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zoom RSS 肉体と異世界の融合―デイヴィッド・クローネンバーグDavid Cronenberg

<<   作成日時 : 2016/03/16 00:36   >>

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我が敬愛する異能の映画作家デヴィッド・クローネンバーグ David Cronenberg。“プリンス・オブ・ホラー”と呼ばれていたのは、既に遠い遠い過去のこと。2002年の心理サスペンス作品「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする Spider」を一つの契機にして、以降、取り扱うジャンルを新規開拓しながら息長く創作活動を続けています。
興行的失敗で破産しかかった「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする Spider」と同じように、興行的な意味での成功には手が届きませんでしたが、「危険なメソッド A Dangerous Method」で史実を元にした緊迫の心理劇を手掛け、新たなクローネンバーグ・ワールドへの扉が開かれました。現在は小説『Consumed』を上梓したところ。新たな映画製作の話はまだ聞こえてきませんが、前作「マップ・トゥ・ザ・スターズ Maps to the Stars」(2014年)では、天敵ともいえる(笑)ハリウッドを舞台にした群像ドラマと変則技ラブ・ストーリーを合体させ、今までになかった境地を見せてくれました。気長に新作をお待ち申し上げますね。

そんな訳で、齢70代にして、昔よりはるかに充実した環境下で発揮される旺盛な創作意欲に、ファンとしては誇らしげな気持ちでいっぱいです。これからも、獣道を華麗に突き進む捻くれた変態アート映像作家でい続けてくれることを望みます。貴方のラブコメ映画など死んでも観たくありませんし、コメディ映画を撮っている貴方の姿は想像すら出来ません。生涯一、変態アート映画を撮り続けて下さい。貴方には、貴方にしか見えない特異な世界があります。私もいつか、一度でいいから、その零下のマグマとも例えるべきビジョンを共有してみたい。貴方が、様々な根源的恐怖と最後には融合を果たしたように、私も貴方の世界に融合してみたいのですよ。私は貴方のファンではなく、その構成要素の一つになりたいと願う人間なのですね。

貴方のその孤高の生き様、少なくとも私は、最後の最後まで見届けるつもりでおります。

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デイヴィッド・クローネンバーグ OC, FRSC (David Paul Cronenberg)

1943年3月15日生まれ
カナダはトロント出身

1961年トロント大学に入学し、生化学及び生物学を専攻するものの、ジャーナリストの父親の影響から小説家を志して1年後に英文学科に転向。在学中に書いた短編小説が注目を集めたが、いずれの雑誌に作品を持ち込んでも掲載を断られる憂き目に合う。ナボコフ、ギンズバーグ、バロウズ等の作家たちに心酔しつつ、友人の映画出演を機に映画製作に興味を移し、百科事典を片手に完全な独学で映画製作の知識を学んでいったことは有名な逸話だ。大学在学中には、16ミリ・フィルムで短編映画『Transfer』『From the Drain』の2本のSF作品を製作する。

多くのコマーシャル・フィルムとTV作品を手がけたのち、1975年ついに「シーバース Shivers」で商業用長編映画デビューを飾った。以来、カナダのインディペンデントな製作会社の後押しで、「ラビッド Rabid」(1977年)、「ザ・ブルード The Brood」(1979年)、「スキャナーズ Scanners」(1981年)、「ヴィデオドローム Videodrome」(1982年)、「デッドゾーン The dead Zone」(1983年)と、精力的に作品を発表する。特に「シーバース」と「ラビッド」は、カナダで製作された映画としては当時最大の興行収入を記録し、全米でも大ヒット。テクノロジーによる肉体の変容と再生を執拗に描く特異な作家として注目を浴びることになる。また、「ヴィデオドローム」は、当時日本では劇場公開されなかったが、監督自身のもつフェティシズムと、テクノロジーを過信する人間の業の深さ、精神の闇の部分とをスクリーン上で融合させたかのような幻惑的な映像で、カルト作品に祭り上げられた。
そして最新のSFXを用い、肉体の変貌→怪物としての再生を執拗にそして淡々と描くことに成功した「ザ・フライ The Fly」(1986年)で、クローネンバーグはそれまで追い続けてきたテーマを最高のレベルで昇華させる。 同時に、そのテーマが悲劇のラブストーリーという形で収束した為、凡百のホラーとは一線を画する作品ともなった。作品は世界的に大ヒットし、主演のジェフ・ゴールドブラムを一躍スターに押し上げた他、クローネンバーグ自身も有名監督の仲間入りを果たし、“ホラーの貴公子”というレッテルまで頂戴することになる。

新境地を求めて、バリ・ウッド原作の実話ベースの心理スリラー小説を映画化した「戦慄の絆 Dead Ringers」(1988年)では、彼自らデザインした異形の手術道具を画面に登場させ、マニアックなオブセッションを見せたことでも知られる。
スティーヴン・キング原作の映画化「デッドゾーン」は、アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭で3部門を受賞している。また、「ザ・フライ」ではクリス・ウェイラスがアカデミー賞特殊効果賞を受賞。ジェレミー・アイアンズが1人2役で双子役に挑んだ「戦慄の絆」では、アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ、ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀監督賞受賞の栄誉に浴している。

1990年には、フランス政府から芸術文化勲章“シュヴァリエ Chevalier(騎士、勲爵士)”を授与され、1999年度のカンヌ国際映画祭では審査委員長も務めるなど、フランス映画界との関わりが深い。
1991年には、長年敬愛していたウィリアム・S・バロウズの自伝的小説「裸のランチ Naked Lunch」をクローネンバーグ色に染め上げて映像化。全米映画批評家協会賞の最優秀監督賞と脚本賞を受賞した。 英国の小説家J・G・バラード J.G. Ballardの“テクノロジー3部作”のうちの1つにして、超問題作の映画化「クラッシュ Crash」(1996年)は、自動車事故によってしか性的快楽を得られないという異常な人々を描いたもので、上映時間の8割が露骨なセックス・シーンという衝撃作であった。お披露目されたカンヌでも賛否両論真っ二つに別れ、論議を引き起こしたが、審査員特別賞を贈られる。また、カナダのジニー賞でも5部門で賞を得た。

1999年には、現在広まりつつあるバーチャル・リアリティの世界を予見したかのようなオリジナル・ストーリー作品「イグジステンズ eXistenZ」でベルリン国際映画祭の銀熊賞、アムステルダムファンタスティック映画祭の銀賞を受賞。2001年、母校トロント大学より名誉法学博士号を授与され、その翌年の2002年には、カナダ政府からオーダー・オブ・カナダ オフィサーを受勲。同年に製作した「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする Spider」は、批評筋には好評だったものの、地味な内容であったためか興行面では惨敗を喫する。クローネンバーグは自力で資金を調達していたため、破産寸前まで追い込まれてしまった。

2005年には、大手スタジオからの依頼を受けてアメコミ原作の「ヒストリー・オブ・バイオレンス A History of Violence」を監督。いわゆる“雇われ仕事”であったが、ヴィゴ・モーテンセンをはじめとする役者陣の好演も後押しし、コンペ部門に招待されたカンヌ国際映画祭ではパルムドール候補になった。また、ゴールデングローブ賞の作品賞にノミネート、全米映画批評家協会賞では監督賞を受賞、またローリングストーン誌 Rolling Stone Magazineの“2005年度ベスト作品リスト”で1位に選出される。
2006年には、カンヌ国際映画祭から功労賞を贈られた。また、同映画祭の設立60周年を記念して、カンヌと関わりの深い映画監督35名が世界中から集められ、各人の“映画へ想い”をテーマにした短編オムニバス編「それぞれのシネマ Chacun Son Cinema」が製作された。このオムニバス集にも自身の主演作品を作って参加した監督は、同年、カナダ王立協会(FRSC)フェローになる。
2007年、再びヴィゴ・モーテンセンとコンビを組み、スティーヴン・ナイトの脚本を得てロンドンを舞台にしたギャング映画「イースタン・プロミス Eastern Promises」に挑戦。人身売買組織に潜入した覆面捜査官のスリリングな闘いを描いて、再び新境地をひらいた。この作品は世界中で高く評価され、第32回トロント国際映画祭にて最高賞の観客賞を受賞し、英国アカデミー賞をはじめ様々な映画賞にもノミネートされた。
2008年には、ロサンジェルス・オペラ団 Los Angeles Operaの芸術監督を務め、三大テノールの1人として著名な歌手プラシド・ドミンゴの依頼で「ザ・フライ The Fly」のオペラ化作品に挑む。キャリア始まって以来の初舞台演出作品は、ロサンジェルス・オペラ団 Los Angeles Operaで上演され、音楽はハワード・ショアが作曲した。
その後は、クリストファー・ハンプトンの舞台作品の映画化「危険なメソッド A Dangerous Method」(2011年)、ドン・デリーロの難解な原作小説を映像化した「コズモポリス Cosmopolis」(2012年)、ブルース・ワグナーの脚本で初のアメリカロケも行った業界内幕もの「マップ・トゥ・ザ・スターズ Maps to the Stars」(2014年)と、テンションの高い作品を発表し続けている。

また、特異な風貌を生かして、「ミディアン 死霊の棲む街」(1990年)や「ジョン・ランディスのステューピッド おばかっち地球防衛大作戦」(1996年)、クリストファー・ランバート主演のスリラー「レザレクション」(1999年)などに俳優として出演している。

●フィルモグラフィー Filmography

1969年「ステレオ/均衡の遺失 Stereo」
1970年「クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立 Crimes of the Future」
1975年「シーバース/人喰い生物の島 Shivers」
1977年「ラビッドRabid 」
1979年「ファイヤー・ボール Fast Company」(未)
1979年「ザ・ブルード/怒りのメタファー The Brood」
1980年「スキャナーズ Scanners」
1982年「ビデオドローム Videodrome」
1983年「デッドゾーン The Dead Zone」
1986年「ザ・フライThe Fly」
1988年「戦慄の絆 The Dead Ringers」
1991年「裸のランチ Naked Lunch」
1993年「エム・バタフライ M. Butterfly」
1996年「クラッシュ Crash」
1999年「イグジステンズ eXistenZ」
2000年「short6:camera」(短編)
2002年「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする Spider」
2005年「ヒストリー・オブ・バイオレンス A History of Violence」
2007年「イースタン・プロミセズ Eastern Promises」
2011年「危険なメソッド A Dangerous Method」
2012年「コズモポリス Cosmopolis」
2014年「マップ・トゥ・ザ・スターズ Maps to the Stars」

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クローネンバーグ監督は、資本がアメリカであろうとフランスであろうと、寒空のトロントを根城にマイペースに映画製作を続けています。作品を発表するごとに賛否両論の嵐を巻き起こし、還暦を越えてなおも、“鬼才”の冠をはずさぬ超然たるひねくれ者。
一躍その名を世界に知らしめた「ザ・フライ」以前の注目作として、頭部爆発シーンでおなじみの「スキャナーズ」(新薬実験によって生み出されたエスパーたちの超能力合戦)や、ジェームズ・ウッズ主演の「ヴィデオドローム」(悪夢の映画。テクノロジーと肉体の倒錯的な融合を描く)があり、日本でも熱狂的な(かつダークな)信者を固定化した感があります。
多彩なジャンルの作品を手がけているように見えますが、そのテーマは、1969年の「ステレオ」から一貫して変わらず、テクノロジーと肉体と精神の相互関係です。それを特異な内臓感覚で、肉体の内側から画面上に再現することに心血を注いでいるのです。もちろん、セックスの問題とも切っても切れないテーマだけに、多くの観客にとっては難解かつ嫌悪すべき映像が諸作品で繰り広げられます。誰も触れようとしない極北を、映像表現で目指しているというべきか。彼が、同じ映画業界の人間から尊敬されつつも、どこか遠巻きにされている所以です。

さて、師匠という人は、家族や兄妹など気心の知れた人たちをスタッフとして周囲に置きたがる傾向がございます。泥沼の離婚劇を演じた最初の奥様と別れた後、1979年に再婚したキャロライン・ジフマンさんはスタッフの1人でしたし。最初の結婚でもうけた長女カサンドラ(1972年)さんは、製作スタッフとしてお父様の作品でずっと働いております。キャロライン夫人との間の娘、次女ケイトリン(1984年)はファッション・カメラマンで、お父様の作品のみならず、最近ではアントン・コービン Anton Corbijn監督の「ディーン、君がいた瞬間 Life」でもスチール・カメラマンを務めるなど、幅広く活動していますよ。息子、長男ブランドン(1985年)君は、お父様と同じ映画作家の道を歩み始めました。2012年度の第65回カンヌ国際映画祭に父子揃って新作が招待され(ブランドンは処女作「アンチヴァイラル Antiviral」、師匠は「コズモポリス Cosmopolis」)、その父子鷹状態に涙した(私が)ことも懐かしく思い出されますねえ。長きに渡って師匠の作品で衣装デザインを担当しているデニスは師匠の妹さんで、映画監督アーロン・ウッドリーのお母様でもあります。師匠のDNAがこうして受け継がれていくのをリアルタイムで見守ることができて幸せですよ、本当に。


著名な映画作家たちが、自作を自ら解説する非常に貴重なインタビューDVDシリーズです。このDVDでは、クローネンバーグ監督が「クライム・オブ・フューチャー」から「イグジステンズ」までを解説しておりますね。残念なのは、最近ますますメジャーへの影響力を強め始めた近作についての言及がないことですが、それでも監督自身の言葉にはまた別種のリアリティがあります。 監督へのインタビューの他に、彼の作品に出演した俳優たちへのインタビューも収められており、クローネンバーグの人となりを客観的に把握する手がかりとなるのではないでしょうか。

映画作家生活40周年を記念してトロント国際映画祭(TIFF)は、師匠がすべての作品で使用した小道具や衣装など、膨大な数に上る貴重な品々を集め、一大回顧展を企画しました。この企画展は、好評を以ってカナダ以外の国々でも開催されております。TIFFは、企画展のサイト内に、師匠の映画の撮影現場での写真など、大変貴重な画像を多数満載した師匠オンリーのページを作ってくれています。皆さんも是非ご覧になってみてくださいな。

David Cronenberg: Virtual Exhibition

http://cronenbergmuseum.tiff.net/accueil-home_m-eng.html



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