からの手紙を読み上げた。遺書だ。そこには、なぜ両親がピーターを残して死んでいったのか、その偽らざる思いが綴られていた。

ピーター1人をこの世に残したのは、遣り残した仕事があるから。息子への愛ゆえの行動だ。死は悲しむべきことだが、後に遺された者は精一杯生き、戦争で失われた何百万という人々の命の記憶を忘れないようにしなければならない。そのどの命にも、素晴らしい価値があったのだということを。生き残った者は、名もない死せる魂を忘れてはならない。忘れたなら、思い出さねばならない…。ピーターは、一旦は破ろうとしたその手紙を生涯持ち続けることを決意した。

ピーターはエバンス博士に、再び緑色の髪が生えてくるだろうと告げたが、その目にはすでに絶望の色はなかった。家に戻っていく少年を見送りながら、エバンス博士は、彼の髪が緑色だったかどうかではなく、彼が言わんとしたことだけを信じようと思った。実際、髪の色などどうでもいいことなのだから。再び家に戻ったピーターとおじいちゃんは、暗がりの中で歌い始めた。

愛しい馬よ
はいなんでしょう?
ダブリンまで何マイル?
90マイルです
愛馬よ
はいなんでしょう?
ろうそくの明かりで帰って来れるかな?…

月明かりが辺りをおぼろげに照らす中、2人は歌いながら階段を駆け上がっていく。やがて、窓に明かりが灯った。

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