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zoom RSS ルネ・クレマンと太陽―Soleil et Rene Clement

<<   作成日時 : 2014/06/15 22:27   >>

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1996年3月17日、83歳の誕生日を翌日に控え、ルネ・クレマン監督は滞在先の保養地として有名なモンテカルロで静かに息を引き取りました。映画監督としては、さらに時代をさかのぼること70年代中盤で既に活動を終えていたということもあり、訃報への反応も殊更大きな騒ぎにはならなかったようです。

パリで暮らしていた頃、生活が落ち着いたら、フランスに深い因縁のある2人の映画作家、ジョセフ・ロージーとルネ・クレマンのお墓参りをしたいと願っておりました。ところが、よくよく考えてみますと、ロージー監督は死の直前にロンドンに居を移しており、彼の地に埋葬されているわけですし、クレマン監督にいたっては、晩年はモンテカルロで隠遁生活を送っていたことから埋葬の地もおそらくそこであろうと思われます。両者とも、皮肉なことにパリ以外の土地で永眠しているのですよね。来年帰国するまでの間に、イギリスやモナコ公国に足を伸ばすことは実質上不可能。残念ながら、愛する彼らのお墓をこの目で確認する作業は断念せざるをえませんでした。


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モンテカルロといえば、国営カジノ、湯治場、ゴルフ場、美術館、植物園、もちろん瀟洒なホテルなどなど、観光地、金持ちの集まる保養地として有名であることに加え、モナコGP等のスポーツのお祭りの開催地としても著名ですね。地中海特有の抜けるような青空、キラキラ輝くごとくの日差し。冬のパリの憂鬱な曇天、ゴミや歩きタバコの汚臭に慣れてしまったこの身には、まるで楽園のように感じられます。そういえば、クレマン監督の最高傑作「太陽がいっぱい Plein Soleil」も、このモンテカルロのような地中海の薫り高いナポリが舞台でした。


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アンリ・ドカエのカメラが捉えるこの痛ましい青春映画の背景は、目を焦がさんばかりの陽光の輝きと、その光が形作る不穏な影の対比に尽きます。クレマンは、生まれながらにして“持てる者”フィリップを光とするならば、“持たざる者”トムを影の存在にせざるをえない世の中の不条理を、こんなに明るい街の中で見出したのですね。
晩年、この作品とどこかしら似た雰囲気の街に住まいしながら、彼はトムという青年の屈折した魂を思い遣ったのでしょうか。トムの朴訥とした純粋な魂が、地中海の容赦ない太陽にじりじりと焼かれ、やがて富への渇望に溶けていった有様を、一度ならず、その脳裏にトレースしたのでありましょうか。あるいはまた、「太陽がいっぱい」を頂点として後、数奇な運命を辿っていった自身のキャリアをも、トムの人生と重ね合わせてみたのかもしれません。
パトリシア・ハイスミスの怜悧な原作、アンリ・ドカエの陰影深くも躍動感溢れるカメラワーク、ニーノ・ロータの哀感漂うメロディ、そしてアラン・ドロン。今作は、映画の要求する全ての要素が最高の状態で合致した、奇跡のような作品となりました。


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今作のドロンを見ていると、天使の美貌の裏に悪魔の魂を宿さざるを得なかったトムの苦悩が、そのうつろな瞳の中に常時見出せるような気がします。それは、とりもなおさず、ドロン自身がフランス映画界の中で感じていた苦痛と通ずるからでありましょう。トムとドロンの人格を経て、クレマンに伝えられたその苦痛は、やがてクレマンの人生をも蝕んでいくようになるのです。


そして今、この「太陽がいっぱい Plein Soleil」が劇場でリバイバル公開されています。この名作を映画館の大きなスクリーンで再見できる幸福。今週の木曜日には映画館に馳せ参じることができそうなので、とにかく、何をおいても観てこようと思っています。

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